DICは旧大日本インキ化学工業です。2008年に社名を変更しました。
またDICは印刷インキ、有機顔料、PPSコンパウンドで世界トップシェアを誇る化学メーカーでもあります。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からDICの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:長期的に『強い買い』
▷以下の点を総合的に勘案し超長期的に6,000円(2019年中旬時点3,000円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷18年12月期の連結経常利益は前の期比14.5%減の487億円、19年12月期は前期比6.8%増の520億円に伸びる見通し。
■ 指標:
▷ROEとROAの安定感が高い。
▷予想PERは7.2 倍、予想PBRは0.84 倍とPERとPBRともに割安水準。
■ 他社との比較:
▷同業の花王や資生堂は現在割高圏であること。また、DICは世界一のインキメーカーであることから、安定感・将来性・出遅れ感といった面を考慮し、DICのほうが投資効率が高いと判断。
■ 株主還元策の動向:
▷配当性向は約30%、安定配当をベースに、利益成長に応じた配当⽀払を実行。
■ テクニカル分析
▷テクニカル的に長期相場の底打ち&買いサインが点灯していること。
Contents
【企業情報】DICとは?
DICは世界首位のインクメーカーです。
印刷インキの製造と販売で創業以来、基礎素材である有機顔料、合成樹脂をベースとして、自動車、家電、食品、住宅などの様々な分野に事業を拡大してきました。
また現在は、世界の60を超える国に事業を展開しています。
ここではDICの事業内容についてご紹介していきます。
パッケージング&グラフィック
食品などの包装材料や包装に関する素材を提供しています。
カラー&ディスプレイ
映像や化粧品などの表示材料に関する素材を提供しています。
ファンクショナルプロダクツ
フッ素化学品や塗料・コート剤などの機能材料に関する素材を提供しています。
DICの過去10年の業績推移(PL)
ここではDICの過去10年間の業績推移を見ていきます。

上記はDICの過去10年間の業績推移です。売上高は底打ちした2013年からほぼ横ばいで推移していることがわかります。
比較して本業の成績を表す営業利益は売上高と無関係に推移しています。
営業利益の底打ちは2009年であり底打ち時期も売上高と異なっています。
また横ばいの売上高とは異なり、営業利益は底打ちからV字回復に向かっています。
2018年12月期決算分析
DICが2月14日に発表した決算によると、18年12月期の連結経常利益は前の期比14.5%減の487億円、
19年12月期は前期比6.8%増の520億円に伸びる見通しであることを公表しています。
配当に関しては、19年も125円の据え置きであるとしています。
DICのROEとROA
DICのROEとROAは営業利益同様に2010年に底打ちした後にV字回復を遂げています。

いったん2014年に落ち込みましたが、その後はほぼ横ばいで推移しています。
ROEは2010年の底打ち後、日本の東証一部の平均値である8%を割ることなく、9年間推移していることから安定感があるといえます。
またROAもROE同様、2010年の底打ち後、日本の東証一部の平均値である2%を割ることなく9年間推移しています。
よって、DICのROEとROAは非常に安定して推移しているということができます。
DICの中期経営計画「DIC111」
DICは2月14日、決算と一緒に中期経営計画「DIC111」を公表しています。
ここでは中期経営計画「DIC111」を分析していきたいと思います。
事業のポートフォリオの転換
上記のように中期経営計画「DIC111」は2010年から始まったDICの事業計画の一部でもあります。
中期経営計画「DIC111」の目標は「事業のポートフォリオの転換」です。
事業のポートフォリオの転換を通じて新たな成長路線へと事業の舵を取っていくことになります。
≪事業のポートフォリオの転換の内容≫
- 事業の質的転換
- 新事業の実績化
- 戦略的M&Aによる、非連続的成長
「DIC111」の基本コンセプト
ⅰ.Value Transformation
製品軸から社会への提供価値を軸としたセグメントに再編を行う。
ⅱ.New Pillar Creation
領域別に新事業創出のためのビジネスユニットの立ち上げを行う。
数値目標(定量目標)
2018実績 | 2021年目標 | |
売上高 | 8,055億円 | 9,500億円 |
営業利益 | 484億円 | 700億円 |
売上高営業利益率 | 6.0% | 7.4% |
当期純利益 | 320億円 | 450億円 |
EBITDA | 814億円 | 1,020億円 |
売上高EBITDA率 | 10.1% | 10.7% |
ROE | 10.4% | 10~12% |
2019年度の売上高も営業利益も大きく伸びていることから、今後の中期経営計画の進展が楽しみな状況にあるといえます。
DICのテクニカル分析
ここではDICは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
DICの過去10年の株価推移
下記はDICの過去10年間の株価推移です。

業績の底打ち時期とずれていることから、DICの株価は日経平均株価に連動しやすい傾向があるといえます。
1,170円-4,525円と幅値は大きく動いていますが、指数と比較した場合の株価上昇率から、
DICは日経平均株価に連動して動いていただけであり、独自のDIC相場を形成していないということができます。
DICのテクニカル分析
下記はDICの月足チャートです。
月足は長期の相場展望を分析する際に用いる足です。

