NTTグループの携帯会社である「NTTドコモ」。
NTTドコモは現在時価総額ランキング4位に位置する日本を代表する情報通信企業です。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からNTTドコモの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:短期的に『様子見』
▷ 以下の点を総合的に勘案し2020年3月期に2400円〜2800円(現状2500円)程度が妥当な水準と予想。
▷ 競合のKDDIやソフトバンクに比して業績が軟調であり敢えて購入するほどの魅力は感じられない。
■ 業績見通し:
▷ 2019年3月期、2020年3月期と業績は下降気味
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ 東証一部企業に対して高い効率的な利益体質
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷ 予想PERは現状株価で14倍台と割安。PBRは1.5倍近辺で適正水準。割安ではない。
■ 他社との比較:
▷ 業界他社比同水準。
■ 株主還元策の動向:
▷ 増配傾向で自社株買も継続的に実施しており期待が持てる。
Contents
【企業情報】NTTドコモとは?
NTTドコモは、携帯電話等の無線通信サービスを提供する日本最大手の移動体通信事業者です。
日本電信電話株式会社(NTT)の子会社でNTTグループの営業利益の7割を稼いでいるNTTグループの中核企業でもあります。
また日経平均株価、TOPIX Core30の構成銘柄にも指定されている、日本を代表する企業であるといえます。
過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表する情報通信企業である、NTTドコモの過去10年間の業績推移を見ていきます。

本業の利益を表す営業利益ですが、およそ9年ほど横ばいで推移していたことがわかります。
このことからNTTドコモが為替やリーマンショックなどの外部的な影響に左右されない企業体質であることがわかります。

長い横ばいの後、2015年から営業利益が上昇に転換しています。
これはスマートフォンの普及によって、携帯業界全体の利益が活性化したことに起因しています。
また2018年を境に営業利益は下降に転じています。
これはいわゆる「格安スマホ」の利用者が増加したことが要因であると推測されます。
2019年3月期決算分析
2019年04月26日に公表したNTTドコモの2019年3月期決算は連結税引き前利益は前の期比12.2%減の1兆26億円。
さらに来期である20年3月期も前期比16.4%減の8380億円に減るとの見通しを発表しています。
しかし、決算を受けての株価は順調に推移しています。それは決算と同時に、増配&自社株買いのIRを出したことが原因です。
■ 増配内容:
今期の年間配当は前期比10円増の120円に増配する方針。
■ 自社株買い内容:
1億2,830万株(発行済株式総数に対する割合:3.85%)を上限とし、2019年5月7日から2020年4月30日までおよそ1年間の長期にわたって3,000億円を予算とする自社株買いを行う。
(参照:2019年3月期決算資料)
今回だけではなくNTTドコモは断続的に自社株買い並びに増配を行っており株主還元を積極的に行っていることがわかります。
NTTドコモのROEとROA


