今回は、おいしい牛乳やミルクチョコレート等で有名な明治を主要事業として傘下に持つ明治HDの分析します。
明治HD株の購入判断としては、中長期目線では買い推奨です。
短期的には日経平均など日本市場全体の動きに引っ張られるためダウンサイドが大きいです。
しかし、堅調な業績が継続していることが、「買い」の理由となります。
■ 投資判断基準:中長期では『買い』
競合他社や過去平均PERの水準から10,000円〜11,000円程度が妥当な水準と予想し中長期では買い推奨。
■ 業績見通し:
▷2019年3月期は堅調に推移しており、2020年3月期も現時点でリスク要因はあまり無い。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷欧米企業にも引けを取らない効率的な利益体質。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷予想PERは現状株価で17倍台と業界水準では割安。PBRは2倍近辺。
■ 他社との比較:
▷業界他社比でROEが高く、高収益体質であり配当利回りも2%近い。
■ 事業の傾向・特徴:
▷収益全体の85%程度が食品等であり、内需型で業績のブレが少ない。
明治HDとは?
現在は統合して「株式会社明治」になっています。
しかし元は、おいしい牛乳やブルガリアヨーグルト等の「明治乳業」とミルクチョコレートやマーブルチョコ等の「明治製菓」を主力事業とした、みんなが知っている日常の生活には欠かせない企業です。
あまり知られていないかもしれませんが、創業は明治ではなく、大正5年(1916年)で2016年に100周年を迎えた老舗企業で、食品関連の企業では数少ないのですが、売上高も1兆円を超えています。
それでは直近10年の業績と株価水準について詳しく見ていきましょう。
過去10年の業績推移(PL)
まずは一番重要な過去10年の『売上高』『営業利益』『経常利益』『純利益』について見ていきます。

さきほども紹介しましたが、明治HDは食品系の企業としては数少ない売上高1兆円超の企業です。
売上高1兆円超という巨大企業です。
しかし、毎期1〜1.5%程度堅調に業績が拡大しており、2020年3月期予想では営業利益も1,000億円の大台を超える見込みとなっています。
国内事業が堅調な需要に支えられていることに加え、業界をリードする商品が多いことから原材料費の高騰についても一定程度価格に転嫁することができていることで安定的に成長することができています。
バフェットの指摘する原料費高騰を価格に転嫁することができる消費者独占的企業の特徴を備えているということができますね。
また、以下の通り、まだまだ200億円程度の売上ではありますが、中国事業についても前期比15%成長予想となっており、期待できます。
中国では、日用品での日本製品人気が続いており、食品においても今後拡大していくことが予想されます。
結果、一株あたり利益(EPS)も順調に伸びてきており、過去最高を更新する見込みになっています。
配当利回りは、2%前後と消して高くはありません。
しかし、平均並みで、これだけの安定成長をしている企業であれば良い水準だと言えます。


明治HDのROEは高水準
では、投資に対する収益性の面ではどうでしょうか。
以下は過去10年間の明治HDのROEとROAですが、直近ではROEは10%-15%程度となっています。
だいたい欧米企業のROEは10%が平均と言われていますので、合格点ですね。
また、後ほど紹介しますが、食品系の他企業では10%を割り込むことが多く、業種的にはかなり高水準、効率的な利益体質であると言えます。


PERとPBR水準から割安な株価
次に株価水準について見ていきましょう。
まずは、PER(=株価÷一株あたり利益:EPS)です。
以下の過去3年間グラフの通り、アベノミクス相場で一次上昇をして割高感が強かったものの、足元は17倍程度まで下がってきています。
この数字だけだと、平均13〜15倍程度のPERが17倍ということで割高に感じます。
しかし、食品業界という特殊な業界で見てみると、競合他社は20倍を超えている水準であり、業界平均からすると割安と判断することだできると思います。


(引用:Yahooファイナンスデータ)
今後も安定的に利益を伸ばしていくと考えると、PERの分母である一株あたり利益が伸びていきます。
つまり、PERは下がっていくと考えられます。
業界平均と比べながら適正な水準を見ていくのが良いです。
次にPBRです。
以下は、過去3年のPBRのグラフですが、こちらもPER同様に直近下がって安定してきており、約2倍の水準です。
こちらも業界水準で見ると、平均的と言えます。


