「投資」は資産を増やすためにするものです。
しかし「増やす」という点にばかり目を向けていると、思わぬ損失を招くことがあります。
例えば、急成長している企業が、一時的な不況を耐えることができず倒産してしまった・・・ということが、投資の世界では珍しくありません。

そのような一時的な株価暴落などで、資産を全て失ってしまっては投資を続けることはできません。
しかし、損失を限定することができれば、一時的に資産が減少してもその後立て直すことが可能です。
今回は、投資で大損失を被らないために重要な企業の財務健全性を測る指標「DEレシオ」について紹介します。
投資で上手に、将来に向けて資産を堅実に築きたい方はぜひ参考にしてくみてださい。
目次
Contents
DEレシオとは?
DEレシオとは「Debt Equity Ratio」を意味します。

レシオは「倍率」や「割合」を意味します。
Debt Equity Ratioは「資本の何倍、負債があるのか?」を示す指標となります。
つまり、有利子負債が自己資本の何倍あるかという指標になります。

DEレシオの計算式は以下のとおりです。
DEレシオ=有利子負債 ÷ 自己資本
DEレシオは1倍であれば負債額と資本額は同じとなります。
1倍を超えると資本より負債が多いことを意味します。
一般的にはDEレシオが低ければ低いほど財務健全性は高くなります。
DEレシオが高ければ高いほど、借金が多く、財務健全性が低いと判断することが可能です。

急成長しており、株価が上昇している企業でも、資本に比べて高額の負債を抱えている場合は危険です。
事業が景気変動など外部的な要因で一時的に落ち込んだだけであっても、多額の負債の返済ができずに倒産してしまうこともあり得ます。
投資対象を選定する際には業績が好調であっても、財務状況をしっかりと確認するようにしましょう。
その際に有効な指標となるのがDEレシオです。
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DEレシオの目安
DEレシオの目安としてよく言われているのが1倍です。
DEレシオが1倍であれば、有利子負債額と自己資本額が同じということです。
DEレシオが1倍を下回っていれば財務健全性が高く、1倍を超えているようだと有利子負債が多いという見方ができます。


しかし、不動産業は高額な物件を多数保有しているため、借入金が他業種より多いという傾向があります。
また、IT関係企業は資産をそれほど必要としないため、負債が少ないことが多いです。
このように負債の割合は、業種によって異なりますので、比較をする際には注意する必要があります。
自己資本と自己資本比率
そもそも自己資本とは、返済義務のない資金を指します。
貸借対照表の右下の部分に記されている純資産に、概ね近いものとらえてもらえればと思います。
計算式は、以下の通りです。
自己資本 = 株主からの出資分 + 利益の蓄積分
自己資本に対して他人資本という言葉もあります。
他人資本とは借り入れなどによる資産のことであり、貸借対照表の負債合計にあたります。
「自己資本比率」は総資産に占める自己資本の割合を示します。


計算式は以下のとおりです。
自己資本比率=自己資本 ÷ 総資産
自己資本比率は数値が高ければ高いほど財務健全性が高いとされています。
安定企業を見分けるひとつの指標としても使われます。
また、自己資本比率は、計算を行わずとも、会社四季報を使って調べることもできます。
比率によって企業の評価は変わってきます。
しかし、業種によって自己資本比率の割合は異なるため、一概に目安を提示することはできません。
一般的には70%以上が理想的といわれています。
30~40%以上なら安定した企業、10%以下なら経営が危ない可能性がある企業とされています。
そして、マイナスになると赤字経営になる可能性が大きくなります。
しかし、自己資本比率が100%だからといって、安心経営というわけではありません。
なぜなら、信用が無いために借金ができない状況になり、結果的に自己資本比率が高くなっている場合があるからです。
分析を行う際は、なぜ自己資本比率が高くなっているのかも予測してみましょう。


