「スクリーンHD」の起源は明治元年に京都で創業した石版印刷業の石田旭山印刷所がルーツです。
その後、昭和9年に国内で初めて写真製版用のガラススクリーンの国産化に製造、研究部門が大日本スクリーン製造株式会社として誕生したのが現在のスクリーンHDの社名の由来です。
このコンテンツでは、半導体製造装置メーカーのSCREENホールディングス(以下スクリーンHD)を分析します。
■ 投資判断:「様子見」
▷以下の点を総合的に判断し、今期予想PERと予想EPS(1利あたり利益)から2020年3月期には5,015円が妥当水準と予想。
■ 業績見通し:
▷一時的な調達コストで利益は下落していますが売上高は順調に拡大しEPSも堅調であること。
■ 指標関連:
▷PER、PBRともに同社の過去平均から考えても割安であること。
■ 競合他社比較:
▷同業他社比では割安、投資妙味がある。
Contents
Screen HDの会社概要
現在は半導体製造に使う製造装置や液晶ディスプレイなどの製造装置などのハイテク製品で世界シェアの高い製品を数多く手がけています。
中でも半導体の製造工程で使われる洗浄装置は主力の製品の1つです。
洗浄装置は半導体の材料であるシリコンウェハーを加工する際に使われる装置です。
スマホや家電、自動車やデータサーバーなど電子機器に必ず組み込まれている半導体ですがその数は現在爆発的に増え続けています。
その半導体の基盤材料となるのがシリコンの塊を薄くスライズして表面を極限まで磨き上げたシリコンウェハーです。
半導体の回路の幅は年々細くなる微細化が続いており、半導体ウェハーにほこりが1つついただけでも致命的な影響があるため、いかにウェハーの表面をきれいにしたまま加工できるかが重要です。
そのための洗浄装置の需要が近年高まっています。
Screen HDの業績推移
過去10年の「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」の推移をグラフにしています。
それぞれの違いについてくわしくは『損益計算書の見方』をご覧ください。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 301,311 | 30,541 | 27,026 | 18,451 |
2008/03 | 279,816 | 14,627 | 7,540 | 4,577 |
2009/03 | 219,049 | -4,509 | -11,743 | -38,190 |
2010/03 | 164,128 | -14,046 | -17,258 | -8,002 |
2011/03 | 254,952 | 26,811 | 26,531 | 25,686 |
2012/03 | 250,089 | 13,498 | 12,284 | 4,637 |
2013/03 | 189,923 | -6,986 | -7,205 | -13,486 |
2014/03 | 235,946 | 8,902 | 8,394 | 5,418 |
2015/03 | 237,645 | 17,167 | 16,096 | 12,122 |
2016/03 | 259,675 | 23,557 | 23,178 | 18,815 |
2017/03 | 300,233 | 33,731 | 32,019 | 24,168 |
2018/03 | 339,368 | 42,725 | 41,329 | 28,507 |
2019/03 | 364,234 | 29,645 | 29,279 | 18,059 |
2020/03予 | 327,000 | 26,500 | 24,000 | 18,000 |

売上高や利益はリーマンショック以降は触れが大きく安定しませんでしたが、2013年3月期以降は半導体の市況が大きく改善したこともあり売上高、利益ともに右肩上がりとなりました。
前期2019年3月期の決算説明会資料を見てみましょう。
前期は売上高が前年比で7.3%の増収で過去最高の売上高となりました。
一方営業利益は同30.6%の減益と売上は過去最高でしたが、各利益が大きく減少しました。
なぜ減益となったのか、減益要因を見てみます。

売り上げは洗浄装置などの半導体製造装置の需要増加などよって伸びたものの、需要増加により部品の調達が困難になりコストがかさんだ事などが減益要因となりました。
高い水準で安定しているROEとROAの水準
スクリーンHDの経営効率を計る指標であるROEとROAについて見ていきます。
以下に過去10年のスクリーンHDのROEとROAを掲載しています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 13.78% | 5.77% |
2008/03 | 3.73% | 1.57% |
2009/03 | -55.04% | -15.47% |
2010/03 | -12.40% | -3.69% |
2011/03 | 29.50% | 10.15% |
2012/03 | 5.15% | 1.89% |
2013/03 | -16.73% | -5.74% |
2014/03 | 6.27% | 2.33% |
2015/03 | 10.93% | 4.86% |
2016/03 | 15.73% | 6.97% |
2017/03 | 16.92% | 8.04% |
2018/03 | 16.69% | 7.78% |
2019/03 | 10.08% | 4.74% |
2020/03予 | 10.05% | 4.73% |

