【2802】味の素の株価はなぜ下落している?総合食品メーカーの今後を予想。

味の素(あじのもと)は総合食品メーカーの最大手企業です。

うま味成分の発見から始まった味の素は今では世界一のアミノ酸メーカーとして高品質のアミノ酸の製造を行い、世界中に事業を展開しています。

 

味の素のアミノ酸に関わる技術は高く評価されており、国内外の様々な食品分野で高いシェアを獲得しています。

時価総額は1兆円を超えており、食品メーカーとしては国内トップの企業です。

 

今回はそんな味の素を分析します。

 

■投資判断基準:「様子見」業績は底堅さがあるが停滞気味

▷ 以下の点を踏まえ投資判断は「様子見」。

■ 株価水準:

▷ 2016年2月に高値をつけた後、長期的な下落トレンドに入り現在も上値を抑えられた状態。

▷ 2016年2月高値に比べ現在の株価水準は40%程度低い水準。

■ 業績推移:

▷ 食品分野が稼ぎ頭であり、経常利益ベースでは10年以上黒字を達成。

▷ 近年業績苦戦しており前期決算においても海外グループ会社の減損損失処理に伴い業績見通しを下方修正するなど業績は低迷。

■ 指標関連:

▷ ROE、ROA共に2016年3月期以降下落しており、現在のROEは5%を下回っておりROAは2%程度の水準。

▷ 同業他社のキッコーマンと比べてRO・,ROA共に低く、市場平均と比べても収益性が高いとは言えない。

▷ 現在の水準はPER約20倍、PBR約1.7倍となっており、平均的な水準。

▷ 現在の配当利回りは2%を下回っており、市場平均より少し低いといった水準。

 

味の素とは?

 味の素は1907年に昆布から「うま味」を抽出する研究が開始されたことがはじまりです。

同年に合資会社鈴木製薬所が設立されます。

その後、研究が進み特許の取得も行った後の1909年に味の素が一般販売されます。

翌1910年には台湾、朝鮮に特約店が設置されるなど早くから海外展開がされました。

その後も中国、ニューヨーク、シンガポール、香港と次々と海外に事務所を設立し積極的に海外での事業を行います。

 

1946年には社名を現在の社名である「味の素株式会社」に変更しました。

1949年には株式を上場し、世界各国に事業所や工場を設立するなど世界展開を加速させます。

味の素は「うま味」に着目した独自の技術による高品質な商品が強みのグローバル企業です。

 

味の素の事業

味の素の事業セグメントは4つに分かれています。

それぞれの事業内容や業績について確認していきます。

日本食品事業

日本食品事業は、味の素が100年以上の事業実績をもとに築かれたブランド力を生かした事業で消費者の多種多様なニーズに応じた商品を開発・製造する事業です。

味の素の祖業であるうま味調味料「味の素」や風味調味料「ほんだし」など一般消費者に浸透しているブランド力のある商品を多数取り扱っています。

 

また、最近では調味料類の他に冷凍食品やコーヒー類などの商品も展開している幅広い分野です。

日本食品事業の売上高は3,750億円(前期比97.6%)、事業利益は298億円(前期比76.9%)となっています。

前期比減収減益です。

 

海外食品事業

味の素は創立当初から海外進出に積極的な企業で海外食品事業は同社のセグメントの中でも売上高、事業利益共にトップの事業です。

日本食品事業で扱っている商品の他にも、グローバル展開を生かした現地の生活者の好みに合わせた商品やサービスを提供しています。

海外食品事業の売上高は4,816億円(前期比103.7%)、事業利益は423億円(前期比102%)です。

前期比増収増益となっています。

 

ライフサポート事業

アミノ酸などに関する高い技術力を生かした動物栄養分野や電子材料分野での事業を行うのがライフサポート事業です。

動物栄養分野では一般の飼料では不足しがちなアミノ酸を加えることで家畜の生育を向上させることに成功しています。

また、電子材料分野では味の素などの製造によって得た技術を生かし、半導体パッケージ用基板に使用される「味の素ビルドアップフィルム」を製造しています。

ライフサポート事業の売上高は1,079億円(前期比91%)、事業利益は95億円(前期比118.5%)です。

前期比減収増益となっています。

 

ヘルスケア

ヘルスケア事業は先端バイオ技術を生かしたアミノ酸の生産力やサービス提供力などを強みに素材や原薬、技術を世界中の医薬や化粧品企業などに提供している事業です。

医薬用のアミノ酸や医薬中間体、製薬の製造サービスの他、アスリート向けのサプリメントなどを取扱しています。

ヘルスケア事業の売上高は1,353億円、(前期比112.8%)、事業利益は120億円(前期比128.9%)です。

前期比増収増益となっています。

これら4つの事業セグメントとその他の事業を合わせた味の素全体の売上高は1兆1,274億円(前期比101.1%)、事業利益は926億円(前期比96.8%)と前期比減収増益です。

 

業績の悪化が株価下落の主因

味の素の2007年以降の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は下記のとおりです。

決算期売上高営業利益経常利益当期利益
2007/031,158,51063,80061,58930,229
2008/031,216,57260,52355,73628,229
2009/031,190,37140,82725,926-10,227
2010/031,170,87664,03467,62116,646
2011/031,207,69569,37470,49930,400
2012/031,197,31372,58475,91941,754
2013/031,172,44271,23277,16748,373
2014/03991,33262,54869,54142,795
2015/031,006,63074,51982,80846,495
2016/03 I1,149,42798,77871,292
2017/03 I1,091,19586,68453,065
2018/03 I1,150,20985,44560,741
2019/03 I1,127,48353,14954,20229,698
2020/03予 I1,171,00050,000
味の素の業績推移

