「銀行」は私たちの生活の中でも非常に身近な存在ですよね。
株式投資をはじめたばかりの人には、「株式銘柄」としても高配当利回りです。
そのため、インカムゲインの投資先として投資がしやすい先でもあります。

本日は今後の銀行株の見通しについてお伝えした上で、代表的な銘柄について紐解いていきたいと思います。
本記事の要旨は以下となっています。
■:今後ますます厳しくなる地方銀行
■:メガバンクは収益の多角化と海外比率の上昇で安泰
■:銀行注目銘柄の紹介
Contents
利鞘の縮小で経営悪化が必至の地銀
ご存知の方も多いとは思いますが、地域銀行の収益は悪化の一途をたどっています。
金融庁のデータによると2016年時点で営業利益が赤字の銀行は50社を超えてきています。


伝統的な銀行のビジネスは非常に単純なものです。
我々国民から低い預金利率で預け入れされた預金を企業に高い利子率で貸し付けて利鞘を得るというものでした。
企業に貸し付けることができない分については国債等の安全資産で運用して利益を得ていました。


貸出収益は減少の一途をたどっている
金融庁によると地銀の貸出収支は以下の通り右肩下がりとなっています。




勿論人口減少の我が国の資金需要の減少という理由もありますが、企業数自体の減少も要因としてあります。
更に追い討ちをかけるように金融緩和による低金利下において利鞘自体も減少しています。
貸出ビジネスは「貸出量×利鞘」ですので両項目ともに下落している現状では厳しい環境と言わざるを得ません。
今後2030年までに貸出残高は減少し更に地銀収益は減少していくことが予想されています。


目次
国債利回りは0%近辺で運用益が出ない状況
国債の利回りが高かった時は貸出で余った資金を国債で運用することで投資リターンを安全に得ていました。
しかし、日銀の金融緩和によって10年物の国債の利回りは0%で固定されています。
今まで銀行が無リスクで安定的に獲得できていた収入が潰えたことは地銀収益に重くのしかかっているのです。
メガバンクは多角化と海外収益基盤の獲得で期待がもてる
地銀とは打って変わってメガバンクは近年高収益を維持しています。
貸出収益以外の収益手段の確保
以下はメガバンクトップの三菱UFJグループの営業利益の内訳です。


R&C | 伝統的な貸出ビジネス |
JCIB | グローバル化が進む日系大企業を対象としたサービス。貸出や決済は勿論のこととして外国為替などのサービス、M&Aや不動産など企業価値向上に資する提案とサポートを行うサービス。 |
GCIB | JCIBの海外企業バージョン |
GCB | 既存の出資先であるMUFGユニオンバンクやアユタヤ銀行を通じて金融サービスの提供 |
受財 | 資産運用や資産管理のノウハウを活用したコンサルティング業務 |
市場 | 各種金融アセットのトレーディング等 |
稼ぎ出す手段を多角化したことで伝統的な銀行の貸出ビジネスの収益比率を引き下げています。
海外収益比率の増加
メガバンクは大規模な資本で海外の金融グループを買収し海外基盤を形成してきています。
三菱UFJフィナンシャルグループの海外の貸出金の総額は40兆円を超えてきています。
海外では成長速度が高く金利水準が高い国も存在しています。
海外の平均預貸金利回り差は1.5%程度あるため、まだまだ金利収入が見込めるのです。


