このコンテンツでは、クラレの今後の株価について予想していきます。
「クラレ」は日本を代表する化学メーカーのひとつ。
化学メーカーは、私たち消費者が使っている様々なものの原料を作っていることが多いので、あまり馴染みがないという方も多いかもしれません。
でも、実は私たちの生活に欠かせない製品を作っているクラレ。
まずは、クラレがどのような会社で、どんなものを作っているのか、そしてクラレ株は買いなのかどうかを見ていきましょう。
■ 投資判断基準:中長期で買い
以下の点を総合的に勘案し中長期で『買い』が適当と判断。
■ 業績見通し:
▷ 業績は堅調だが好調だった米国の財政政策や貿易摩擦の影響で腰折れ感がある。
■ 指標関連:
▷ ROEは若干低い水準。
▷ PERとPBRともに業界比でも過去平均でも割安な水準。
■ 他社との比較:
▷ 配当利回りは高く、指標的にも割安なので水準が修正される可能性がある。
Contents
そもそもクラレとは?
クラレは、岡山県倉敷市で誕生した大手化学メーカーです。
1926年に、日本を代表する実業家の一人である大原孫三郎によって設立され当初はレーヨンの国産化を目的としていました。
レーヨンとは、絹に似せて作った再生繊維で、洋服の裏地などに使われる素材です。
現在のクラレの事業は多岐に渡っております。
代表作としてはランドセルで有名な人口革のクラリーノや、機能性樹脂のエバール、クラレポバール、高機能エラストマーニロン、セプロン、ハイブラー、合成繊維のビニロン、ベクトランなどがあります。
誰もが必ず使ったことがあるであろうマジックテープも実はクラレの登録商標なのです。
事業は、プラスチック、ケミカル・エラストマー・ゴム、繊維・人口皮革・不織布・面ファスナー、メディカル・環境関連、新事業、エンジニアリングの6つがあります。
・プラスチック
クラレが世界に先駆けて事業化した機能性樹脂ポバールや、液晶ディスプレイの表示に使われるポバールフィルム、
接着性と透明性に優れたPVB樹脂・フィルム、酸素をはじめ気体をほとんど通さないエバール、
優れた透明性、耐候性をもつメタクリル樹脂などを生産しています。
・ケミカル・エラストマー・ゴム
広い温度範囲でゴムのような弾性を示す熱可塑性エラストマーであるセプトンや制振性能のあるハイブラー、
その他イソプレンを出発原料としたケミカル製品を作っています。
・繊維・人口皮革・不織布・面ファスナー
国産技術による初めての合成繊維ビニロン、人工皮革のパイオニア的な存在であるクラリーノを生産しています。
また、独自のポリマーを用いた冷感繊維であるソフィスタなど付加価値の高い機能性ポリエステルや、
幅広いバリエーションをもつ不織布クラフレックス、自然界の不思議をヒントに開発した面ファスナー(マジックテープ)などを展開しています。
・メディカル・環境関連
クラレは歯科材料を中心としたメディカル事業と環境関連事業を展開しています。
メディカル事業では、クラレノリタケデンタルがクラレの高分子化学技術による有機系、
ノリタケのセラミック技術による無機系の歯科材料を開発、生産しています。
環境関連では、水処理用ろ過膜、排水処理用PVAゲルを活用した水処理の総合ソリューション事業を行っています。
また、気体や液体中から不純物を吸着する活性炭など、環境改善に寄与する事業を展開しています。
・新事業
クラレの新事業創出を目指し、成形物表面への微細加工技術を応用した成形品の技術開発および市場開拓を推進しています。
現在は、自動車関連部材、細胞培養プレートであるエルプラシアや、アミューズメント向け光学フィルムのレジェンダを展開しています。
また、当社独自の液晶ポリマーフィルムであるベクスターは、高速伝送回路や高周波電子機器に適した高周波特性があり、回路基板材料として数多く使われています。
・エンジニアリング
グループ会社であるクラレエンジニアリングにおいて、プラント建設の設計から施工まで手掛けています。
〈高い海外比率が特徴!世界トップシェア製品も多数〉
クラレは海外売上高比率の高さが特徴です。
海外では、米国、欧州、アジアを中心に展開しており、2018年12月期で68%となっています。
また、世界的にも高シェア製品やトップシェアの製品や、クラレ独自製品を多く持っているのもクラレの特徴です。
クラレの業績推移
上下はありながらも、ここ十年間はしっかりと売上・利益ともに伸ばしてきており、今期も通期では増収増益を見込んでいます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 385,284 | 40,220 | 36,546 | 22,412 |
2008/03 | 417,601 | 48,130 | 42,817 | 25,554 |
2009/03 | 376,777 | 29,280 | 26,797 | 12,984 |
2010/03 | 332,880 | 30,451 | 28,925 | 16,315 |
2011/03 | 363,191 | 53,095 | 51,062 | 28,742 |
2012/03 | 368,975 | 54,733 | 53,940 | 31,469 |
2013/03 | 369,431 | 49,197 | 48,590 | 28,798 |
2014/03 | 413,485 | 49,545 | 49,343 | 29,390 |
2014/12 変 | 411,408 | 40,298 | 40,084 | 21,296 |
2015/12 | 521,721 | 66,077 | 64,535 | 35,749 |
2016/12 | 485,192 | 67,827 | 66,181 | 40,400 |
2017/12 | 518,442 | 75,117 | 72,998 | 53,601 |
2018/12 | 602,996 | 65,794 | 61,167 | 33,560 |
2019/12予 | 608,000 | 69,500 | 65,000 | 40,000 |
更に米中貿易戦争による中国の景気減速、欧州の政治混乱などによりクラレの業績も減速し、第一四半期は前年同期比を下回る結果になっています。
また、米国の工場の設備不良で活性炭の生産が低迷していることも響いているようです。
指標面から割安度を判断する
それでは様々な指標面から割安度を判断していきたいと思います。
平均からやや低いROEとROA
ROEやROAは、会社の資本を使ってどれだけ効率よく利益を上げたかを表す指標です。
ROEは、株主資本に対する収益性を、ROAは、企業の総資産全体に対する収益性を表しており、日本の企業はROEが8%程度、ROAが2%程度の会社が多くなっています。
クラレのROEは6.04%と、日本の企業平均に比べやや低めという水準です。
一方ROAは3.54%となっており、こちらは平均より少し高いという数字です。
経営の効率性については特に特筆して高いというわけではありませんが、問題視するほどの低さでもないでしょう。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 6.25% | 4.41% |
2008/03 | 7.41% | 5.21% |
2009/03 | 4.03% | 2.75% |
2010/03 | 4.88% | 3.24% |
2011/03 | 8.38% | 5.67% |
2012/03 | 8.74% | 6.01% |
2013/03 | 7.29% | 4.90% |
2014/03 | 6.59% | 4.63% |
2014/12 変 | 5.98% | 4.11% |
2015/12 | 7.21% | 5.09% |
2016/12 | 7.88% | 5.57% |
2017/12 | 9.64% | 6.91% |
2018/12 | 6.04% | 3.54% |
2019/12予 | 7.27% | 4.04% |

