三菱地所は三井不動産とともに日本の不動産業界をけん引する大手の不動産企業です。
三菱地所プロパティマネジメントや三菱地所レジデンス、三菱地所設計等もグループ内に属しています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から三菱地所の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:長期的に『買い』
以下の点を総合的に勘案し長期的に4,000円(現状2,000円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比8.4%増の2065億円、20年3月期は前期比0.2%増の2070億円の見通しと業績に安定感があること。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAが安定してきていること。
▷ 予想PBRは1.64 倍で割安水準。
■ 競合他社比較:
▷ 不動産セクター全体の業績が良いこと。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期1円の増配を実施
Contents
三井不動産と双璧をなす三菱地所とは?
大手の不動産会社である三菱地所。
ここでは三菱地所の業務内容を紹介していきたいと思います。
①:ソリューション営業グループ
ソリューション営業グループは三菱地所グループの全社総合営業窓口としてサービスを提供しています。
②:生活産業不動産事業
全国での商業施設・物流施設の開発・運営や新規事業を含めた国内のオフィス・住宅・ホテルを除くあらゆるアセットタイプの開発を行っています。
③:海外事業
米国・英国での不動産賃貸・開発事業や、近年ではアジアにも進出しています。
④:設計監理事業
建築・土木の設計・監理をはじめ、リノベーション業務、都市・地域開発関連業務、各種コンサルティング業務等を行っています。
⑤:不動産サービス事業
不動産の仲介・コンサルティング事業も提供しています。
⑥:ビル事業
国内の主要都市でオフィスビルの開発と運営管理を行っています。
⑦:住宅事業
住宅開発から、賃貸管理のサポートまで一貫したサービスを提供しています。
⑧:投資マネジメント事業
不動産での資産運用を考える世界中の投資家に対し、長期・安定的な運用ニーズに対応するリートから、
機関投資家を対象とした特定の運用ニーズに対応する私募ファンドまで幅広い運用サービス提供しています。
⑨:ホテル・空港事業
観光立国に向けて2018年4月に新設されたセクターです。
三菱地所の過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表する不動産企業である、三菱地所の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | EPS | BPS |
2007/03 | 947,641 | 166,165 | 151,674 | 97,662 | 70.4円 | 908.9円 |
2008/03 | 787,652 | 177,983 | 162,061 | 86,963 | 62.7円 | 969.5円 |
2009/03 | 942,626 | 138,567 | 108,624 | 45,423 | 32.7円 | 826.4円 |
2010/03 | 1,013,415 | 148,972 | 117,381 | 11,900 | 8.6円 | 853.4円 |
2011/03 | 988,447 | 158,258 | 130,830 | 64,219 | 46.3円 | 865.5円 |
2012/03 | 1,013,069 | 146,299 | 120,665 | 56,512 | 40.7円 | 903.9円 |
2013/03 | 927,157 | 118,349 | 92,381 | 45,507 | 32.8円 | 893.0円 |
2014/03 | 1,075,285 | 161,271 | 139,638 | 64,297 | 46.3円 | 957.4円 |
2015/03 | 1,110,259 | 156,332 | 133,113 | 73,338 | 52.8円 | 1,077.6円 |
2016/03 | 1,009,408 | 166,199 | 144,851 | 83,426 | 60.1円 | 1,087.6円 |
2017/03 | 1,125,405 | 192,495 | 169,851 | 102,681 | 74.0円 | 1,147.4円 |
2018/03 | 1,194,049 | 213,047 | 190,506 | 120,443 | 86.8円 | 1,223.5円 |
2019/03 | 1,263,283 | 229,178 | 206,587 | 134,608 | 97.0円 | 1,275.5円 |
2020/03予 | 1,360,000 | 230,000 | 207,000 | 137,000 | 98.7円 | -円 |
わかりやすく図示すると以下となります。

三菱地所の業績は安定感があります。
売上高は787,652百万円~1,263,283百万円と2008年に底打ち後、上下しながらも順調に伸びています。
比較して、本業を表す営業利益は2013年に底打ちして以降、きれいな右肩上がりに推移しています。
よって三菱地所の業績は「問題なし」であるということができます。
三菱地所が5月14日に決算を発表しました。
19年3月期の連結経常利益は前の期比8.4%増の2065億円、20年3月期は前期比0.2%増の2070億円と、4期連続で過去最高益を更新する見通しであると公表しています。
三菱地所は4期連続増収、5期連続増益です。
また配当に関しては、前期の年間配当を26円→30円に増額し、今期も前期比1円増の31円に増配するとしています。
三菱地所のROEとROA
三菱地所のROEとROAは2010年を底にして上向きに推移しています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 7.74% | 2.83% |
2008/03 | 6.46% | 2.01% |
2009/03 | 3.96% | 1.03% |
2010/03 | 1.00% | 0.27% |
2011/03 | 5.35% | 1.51% |
2012/03 | 4.50% | 1.29% |
2013/03 | 3.67% | 0.97% |
2014/03 | 4.84% | 1.35% |
2015/03 | 4.90% | 1.50% |
2016/03 | 5.53% | 1.57% |
2017/03 | 6.45% | 1.87% |
2018/03 | 7.09% | 2.08% |
2019/03 | 7.60% | 2.33% |
2020/03予 | 7.74% | 2.37% |
図にすると以下となります。

