この記事では、第一生命の株価を、株価指標や業績の推移などを使って検証していきます。
日本国内の生命保険会社では「相互会社」の形態を取っている会社がほとんどです。
一方、第一生命は平成22年に「株式会社」に転換したことで経営の自由度が格段に上がり、海外企業のM&Aなどを積極的に進めながら急成長しています。
まずは第一生命の特徴や、事業戦略などから見て行きましょう。
■ 投資判断基準:長期「買い」
▷ 業績は堅調で割安水準であることから長期的に『買い』推奨。
■ 業績見通し:
▷ 株式会社の形態をとり業績拡大が順調に進展している。前期の一過性利益の反動で今期は業績が落ち込むが基調は堅調。
■ 他社との比較:
▷ 同じく株式会社の形態をとっている『かんぽ生命』と比較して割安。ROEは相対的に高いが絶対値としては低い。
Contents
第一生命はどんな会社??
第一生命は、3つのエンジンを軸に事業展開をしています。
国内生命保険事業
国内事業では、さまざまなお客様のニーズに対応できるよう、第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命の3ブランド体制で展開しています。
国内の生命保険業界ではトップ水準のシェアを維持しており、中でも窓口市場シェアは1位、第三分野市場でも2位を獲得しています。
海外生命保険事業
海外事業では、安定した成長が見込める米国や豪州などの先進国と、高い成長が見込めるアジア圏などの新興国へのバランスのよい展開が特徴です。
特に米国では過去56件もの買収実績があり、豪州ではトップシェア、ベトナムでも3位の市場シェアを誇ります。
資産運用・アセットマネジメント事業
第一生命は資産運用部門でも業界内での存在感は非常に大きなものになっています。
アセットマネジメント2社の経営統合など、グループ内外での様々な再編を進めています。
アジアナンバーワンの受託資産額、米国、欧州でもそれぞれ10兆円以上の受託資産額を誇ります。
株式会社化で積極的な海外進出
第一生命の一番の特徴はやはり先述の通り「株式会社」として上場しているというところでしょう。
日本生命のような「相互会社」では、会社は保険加入者のものですが、「株式会社」は株主がオーナーです。
国内の保険業界の現状として、少子高齢化に伴い保険料収入の増加は頭打ち傾向にあります。
そのため、今後は成長市場である海外への進出が急務となっています。
海外進出をする際は、現地の保険会社との業務提携やM&Aなどが主な手段となります。
相互会社の場合は保険会社同士でしか提携できない、保険加入者の同意を得るのが難しいなどの難点があります。
その点株式会社の場合はそのような縛りがなく、さらに株式を上場している第一生命の場合は資金調達が容易となっています。
積極的な事業拡大をすることが可能なのです。
日本生命の業績推移
外貨建て保険が想定以上に伸びたことや、大ヒットしている認知症保険の好調により国内の保険料収入は増加しています。
決算期 | 売上高 | 経常利益 | 当期利益 |
2010/03 | 5,294,004 | 188,211 | 55,665 |
2011/03 | 4,571,556 | 81,199 | 19,139 |
2012/03 | 4,931,781 | 225,920 | 20,357 |
2013/03 | 5,283,989 | 157,294 | 32,427 |
2014/03 | 6,044,955 | 304,750 | 77,931 |
2015/03 | 7,252,242 | 406,842 | 142,476 |
2016/03 | 7,333,947 | 418,166 | 178,515 |
2017/03 | 6,456,796 | 425,320 | 231,286 |
2018/03 | 7,037,827 | 471,994 | 363,928 |
2019/03 | 7,184,093 | 432,945 | 225,035 |
2020/03予 | 6,931,000 | 417,000 | 226,000 |

20年3月期も増加の予想です。
また、米国子会社のプロテクティブによるグレートウェストの買収により売上・利益ともに上乗せされ事業は順調で、増配余地も考えられます。
しかし、前期に米国の法人減税に伴うプロテクティブの一時的利益が901億円、ジャナス・キャピタルとヘンダーソン・グループの合併による株式交換益が335億円を計上していたために今期は減益となっています。
2020年3月期は第一フロンティア生命での販売減少から減収にはなるものの当期純利益では増益予想となっています。
現在の株価が割安なのか指標を用いて評価
それでは現在の第一生命の株価が割安なのかを指標を用いて見ていきたいと思います。
ROEとROAは低い水準
ROEやROAは会社の資本をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているかを測る指標です。
以下は第一生命のROEとROAの推移です。
決算期 | ROE | ROA |
2010/03 | 5.78% | 0.17% |
2011/03 | 2.69% | 0.06% |
2012/03 | 2.10% | 0.06% |
2013/03 | 1.97% | 0.09% |
2014/03 | 4.00% | 0.21% |
2015/03 | 3.97% | 0.29% |
2016/03 | 6.09% | 0.36% |
2017/03 | 7.38% | 0.44% |
2018/03 | 9.71% | 0.68% |
2019/03 | 6.06% | 0.40% |
2020/03予 | 6.09% | 0.40% |