自己資本比率が高いことによるメリットとしては、以下のことが挙げられます。
- 銀行からの借入金に依存しない経営
- 銀行から信用されやすい
- 取引先企業からも信用される
どれも資金面での信用が高まるといった見解から、取引もスムーズに進めることができるというものです。
また、自己資本比率を確認することで企業の安定性を確認できるため、転職する際の目安とすることもできます。
自己資本比率は高くも低くもなる
上記では自己資本や自己資本比率、それが高いことのメリットなどについて解説しました。
企業の安定性を計ることができる自己資本比率ですが、その数字は高くなったり低くなったりします。
ここでは自己資本比率の高め方や、下がる理由ついて解説します。
自己資本比率を高める方法には大きく2つあり、それが以下のとおりです。
- 自己資本を増やす
- 他人資本を減らす
自己資本を増やすというのは、増資を行って資金を集めることや、利益を出すことによって黒字経営をすることを指します。
他人資本を減らすというのは、借入金を返済することを指します。
自己資本を増やし、他人資本を減らすことで自己資本比率は上がるのです。
しかし、自己資本比率の低下は、すべて悪いこととは限りません。
自己資本比率の低下は借入金の増加を意味しますが、自己資金だけでは賄えないほどの投資であれば、そのリターンも大きくなるためです。
自己資本比率が低い場合には、なぜ低くなっているのかを予想してから判断することが大切です。
自己資本比率マイナスの意味
企業の経営では、自己資本比率がマイナスになる場合があります。
それは債務超過が起きている場合であり、大企業であっても直面する可能性はあります。
実際に「東芝」では、2017年に自己資本比率▲13%を記録しています。
同様に、居酒屋チェーンを展開するワタミも客足が遠のき、自己資本比率を大きく下げたときがありました。
しかし、その直後からV字回復を果たしています。
ワタミが自己資本比率を回復させた方法とは、介護事業の売却です。
ワタミが手がけていた介護事業を損保ジャパンに売却し、それによって得られた資金を借入金の返済に充てました。
そのため、自己資本比率の回復ができたのです。
しかし、事業売却による利益は一時的なもののため、何もしなければ再度落ち込んでしまいます。
今後のワタミでは、経営に関するさまざまな改革が行われていくことでしょう。
余談ですが、上記のような、株式投資で重要な指標を過去の企業事例から解説してくれる「お金の学校」に通うこともスタンダードになってきました。
株式投資を学び取引をしていく上では、やはり具体例を頭に入れ、角度の高い投資判断ができた方が間違いなく良いです。
株式投資を通じて資産形成を考えている人は、「お金の学校」で経済の基礎、歴史、投資手法など網羅的に学べます。
現代におけるとても良い一つの選択肢となっていますので、検討してみましょう。
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自己資本比率とDEレシオ
DEレシオと同様に企業の財務健全性を測る指標としてよく使われているのが自己資本比率です。
自己資本比率とDEレシオは両方とも財務健全性を測る指標ですが違いがあります。
それは、DEレシオは有利子負債に着目しているという点です。
有利子負債とは言葉のとおり利子が有る負債のことです。
金融機関からの借入金や社債など利子が発生する負債を意味します。
負債には利子が発生しない買掛金や未払金といったものがあります。
自己資本比率は総資産を用いて計算しますがDEレシオでは有利子負債のみを加味します。
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ネットDEレシオとは?
DEレシオにはネットDEレシオという、より負債を厳密化した指標があります。
これは、有利子負債から現預金を除いた金額と自己資本を比べます。