経常利益ベースではこの間赤字は出していません。

純利益ベースでは2009年に赤字を出しています。

 

売上高、利益共に2016年3月期に高い業績を出した後、下降していることがわかります。

食品事業の冷凍食品分野で想定より苦戦していることが原因です。

また、海外グループ会社の減損損失なども影響しています。

 

結果として以下のように軟調な株価推移となっています。

 

味の素の株価推移を予想

 

味の素のEPSとBPSの推移

味の素の2007年以降のEPSとBPSです。

決算期EPSBPS
2007/0354.61,108.00
2008/03511,219.00
2009/03-18.47661,067.20
2010/0330.11,099.80
2011/0354.91,108.70
2012/0375.41,104.90
2013/0387.31,159.10
2014/0377.31,092.70
2015/0383.91,221.60
2016/03 I128.71,111.00
2017/03 I95.81,123.20
2018/03 I109.71,170.30
2019/03 I53.61,113.90
2020/03予 I90.3

 

EPSはかなり波がありますが、BPSは安定しています。

ですが、どちらも右肩あがりになっているとは言えません。

ただ、食品業界は不況期でも必ず需要があることから景気敏感株ほど業績が景気に影響されないという傾向があります。

食品株が本領を発揮するのは現在のような株式市場が好調な時期ではなく不況期となります。

食品株などのディフェンシブ銘柄が、景気好調期に他の銘柄と比べて見劣りするのはある意味当たり前であり、投資判断はそういった面も踏まえて考えることが重要です。

 

味の素のROEとROAは低迷

下記は味の素の2007年以降のROEとROAです。

決算期ROEROA
2007/034.98%2.85%
2008/034.23%2.56%
2009/03-1.75%-0.97%
2010/032.76%1.54%
2011/035.00%2.82%
2012/036.89%3.81%
2013/037.61%4.43%
2014/037.15%3.92%
2015/036.94%3.70%
2016/03 I11.71%5.60%
2017/03 I8.62%3.93%
2018/03 I9.47%4.26%
2019/03 I4.86%2.13%
2020/03予 I8.19%3.59%

 

味の素のROEとROA

 

ROEは2016年に10%を超えましたが、その後下落し現在は5%を下回っています。

ROAについても2%代となっており高い水準とは言えません。

同業他社であるキッコーマンのROEは10%近く、ROAも7%を超えていますので同業他社比較でも優位性はありません。

 

味の素のPERとPBRの推移

味の素のPER及びPBRの過去3年間の推移は上記のとおりです。

【味の素のPER】

味の素の予想PER

 

【味の素のPBR】

味の素のPBR

 

PER、PBRともに平均値より低い水準となっています。

この間は株価も下落基調にあることから当然と言えば当然です。

過去平均よりは低いと言っても現在の株価水準でPERは21倍程度、PBRは1.7倍程度で割安とまでは言えない水準となっています。

 

味の素の配当利回り

味の素の過去3年間の配当利回りの推移です。

徐々に上昇していますが、それでも配当利回りは2%未満となっており、配当が株価下落の歯止めになることは期待できません。

味の素の配当利回り

 

まとめ-味の素の投資判断-

味の素の株価は2019年6月21日現在1,842円となっています。

PER,PBRともに市場平均より若干高い程度の水準であり同業他社と比較しても割安感はありません。

 

業績については、黒字はしっかりと確保していますがここ数年低迷しています。

海外事業分野が大きいので、海外での事業展開が業績を大きく左右します。

 

味の素は、食品事業が主な事業でありディフェンシブ銘柄の一つです。

ただ、過去の業績はそれほど安定していません。

また、ROE、ROA、配当利回りを見ても大口投資家が積極的に買ってくる可能性は低いと思われます。

 

これらの状況を踏まえ投資判断は、「保留」とします。

 

 

■投資判断基準:「様子見」業績は底堅さがあるが停滞気味

▷ 以下の点を踏まえ投資判断は「様子見」。

■ 株価水準:

▷ 2016年2月に高値をつけた後、長期的な下落トレンドに入り現在も上値を抑えられた状態。

▷ 2016年2月高値に比べ現在の株価水準は40%程度低い水準。

■ 業績推移:

▷ 食品分野が稼ぎ頭であり、経常利益ベースでは10年以上黒字を達成。

▷ 近年業績苦戦しており前期決算においても海外グループ会社の減損損失処理に伴い業績見通しを下方修正するなど業績は低迷。

■ 指標関連:

▷ ROE、ROA共に2016年3月期以降下落しており、現在のROEは5%を下回っておりROAは2%程度の水準。

▷ 同業他社のキッコーマンと比べてRO・,ROA共に低く、市場平均と比べても収益性が高いとは言えない。

▷ 現在の水準はPER約20倍、PBR約1.7倍となっており、平均的な水準。

▷ 現在の配当利回りは2%を下回っており、市場平均より少し低いといった水準。

 

 

以上、【2802】味の素の株価はなぜ下落している?総合食品メーカーの今後を予想。…でした。

 

 

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2019.09.11



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