出遅れているメガバンクの株価水準
今後もまだまだ収益の多角化とグローバル化でメガバンクの収益の拡大は見込めることは述べてきました。




以下は三菱UFJFG(8306)と三井住友FG(8316)とみずほFG(8411)と日経平均株価の推移の比較です。


過去10年間で一番有望な三菱UFJFGですら日経平均に比べて上昇率は半分以下に止まっています。
3メガのPERは8倍台以下となっており今後に期待が持てる銘柄群となっています。
「三菱UFJフィナンシャルグループ」(三菱東京UFJ銀行・MUFG Bank)
三菱UFJ銀行を傘下に持つ「三菱UFJフィナンシャルグループ」。
長期的にはグローバルなマクロ環境の影響を受け、業績が伸び悩んでいることや国内でのコストカットの行方を確認しておきたいことからニュートラルです。
しかし短期的には米中貿易戦争の影響などからかなり株価が下がっております。
配当利回りも過去稀に見る高水準であることから買い推奨です。
■ 投資判断基準:短期で『買い』
以下の点から2020年3月期に600円程度が妥当な水準と予想し、短期的に割安・高配当利回りで買い推奨。
■ 業績見通し:
▷2019年3月期は堅調に推移しているが、引き続き収益環境は良くなく、国内のコストカット等が上手くいくかどうかに注目。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ IMF(国際通貨基金)が金融機関の高収益の水準としている8%を下回っており低めではあるが、国内メガバンクとしては平均点レベル。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷予想PERは現状株価で7〜8倍、PBR0.4〜0.5倍とかなり割安な状況。
■ 他社との比較:
▷業界他社と比較するとグローバルにビジネス展開して収益を多角化している、一方でさまざまなマクロ環境の悪化の影響を受け、収益が伸び悩んでいる。
■ 事業の傾向・特徴:
▷本部人員を半数に削減、グループ全体で1万人の削減などコストカットこ方針を発表しており、どの程度実行できるかに注目。
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「三井住友フィナンシャルグループ」(三井住友銀行・SMBC)
三井住友銀行を傘下に持つ「三井住友フィナンシャルグループ」。
購入判断としては、短期的には日本銀行のマイナス金利政策などが続いており、収益環境はそこまでよくありません。
同じく日本銀行が質的量的緩和の継続によりインフレ(物価上昇)率2%を目標にしていることから、着実に長期金利が上がってきており長期目線では買い推奨です。
そもそもメガバンクは、個人投資家の保有も多いため、値動きも安定しており、長期保有しやすい銘柄として人気です。
■ 投資判断基準:短期、中期で『買い』
以下の点から2020年3月期に4,500円〜5,000円(現状3,739円)程度が妥当な水準と予想し、短期的にも割安で、中長期では高利回り・安定で買い推奨。
■ 業績見通し:
▷ 2019年3月期は堅調に推移しているが、収益環境は良い状況ではなく注視は必要。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ IMF(国際通貨基金)が金融機関の高収益の水準としている8%を下回っており低めではあるが、国内メガバンクのなかでは高め。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷ 予想PERは現状株価で7〜8倍、PBR0.5倍とかなり割安な状況。
■ 他社との比較:
▷ 業界他社と比較すると国内リテールビジネスにしっかりと取り組んでおり、収益の堅調な伸びを期待できる。
■ 事業の傾向・特徴:
▷ 経費率が60%程度とメガバンクの中では効率的に収益を上げられる体質にあり、筋肉質な経営ができている。
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みずほフィナンシャルグループ(みずほ銀行・MIZUHO)
「みずほフィナンシャルグループ」は3メガバンクの一つ。
第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合することで誕生した銀行持株会社です。
ファンダメンタルとテクニカル両面からみずほフィナンシャルグループの今後の株価推移を分析しています。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、みずほフィナンシャルグループは現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結最終利益は前の期比83.3%減の965億円、20年3月期は前期比4.9倍の4700億円にV字回復する見通しではあるが、V字回復する根拠に欠けること。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは8.2 倍、予想PBRは0.44倍で割安水準であるが、これは不人気からくる悪い割安感であると判断。
■ 競合他社比較:
▷ 銀行セクター全体の業績がマイナス金利によって芳しくないこと。
■ テクニカル的な判断:
▶︎長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
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東証屈指の高配当「あおぞら銀行」
「あおぞら銀行」は東証屈指の高配当で個人に人気の銀行銘柄です。
また、充実した株主優待も人気の秘訣になっています。
ファンダメンタルとテクニカル両面から、あおぞら銀行の今後の株価推移を分析しています。
■ 投資判断基準:年内様子見
以下の点を総合的に勘案し「売り」と判断。
■ テクニカルからの判断
▷ Wトップを形成し、直近天井を打っていること。
▷ トレンドブレイクを起こしており、売りトレンドに転換していること。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比17.6%減の477億円、しかし20年3月期は前期比6.7%増の510億円に伸びる見通し。
■ 各種指標
▷ ROEが2009年を底としてV字回復中。
▷ 予想PBRは8.4倍、予想PBRも0.69倍と割安水準。
■ 他社との比較:
▷ 競合と比較し、高配当で業績もよい。
■ 株主還元策の動向:
▷ 2円増配で株主還元に積極的。
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データや指標から銀行業界の株を比較
代表的な銘柄については上記で紹介してきました。
銀行と一言にいっても日本には数多くの銀行が存在しています。以下ではデータや指標から銀行銘柄を一覧にしています。
投資する際の参考にしていただければと思います。