計算式にすると以下のとおりです。
ネットDEレシオ=(有利子負債―現預金)÷自己資本


「ネット」とは実質を意味します。
有利子負債が100億円あったとしても、現金を100億円保有していればすぐにでも負債を全額返済することが可能です。
財務的には実質的に無借金の状態です。
豊富な現預金を有している企業も多く、現預金が多いほど財務健全性は高まります。
DEレシオの短所は多額の現預金を保有している企業であっても有利子負債が多ければDEレシオは高くなってしまうという点です。
その点をカバーするために、ネットDEレシオは、現預金を含めた実質的な負債をもとに計算されました。
ただし、いくら多額の現預金を保有しているから実質無借金といっても実際に有利子負債を抱えている限り利子は発生します。
現預金を効率的に活用できているかをしっかりとチェックする必要があります。
そのため、「有利子負債―現預金」を計算対象とします。
多額の借入を行っても借入金を現預金として保有している限りネットDEレシオはほとんど悪化しません。
しかし、借入金を経営に有効活用できていないのであれば財務基盤は悪化していきます。
財務健全性を測る指標は、DEレシオ、ネットDEレシオ、自己資本比率と複数あります。
しかし、それぞれに特徴があり、短所もありますので、それぞれを組み合わせて分析を行うことが重要です。
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〜コラム〜DEレシオと自己資本比率の確認方法
では、「実際にDEレシオや自己資本比率をどのように確認するのか?」という点について楽天証券を例に紹介します。


まずは楽天証券にログインして銘柄検索欄で銘柄を入力します。
今回は「三井物産」を例にお伝えしていきたいと思います。
楽天証券の検索欄で『三井物産』と入力して、下の欄の三井物産をクリックします。


次の画面で『指標』をクリックすると様々なファンダメンタル指標が一覧形式で閲覧することができます。
その中にDEレシオや自己資本比率を確認することが出来ます。


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DEレシオの改善策
DEレシオを改善させるには大きく2つの方法があります。
- 分子の有利子負債を減らす
- 分母の自己資本を増やす
DEレシオの計算式は有利子負債÷自己資本ですので分子を減らすか分母を増やすことで数値は低くなります。
当然借入金などを返済して有利子負債を減らせばDEレシオは改善されます。
その他にも、利益が積みあがっていけば自己資本は増えます。
DEレシオは低下しますし、増資によって自己資本を増加させることでもDEレシオを低下させることが可能です。
いずれにしろ、DEレシオだけにとらわれずに、効率的な経営ができているか合わせて確認することが重要になります。
財務基盤は良くなったが、収益力は落ちたという事態になっては投資家には評価されません。
さて、今回はDEレシオを取り上げていますが、優良株を見極めるための指標は多々存在します。
また、どの指標がどのような経済情勢、市場状況で重要かどうかは、時勢に応じて変化します。
トレンドに応じた指標の選ぶ方、株の買い時などを学ぶことは非常に重要です。
近年では、実績のある現役の投資家がわかりやすい言葉で解説するセミナーが増えてきました。
そのようなセミナーに一度参加してみて、効率よく学び、株式投資の知識を効率的に、短時間で学んでみるのも良いと思います。
以下は編集部おすすめの株式投資含む資産運用セミナーを一覧にしたコンテンツになりますので、参考にしてみてくださいね。


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まとめ
今回は企業の財務健全性を測る指標であるDEレシオについて、指標の意味と活用方法などを紹介しました。
最後に重要点をまとめますと、以下の5点があげられます。
- DEレシオは有利子負債を自己資本で割った数値で、数値が低いほど財務健全性は高い
- 自己資本比率との大きな違いは単なる負債ではなく有利子負債を重視しているという点
- 有利子負債とは利子が発生する借入金や社債などの負債のこと
- ネットDEレシオとは有利子負債から現預金を除いて自己資本を割ったもの
- DEレシオ、ネットDEレシオどちらも特徴があり組み合わせて分析することが重要
DEレシオは企業の財務を分析する上でよく使用されます。
分析する際は、財務三表も分析を行い、より確実な投資を行うようにしましょう。
株式投資などに興味がある方は、ぜひこのコンテンツを参考に、DEレシオを用いて企業分析を行ってみてください。
また、株だけでなく経済やそもそものお金の本質を学べる書籍や株式投資セミナーなどを以下でまとめていますので、勉強に役立ててくださいね。
情報を積極的に獲得して、自身の投資に生かしていきましょう。
以上、【DEレシオ・ネットDEレシオとは?】目安や自己資本比率との違いを含めてわかりやすく解説!…でした。