陸運・海運・空運と全ての輸送モードを展開している総合物流の最大手企業日本通運。
「日通で運べない物はない」といわれるほど、幅広い分野の運送サービスを提供しています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日本通運の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:中期的に「様子見」、長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し長期的に12,000円(現状5,800円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比15.3%増の858億円。
▷ 20年3月期は前期比14.9%減の730億円に減る見通しであることから、中期は様子見が得策であること。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAの安定感が高いこと。
▷ 予想PER 12.1 倍、予想PBRは1.00倍でともに割安水準。
■ 他社との比較:
▷ セクターで割安の出遅れ銘柄であること。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期10円の増配を実施
▷ 2019年6月28日のIR「投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について」にて、現在5,800円と買いにくい価格であることを勘案し、何等の対策を講じると公表したこと。
▷ 分割などが行われた場合、人気化し株価が高騰する可能性もある。
Contents
物流サービスを展開する日本通運とは?
世界的規模で物流サービスを展開している日本通運。ここでは日本通運の業務内容を紹介していきたいと思います。
①:国内輸送
日本通運でしかできない陸、海、空、すべてのモードを自由に組み合わせて最適な物流サービスを提供しています。
②:国際輸送
日本通運の収益源である国際航空貨物輸送は1000路線以上のグローバルネットワークを構築しています。
③:専門輸送
オフィスの移転、国宝級の美術品輸送、重量品の輸送・架設・建設、現金輸送など「日通で運べない物はない」と言わしめているのが、この専門輸送サービスです。
④:倉庫保管
国内No.1の倉庫面積を誇る日本通運の倉庫。
単なる倉庫の管理にとどまらず、情報システム、流通加工機能などのサービスも提供しています。
⑤:ロジスティクス・ソリューション
ⅰ 3PL
ⅱ グリーンロジスティクス
ⅲ 物流情報システム
ⅳ 物流コンサルティング
まさに世界に日本通運です。
どんなものでも、どんな国へでもモノを運ぶ日本が世界に誇れる総合物流企業といえます。
日本通運の過去10年の業績推移(PL)
ここでは世界レベルの総合物流企業である、日本通運の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 1,866,267 | 50,325 | 57,449 | 33,208 |
2008/03 | 1,901,433 | 48,502 | 55,964 | 36,439 |
2009/03 | 1,828,946 | 33,513 | 42,019 | 15,172 |
2010/03 | 1,569,633 | 37,535 | 37,753 | 12,566 |
2011/03 | 1,617,185 | 31,629 | 40,688 | 8,541 |
2012/03 | 1,628,027 | 37,497 | 47,441 | 26,949 |
2013/03 | 1,613,327 | 33,206 | 41,500 | 23,831 |
2014/03 | 1,752,468 | 40,865 | 50,156 | 26,345 |
2015/03 | 1,924,929 | 50,811 | 59,563 | 26,382 |
2016/03 | 1,909,105 | 54,778 | 62,394 | 35,659 |
2017/03 | 1,864,301 | 57,431 | 63,806 | 36,454 |
2018/03 | 1,995,317 | 70,269 | 74,395 | 6,534 |
2019/03 | 2,138,501 | 79,598 | 85,802 | 49,330 |
2020/03予 | 2,150,000 | 68,000 | 73,000 | 45,000 |
視覚化すると以下となります。

日本通運の売上高は1,569,633百万円~2,138,501百万円と比較的安定しているといえます。
2009年に宅配事業であるペリカン便から撤退を余儀なくなれましたが、その影響を業績から感じることはできません。
比較して、本業の成績を表す営業利益ですが、2011年に底打ち後、見事なV字回復を遂げています
売上高も営業利益も右肩上がりのため、日本通運の業績は好調といえます。
日本通運が4月26日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常利益は前の期比15.3%増の858億円、
20年3月期は前期比14.9%減の730億円に減る見通しであると公表しています。
また配当に関しては、前期の年間配当を145円→155円に増額し、今期も155円を継続するとしています。
日本通運のROEとROA
日本通運のROEとROAは2018年にいったん急落していますが、それを除けば、比較的安定感のある推移をしているといえます。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 7.49% | 4.08% |
2008/03 | 7.43% | 4.04% |
2009/03 | 5.37% | 2.94% |
2010/03 | 6.29% | 3.67% |
2011/03 | 6.44% | 3.69% |
2012/03 | 3.84% | 2.15% |
2013/03 | 6.58% | 3.70% |
2014/03 | 6.31% | 3.37% |
2015/03 | 6.64% | 3.47% |
2016/03 | 7.33% | 3.62% |
2017/03 | 3.35% | 1.62% |
2018/03 | 3.31% | 1.63% |
2019/03 | 4.54% | 2.29% |
2020/03予 | 7.07% | 3.56% |
グラフで可視化すると以下となります。