ROEとROAは利益の変動と同じように2013年度まで変動が大きく、その後はゆるやかに右肩上がりとなっています。
前期は減益によりROEは10%まで低下しましたが、東証1部の平均8%を上回り欧米の平均10%と同水準です。
投資指標から株価の割安度を判断
スクリーンHDの10年間の株価の推移を見てみましょう。

10年チャートでは2016年までは5,000円を上限としたレンジ内で推移していました。
半導体の市況が好転し、市場の注目が高まった2016年以降は上昇が続き、2018年の年初には10,000円を超えました。
しかしその後はメモリー市況の悪化など半導体市況が逆風となり、上値を切り下げる軟調な展開が続き足元では再び5,000円を割り込んでの推移となっています。
日経平均と同等のPER水準
過去2年間の予想PERを見てみると約6倍から20倍程度で推移しています。

平均値は約13倍となります。日経平均の過去3年の予想PERはおおむね13倍~16倍程度で動いています。
市場平均と比べると株価が好調な2017年から2018年初にかけては市場平均を上回っていましたが、
現在は過去のレンジの下限付近での推移となっていることがわかります。
PBRは市場平均よりも割安で過去平均からみても低い水準
次に会社の純資産から見た指標分析です。
株主のお金である会社の純資産を1株あたりに直したものがBPS(1株純資産)です。
先ほどのグラフでBPSの推移を見てみると2007年以降はリーマンショック後でも、黒字を計上しており着実に純資産を積み上げていることがわかります。
株価をこのBPS(1株純資産)で割り算した投資指標がPBR(株価純資産倍率)です。
過去2年のPBRを見てみると0.9倍から3.4倍の間で推移しています。

日経平均の直近のPBRは約1.1倍なので市場平均を下回っています。
また解散価値であるPBR1倍も下回っており、純資産面からみるとスクリーンHDの株価は割安感があることがわかります。
特段高くも低くもない配当利回りの水準
過去2年の配当利回りの推移を見ています。過去2年では予想配当利回りは0.9%から3.5%程度で推移しています。
平均値は1.6%程度です。現在は2.4%弱となっており、東証1部の全平均の予想配当利回り2.1%を上回っています。

SCREEN HDの競合他社比較
比較的事業領域が似ている同業他社とスクリーンHDを比較してみます。
SCREEN HD | 東京エレクトロン | ディスコ | |
PER | 10.1倍 | 15.2倍 | 23.4倍 |
PBR | 1.01倍 | 2.82倍 | 2.55倍 |
配当利回り | 2.49% | 3.31% | - % |
ROE | 10.08% | 28.18% | 13.17% |
ROA | 4.74% | 19.74% | 11.16% |
対象は同じ半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン、ディスコです。
ROE、ROAは3社の中ではどちらも一番低くなっています。
特に東京エレクトロンのROEは30%近くなっています。
スクリーンHDは前期の減益もあり市場平均をこえてはいるものの半導体製造装置メーカーの中では資本効率にさらなる改善の余地がありそうです。
半導体製造装置メーカーの株価も足元は2018年初の高値と比べると調整しています。
その中で予想PER、PBRは3社の中ではもっとも低く、同業他社との比較では割安感があることがわかります。
まとめ-予想株価は5000円-
今期の予想EPSから妥当株価を計算します。
以下はEPSの過去からの推移と会社予想です。

半導体の市況の悪化がすくなくとも今年の上半期は続く見通しで売上高、営業利益ともに減収減益を見込んでいます。
ただ純利益については前期に計上した構造改革のため一時的な特別損失の影響が今期はなくなることから今期の会社予想1株利益は385.79円となっています。
悪化していた半導体メモリーの市況についても今年の下半期からの回復を見込むとしています。
予想1株利益にに過去2年の平均PER13倍をかけると5,015円となり、直近の株価3,935円を上回り下半期以降の半導体市況の回復に期待して買いと判断できます。
■ 投資判断:「様子見」
▷以下の点を総合的に判断し、今期予想PERと予想EPS(1利あたり利益)から2020年3月期には5,015円が妥当水準と予想。
■ 業績見通し:
▷一時的な調達コストで利益は下落していますが売上高は順調に拡大しEPSも堅調であること。
■ 指標関連:
▷PER、PBRともに同社の過去平均から考えても割安であること。
■ 競合他社比較:
▷同業他社比では割安、投資妙味がある。
以上、スクリーンHD(7735)の会社概要、業績推移と見通し。半導体市況の回復に期待の話題でした。
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