「富士電機」はエネルギーや環境技術をコアとした大型の変圧器など発電・送電分野や産業分野に使われる製品を手がける重電メーカー。
このコンテンツでは、大手重電メーカー『富士電機』の株価見通しについて分析していきたいと思います。
■ 投資判断 :長期的に「買い」
▷以下の点を総合的に判断し、今期予想PERと予想EPS(1利あたり利益)から2020年3月期には4,242円が妥当水準と予想。
■ 過去10年の業績推移:
▷リーマンショック以降一時直線上に綺麗に右肩あがり。
■ 指標関連:
▷ROEは欧米水準並みの高水準で、PERは日経平均と同程度。
■ 競合他社比較:
▷割安指標は同水準だがROEは最も高く効率よく運営されている。
Contents
富士電機の会社概要
電力関連では、大型から小型の変圧器、エネルギーマネジメントシステムや無停電電源装置など電源にかかわる製品を取り揃えています。
またFA(ファクトリーオートメーション)とよばれる工場自動化に使われるインバータやファクトリーオートメーションシステムなども産業向けに手がけています。
産業向けの製品が多い同社ですが、消費者に使いところでは自動販売機やコンビニのコーヒーマシンなど温度の制御技術を生かした製品の製造販売も手がけています。
自動販売機も国内ではトップシェアで、さらに近年では中国での販売が伸びています。背景には中国の人件費高騰などがあります。
近年ではパワー半導体と呼ばれる電力のコントロールや整流に使われる半導体デバイスの需要がEVや産業用途で伸びています。
パワー半導体はメモリーやロジックと呼ばれるデジタル半導体
に比べて大量生産が難しいため、比較的日本の電機メーカーが得意としている分野といえます。
富士電機の過去10年の業績推移
過去10年の「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」の推移をグラフにしています。
富士電機の業績推移
それぞれの違いについてくわしくは『損益計算書の見方』をご覧ください。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 908,059 | 46,208 | 48,762 | 23,142 |
2008/03 | 922,172 | 35,883 | 35,808 | 16,792 |
2009/03 | 766,637 | -18,855 | -20,769 | -73,306 |
2010/03 | 691,223 | 924 | -537 | 6,757 |
2011/03 | 689,065 | 11,917 | 7,225 | 15,104 |
2012/03 | 703,534 | 19,252 | 18,554 | 11,801 |
2013/03 | 745,781 | 21,992 | 25,714 | 26,368 |
2014/03 | 759,911 | 33,136 | 36,731 | 19,582 |
2015/03 | 810,678 | 39,316 | 43,139 | 27,978 |
2016/03 | 813,550 | 45,006 | 45,614 | 30,644 |
2017/03 | 837,765 | 44,709 | 46,296 | 40,978 |
2018/03 | 893,451 | 55,962 | 56,047 | 37,763 |
2019/03 | 914,915 | 59,972 | 63,479 | 40,267 |
2020/03予 | 930,000 | 62,000 | 63,600 | 40,400 |

2009年3月期はリーマンショックの影響で赤字転落となりました。
ただ、その後売上高はリーマンショック後の2010年3月期を底にゆるやかに増加傾向となっています。
営業利益以下の各利益も同じように増加しており、事業環境の堅調さが伺えます。
最新の2019年3月期の決算説明会資料を見てみましょう。
前期は売上高が前年比で215億の増収となりました。営業利益は同40億の増益と
なり、過去最高益となりました。営業利益率も6.6%と伸びており収益性の改善が伺えます。
以下はセグメント別の業績一覧です。
売上高は食品流通を除く各セグメントで増収となりました。
事業環境の好調さが伺えます。
エネルギーソリューションセグメント(電源システムやエネルギーマネジメントシステムなど)や電子デバイス(パワー半導体など)が好調で営業最高益となったことがわかります。
ROEは10%を超える高水準
富士電機の経営効率を計る指標であるROEとROAについて見ていきます。
以下に過去10年の富士電機のROEとROAを掲載しています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 8.12% | 2.26% |
2008/03 | 6.38% | 1.62% |
2009/03 | -56.40% | -8.06% |
2010/03 | 3.77% | 0.74% |
2011/03 | 9.71% | 1.87% |
2012/03 | 7.23% | 1.49% |
2013/03 | 13.55% | 3.44% |
2014/03 | 8.62% | 2.42% |
2015/03 | 9.64% | 3.09% |
2016/03 | 13.30% | 3.62% |
2017/03 | 14.07% | 4.62% |
2018/03 | 11.42% | 4.11% |
2019/03 | 11.41% | 4.23% |
2020/03 | 11.45% | 4.24% |

