本日は本田技研工業について分析していきたいと思います。
本田技研工業(以下:ホンダ)は国内の自動車メーカー大手3社(トヨタ自動車・日産自動車・本田技研工業)の一角をしめます。
2018年のメキシコのセラヤ工場における水害の影響で米国のインディアナ工場における生産が一時休止となりました。
株価は去年から現在まで大きく値を下げ、2651円(2019年5月31日終値)です。
「どこまで株価が下がるのか」「なぜ株価が下がっているのか」を踏まえ、買うべきか見送るべきかを判断していきましょう。
■ 投資判断:長期的に買い
以下の点を総合的に判断し、現在の株価である2651円(2019年5月31日現在)から環境規制への対応が整えば中長期的に戻っていくことが考えられる。
■ 業績見通し:
▷環境規制への対応等が整えば再び増加基調に戻っていくことが想定される。
■ 過去10年の業績推移:
▷2018年3月期に法人税による当期純利益の押し上げがあったために大きく上昇しました。しかし当然減税は一過性であったので元の水準まで戻った。
■ ROEとROA:
▷ROEは13%程度とトヨタよりは若干低いですが日経平均の8%程度よりも高く効率的な利益体質となっている。ROAは平均的な水準。
■ 投資指標分析:
▷PER、PBRは過去水準でも特に低く割安で更に配当利回りも高くなっているので魅力が増している。
Contents
ホンダ技研工業(7267)ってどんな会社?
まずホンダとはどんな会社なのかを見ていきましょう。
ホンダ技研工業の簡単な沿革
1946年(昭和21年)に本田宗一郎氏が本田技術研究所を設立しました。
その後本田技研工業へ改編し、自動車・二輪車・飛行機などの製造及び販売をメインとする現在のホンダができました。

現在の社長は、八郷隆弘氏で、時価総額は約4兆8020億円(2019.5.31現在)です。
CAFE規制とは
CAFÉ規制とは「企業別平均燃費」のことであり、米国や欧州で環境規制強化の1つとして打ち出されています。
内容は2020年までに原油1ガロンあたり35マイルの基準まで燃費を効率化させなければならないというものです。
現在ホンダはCAFE規制への対応により一過性のコストがかかっています。
ZEV規制とは
ZEV(zero emission vehicle)規制とはカリフォルニア州ロサンジェルス市において、
大気汚染を懸念し排気ガスを出さない電気自動車の使用を促進する規制のことです。
2018年からハイブリッド車がZEV(電気自動車や燃料電池車)の定義から外れ、国内自動車メーカーも対応に追われています。
ホンダ技研工業(ホンダ)の10年の業績推移
まずは過去13年の『売上高』『営業利益』『経常利益』『当期純利益』について見ていきます。

2012年3月期から2019年3月期まで売上高が増加傾向ですが2019年3月期に入り急激に当期純利益が減少しました(前年同期比-40.1%)。
当期純利益の急激な減少は、営業利益や経常利益が大きく影響しているわけではなく法人税の影響を受けています。
法人税の影響とは、2018年3月期に当期純利益が前年同期比66.1%で増加しています。
2018年の米国における法人税引き下げ(34%から21%)により繰延税金負債に対して税務上の課税がされなかったことによるマイナスの法人税所得費用が発生したということです。

表2-1より過去5年で2018年3月期が明らかに法人税の支払額が減っています。
したがって当期純利益の前年からの落ち込みは一過性のものと考えられる可能性があります。
経営状態のROEとROA
ここではROAとROEについて見ていきましょう。
ちなみにROAとROEは経営効率を見る指標です。
一般的にROAが5%以上、ROEが10%以上あれば効率的であると考えられています。
現在のROAと同社の過去ROA平均との比較
現在(2019年5月末時点)のホンダのROAが、同社における過去(直近7年分)のROA平均とどのぐらい乖離しているのかを見ていきます。

2018年3月期から2019年3月期のROAの落ち込みは約45.3%です。
これは同期間の当期純利益の落ち込み幅である約40.1%で説明できます。
つまり2019年3月期のROAが低いというより、2018年3月期のROAが高いという見方になります。
したがって次は、同業他社ROAを見ていきます。

トヨタ・日産は法人税の影響をそこまで受けていないため、環境規制やそれに伴う生産体制の急速な変化への対応のコスト増による当期純利益の減少しかありません。
しかし、ホンダは同業他社と同様のコスト増に加え2019年3月期の法人税による著しい当期純利益の押し上げがあったためトヨタ・日産よりもROAの減少幅が大きくなっています。
次に同社のROAが業界内で長期的にどの水準にあるのかを見ていきます。
大手3社の過去7年分の平均とホンダのROAを比較していきます。

上記を見てもわかるようにホンダのROAは自動車業界の中でも平均的な水準に乖離と回帰を繰り返しています。
2018年3月期を除いて著しくROAが変化した年はないといえます。
現在のROEと同社の過去ROE平均との比較
現在(2019年5月末時点)のホンダのROEが、同社における過去(直近7年分)のROE平均とどのぐらい乖離しているのかを見ていきます。
※ROEは「自己資本からどれだけ効率的に当期純利益を生み出したか」という指標です。
しかし、負債を多くすればするほど利益を多く生むことができROEを高めることができるので(レバレッジをかけるということ)
ここではROEを「総資本に対する負債の比率」で割った「修正ROE」を用いて見ていきます。

