国内水産物流の最大手企業、「マルハニチロ」。
マルハニチロはその水産物流力を生かして、日本国内だけではなく海外でも活躍しているグローバル企業でもあります。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からマルハニチロの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:やや買
▷業績が安定している反面株価のみ下落しており若干の割安感がある。過去平均PERから考えて3900円程度が妥当か。(2019年5月29日現在3300円)
■ 業績見通し:
▷景気によらず安定した業績でディフェンシブ銘柄の特徴を備えている
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ROE、ROAともに高い水準。直近3年はROEは15%近辺で安定している。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷日経平均の中では割安でPERは10倍程度
■ 他社との比較:
▷水産業種の競合である日本水産と比較すると割安度は同水準。
Contents
マルハニチロとは?
マルハニチロは国内外で強固な流通網を持っている水産流通の最大手企業です。
また缶詰や冷凍食品などの加工食品でも大きなシェアを誇っています。
よくスーパーで見かける以下の製品もマルハニチロの製品なのです。
創業以来100年以上も愛されている超ロングセラー商品と新商品の開発力の高さのWのパワーで日本の食品業界をけん引する老舗企業といえます。
過去5年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表する老舗食品加工企業である、マルハニチロの過去5年間の業績推移を見ていきます。

マルハニチロの売上高はここ5年間ほぼ横ばいで推移していることがわかります。
これはマルハニチロの食品は安定した需要が存在することを示しています。
売上高と比較して企業の本業の状態を表す営業利益のほうは2015年から2017年にかけて大幅に増加していることがわかります。
このことから、マルハニチロの業績は好調であるということができます。
また2017年以降の営業利益はほぼ横ばいで推移しています。
マルハニチロが5月13日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常利益は前の期比9.6%減の252億円でした。
しかし20年3月期は前期比5.0%増の265億円と3期連続増収になると公表しています。
決算を受けて、株価は3,410円から3,160円と窓を開けて大幅に下落しました。
しかし、5月14日は日経平均株価も直近安値の20,751円をつけており、決算の影響というよりは日経平均株価に連動して下落幅が拡大したと考えられます。
理由としては、5月14日以降の株価推移が日経平均株価以上に上昇しているからです。
マルハニチロのROEとROA


上記の表は過去5年間のマルハニチロのROEとROAの推移です。
ROEは10%~15%ほどで推移しているのがわかります。またROAは2017年から安定して3%ほどで推移しています。
日本の東証一部の平均ROEが8%、ROAが2%台であることと比較すると、マルハニチロのROEとROAは高い水準で推移していることがわかります。
特にマルハニチロの場合、ROEが直近5%から急激に上昇し現在では14%あたりで安定しています。
これは企業の利益効率が劇的に向上したことを示しているといえます。
マルハニチロの 中期経営計画「Innovation toward 2021」*
マルハニチロでは2018年から中期経営計画「Innovation toward 2021」の実現を目指し、経営に取り組んでいます。
*参考:マルハニチロHP
長期経営ビジョン~10年後を見据えた企業目標
水産部門の目標


世界一を誇るマルハニチロの水産部門ですが、現状よりも4年間で約25%ほども営業利益を向上させることを目標にしています。
加工食品部門の目標


加工食品部門でもおよそ30%ほどの営業利益の向上を目標としています。
見てきたようにマルハニチロでは、現状の世界一の地位におごることなく、さらなる高見を目指して、経営に取り組んでいることがわかります。
マルハニチロのテクニカル分析
ここではマルハニチロは買いか売りかを少しだけ、テクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
■ マルハニチロの過去10年の株価推移:


