ニコンは大手の光学機器メーカーです。
主に、カメラ、デジタルカメラ、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡、ステッパー、メガネ、測定機、測量機、光学素材、ソフトウェアなど光学関連装置を取り扱っています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からニコンの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:中期は様子見、長期的に『買い』
▷ 以下の点を総合的に勘案し長期的に5,000円(現状1,500円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の税引き前利益は前の期比56.3%増の879億円、20年3月期は前期比37.4%減の550億円に減る見通しであること。
■ 指標から分析
▷ ROEが2010年と2017年でW底を形成してV字回復中。予想PERは14.2倍で妥当水準、予想PBRは0.97 倍で割安水準。
■ 他社との比較:
▷ 20年の見通しが他社と比較して見劣りはするが、中期経営計画の新規収益分野で成功を収めることができた場合、業績が飛躍的に向上する可能性を秘めている。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期自社株買いを実施。
Contents
【企業情報】ニコンとは?
ニコンは日本を代表する光学機器メーカーです。
ここではニコンの4つの事業についてご紹介していきます。
とらえる
一瞬を切り取るカメラや、見たいものを目の前に引き寄せられる双眼鏡などの「光をとらえる」製品を提供しています。
つくる
微細な半導体回路パターンや液晶パネル・有機ELパネルの駆動回路パターンを、
光で焼き付ける半導体露光装置とFPD露光装置などの「光でつくる」技術と精密技術を駆使することで、超スマート社会の実現を支えています。
はかる
非破壊や非接触による寸法・形状の高精度測定/検査システムなど「光ではかる」製品で高度なものづくりを支えています。
みる
細胞レベルでの生命現象をライブ観察できる顕微鏡や、網膜の画像を捉えて眼疾患の診断をサポートする検眼鏡など「光でみる」製品によって、観るや診るをサポートしています。
ニコンの過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本を代表する光学機器メーカーである、ニコンの過去10年間の業績推移を見ていきます。

上記はニコンの過去10年間の業績推移です。売上高は2010年にいったん底打ちし回復傾向にありましたが、2013年を天井として再度下降に向かっています。
また本業の成績を表す営業利益も同様の傾向がありましたが、売上高と違い2017年を底といて現在回復傾向にあります。
ニコンの業績は、安定感がなく混迷している状態といってよいでしょう。
ニコンの2019年3月期決算分析
ニコンが5月9日に発表した決算によると、19年3月期の税引き前利益は前の期比56.3%増の879億円、しかし一転し20年3月期は前期比37.4%減の550億円になると公表しています。
また決算と同時に自社株買いも発表しています。
≪自社株買いの内容≫
・取得する株式の総数 800 万株(上限)
・株式の取得価額の総額 100 億円
・取得期間 2019 年5 月10 日~2019 年6 月30 日
ニコンのROEとROA
ニコンのROEとROAの推移は営業利益同様に2010年と2017年のW底を形成しています。

ニコンのROEは-3.39%~19.20%の幅で動いていることがわかります。
また直近2年間は6%以上と安定してきていますが、日本の東証一部の平均値である8%を超えたことがないため、まだ改善の余地があるといえます。
比較してROAは-1.70%~9.20%の幅で動いていることがわかります。
ROAもROE同様、日本の東証一部の平均値である2%を2年間超えて推移していますが安定感にかけるため、いまだに改善の余地があるといえます。
ニコンの中期経営計画「TASK 3·2·1」
ニコンは決算の前日である2019年5月9日に中期経営計画を公表しています。ここではニコンの中期経営計画についてご説明していきます。
2021年度までの新たな収益の柱の創出
ニコンでは新たな収益の柱として、市場規模が大きく成長が見込める領域であること及びリーダーシップポジションの獲得が可能であるとのことから「材料加工事業」に注力するとしています。

具体的には、「材料加工事業」分野は工作機械の市場規模は約4兆円で、先進国・新興国の双方で、5%/年程度の成長が見込んでいます。
また3Dプリンターの市場規模は、2026年までに約5,500億円規模となり、20%/年程度の成長が見込まれています。
数値目標
ニコンでは数値目標として2021年度にはROE 8%以上、また2023年度以降は安定的にROE 10~12%を目指すことを目標としています。
20年の予測ROEは6.82%と前年度よりも4%ダウンしているため、目標を達成するためにはさらなる経営努力が必要であるといえるでしょう。
見てきたようにニコンでは成長が見込まれる分野に新たな収益の柱を作ろうとしていることがわかります。
これが成功すれば、ニコンは今後安定した企業経営が可能になり、株価も上昇していくと考えられます。
ニコンのテクニカル分析
ここではニコンは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
ニコンの過去10年の株価推移
下記はニコンの過去10年の株価推移です。完全に1,305円~2,971円のレンジ相場になっていることがわかります。