ROAと同様にして2018年3月期を除けば同社の過去と比較して現在のROEの水準は、平均的であるといえます。
では次は、同業他社の修正ROEを見ていきます。

こちらもROAと同様の分析で2018年3月期の法人税による当期純利益の押し上げが原因です。
2019年3月期の修正ROEは同業他社の中で1番減少幅が大きいです。
ただ2016年3月期に同業他社の中で最も修正ROEが低かったので、今後の経営効率に懸念が残ります。
次に同社の修正ROEが業界内で長期的にどの水準にあるのかを見ていきます。

やはり2019年3月期の修正ROEは業界内でも平均的な水準にあり、特に著しい落ち込みはありません。
PERとPBRから割安度を分析する
株式投資をするときの鉄則は「安く買って高く売る(高く売って安く買い戻す)」です。
実際その銘柄が高いのか安いのか判断していく必要があります。
ここではPERとPBRに着目して検討していきたいと思います。
現在のPERと同社の過去PER平均との比較
まず現在(2019年5月末時点)のホンダのPERが、同社における過去(直近9年分)のPER平均とどのぐらい乖離しているのかを見ていきます。

2016年頃から世界的な環境規制やGoogle,Appleなどによる自動運転の開発断念、
自動車業界での新型車の減少などが原因で(のちにご説明しますが)自動車業界全体、さらにはホンダの株価が過小評価されています。
2016年3月期を境に株価は、ホンダの平均的な水準を大きく下回り現在に至ります。
同業他社とのPER比較
次に同業他社とホンダのPERを比較していきます。

業界全体でPERは低下しており、ホンダだけが特にPERが低いというわけではないのかもしれません。
そこで、大手3社の過去9年分の平均と日産のPERを比較していきます。

現在のホンダのPERは業界内で低いと言えますが、実はホンダのPERの平均は大手3社の平均とほぼ同値であることから割安でも割高でもないPERであり、今だけが特に割安なのかもしれません。
現在のPERと同社の過去PER平均との比較
まず現在(2019年5月末時点)のホンダのPBRが、同社における過去(直近9年分)のPBR平均とどのぐらい乖離しているのかを見ていきます。

同社のPBR過去平均から2015年3月期を境に確実に減少基調にあるため、PBRで見るとかなり割安であるといえます
同業他社とのPBRの比較
次に同業他社とホンダのPBRを比較していきます。

業界内でPBRは特に割安という風には見えません。
ただ自動車業界全体の株価が下がっているので業界全体で割安なのかもしれません。
そこで、大手3社の過去9年分の平均とホンダのPBRを比較していきます。

過去9年の間で確実にPBRが減少基調にあります。したがって現在の水準は、割安といえます。
ホンダの株主還元(配当金)
ここでは配当金について考えていきます。
大手3社配当利回り比較
まずホンダの配当利回りは大手3社の中でどのくらいの位置づけなのでしょうか。

配当利回りは業界内で特別高いというものでもないかもしれませんが、ゆるやかに上昇していることがわかります。
ホンダの配当利回りと平均との乖離
ホンダの配当利回りは同社の過去平均と比べてどの水準なのでしょうか。

2018年3月期から現在までかなり配当利回りが上がっています。
急激に上がっている原因は2018年度の株価の低下、
配当額が前年同期比で12.24%上がっていることの2つであると考えられます。
ホンダの配当利回りと大手3社配当利回り平均との乖離
自動車業界におけるホンダの配当利回りの水準はどの程度なのでしょうか。

業界内でかなり配当利回りが高いことが分かります。
この配当利回りの高さは2018年6月20日に提出された有価証券報告書から、配当性向30%を目指すという配当政策が打ち出されたためです。
現在配当性向は30%を超えており、今後もその水準を維持すると考えられるので配当面ではかなり利回りが期待できるでしょう。
まとめ
ホンダは現在割安で配当利回りも高く、今後も持続されると考えられるので長期的に「買い」時でしょう。
現在の株価である2651円(2019年5月31日現在)から3500円付近を目途に、環境規制への対応等が整えば戻っていくでしょう。
■ 投資判断:長期的に買い
以下の点を総合的に判断し、現在の株価である2651円(2019年5月31日現在)から環境規制への対応が整えば中長期的に戻っていくことが考えられる。
■ 業績見通し:
▷環境規制への対応等が整えば再び増加基調に戻っていくことが想定される。
■ 過去10年の業績推移:
▷2018年3月期に法人税による当期純利益の押し上げがあったために大きく上昇しました。しかし当然減税は一過性であったので元の水準まで戻った。
■ ROEとROA:
▷ROEは13%程度とトヨタよりは若干低いですが日経平均の8%程度よりも高く効率的な利益体質となっている。ROAは平均的な水準。
■ 投資指標分析:
▷PER、PBRは過去水準でも特に低く割安で更に配当利回りも高くなっているので魅力が増している。
以上、【ホンダ(7267)】国内自動車Big3の一角『本田技研工業』の株価を予想!業績推移と割安度から紐解く。…でした。
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