(引用:Yahooファイナンスデータ)
PERとPBRについては、単体で見ると一見割高に感じる水準です。
しかしながら、業界平均と照らし合わせて考えると、明治HDは割安と判断することができます。
競合他社比較
明治HDと同じ食品系の業界の企業である、日清食品、味の素、ヤクルトをいくつかの指標で比較しておきましょう。
時価総額は、明治HDがNo.1ですね。
配当利回りもさきほどあまり高くは無いと紹介しましたが、食品業界では高水準と言えます。
ROEについては明治HDが最も高水準で、予想PERについては、各社高い水準になっています。
そのことからも、明治HDの17倍は比較的割安な水準であることが分かると思います。
明治HD | 日清食品 | 味の素 | ヤクルト | |
株価 | 8,120.0 円 | 6,720.0 円 | 1,935.5 円 | 6,600.0 円 |
売買単位 | 100 株 | 100 株 | 100 株 | 100 株 |
時価総額 | 12,398 億円 | 7,103 億円 | 10,629 億円 | 11,289 億円 |
予想PER | 17.5 倍 | 26.9 倍 | 21.2 倍 | 29.0 倍 |
PBR | 2.23 倍 | 2.14 倍 | 1.74 倍 | 2.96 倍 |
予想配当利回 | 1.72% | 1.64% | 1.65% | 0.70% |
実績配当利回 | 1.72% | 1.64% | 1.65% | 0.67% |
ROE | 11.73% | 5.92% | 4.86% | 9.78% |
ROA | 6.16% | 3.47% | 2.13% | 5.65% |
自己資本比率 | 52.50% | 58.60% | 43.80% | 57.80% |
また、これは、食品業界のどの企業にも言えることですが、自己資本比率が概ね50%を超えています。
通常、50%程度を超えていると優良企業と言われる水準です。
食品業界は基本的には自己資本をしっかり持っていて強靭な財務体質にあると言えそうです。
ROEやPERの水準を考えると、明治HDがいかに安定して成長をしながら、効率よく経営されているかということが分かります。
以下は、明治HDの決算説明資料の2019年度計画ですが、これを見ていただくと食品部門の売上だけで約85%を占めていることが分かります。
基本的には、長期に投資する上でその企業の事業が多角化されている方がリスクが分散されており好感が持てます。
しかし、食品業界においては、内需型の業界であるため、そこまで大きく主力事業が傾くことは無いと考えられます。
むしろ安定した事業が売上の約85%を占めているということが安定成長の根幹となっていると考えられます。
加えて、アジア事業(中国事業)が伸びていけば、グローバルにリスクを分散することができます。
つまり、より事業の安定性が強くなるといえるでしょう。
株価見通し
EPSは2020年3末期でEPSは465.4円まで上昇することが見込まれています。
一方現在のPERは業界平均よりも、今までの明治の水準から考えても低い水準となっています。
業界平均PER23.65倍ベースで考えると11,0000円程度。
明治の過去平均PER22倍ベースで考えると10,238円程度が適正となります。
まとめ
明治HDは、国内の安定的な需要により、堅調に成長していることに加え、今後アジア事業にも期待できます。
また、食品業界を中心に考えた場合でも、競合他社の中で各種指標が良い水準であり、内需株に投資をしたいと考える方の1つのポートフォリオとしてもおすすめです。
短期的にも現在の株価水準は割安と言えます。
しかし、全体の株式市場の動きに引きずられる傾向にあるため、短期的に投資をして収益を狙うよりは、しっかりと業績を見て長期に投資をする対象として考えるのが良いでしょう。
■ 投資判断基準:中長期では『買い』
競合他社や過去平均PERの水準から10,000円〜11,000円程度が妥当な水準と予想し中長期では買い推奨。
■ 業績見通し:
▷2019年3月期は堅調に推移しており、2020年3月期も現時点でリスク要因はあまり無い。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷欧米企業にも引けを取らない効率的な利益体質。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷予想PERは現状株価で17倍台と業界水準では割安。PBRは2倍近辺。
■ 他社との比較:
▷業界他社比でROEが高く、高収益体質であり配当利回りも2%近い。
■ 事業の傾向・特徴:
▷収益全体の85%程度が食品等であり、内需型で業績のブレが少ない。
以上、明治HD(2269)の株価を業績推移と見通しを基に予想!安定の内需基盤に加え、アジア事業に期待。…の話題でした。
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