PERとPBRは若干割安な水準
PERとPBRは、一般的に株価の水準が割安か割高かを示す指標です。
PERは、今の株価が「一株当たり純利益(EPS)」の何倍かを示しており、日本企業は15倍程度の会社が多くなっています。
ただし、PERは業種によって平均値が異なり、日本企業全ての平均ではなく、同業他社との比較で割安かどうかを判断していくことが大切です。
クラレのPERは現在10倍前後で、過去3年では14倍ほどを平均に推移しています。

他の化学メーカーや、クラレの過去のPERの推移と比較すると、現在の水準は割安であると言えそうです。
次に、PBRとは、その会社の純資産に対して今の株価が何倍かを表しています。
PBRが1倍であれば、株価と会社の資産が同じ値段になっている状態です。
クラレのPBRは0.7倍ほどと、かなり割安な水準です。

配当利回りは若干高い3%強
配当利回りは、年間配当金を現在の株価で割ったものです。
特に中長期で投資する場合、株価の値上がりだけでなく、配当金収入も気になるところです。
クラレの配当利回りは3%強となっています。日本の企業の配当利回りは、2%弱が平均なので、魅力的な水準です。

経営方針としても、積極的な自社株買いや、配当性向目標を掲げるなど、株主還元策にも積極的です。
今後増配なども期待できるかもしれませんね。
また、1,000株以上保有すると3,000円相当のカタログギフトが株主優待としてもらえます。
株価をPER×EPSで予想すると2019年12末で1650円が妥当か
株価は、一株当たり純利益であるEPS×PERで表されます。
2019年12月期のEPS予想が115.3円、2020年12月期の予想が122.5円となっています。

仮に過去3年の平均PERである13.8倍を掛けてみると、2019年12月期が1591.14円、2020年12月期で1690.5円となります。
現在の株価が1250円台近辺で推移しているので、業績予想に対してはかなり割安であると言えます。
クラレの競合他社比較
会社の規模は他社に比べ小さいですが、高いシェアを持ち安定収益を臨める製品を多数持つ優良銘柄です。
ROEやROAで比較すると他社と比べて見劣りしますが、配当利回りの高さが魅力的です。
また、PERやPBRでも割安に放置されており押し目ではぜひ買ってみたい銘柄です。
クラレ | 旭化成 | 資生堂 | 富士フイルムH | 花王 | |
株価 | 1,246.0 円 | 1,119.0 円 | 7,833.0 円 | 5,199.0 円 | 8,480.0 円 |
株主優待 | あり | なし | あり | あり | なし |
予想PER | 10.9 倍 | 10.6 倍 | 41.4 倍 | 13.7 倍 | 25.5 倍 |
PBR | 0.79 倍 | 1.13 倍 | 6.58 倍 | 1.04 倍 | 5.01 倍 |
予想配当利回り | 3.37% | 3.22% | 0.77% | 1.83% | 1.53% |
ROE | 6.04% | 10.68% | 13.69% | 6.78% | 18.69% |
ROA | 3.54% | 5.73% | 6.08% | 4.04% | 10.52% |
自己資本比率 | 58.60% | 53.60% | 44.40% | 59.70% | 56.30% |
まとめ
クラレは、クラレにしか作れない独自の製品や世界トップのシェアを誇る製品を多数持つ優良企業です。
また、株主還元策にも積極的で、自社株買いも断続的に行い、配当利回りも魅力的です。
海外売上高比率が高いため、米中貿易戦争などの海外要因の影響をどれだけ受けるかがネックではありますが、基本的には押し目では買って、中長期で保有するとよいと思います。
■ 投資判断基準:中長期で買い
以下の点を総合的に勘案し中長期で『買い』が適当と判断。
■ 業績見通し:
▷ 業績は堅調だが好調だった米国の財政政策や貿易摩擦の影響で腰折れ感がある。
■ 指標関連:
▷ ROEは若干低い水準。
▷ PERとPBRともに業界比でも過去平均でも割安な水準。
■ 他社との比較:
▷ 配当利回りは高く、指標的にも割安なので水準が修正される可能性がある。
以上、【3405】今後のクラレ(kuraray)の株価を業績推移と各種投資指標から見通す!…でした。
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