直近のROEは6%台、ROAでは1%を割り込む水準が続いています。
かんぽ生命と比較するとやや高いものの、国内の上場企業ではROEが8%程度、ROAは2%程度が多くなっており比較的低い水準が続いています。
PERとPBRは割安水準
PERやPBRは、現在の株価が割安か割高かを見るために使う指標です。
まずPERは今の株価が「一株当たり純利益(EPS)」の何倍かを示しており日本企業は15倍程度の会社が多くなっています。
第一生命のPERは8倍前後となっており、現在の株価は比較的割安な水準にあります。
なお、PERは業種によって適正水準が大きくことなるため、日本企業全体の平均の他に業種平均を見て検討する必要があります。
生命保険業界は上場している会社が少ないので比較対象も少ないですが、たとえばかんぽ生命は直近12倍台で推移しており、第一生命のほうがかなり割安な水準にあります。

次にPBRは、その会社の純資産に対して今の株価が何倍かを表しています。
PBRが1倍であれば、株価と会社の資産が同じ値段になっている状態です。
1倍を割っているとその会社の資産に対して株価が割安に評価されているとみることができます。
第一生命のPBRは0.5倍台で推移しています。
PBRが割安となっていても、赤字が続くなど今後資産が減少していく会社については注意が必要です。
しかし第一生命に関してはBPS(一株当たり純資産)が増加予想となっています。
現在の株価は純資産に対して割安であると評価できるでしょう。

株価はEPS×PERで表します。
20年3月期のEPS予想は197.6円となっています。
また、直近3年間のPERは10.2倍ほどとなっています。これらを掛け合わせると2015.5円となります。
直近の株価を見てみると、1630~1640円近辺で推移しており20年3月期の業績に対してはまだ割安な水準と言えます。
ただし、保険会社は保険料収入だけでなく、運用により生み出される利益が業績を大きく左右します。
そのため、株価が株式市場や為替市場全体の影響を受けやすいのも特徴です。
足元の相場は、米中貿易摩擦や中東情勢、欧米諸国の金融政策など、様々な要因から不安定な動きになっています。
長期的な目線に立って投資するにはいいでしょう。
配当利回り
株式投資をする際は株価の値上がりだけではなく、長期保有することで配当による収入を得るということも大きな魅力のひとつです。
配当利回りは1株当たりの年間配当金を現在の株価で割ることで求められ、¥日本の企業では2%弱のところが多くなっています。

第一生命は現在の株価水準であれば配当利回りが3.7%台となり、かなり魅力的な水準と言えます。
また、利益のうち、どれくらい配当の支払いに回しているかを表す配当性向という数字があります。
配当性向が高い企業は、株主還元を積極的に行っていると見ることができる一方、
すでにかなりの割合を配当支払いに使ってしまっていて、増配や自社株買いなど、さらなる株主還元を行う余力がない可能性もあります。
また、現在の利益に対して配当を払い過ぎており、業績が傾いてくると減配してしまうリスクもあります。
第一生命の場合、比較的高い配当利回りにも拘わらず、20年3月期の配当性向予想が31.4%となっています。
その為、すぐに減配してしまうという可能性は低いと言えそうです。
第一生命保険の競合他社との比較
先述の通り、生命保険会社のほとんどは相互会社の形態を取っています。
その為、上場企業は第一生命とかんぽ生命、ライフネット生命の3社となっています。
ライフネット生命はインターネット専業の生命保険会社で少し業態が異なるため、
ここではかんぽ生命との比較をしていきます。
第一生命 | かんぽ生命 | |
予想PER | 8.3 倍 | 12.46 倍 |
PBR | 0.51 倍 | 0.58 倍 |
予想配当利回り | 3.79% | 3.69% |
ROE | 6.06% | 4.4% |
ROA | 0.40% | 0.3% |
自己資本比率 | 6.60% | 2.5% |
ROEやROAはどちらも低いものの、第一生命の方が高くなっています。
配当利回りに関してはどちらもほとんど差がありません。PBRもほぼ互角ですね。
しかし、PERはかんぽ生命が12倍台であるのに対し、第一生命は8倍台となっています。
第一生命は『かんぽ生命』比較でも、かなり割安な水準で放置されているのが現状です。
まとめ
第一生命は、国内の保険事業が人口減少などにより今後大幅な成長が見込みにくい状況です。
株式会社として経営や資金調達の自由度の高い第一生命は、今後も海外事業を中心に成長を続け、業界内でも大きな存在感を保ち続けるでしょう。
また、株価の水準も、業績や各種指標、他社との比較などから検討し割安となっています。
魅力的な配当利回りなども考えると、十分に投資に値する銘柄であると言えます。
ただし、メーカーなどに比べると、運用部門の稼ぎ出す利益が業績全体に与える影響が大きいのも生命保険会社の特徴です。
投資するのであれば、中長期でじっくり持つというスタンスのもと、相場全体の動きを注視しながら、焦らず買っていくことが大切です。
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