※2019年7〜9月分析
銘柄名 | 三菱UFJFG | 三井住友FG | みずほFG | りそなH | 新生銀行 | ふくおかFG |
時価総額 | 71,947 億円 | 53,779 億円 | 40,069 億円 | 10,479 億円 | 4,520 億円 | 3,863 億円 |
予想PER | 8.9倍 | 7.7 倍 | 8.5 倍 | 6.5 倍 | - 倍 | 2.2 倍 |
PBR | 0.42 倍 | 0.50 倍 | 0.46 倍 | 0.49 倍 | 0.48 倍 | 0.45 倍 |
予想配当利回り | 4.75% | 4.68% | 4.75% | 4.66% | - % | 4.21% |
ROE | 5.42% | 6.87% | 1.08% | 8.35% | 5.99% | 6.64% |
ROA | 0.28% | 0.36% | 0.05% | 0.32% | 0.55% | 0.25% |
自己資本比率 | 5.20% | 5.30% | 4.30% | 3.60% | 9.30% | 3.70% |
銘柄名 | 千葉銀行 | あおぞら銀 | 静岡銀行 | コンコルディアF | 三井住友TH | |
時価総額 | 4,648 億円 | 3,130 億円 | 4,956 億円 | 5,182 億円 | 15,368 億円 | |
予想PER | 8.3 倍 | 8.5 倍 | 9.3 倍 | 9.3 倍 | 8.3 倍 | |
PBR | 0.44 倍 | 0.69 倍 | 0.47 倍 | 0.44 倍 | 0.56 倍 | |
予想配当利回り | 2.89% | 5.90% | 2.69% | 3.85% | 3.81% | |
ROE | 5.33% | 8.17% | 4.67% | 4.71% | 6.59% | |
ROA | 0.34% | 0.71% | 0.40% | 0.29% | 0.28% | |
自己資本比率 | 6.30% | 8.50% | 8.50% | 6.00% | 4.70% |
メガバンクは期待がモテる一方で割安度が増しており魅力的な投資対象とみることができるでしょう。
コラム:オリックスは日経平均銘柄ではないが総合金融企業
高配当で有名なオリックスも実は多角的な金融企業です。
【オリックスの事業分野】
- 原点はリースだが経験をもとに多角的な金融業を営んでいる
- クレジットリスク、事業リスク、マーケットリスクを取っているコングロマリッド
【業績推移と見通し】
- コロナの影響で全体的に収益は落ち込んでいる
- 株式市場や不動産市場は堅調さ取り戻しており急回復が見込まれる
【配当金・自社株買・優待】
- 配当利回りは5.5%で高配当で10年以上増配している。
- 財務健全で増配を今後も十分可能
- 配当だけでなく自社株買も行い株主還元を積極的におこなっている
以下で詳しくお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
まとめ
このコンテンツでは、銀行株の見通しについて、業績などの分析を基に論じてきました。
株の銘柄選択に役立ててください。
以上、【2019年・銀行株見通し】高水準の配当利回り!メガバンクをはじめとした銀行株式銘柄を分析&株価予想。…でした。