DICが2015年に5年にもわたる長い持ち合いを抜けて「雲(上値抵抗)抜け」していることを見て取ることができます。
2015年の変化日の株価が3,500円前後、その後の高値が4,525円であることから、
いまだ相場は上昇相場の「初動」状態にあるといってよいでしょう。
テクニカルから見たDIC~中期様子見、長期買い判断
上記は中期(3か月~1年)の相場を見るのに有効な週足チャートです。

現在週足は雲の下に押し込められてしまっていることがわかります。
よって、中期は「様子見」の状態です。
買いを入れる場合は、週足で底打ちサインが点灯or雲抜けしてからの方が、投資効率的によいということができます。
競合他社比較
AGC(5201)を同業である旭化成(3407)、資生堂(4911)、富士フィルムホールディングス(4901)、花王(4452)と比較検討していきます。
DIC | 旭化成 | 資生堂 | 富士フイルムH | 花王 | |
PER | 7.2 倍 | 10.6 倍 | 41.4 倍 | 13.7 倍 | 25.5 倍 |
PBR | 0.84 倍 | 1.13 倍 | 6.58 倍 | 1.04 倍 | 5.01 倍 |
配当利回り | 4.73% | 3.22% | 0.77% | 1.83% | 1.53% |
ROE | 10.72% | 10.68% | 13.69% | 6.78% | 18.69% |
ROA | 3.98% | 5.73% | 6.08% | 4.04% | 10.52% |
PERとPBRはDICが圧倒的に割安感が高い
日経平均株価の平均PER13~14倍ですので、資生堂と花王は割高ということになります。
日経平均株価の平均PBRは2倍ですので、PER同様資生堂と花王は割高ということになります。
配当利回りは競合他社比で高い
DICが4.73%とセクターで最も高い配当であるということができます。
各社の株主優待
<<ⅰ.DIC>>
DIC川村記念美術館の入館券付絵葉2枚と自社グループ製品(Spirulina Natural)を配布しています。
<<ⅱ.資生堂>>
自社商品を配布しています。
<<ⅲ富士フィルムホールディングス>>
3月末はヘルスケア商品優待割引、9月末はフォトブック等プリントサービス利用クーポン券1,000分を配布しています。
決算予測を比較
<<ⅰ.DIC>>
18年12月期の連結経常利益は前の期比14.5%減の487億円、19年12月期は前期比6.8%増の520億円に伸びる見通し。
<<ⅱ.旭化成>>
19年3月期の連結経常利益は前の期比3.5%増の2199億円、20年3月期は前期比2.7%減の2140億円に減る見通し。
<<ⅲ.資生堂>>
18年12月期の連結経常利益は前の期比36.3%増の1094億円、19年12月期も前期比9.6%増の1200億円に伸びを見込んでいる。
<<ⅳ.富士フィルムホールディングス>>
19年3月期の連結税引き前利益は前の期比7.6%増の2127億円、20年3月期も前期比15.2%増の2450億円に伸びを見込んでいる。
<<ⅴ.花王>>
18年12月期の連結税引き前利益は前の期比1.4%増の2072億円、19年12月期も前期比8.6%増の2250億円に伸びを見込んでいる。
競合他社比較総合
割安度、業績を加味し検討した結果、好業績の資生堂と花王は現状業績以上に買われすぎであると判断することができます。
出遅れ感が高いDICが最も投資妙味があると判断することができます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からDICの今後の株価推移を分析してきました。
DICはテクニカル的に中期様子見、長期買いの判断です。長期相場初動に投資できる絶好のチャンスととらえ、押しは積極的に拾っていきたい展開です。
ファンダメンタル的には少々物足りなさを感じるところでもあります。
しかしDICは世界一のインキメーカーであることを考えた場合、今後の業績回復にも十分期待が持てる企業であるといえます。
よって、長期上昇相場の「初動」に投資することができるDICはテクニカル・ファンダメンタル両面から「買い」推奨できる銘柄であるといえます。
■投資判断基準:長期的に『強い買い』
▷以下の点を総合的に勘案し超長期的に6,000円(2019年中旬時点3,000円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷18年12月期の連結経常利益は前の期比14.5%減の487億円、19年12月期は前期比6.8%増の520億円に伸びる見通し。
■ 指標:
▷ROEとROAの安定感が高い。
▷予想PERは7.2 倍、予想PBRは0.84 倍とPERとPBRともに割安水準。
■ 他社との比較:
▷同業の花王や資生堂は現在割高圏であること。また、DICは世界一のインキメーカーであることから、安定感・将来性・出遅れ感といった面を考慮し、DICのほうが投資効率が高いと判断。
■ 株主還元策の動向:
▷配当性向は約30%、安定配当をベースに、利益成長に応じた配当⽀払を実行。
■ テクニカル分析
▷テクニカル的に長期相場の底打ち&買いサインが点灯していること。
以上、【4631】DIC(大日本インキ化学工業)は割安銘柄で長期的に株価が上昇すると予想!…でした。
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