「アドバンテスト」は日本大手の半導体メーカー。
同社は半導体検査装置の大手メーカーであり、特にメモリテスターなどの自動テスト装置の分野では世界でも大きなシェアを誇っています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からアドバンテストの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:長期的に『買い』
▷以下の点を総合的に勘案し長期的に5,000円(現状2,700円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷19年3月期の連結税引き前利益は前の期比2.7倍の662億円、20年3月期は前期比53.2%減の310億円との見通し。
▷しかし、20年の減益はメモリ在庫調整の影響による一時的なもの。
▷今後は5G通信の商用サービス拡大を契機に、2020年から再び成長軌道入りすると考えられる。
■ 各種指標:
▷ROEが2009年を底としてV字回復中。予想PERは19.4 倍、予想PBRも2.54 倍と割高水準。
▷しかし、割高=人気が高い、良い意味での割高さであると考える。
■ 他社との比較:
▷競合が減益に落ち込む中で今期の予想は減益であるが、2021はV字回復すると予測。
■ 株主還元策の動向:
▷今期88円→92円に増額。
Contents
【企業情報】アドバンテストとは?
アドバンテストは半導体製造装置業界において、世界でも大きなシェアを誇っています。
ここではアドバンテストが持つ3つの強みについてご紹介していきます。
業界No.1の製品ポートフォリオ
アドバンテストはSoC、メモリを主軸に、ナノテクノロジー、システム・レベル・テストと業界No.1の製品ポートフォリオを取り揃えています。
業界No.1の優良顧客基盤
アドバンテストは日本国内だけではなく、世界各国の半導体企業ならびに大学・研究機関等との強固なパートナーシップを保持しています。
また先進的な半導体を手がける企業はほぼ全てアドバンテストの顧客といってよいほど浸透しています。
アドバンテストは半導体製造装置業界において世界でも大きなシェアを誇っています。
周辺機器を含めた総合提案力、グローバルサポート能力
アドバンテストは半導体のパッケージテストに不可欠なテスト・システム、テスト・ハンドラ、デバイス・インタフェースの全てをワンストップで提供しています。
またアメリカのVLSIresearch社による半導体製造装置メーカー顧客満足度調査でも評価されています。
顧客満足度の高いサプライヤーである「10 BEST」に31年連続で選ばれている実力派企業です。
アドバンテストの過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表する半導体製造装置メーカーである、アドバンテストの過去10年間の業績推移を見ていきます。

アドバンテストの売上高は2010年の53,225百万円を底に、上下しながらも、長期的に上昇しています。2019年には282,456百万円と見事なV字回復を遂げています。
また、本業を表す営業利益も2009年を底として、見事なV字回復を遂げているといってよいでしょう。
数値から、まだまだ「これから」先が楽しみな、投資しがいのある業績推移をしているといえます。
アドバンテストの2019年3月期決算分析
アドバンテストが4月25日に発表した決算によると、19年3月期の連結税引き前利益は前の期比2.7倍の662億円、20年3月期は前期比53.2%減の310億円との見通しを公表しました。
配当に関しては、前期の年間配当を88円→92円に増額し、今期の年間配当は未定としています。
20年の業績の悪化予測は、メモリ在庫調整が影響してメモリ・テスタ需要が減速することを予測しての慎重な企業予測であるといえます。
アドバンテストのROEとROA
アドバンテストのROEとROAは非常に大きな幅で推移しています。

ROEは-45.78%~28.68%、ROAは-37.07%~18.71%です。
しかし、ROAはここ5年間日本の東証一部の平均値である2%を超えて推移していることから安定感が出てきているといえます。
またROEもここ3年間は日本の東証一部の平均値である8%を超えて推移しているため、底打ちからV字回復を遂げたと評価することができます。
アドバンテストの中長期経営方針「グランドデザイン(10年)」
アドバンテストで今後の目指すべき姿として2018年度を起点とする「グランドデザイン(10年)」ならびに「中期経営計画(3年)」を策定しています。
≪アドバンテストが取り組む4つの課題≫
- コア・ビジネスの強化、重点投資
- オペレーショナル・エクセレンスの追求
- さらなる飛躍への価値探求
- 新事業領域の開拓
長期経営方針『グランドデザイン(10年)』2018年度~2027年度
将来の定量的なイメージは以下となっております。
- 売上高3,000億円レベル
- 売上原価率46%
- 販管費率32%
- 営業利益率22%
中期経営計画(3年) 2018年度~2020年度
≪中期経営計画(3年)の数値目標≫
3年程度を想定した最低目標値 | 3年程度を想定した努力目標値 | 2019年の現状 | |
売上高 | 2,300億円 | 2,500億円 | 2,824億円 |
営業利益率 | 15% | 17% | 22.89% |
ROE | 15% | 18% | 28.68% |
見てきたようにアドバンテストでは中期計画の数値を2019年段階ですべてクリアしています。
企業の目標通りに経営が進んでいるといってよいでしょう。
アドバンテストのテクニカル分析
ここではアドバンテストは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
アドバンテストの過去10年の株価推移
下記はアドバンテストの10年間の株価推移です。

業績が好転した2017年からWボトムをつけ株価が上抜けし、やっと底打ちを果たしたことがわかります。
このことから、アドバンテストは日経平均株価に連動しにくく、業績で株価が動きやすい銘柄であるといえます。
アドバンテストのテクニカル分析~テクニカル的に強い「買い」判断
結論から申し上げますと、アドバンテストは長期で強い「買い」判断です。
ではなぜアドバンテストは「買い」なのかをご説明していきたいと思います。
i. 長期で「買い」
下記はアドバンテストの月足チャートです。