このことから、ニコンは混迷する業績を反映して、日経平均株価に連動せずに、独自の株価を形成していることがわかります。
ニコンのテクニカル分析
現在レンジ相場のニコンですが、テクニカル的には大きな岐路が近づいているといえます。

2019年の11月末がポイントです。大きな変化日があることが見て取れます。
ここで1,900円を超えて上昇していければ、長期の大相場が開始される可能性が高くなるといえます。
ポイントは2点です。最初のポイントは直近高値の2,396円です。
ここをブレイクすると、W底が形成され、上値ターゲットは3,500円前後になります。
すると次のポイントである2,971円を抜くことになるため、長期的に5,000円あたりを目指すことになります。
テクニカルから見たニコン
前述したように、ニコンの相場の肝は2019年の11月末です。ここで上値抵抗である雲を抜くことができれば、大きく化ける可能性の高い銘柄であるといえます。
よって、テクニカル的には、変化日まで様子見、その後雲を抜いた場合は「買い」判断になります。
ニコンの競合他社比較
ニコン(7731)を同業であるコニカミノルタ(6301)、オリンパス(4902)と比較検討していきます。
ニコン | コニカミノルタ | オリンパス | |
PER | 14.2 倍 | 10.8 倍 | 28.1 倍 |
PBR | 0.97 倍 | 0.89 倍 | 4.01 倍 |
配当利回り | 3.98% | 3.01% | 0.77% |
ROE | 10.80% | 7.51% | 1.85% |
ROA | 5.86% | 3.42% | 0.87% |
PERは日経平均と同水準
日経平均株価の平均PER13~14倍ですので、オリンパスは割高といえます。
オリンパスが28.1倍と割高になっているのは、下方修正を2度も出したためと考えられます。
PBRは1倍以下の割安水準
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
下方修正を連打しているオリンパス以外は1倍以下と割安圏といってよいでしょう。
配当利回りは4%近い水準
配当利回りはニコンの3.98%が他社を圧倒しているといえます。
ニコンは株主優待は無し
コニカミノルタのみ株主優待が存在します。
株主優待の内容は9月の基準日に100株以上保有している株主に対し、自社製カレンダーが配布されます。
各社決算予測
ⅰ.ニコン
19年3月期の税引き前利益は前の期比56.3%増の879億円、20年3月期は前期比37.4%減の550億円に減る見通し。
ⅱ.コニカミノルタ
19年3月期の連結最終利益は前の期比29.3%増の417億円、20年3月期も前期比9.1%増の455億円に伸びる見通し。
ⅲ.オリンパス
19年3月期の連結税引き前利益は前の期比73.8%減の201億円、20年3月期は前期比4.3倍の860億円に急拡大する見通し。
競合他社比較総合
割安度、業績を加味し検討した場合、コニカミノルタが一歩リードしているといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面からニコンの今後の株価推移を分析してきました。
ニコンは現在、テクニカル・ファンダメンタル両面から「様子見」の状態です。
ただし、他業種と比較して出遅れているのは確かですので、投資対象としては面白い銘柄であるといえます。
よって変化日の11月を見据えて、じっくりと長期で取り組んでみたい銘柄といえるでしょう。
■投資判断基準:中期は様子見、長期的に『買い』
▷ 以下の点を総合的に勘案し長期的に5,000円(現状1,500円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の税引き前利益は前の期比56.3%増の879億円、20年3月期は前期比37.4%減の550億円に減る見通しであること。
■ 指標から分析
▷ ROEが2010年と2017年でW底を形成してV字回復中。予想PERは14.2倍で妥当水準、予想PBRは0.97 倍で割安水準。
■ 他社との比較:
▷ 20年の見通しが他社と比較して見劣りはするが、中期経営計画の新規収益分野で成功を収めることができた場合、業績が飛躍的に向上する可能性を秘めている。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期自社株買いを実施。
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