日揮は日本最大手の建設エンジニアリング企業です。
日本だけではなく海外でも数多くの石油・ガス、化学、発電等プラントなどを建設しています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日揮の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:『売り』
▷ 以下の点を総合的に勘案し1,000円〜1400円程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 20年3月期は前期比19.5%減の260億円との見通しであること。
■ 株主還元策の動向:
▷ 前期比16.5円減の12円に大幅減配を実施。
Contents
【企業情報】日揮とは?
日揮は世界屈指のエンジニアリングコントラクターです。
設立以来、世界80カ国以上、2万件におよぶプロジェクトを遂行してきた世界的にも高い実績がある日本のテクノロジーを代表する企業といえます。
業務内容は「製品を作るための製造設備を造る事」です。
具体的には原油・ガス集積、分離、生産・オフショア・石油精製・LNG・石油化学・ガス化学・LNG受入基地・火力発電・原子力発電・再生可能エネルギー発電・非鉄製錬・環境保全・医薬品・研究所メディカル・アグリカルチャー・空港など事業分野は多岐にわたっています。
日揮の過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表するエンジニアリング企業である、日揮の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 608,529 | 26,413 | 33,029 | 20,187 |
2008/03 | 551,062 | 44,896 | 46,837 | 30,019 |
2009/03 | 450,911 | 52,003 | 49,388 | 31,543 |
2010/03 | 414,257 | 41,919 | 40,829 | 27,112 |
2011/03 | 447,222 | 63,559 | 63,395 | 25,477 |
2012/03 | 556,966 | 67,053 | 72,550 | 39,111 |
2013/03 | 624,637 | 64,123 | 72,489 | 46,179 |
2014/03 | 675,821 | 68,253 | 83,675 | 47,178 |
2015/03 | 799,076 | 29,740 | 44,867 | 20,628 |
2016/03 | 879,954 | 49,661 | 52,047 | 42,793 |
2017/03 | 693,152 | -21,496 | -15,215 | -22,057 |
2018/03 | 722,987 | 21,495 | 24,927 | 16,589 |
2019/03 | 619,241 | 23,249 | 32,304 | 24,005 |
2020/03予 | 500,000 | 19,000 | 26,000 | 10,000 |

日揮の売上高は2010年に底打ちしてから2016年まで上昇していました。
しかし、2016年を境に売上高が鈍化しています。
また本業の成績を表す営業利益ですが、2014年に天井をつけたあと一時期マイナスに転換しています。
その後2018年から2期連続で業績は回復傾向に向かいました。
しかし、2020年3月期は前期比19.5%減の260億円に経常利益が再度減少する見通しになっていることから、業績の回復の糸口が見えていない状況であるといえます。
セクター別にみると、日揮の主力セクターである石油精製関係とLNG関係の売上高が右肩下がりに推移しています。
よって、業績の立て直しが容易ではないことがわかります。

地域別の売上高を見ると、アジアとオセアニアでの売上高が激減していることがわかります。
特にオセアニアは2018年から2019年にかけておよそ1/5となっています。
またアジアも2017年に急減してから、回復する見込みが数値方読み取ることができません。
資源国・新興国での設備建設が日揮の主力業務であることから、アジア・オセアニア地区での売上高減少は、企業にとって深刻な問題であることがわかります。
日揮が5月14日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常利益は前の期比29.6%増の323億円に伸びていますが、20年3月期は前期比19.5%減の260億円になると公表しています。
また配当に関しては前期の年間配当を25円→28.5円に増額し、今期は前期比16.5円減の12円に大幅減配するとしています。
今期の減配率が高すぎることから、日揮の経営状況が緊迫していることがわかります。
日揮のROEとROA
下記の表は過去10年間の日揮のROEとROAの推移です。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 10.68% | 4.29% |
2008/03 | 14.45% | 6.43% |
2009/03 | 14.09% | 6.57% |
2010/03 | 11.04% | 6.30% |
2011/03 | 9.66% | 5.44% |
2012/03 | 13.47% | 7.43% |
2013/03 | 13.76% | 7.34% |
2014/03 | 12.59% | 6.32% |
2015/03 | 5.32% | 2.87% |
2016/03 | 10.22% | 6.20% |
2017/03 | -5.77% | -3.41% |
2018/03 | 4.20% | 2.42% |
2019/03 | 5.87% | 3.39% |
2020/03予 | 2.44% | 1.41% |

ROEは-5.77%~14.45%と非常に大きな幅で推移していることがわかります。
またROAも-3.41%~7.43%と大きな幅で動いています。また2020年の予想ROEは2.44%、ROAは1.41%になっています。
日本の東証一部の平均ROEが8%、ROAが2%台であることと比較すると、
日揮のROEとROAは現状平均よりも低い水準で推移していることがわかります。
日揮の中期経営計画「Beyond the Horizon」