上記の表は過去10年間のNTTドコモのROEとROAの推移です。
日本の東証一部の平均ROEが8%、ROAが2%台であることと比較すると、NTTドコモのROEとROAは高い水準で推移していることがわかります。
NTTドコモの底打ち感のない業績低下
NTTドコモが公表した2019年3月期決算から今期も来期も大幅に業績が悪化することがわかります。
減益の要因は最大4割にも及ぶ通信料金の値下げによるものですが、同業種のKDDIとソフトバンクは増益です。
この差はNTTドコモがインド撤退による特損を発生させたことに起因しています。
決算説明会で「今期は新料金プランの導入により減収減益になるが、ここを底にして、できるだけ早く回復させたい」と吉澤和弘社長はいっていますが、NTTドコモの新料金プランの評判はあまりよくありません。
よって、2018年を天井として下げ続けている業績が回復に向かう可能性は非常に低いと推測されます。
言い換えれば、NTTドコモという企業は2018年に天井をつけてしまった可能性も否定できません。
NTTドコモのテクニカル分析
ここではNTTドコモは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
(チャートは全てYahoo!ファイナンス多機能チャート利用)
上記は過去10年間のNTTドコモ(9437)の株価推移です。
業績は2015年から上向きに転換で2018年に下降開始になっていますが、株価と業績が連動している気配は今のところありません。
それはNTTドコモが日経平均株価指数に採用されているためと考えられます。
上記は過去10年間の日経平均株価の株価推移です。
これを見るとNTTドコモの株価は強く日経平均に連動する性質であることがわかります。
しかし2点でNTTドコモと日経平均株価には相違点が出てきています。
MACDの位置(赤の矢印)
MACDを見ると、NTTドコモの株価は日経平均以上に下落していることがわかります。
直近高値 | 直近安値 | 下落率 | |
NTTドコモ | 3.095円 | 2,257,5円 | およそ27% |
日経平均株価 | 24,448円 | 18,948円 | およそ22% |
また、下落率を見てもNTTドコモは日経平均株価以上に下落したことがわかります。
これは2018年11月1日の「ドコモショック」が原因であると考えられます。
2018年11月1日窓を大きく開けてNTTドコモが下落しました。
これが「ドコモショック」です。
NTTドコモが10月31日に携帯電話の通信料金を19年度第1四半期に2~4割程度引き下げると発表しました。
これを受けて大手通信会社全体に業績悪化懸念が膨らみ、KDDI(9433)が前日比約16%安。
NTTドコモ(9437)が12%安、ソフトバンクグループ(9984)も8%まで売りこまれ、携帯会社の相場がパニックになりました。
NTTドコモはこの後の決算も減益で沈んだため、さらに安値を更新して下落しました。
このため、日経平均株価以上に下落することになったと分析できます。
移動平均線の向き(オレンジ色の矢印)
NTTドコモは日経平均株価以上に下落してしまったため、移動平均線の向きも下降に転じてしまっています。
特に問題になるのは赤の移動平均線の向きです。これが下向きに転じてしまうと、長期的に株価が上昇トレンドに乗って上昇することが厳しくなってしまいます。
このまま部下が推移した場合、上記のように下降する赤の移動平均線と上昇する青の移動平均線がバッティングし、ペナントを形成することがわかります。
一般的に移動平均線がバッティング(ペナント形成)した時点で株価が大きく動く確率が高いといわれています。
このまま弱含みで推移してしまうと、移動平均線の向きから「デットクロス」が発生してしまう可能性が高いため、テクニカル的にNTTドコモは「手出し無用」ということがわかります。
競合他社比較
NTTドコモ(9437)を同業であるKDDI(9433)、ソフトバンクグループ(9984)と比較検討していきます。
ドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
PER | 14.7 | 10.3 | 14.4 |
PBR | 1.57倍 | 1.53倍 | 5.53倍 |
配当利回り | 4.75% | 4.04% | 5.90% |
ROE | 12.35% | 14.76% | 34.54% |
ROA | 9.04% | 8.43% | 7.46% |
PERとPBR
まずPERですが、日経平均株価のPERが13~14倍です。
これと比較した場合NTTドコモとソフトバンクは若干買われすぎの傾向にあることがわかります。
次にPBRですが、日経の大型株の平均値が2倍であることから、NTTドコモとKDDIは1倍台と割安といってもよい水準です。
配当利回り
全社配当利回り4%以上と高利回りであるといえます。一見してKDDIが低く見えますが、KDDIだけ株主優待を実施しています。
よって株主優待を含めた実質的な配当利回りは以下になります。
■ 実質的な配当利回り:
1株配当 | 株主優待 | 実質利回り | |
NTTドコモ | 120円 | – | 4,75% |
KDDI | 110円 | ・1,000株以下かつ保有5年未満 | 5.10% |
・1,000株以下かつ保有5年以上 | 5.38% | ||
ソフトバンクグループ | – | – | 5.90% |
実質的な利回りはNTTドコモが最も低いということになります。
決算予測
2019年、2020年とNTTドコモは減益を予想しています。
比較してKDDIも2~4割の通信料金の値下げを発表済ですがKDDIとソフトバンクは増益予想です。
このことからもNTTドコモを買う理由は見当たりません。
株価予想
過去3年間の平均PERはまさに現在のPER14.7倍となっています。
単純に2020年末に予想されているEPS162.7円を掛け合わせると理論的には2,391円(2019年5月22日時点2,531円)となります。
しかし、配当金という観点でいうと今期予想されている配当金120円をベースに現在の実績配当利回り4.35%で割り返すと2,758円となります。
自社株買を継続的に行うことでEPSを高めることができますので将来的には増加傾向になることが期待できますが、直近の業績の下げ止まりを確認したいところですね。
まとめ
NTTドコモはテクニカル的にはペナント形成中のため「様子見」、ファンダメンタル的には業績の悪化に底打ち感がないため「売り」との判断になります。
業績的に2018年に天井を付けた可能性が高いことからも、今後NTTドコモ株を買うことは控えたほうがよいでしょう。
■ 投資判断基準:短期的に『様子見』
▷ 以下の点を総合的に勘案し2020年3月期に2400円〜2800円(現状2500円)程度が妥当な水準と予想。
▷ 競合のKDDIやソフトバンクに比して業績が軟調であり敢えて購入するほどの魅力は感じられない。
■ 業績見通し:
▷ 2019年3月期、2020年3月期と業績は下降気味
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ 東証一部企業に対して高い効率的な利益体質
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷ 予想PERは現状株価で14倍台と割安。PBRは1.5倍近辺で適正水準。割安ではない。
■ 他社との比較:
▷ 業界他社比同水準。
■ 株主還元策の動向:
▷ 増配傾向で自社株買も継続的に実施しており期待が持てる。
以上、NTTドコモ(9437)の業績推移と自社株買・配当金水準から株価を予想!テクニカル的にも正念場。…の話題でした。