ROEとROAは2010年度までは変動が大きく、その後はゆるやかに推移しています。
ここ数年では安定的にROE10%を上回っています。
これは、東証1部の平均8%を上回り、欧米の平均10%も超えています。
指標から割安度を判断する
富士電機の10年間の株価の推移を見てみましょう。
10年チャートでは業績の伸びと同じように右肩上がりに株価が切りあがっていることがわかります。
移動平均線に沿って滑らかに推移しており、過熱感無く上昇基調となっていることがわかります。

株価は『EPS×PER』で算出に分解することができるので、まずEPSからみていきたいと思います。
EPSは堅調に右肩あがり
EPS(1株あたり利益)は企業の純利益を発行済み株式数で割り算した1株あたりの純利益です。
株価は1株あたり利益(EPS)×予想PERに分解することが出来ます。
利益面から株価の割高、割安を計る指標が予想PER(よそうぴーいーあーる)です。
PERは株価収益率といい、1株の利益の何年分まで買われているか人気を示す投資指標です。
グラフのように富士電機の1株あたり利益(EPS)は利益の増加により右肩上がりとなっています。

PERは日経平均と同程度
過去3年間の予想PERを見てみると約9倍から22倍程度で推移しています。

平均値は約15倍となります。
日経平均の過去3年の予想PERはおおむね13倍~16倍程度で動いていました。
市場平均と比べると株価が好調な2017年から2018年初にかけては市場平均を上回っていましたが、現在は過去の平均をやや下回る推移となっていることがわかります。
市場平均と同程度の配当利回り水準
過去2年の配当利回りの推移を見ています。過去2年では予想配当利回りは1.1%
から3.5%程度で推移しています。平均値は1.8%程度です。現在は2.2%弱となっており、
東証1部の全平均の予想配当利回り2.1%と同程度の水準となっています。

富士電機の競合他社比較
同業の重電大手と富士電機を比較してみます。
富士電機 | 三菱電機 | 日立製作所 | |
PER | 13.4 倍 | 12.7 倍 | 9.0 倍 |
PBR | 1.54 倍 | 1.26 倍 | 1.20 倍 |
配当利回り | - % | - % | - % |
ROE | 11.41% | 9.44% | 6.82% |
ROA | 4.23% | 5.20% | 2.31% |
対象は同じ電機メーカーの日立製作所、三菱電機です。
ROEは3社の中ではどちらも一番高くなっており、株主の資金を有効活用しているといえます。
予想PER、PBRは3社の中では高く、同業他社との比較では評価されていることがわかります。
まとめ-今期末の予想は4200円程度が妥当か-
今期の予想EPSから妥当株価を計算します。
まずは会社予想を見てみましょう。

今期2020年3月期は売上高1.6%の増収、営業利益は3.4%の増益を見込んでいます。
米中貿易摩擦や中国の景気減速など外部環境の不透明要因が続く中、増収増益の見通しを出しています。
予想1株利益282.8円に過去3年の平均PER15倍をかけると4,242円となり、直近の株価3,630円を17%ほど上回り、パワー半導体やエネルギーソリューションセグメントの成長に期待して買いと判断できます。
■ 投資判断 :長期的に「買い」
▷以下の点を総合的に判断し、今期予想PERと予想EPS(1利あたり利益)から2020年3月期には4,242円が妥当水準と予想。
■ 過去10年の業績推移:
▷リーマンショック以降一時直線上に綺麗に右肩あがり。
■ 指標関連:
▷ROEは欧米水準並みの高水準で、PERは日経平均と同程度。
■ 競合他社比較:
▷割安指標は同水準だがROEは最も高く効率よく運営されている。
以上、富士電機(6504)の会社概要、業績推移と見通し。パワー半導体やエネルギーソリューションセグメントの成長に期待の話題でした。
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