「電通」は日本最大手の広告代理店。
2020年には電通グループに社名を変更し、「純粋持株会社」体制へ移行する予定になっています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から、電通の今後の株価推移を分析していきます。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、電通は現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 18年12月期の連結最終利益は前の期比14.4%減の903億円。
▷ 19年12月期も前期比32.0%減の614億円に落ち込む見通しであり、業績に回復の兆しを感じることができないこと。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは17 倍と割高、予想PBRは0.98倍で割安水準であるが、業績次第でさらに割高になると考えられること。
■ 競合他社比較:
▷ 2期連続最高益の楽天のほうが投資対象として安心できること。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
Contents
広告界のガリバー『電通』とは?
ここでは日本最大手の広告代理店の電通の業務内容を見ていきたいと思います。
①:マーケティング
- 統合マーケティング
- PDCAマネジメント
- マーケティング・システム・デザイン
- ブランドコンサルティング/CI・VI
- ビジネスデザイン
②:デジタルマーケティング
- マーケティングインテリジェンスサービス
- デジタル運用型広告サービス
- ダイレクトマーケティングサービス
- システムソリューションサービス
- データソリューションサービス
- ソーシャルマーケティングサービス
③:クリエーティブ
電通ではおよそ900品のクリエーターが在籍しています。
アイデア、メディア、人材を自由自在に組み合わせて、最適なソリューションを提案しています。
④:プロモーション
- 体験価値ブランディング
- 購買行動データ/モデル
- チャネル・ソリューション
- デジタル・アクティベーション
⑤:メディア
- メディア・プランニング
- メディア・バイイング
- インタラクティブメディア
- メディアとの新ビジネス開発
- オーディエンス・インサイト開発
- プライベート・マーケット・プレイス
⑥:コンテンツ
- スポーツ・ビジネス
- エンタテインメント・コンテンツ
⑦:PR
- 戦略PR
- クライシス・コミュニケーション
- デジタルPR
- グローバルPR
- インフルエンサー・マーケティング
⑧:グローバル・ビジネス
- アウトバウンド・アカウント業務
- インバウンド・アカウント業務
- グローバル・コンテンツ業務
⑨:ラボ/プロジェクト
電通の過去10年の業績推移(PL)
ここでは電通の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 2,093,976 | 62,834 | 70,044 | 30,688 |
2008/03 | 2,057,554 | 56,126 | 67,993 | 36,246 |
2009/03 | 1,887,170 | 43,184 | 53,363 | -20,453 |
2010/03 | 1,678,618 | 37,323 | 44,790 | 31,130 |
2011/03 | 1,833,449 | 50,937 | 54,166 | 21,635 |
2012/03 | 1,893,055 | 51,977 | 62,843 | 29,573 |
2013/03 | 1,941,223 | 58,466 | 59,027 | 36,336 |
2014/03 I | 659,772 | 107,283 | 110,797 | 66,507 |
2015/03 I | 728,626 | 132,305 | 134,295 | 79,846 |
2015/12 I変 | 706,469 | 107,265 | 106,043 | 72,653 |
2016/12 I | 838,359 | 137,681 | 132,918 | 83,501 |
2017/12 I | 928,841 | 137,392 | 149,662 | 105,478 |
2018/12 I | 1,018,512 | 111,638 | 148,751 | 90,316 |
2019/12予 I | 1,097,900 | 122,500 | - | 61,400 |
電通の業績を図示すると以下となります。

一見して不可解な電通の業績です。
電通は2015年12月期から決算日を12月31日に変更しているため、2015年は不規則になっています。
しかし、2014年に1,941,223百万円から659,772百万円と大幅に売上高が激減しているにもかかわらず、
営業利益は58,466百万円から107,283百万円と急増しています。
よって、不透明感の高い業績であるといわざるを得ません。
電通が2月14日に発表した決算によると、18年12月期の連結最終利益は前の期比14.4%減の903億円、19年12月期も前期比32.0%減の614億円に落ち込む見通しであると公表しています。
配当に関しては、今期の年間配当は前期比5円増の95円に増配するとしています。
電通のROEとROA
電通のROEとROAの推移は以下となります。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 5.32% | 2.42% |
2008/03 | 6.39% | 2.90% |
2009/03 | -4.52% | -1.87% |
2010/03 | 6.43% | 2.78% |
2011/03 | 4.39% | 1.91% |
2012/03 | 5.52% | 2.46% |
2013/03 | 6.22% | 1.65% |
2014/03 I | 7.38% | 2.48% |
2015/03 I | 7.39% | 2.53% |
2015/12 I変 | 9.07% | 3.16% |
2016/12 I | 8.95% | 2.65% |
2017/12 I | 9.65% | 2.96% |
2018/12 I | 8.62% | 2.48% |
2019/12予 I | 5.79% | 1.65% |
わかりやすく図示すると以下となります。