日揮では2016年度から2020年度を対象とする中期経営計画「Beyond the Horizon」を策定しています。
これにより2017年度を底として2018年から業績が回復傾向に向かっています。
ここでは日揮の中期経営計画「Beyond the Horizon」をご紹介していきます。
中期経営計画「Beyond the Horizon」が目指すもの
中期経営計画「Beyond the Horizon」では新たな企業体への進化をさらに加速させ、
10年後の2025年にその変貌を達成させるための5ヶ年の基本方針と事業戦略、および数値目標を掲げています。
いうなれば、「Beyond the Horizon」は次のステージに向けた基礎固めといえるでしょう。
「Beyond the Horizon」の数値目標と達成度
2016年実績 | Beyond the Horizon | 現状(2019年) | |
売上高 | 8,799億円 | 1兆円以上 | 6,192億円 |
当期純利益 | 427億円 | 600億円 | 240億円 |
ROE | 10.6% | 10%以上 | 6% |
目標に届かないどころか、2016年の数値を大幅に下回っていることがわかります。
よって、目標になぜ未達であるのかを分析したうえで、根本的に中期計画を立て直す必要があることがわかります。
株主に企業の将来性をアピールする中期経営計画ですが、日揮の場合は将来に対する不安感を抱かせてしまう内容になっているといえます。
日揮のテクニカル分析
ここでは日揮は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
日揮の過去10年の株価推移

上記は日揮の過去10年間の株価推移です。
まさに業績に沿った株価推移をしていることがわかります。
日経平均株価がアベノミクスの開始から、8,000円→24,000円と3倍に上昇したにも関わらず日揮はアベノミクス開始水準に止まっています。
日揮のテクニカル分析

10年来安値である1,267円を2019年5月に1,260円と更新しています。
まさに底なし沼の様相です。
またテクニカル的にも雲(ピンクの部分)が分厚いため、よほどのネタがない限り上昇は難しくなっています。
テクニカルから見た日揮
直近安値を更新していることからも、「売り」判断です。
テクニカル・リバウンドをうまくたたいていく展開になるでしょう。
日揮の競合他社比較
日揮(1963)を同業である千代田化工建設(6366)、東洋エンジニアリング(6330)と比較検討していきます。
日揮 | 千代田化工建設 | 東洋エンジニアリング | |
予想PER | 38.0 倍 | 13.4 倍 | 8.9 倍 |
PBR | 0.93 倍 | -1.34 倍 | 0.84 倍 |
予想配当利回り | 0.80% | 0.00% | 0.00% |
実績配当利回り | 1.89% | 0.00% | 0.00% |
ROE | 5.87% | - % | -2.26% |
ROA | 3.39% | -61.01% | -0.34% |
自己資本比率 | 57.70% | -17.10% | 15.10% |
①:PERとPBR
まずPERですが、日経平均株価のPERが13~14倍です。
これと比較した場合、日揮は38倍とPERでは買われすぎの水準であるといえます
。また千代田化工建設は13.4倍と平均並み、東洋エンジニアリングは8.9倍とセクターでばらつきがあることがわかります。
次にPBRですが、日経の大型株の平均値が2倍です。
これと比較した場合、日揮は0.93倍、千代田化工建設は-1.34倍、東洋エンジニアリングは0.84倍とPBRはセクター全般で割安な水準であることがわかります。
②:配当利回り
日揮は0.80%、千代田化工建設と東洋エンジニアリングは無配当です。
③:株主優待
3社ありません。
④:決算予測
ⅰ.日揮
19年3月期の連結経常利益は前の期比29.6%増の323億円に伸びていますが、20年3月期は前期比19.5%減の260億円になる見通し。
ⅱ.千代田化工建設
19年3月期の連結最終損益は2149億円の赤字に転落、20年3月期は60億円の黒字に回復する見通しになっています。
なお、前期末は601億円の債務超過に陥っています。
ⅲ.東洋エンジニアリング
19年3月期の連結経常損益は34.2億円の黒字、20年3月期の同利益は前期比12.4%減の30億円に減る見通し。
決算を見ると、エンジニアリング・セクター全般が業績不振に陥っていることがわかります。
千代田化工建設は「債務超過」に陥っており、上場廃止も懸念される状況です。
⑤:競合他社比較総合
日揮の業績単体で見ても「悪い」のがわかりますが、セクターの業績は日揮以上に深刻であることがわかりました。
セクター的に買い向かえる分野ではありません。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日揮の今後の株価推移を分析してきました。
日揮はファンダメンタルとテクニカル両面から「売り」判断です。底が見えない状況であるため、逆張りは控える場面だといえます。
しかし、日揮は世界に誇るエンジニアリング企業です。業績の落ち着きを見極めたうえで、安値を狙いたい企業であるといえます。
■投資判断基準:『売り』
▷ 以下の点を総合的に勘案し1,000円(現状1,396円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 20年3月期は前期比19.5%減の260億円との見通しであること。
■ 株主還元策の動向:
▷ 前期比16.5円減の12円に大幅減配を実施。
以上、【1963】最大手建設エンジニアリング『日揮』の株価推移を見通す!業績の低迷が大きな重し。…でした。
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