(出所:Yahooファイナンス「マルハニチロ(1333)の月足チャート」)
マルハニチロの株価は日経平均株価に連動していません。
日経平均株価はアベノミクス導入の2012年から上昇していますが、マルハニチロの株価は業績が急激に向上した2015年から上昇しています。
競合他社比較
マルハニチロ(1333)を同業である日本水産(1332)と比較検討していきます。
マルハニチロ | 日本水産 | |
株価 | 3,420.0 円 | 650.0 円 |
売買単位 | 100 株 | 100 株 |
時価総額 | 1,801 億円 | 2,031 億円 |
市場 | 東証1部 | 東証1部 |
決算期 | 2020/03 (12か月) | 2020/03 (12か月) |
会計基準 | 日本 | 日本 |
株主優待 | あり | あり |
予想PER | 10.6 倍 | 11.6 倍 |
PBR | 1.44 倍 | 1.38 倍 |
予想配当利回り | 1.17% | 1.31% |
実績配当利回り | 1.17% | 1.23% |
ROE | 13.32% | 10.51% |
ROA | 3.21% | 3.22% |
自己資本比率 | 24.10% | 30.6 |
PERとPBR
まずPERですが、日経平均株価のPERが13~14倍です。
これと比較した場合マルハニチロは10.6倍、日本水産は11.6倍とセクター的に割安な水準であることがわかります。
マルハニチロ | 日本水産 | |
PER | 10.6 | 11.6 |
PBR | 1.44 倍 | 1.38 倍 |
次にPBRですが、日経の大型株の平均値が2倍です。
これと比較した場合マルハニチロは1.44倍、日本水産は1.38倍とPBRもセクター的に割安な水準であることがわかります。
このことから水産セクターは日経の出遅れセクターで「買い」であるといってよいでしょう。
配当利回り
マルハニチロは1.17%、日本水産は1.31%となっており、若干日本水産の配当が高くなっています。
マルハニチロ | 日本水産 | |
配当利回り | 1.17% | 1.31% |
しかし、配当利回りを考える場合、株主優待を加味じ実質的な配当利回りを考える必要があります。
■ マルハニチロの株主優待情報(*2019年5月31日現在):
権利確定月 | 3月末日 |
単元株数 | 100株 |
投資金額 | 329,500円* |
株主優待内容 | ・水産缶詰詰合せ ・瓶詰詰合せ ・海苔詰合せ ・DHA入りリサーラソーセージ ・ラ・カンティーヌ詰合せ |
■ 日本水産の株主優待情報(*2019年5月31日現在):
権利確定月 | 3月末日 |
単元株数 | 100株 |
投資金額 | 327,500円~* |
株主優待内容 | 自社商品詰め合わせ ・500株以上 3,000円相当 ・1,000株以上 5,000円相当 |
マルハニチロの株主優待は値段が公表されていません。
しかし、日本水産のほうが、1000株保有した場合5,000円相当の優待品をもらうことができるため、複数単元を保有するのであれば、日本水産のほうが実質利回りが高くなります。
業績と株価予測-3900円程度が妥当か-
マルハニチロは20年3月期に前期比5.0%増の265億円に伸びるとの見通しを出しています。
日本水産は20年3月期に前期比4.5%増の265億円に伸びるうえ、配当も前期比0.5円増の8.5円に増配するとしています。
ここでの注目点は見事に連結経常利益が265億円で並んでいることです。
両社のライバル意識の強さが決算予測から見て取ることができます。
また株価は過去3年間のPER平均が12.2倍であることを考えると、現在のPER10倍は割安な水準で業績期待とともに過去平均PERを回復することで3900円程度が妥当。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からマルハニチロの今後の株価推移を分析してきました。
2015年に急激に業績が好転したばかりの出遅れ銘柄であるマルハニチロは「買い」であると判断することができます。
さらに共働き家庭の増加から、加工食品業界の業績は向上していくものと考えられます。
業績次第では、積極的に買いたいお宝銘柄であるといえるでしょう。
■ 投資判断基準:やや買
▷業績が安定している反面株価のみ下落しており若干の割安感がある。過去平均PERから考えて3900円程度が妥当か。(2019年5月29日現在3300円)
■ 業績見通し:
▷景気によらず安定した業績でディフェンシブ銘柄の特徴を備えている
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ROE、ROAともに高い水準。直近3年はROEは15%近辺で安定している。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷日経平均の中では割安でPERは10倍程度
■ 他社との比較:
▷水産業種の競合である日本水産と比較すると割安度は同水準。
以上、マルハニチロ(1333)の業績推移と株価の見通しを予測!今後の共働き世代の増加で需要は増大か?…でした。
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