ROEは1.23%~9.07%と大きな波がなく推移しています。
しかし日本の東証一部の平均値である8%を超えたのが2019年だけと、まだまだ伸びしろがあるといえます。
またROAですが、0.43%~3.21%と、狭い範囲で推移していることがわかります。
よって安定感はありますが、日本の東証一部の平均値である2%付近を上下しているため、
さらなる数値の安定への努力が必要であるといえます。
日通グループ経営計画2023~非連続な成長“Dynamic Growth”~
日本通運では2019年に長期経営計画「創立100周年に向けて(2037年ビジョン)」と中期経営計画「~非連続な成長“Dynamic Growth”~」を公表しています。
長期経営計画「創立100周年に向けて(2037年ビジョン)」
~グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー~
上図から日本通運の成長戦略の要は海外売上にあることがわかります。
海外売上高比率の推移をみると、2023年25%、2028年40%、2037年50%となっており、いまからおよそ20年かけて、海外比率を倍増していく計画であることがわかります。
中期経営計画「~ 非連続な成長 “Dynamic Growth”~」
ⅰ.数値目標
売上高 | 2兆4,000億円 |
営業利益 | 1,000億円 |
営業利益率 | 4.2% |
当期純利益 | 630億円 |
海外売上高 | 6,000億円 |
ROE | 10% |
ⅱ.海外の売り上げ目標
日本 | 1兆3,400億円 |
米州 | 1,350億円 |
欧州 | 1,600億円 |
東アジア | 1,700億円 |
南アジア・オセアニア | 1,350億円 |
上記のようにエリア特性別の具体的なアプローチを立案していることからも、期待の持てる計画であるといえます。
日本通運のテクニカル分析
ここでは日本通運は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
日本通運の過去10年の株価推移

上図は日本通運の過去10年間の株価推移です。
基本的には日経平均株価に連動していますが、それ以上に美しい長期上昇波動を形成しています。
日本通運のテクニカル分析

上記のようにトレンドラインを引くとわかりやすい推移です。
特に下値はトレンドライン通りに動いていることがわかります。
懸念材料は9,130円がトレンドラインの上限に来ていないことです。

9,130円で止まってしまい、トレンドラインの上限にこれなかったことで、MACDがダイバージェンスを起こしてしまっています。
しかし、出来高を見ると、ダイバージェンスが発生したことで逃げた層はいないことがわかります。
よって、次の波が発生したときに、9,130円を抜けるのかがテクニカル的に大きなポイントになるといえます。

現在日本通運の週足(中期)は分厚い雲(上値抵抗)に押し込められています。
よって、中期は様子見して、底打ちサインor雲抜けを狙っていく場面であるといえます。
テクニカルから見た日本通運
テクニカルから見た日本通運は長期「買い」、中期「様子見」です。
週足の雲を見極めながら、長期での買いポイントを模索していく場面であるといえます。
日本通運の競合他社比較
日本通運(9062)を同業であるヤマトホールディングス(9064)と比較検討していきます。
日本通運 | ヤマトH | |
PER | 12.1 倍 | 22.4 倍 |
PBR | 1.00 倍 | 1.58 倍 |
配当利回り | 2.69% | 1.36% |
ROE | 9.07% | 4.54% |
ROA | 3.21% | 2.29% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。
よってヤマトホールディングスは割高、日本通運は割安であるということができます。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって両社割安圏であるといえます。
特に日本通運はPBRが1倍となっており、日本通運は清算に移行しても、
投資金額を回収できるほどの割安さであることがわかります。
③:配当利回り
配当利回りは日本通運が2.69%、ヤマトホールディングスは1.36%と倍近い開きがあることがわかります。
④:株主優待
両社株主優待を設定していません。
⑤:決算予測
ⅰ 日本通運
19年3月期の連結経常利益は前の期比15.3%増の858億円、20年3月期は前期比14.9%減の730億円に減る見通し。
ⅱ ヤマトホールディングス
19年3月期の連結経常利益は前の期比50.4%増の542億円、20年3月期も前期比32.7%増の720億円に拡大を見込んでいる。
⑤ 競合他社比較総合
割安・配当・将来性を総合的に比較すると、日本通運一択です。世界の日本通運と日本のヤマトホールディングスでは比較対象になりません。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日本通運の今後の株価推移を分析してきました。
日本通運はファンダメンタル、テクニカル両面で中期「様子見」、長期「買い」です。
中期のテクニカルから、長期の買い場を探り、長期投資をしたい銘柄であるといえます。
■投資判断基準:中期的に「様子見」、長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し長期的に12,000円(現状5,800円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比15.3%増の858億円。
▷ 20年3月期は前期比14.9%減の730億円に減る見通しであることから、中期は様子見が得策であること。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAの安定感が高いこと。
▷ 予想PER 12.1 倍、予想PBRは1.00倍でともに割安水準。
■ 他社との比較:
▷ セクターで割安の出遅れ銘柄であること。
■ 株主還元策の動向:
▷ 今期10円の増配を実施
▷ 2019年6月28日のIR「投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について」にて、現在5,800円と買いにくい価格であることを勘案し、何等の対策を講じると公表したこと。
▷ 分割などが行われた場合、人気化し株価が高騰する可能性もある。
以上、【9062 】総合物流企業『日本通運』の株価推移は明るい!?テクニカル分析を含めて検証する。…でした。
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