わかりにくい売上高と営業利益の推移と異なり、電通のROEとROAの推移はリーマンショックからのV字回復というわかりやすい推移になっています。
ROEは2009年に-4.52%で底打ちしてから急回復を遂げています。直近4年間は東証一部の平均値である8%を超えて推移しています。
またROAに関しては、2009年に-1.87%で底打ちしてから、直近6年連続東証一部の平均値である2%を超えて推移しています。
電通グループ中期方針
電通では2018年8月に電通グループ中期方針を公表しています。ここでは中期方針の内容を分析していきたいと思います。
2017年、2018年について
電通では2017年から業績が落ち込んでいます。
これは労働環境改革を最重要課題に据えた「基盤整備」に多くの経営資源を投じたためと説明しています。
またこの「基盤整備」は2018年で完了する予定であるとしています。
2019年、2020年について
2019・2020年は海外・国内の事業をそれぞれ伸長させる時期であるとしています。
しかし2018年度の決算内容から2019年も大幅に減益が予測されているため、ここで計画に実現性がなくなっているといえます。
不祥事が多すぎる電通の企業風潮
相次ぐ過労死事件や2016年のインターネット広告における不正詐欺(約111社に対し広告料を不当に請求。不正被害は計約2億3000万円に上ると想定されている)など、電通は不祥事が多すぎるという印象があります。
こういった社風が改善しない限り、電通の業績は向上できないものと考えます。
コンプライアンスにのっとった企業の構築が重要課題
電通自身も「労働環境改革を最重要課題」として中期計画に取り組んでいますが、これが成果を上げないと業績のV字回復は難しいでしょう。
なぜなら現在度重なる企業買収の結果、電通の海外比率は5割以上に上っています。
コンプライアンスにうるさい海外で電通の手法は受け入れられないと考えられるからです。
電通のファンダメンタル分析総合
2017年から悪化している業績に回復の兆しが見えません。
5月15日に発表した1Qでは19年12月期第1四半期の連結税引き前損益は14.8億円の赤字(前年同期は190億円の黒字)に転落しているため、
会社発表の業績以上に業績が期末に悪化していく可能性も否めません。
よって、ファンダメンタル的に電通は「投資対象外」であるといえます。
電通のテクニカル分析
ここでは電通は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
電通の過去10年の株価推移
好調に推移する日経平均株価に連動し、1,747円から7,290円まで駆け上がった電通株価。
しかし、2017年からの業績の悪化が響き、2017年以降は悪化する業績推移の株価になっています。

電通のテクニカル分析
電通の株価推移ですが、2015年までは日経平均株価に連動した動きでした。
2017年から業績が悪化したことから、テクニカル無視で下げ続けています。

電通の月足は2020年3月に変化日を迎えますが、この業績では基準値である5,400円を超えることはできないと考えます。
よって、電通の相場は長期的な下落波動入りしているといえます。
テクニカルから見た電通
テクニカル的に長期で下落トレンド入りしている電通は「投資対象外」です。
電通の競合他社比較
電通(4324)を同業であるヤフー(4689)、楽天(9101)と比較検討していきます。
電通 | ヤフー | 楽天 | |
PER | 17.0 倍 | 19.8 倍 | - 倍 |
PBR | 0.98 倍 | 1.91 倍 | 1.85 倍 |
配当利回り | 2.57% | 2.89% | - % |
ROE | 8.62% | 9.61% | 18.37% |
ROA | 2.48% | 3.24% | 1.94% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。よって電通17倍、ヤフー19.8倍ですので広告業界セクターが割高であるといえます。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって広告業界セクターは割安であるといえます。特に1倍以下の電通の割安度が光ります。
③:配当利回り
電通、ヤフーともに2%台と一般的な配当利回りです。
④:株主優待
楽天のみ株主優待が設定されています。
- 楽天トラベル国内宿泊クーポン
- 楽天Koboでの対象期間中の電子書籍コンテンツ購入に対し、ポイント3倍
- 株主限定楽天イーグルス・ヴィッセル神戸グッズ(抽選)
- 楽天イーグルス・ヴィッセル神戸主催公式戦観戦チケット(優待価格)
- 楽天証券口座にて楽天株式を保有している株主限定、楽天証券口座での楽天株式購入に係る手数料の30%をポイント還元
- 楽天市場クーポン
通常 | 保有期間継続5年以上 | |
100株以上 | 100円×5枚 | 左記対象クーポン+1枚 |
1,000株以上 | 200円×5枚 | |
5,000株以上 | 300円×5枚 | |
10,000株以上 | 400円×5枚 |
⑤:決算予測
ⅰ.電通
18年12月期の連結最終利益は前の期比14.4%減の903億円、19年12月期も前期比32.0%減の614億円に落ち込む見通し。
ⅱ.ヤフー
19年3月期の連結最終利益は前の期比40.0%減の786億円、20年3月期は前期比4.2%増の820億円に伸びる見通し。
ⅲ.楽天
18年12月期の連結税引き前利益は前の期比19.8%増の1654億円、19年12月期の業績見通しは非開示。
⑥:競合他社比較総合
業績が不安定な広告業界ですが、楽天が業績と株主優待で一歩リードしているといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から電通の今後の株価推移を分析してきました。
電通はファンダメンタル的にもテクニカル的にも「投資対象外」です。
購入を検討している方は、業績の底打ちを確認してから、投資を検討したほうが無難です。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、電通は現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 18年12月期の連結最終利益は前の期比14.4%減の903億円。
▷ 19年12月期も前期比32.0%減の614億円に落ち込む見通しであり、業績に回復の兆しを感じることができないこと。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは17 倍と割高、予想PBRは0.98倍で割安水準であるが、業績次第でさらに割高になると考えられること。
■ 競合他社比較:
▷ 2期連続最高益の楽天のほうが投資対象として安心できること。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
以上、【4324】株価暴落中の広告業界のガリバー「電通」。今後の業績・株価推移を予想!…でした。
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