三菱地所のROEとROAは2010年を底にして上向きに推移しています。
ROEは底打ち後、1.00%~7.60%で推移しています。
しかし日本の東証一部の平均値は8%です。まだ伸びしろがあるといえます。
またROAですが、底打ち後0.27%~2.33%で推移しています。
直近2年間は日本の東証一部の平均値である2%を超えて推移していることから、安定感が出てきているといえます。
三菱地所の中期経営計画(2018/3期~2020/3期)
三菱地所は2020年3月期に向けた『中期経営計画』を発表していますので内容を見ていきましょう。
①:基本戦略
- 強みの拡大再生産
- 経営資源の徹底的な最有効活用
- 意思決定の質とスピードの向上
②:数値目標
- 営業利益 2,200億円
- うち海外利益 約350億円
- ROA 3.5%程度
2020年度の予測として営業利益が2,300億円となっているため、営業利益は目標達成可能であるといえます。
しかし予想ROAが2.37%となっているため、さらなる努力が必要であるといえます。
三菱地所のテクニカル分析
ここでは三菱地所は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
三菱地所の過去10年の株価推移
下図は三菱地所の過去10年間の株価推移です。
日経平均株価とも業績とも比例しない独特な株価を形成していることがわかります。

また同業である、三井不動産と似た株価推移をしていることもわかります。
よって、不動産セクターは株価が連動しやすい傾向があることがわかります。
三菱地所のテクニカル分析
下図は三菱地所の月足チャートですが、非常に興味深いチャートであるといえます。

2013年にアベノミクス政策の「国策」として不動産セクターが買われましたが、
その時の上昇は「ネタ」によって分厚い雲を無理にぶち抜く上昇であったことがわかります。
そして今回変化日を雲の下で迎えていますが、下のMACDをご覧ください。
長らく続いた0ライン以下での株価推移が終わりを迎えようとしています。
次に三菱地所がゼロライン以上で株価を上昇させることができれば本格的な長期上昇相場が到来することがわかります。
よって、テクニカル的に非常に面白い銘柄であるといえます。
テクニカルから見た三菱地所
実は三菱地所は週足では雲抜け済みです。

変化日は2019年の11月あたり、基準値1,915円です。
変化日をうまくクリアできれば、三菱地所は上昇トレンドに転換する可能性が高いといえます。
よって、テクニカル的に三菱地所は「買い」と判断することができます。
三菱地所の競合他社比較
三菱地所(8802)を同業である東京建物(8804)、住友不動産(8830)、三井不動産(8801)と比較検討していきます。
▷ 【8801】大手不動産の一角『三井不動産』の業績推移とテクニカル面から今後の株価を予想する。
三菱地所 | 東京建物 | 住友不動産 | 三井不動産 | |
PER | 21.1 倍 | 9.0 倍 | 13.9 倍 | 15.8 倍 |
PBR | 1.64 倍 | 0.70 倍 | 1.61 倍 | 1.14 倍 |
配当利回り | 1.49% | 3.24% | 0.78% | 1.61% |
ROE | 7.60% | 7.84% | 10.83% | 7.20% |
ROA | 2.33% | 1.88% | 2.55% | 2.48% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。
よって三井不動産と三菱地所は買われすぎ、住友不動産は平均並み、東京建物は割安とセクターでばらつきがあるといえます。
②:PBR
東京建物の0.70 倍~住友不動産の1.61 倍と日経平均株価の平均PBRの2倍以下になっているため、不動産セクターは割安であるといえます。
③:配当利回り
配当利回りは住友不動産の0.78%~東京建物の3.26%とセクターでばらつきがあります。
④:株主優待
株主優待は全社設定されていません。
⑤:決算予測
ⅰ 三菱地所
19年3月期の連結経常利益は前の期比8.4%増の2065億円、20年3月期は前期比0.2%増の2070億円の見通し。
ⅱ 東京建物
18年12月期の連結経常利益は前の期比6.6%増の420億円、19年12月期も前期比2.3%増の430億円に伸びる見通し。
ⅲ 住友不動産
19年3月期の連結経常利益は前の期比9.3%増の2042億円、20年3月期も前期比7.7%増の2200億円に伸びる見通し。
ⅳ 三井不動産
19年3月期の連結経常利益は前の期比5.7%増の2541億円、20年3月期は前期比3.2%減の2460億円に減る見通し。
2020年に減益予測であるのは三井不動産のみです。よってセクター的に業績は好調をキープしているといえます。
⑥:競合他社比較総合
好業績の不動産セクター。
割安度と配当から東京建物が一歩リードしているといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から三菱地所の今後の株価推移を分析してきました。
三菱地所はファンダメンタル・テクニカル両面から「買い」です。
テクニカルでタイミングを計りながら、効率よく投資したい銘柄であるといえます。
■ 投資判断基準:長期的に『買い』
以下の点を総合的に勘案し長期的に4,000円(現状2,000円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比8.4%増の2065億円、20年3月期は前期比0.2%増の2070億円の見通しと業績に安定感があること。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAが安定してきていること。
▷ 予想PBRは1.64 倍で割安水準。
■ 競合他社比較:
▷ 不動産セクター全体の業績が良いこと。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期1円の増配を実施
以上、【8802】好業績と裏腹に株価が低迷する三菱地所が『買い』である理由を徹底解説!…でした。
コメントを残す