2016年に長い雲との戦いに勝利し、上値ブレイクを果たしたばかりです。
また、Wボトムをしっかりと形成し、きれいに底打ちを果たしています。
アドバンテストは長期的に「底値圏」といってよいでしょう。
ⅱ.中期でも「買い」
アドバンテストは2019年4月下旬に雲(2,307円)をブレイクしたばかりです。

日経平均が雲の下に押し込まれ、雲の上で推移している銘柄が少ない中、アドバンテストはテクニカル的に買える貴重な銘柄といえます。
テクニカルから見たアドバンテスト
アドバンテストは相場が始まったばかりの出遅れ銘柄です。
月足&週足で雲抜けしたことから、今後テクニカル的に大化けする確率が高い銘柄であるといえます。
アドバンテストの競合他社比較
アドバンテスト(6857)を同業である日本電気(6701)、セイコーエプソン(6724)、カシオ計算機(6952)、キヤノン(7751)、パナソニック(6752)、ソニー(6758)と比較検討していきます。
アドバンテスト | NEC | セイコー エプソン | カシオ 計算機 | キヤノン | パナソニック | ソニー | |
PER | 19.4 倍 | 16.1 倍 | 12.5 倍 | 13.3 倍 | 16.6 倍 | 10.1 倍 | 13.2 倍 |
PBR | 2.54 倍 | 1.22 倍 | 1.04 倍 | 1.41 倍 | 1.20 倍 | 1.05 倍 | 1.76 倍 |
配当利回 | - % | 1.49% | 3.88% | - % | - % | - % | - % |
ROE | 28.68% | 4.68% | 9.94% | 10.46% | 8.94% | 14.85% | 24.46% |
ROA | 18.71% | 1.36% | 5.17% | 6.19% | 5.16% | 4.72% | 4.37% |
PER
セクターのPERがパナソニックの10.1 倍からアドバンテストの19.4 倍となっています。
日経平均株価の平均PER13~14倍の±4であることから、セクター的には平均値並みであるということができます。
PBR
セクターのPBRがアドバンテストを除いた場合、セイコーエプソンの1.04 倍からソニーの1.76 倍と日経平均株価の平均PBRの2倍以下になっています。
よって、セクター的にPBRは割安であるということができます。
しかし、アドバンテストのRBRは2.54 倍とずば抜けて、買われていることがわかります。
配当利回り水準
配当は未公開or無配当の企業がアドバンテスト、カシオ計算機、キヤノン、パナソニック、ソニーと多数派になっています。
それは業績が急激に悪化していることや為替の推移が読みにくい展開になっていることから生じていると考えられます。
株主優待
株主優待がある企業はソニーのみです。
株主優待の内容は、100株以上の保有でソニーストアオンライン、ソニーストアの各店舗、ソニーショップで利用できるAV商品15%割引、VAIO本体3%割引の割引券です。
決算予測
<<ⅰ.アドバンテスト>>
20年3月期は前期比53.2%減の310億円との見通し。
<<ⅱ.日本電気>>
20年3月期の連結経常利益は前期比61.7%増の650億円への伸びを見込んでいる。
<<ⅲ.セイコーエプソン>>
20年3月期の連結経常利益は前期比18.1%減の590億円に減る見通し。
<<ⅳ.カシオ計算機>>
20年3月期の連結経常利益は前期比3.7%増の310億円への伸びを見込んでいる。
<<ⅴ.キャノン>>
19年の連結税引き前利益を従来予想の3475億円→2950億円(前期は3628億円)に15.1%下方修正。減益率が4.2%減→18.7%減に拡大する見通し。
<<ⅵ.パナソニック>>
20年3月期の連結経常利益は前期比30.4%減の2900億円に落ち込む見通し。
<<ⅶ.ソニー>>
20年3月期の連結経常利益は前期比23.9%減の7700億円に減る見通し。
競合他社比較総合
下方修正や大幅減益が多いセクターの中で、アドバンテストはどこよりも割高で買われすぎの状況であるといえます。
しかし、アドバンテストの20年の減益はメモリ在庫調整の影響による一時的なものと考えられます。
よって、底値圏にある出遅れ銘柄としてアドバンテストは買いであるといえるでしょう。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からアドバンテストの今後の株価推移を分析してきました。
アドバンテストはテクニカル・ファンダメンタル両面から見て「買い」の出遅れ銘柄です。積極的に押しを狙っていきましょう。
■ 投資判断基準:長期的に『買い』
▷以下の点を総合的に勘案し長期的に5,000円(現状2,700円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷19年3月期の連結税引き前利益は前の期比2.7倍の662億円、20年3月期は前期比53.2%減の310億円との見通し。
▷しかし、20年の減益はメモリ在庫調整の影響による一時的なもの。
▷今後は5G通信の商用サービス拡大を契機に、2020年から再び成長軌道入りすると考えられる。
■ 各種指標:
▷ROEが2009年を底としてV字回復中。予想PERは19.4 倍、予想PBRも2.54 倍と割高水準。
▷しかし、割高=人気が高い、良い意味での割高さであると考える。
■ 他社との比較:
▷競合が減益に落ち込む中で今期の予想は減益であるが、2021はV字回復すると予測。
■ 株主還元策の動向:
▷今期88円→92円に増額。
以上、【6857】半導体大手メーカー『アドバンテスト』の今後の株価をファンダメンタル・テクニカルの両面から予想する。…でした。
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