大手化粧品メーカーの一角として、様々な年齢層向けのブランドを多く持つ「資生堂」。
女性なら一度は資生堂の商品を利用したことがあるのではないでしょうか?
資生堂の商品は国内のみならず、海外でも絶大な人気を誇り世界中で愛される企業のひとつです。
今回は、そんな資生堂の業績見通しや各種株価指標を使って株価の分析をしていきます。
■ 投資判断基準:『様子見』
以下の点を総合的に勘案し現状様子見が適当と判断。
■ 業績見通し:
▷ 業績は堅調だがアジアの収益に依拠しており米中貿易摩擦の悪化等が懸念される。
■ 指標関連:
▷ ROEは13%程度の急上昇している。
▷ PERとPBRともに業界比でも平均的にも大きく割高。
■ 他社との比較:
▷ 業績は堅調ではあるが全体的に割高で配当利回りも低い。
Contents
化粧品の雄『資生堂』とは?
資生堂は、1872年に調剤薬局として銀座に誕生した、140年を超える歴史を持つ企業です。
現在は世界120か国で事業を展開し化粧品メーカーのビューティー部門売上高が日本、アジアで第一位となっています。
資生堂の事業展開
資生堂の事業は、化粧品事業とその他の事業に分かれています。
その他の事業では、資生堂パーラーをはじめとしたレストラン事業やフード事業、ザ・ギンザなどの小売業、
医科向け化粧品の製造・販売や、アミノ酸の分析受託などのフロンティアサイエンス事業を展開しています。
メインの化粧品事業では、プレステージ、フレグランス、コスメティクス、パーソナルケア、プロフェッショナルの5つの事業を展開しています。
〈プレステージ〉
デパートや化粧品専門店を中心として、カウンセリングを通して販売している高付加価値・高価格帯の化粧品を扱っています。
ブランドとしては、SHISEIDO、クレ・ド・ポーボーテ、bareMinerals、NRAS、イプサ、LAURA MERCIER、ベネフィークを展開しています。
〈フレグランス〉
有名デザイナーとのコラボレーションにより、ファッション性が高く個性的な高価格帯フレグランスを扱っています。
DOLCE&GABBANAやISSEY MIYAKE、narciso rodriguezがあります。
〈コスメティクス〉
ドラッグストアや量販店を中心に展開している中低価格帯の化粧品を扱っています。
私たち消費者にとっては一番馴染みのある分野ですね。
ブランドでは、エリクシール、マキアージュ、HAKU、プリオール、アネッサ、アクアレーベル、インテグレート、dプログラムなどがあります。
若い人からお年寄りまで、しっかりメイクから敏感肌用のものまで、多種多様なチャネルに対応した商品ラインナップになっています。
〈パーソナルケア〉
こちらもドラッグストアや量販店向けで、低価格帯のスキンケア用品を扱っています。
専科やTSUBAKI、シーブリーズといったラインナップになっています。
〈プロフェッショナル〉
ヘアサロン向けのヘアケアやスタイリング剤、ヘアカラーやパーマ用の薬品を扱っています。
圧倒的な信頼度と知名度の高さ
資生堂は日本やアジアのみならず、世界中で高い信頼と知名度を持つブランドを数多く持っており、積極的に海外進出を行っています。
インバウンドの需要も高く、外国人観光客が大量に資生堂商品を購入する姿を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
売上高も半分以上海外でのものとなっており、海外基盤の強さがうかがえます。
資生堂の業績推移
資生堂の業績ですが、ここ数年間は増収増益が続いています。
とくに直近3年間は顕著な伸びを見せています。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 694,594 | 50,005 | 53,465 | 25,293 |
2008/03 | 723,484 | 63,465 | 65,088 | 35,459 |
2009/03 | 690,256 | 49,914 | 52,061 | 19,373 |
2010/03 | 644,201 | 50,350 | 51,485 | 33,671 |
2011/03 | 670,701 | 44,458 | 44,480 | 12,790 |
2012/03 | 682,385 | 39,135 | 39,442 | 14,515 |
2013/03 | 677,727 | 26,045 | 28,406 | -14,685 |
2014/03 | 762,047 | 49,644 | 51,426 | 26,149 |
2015/03 | 777,687 | 27,613 | 29,239 | 33,668 |
2015/12 変 | 763,058 | 37,660 | 37,588 | 23,210 |
2016/12 | 850,306 | 36,780 | 37,174 | 32,101 |
2017/12 | 1,005,062 | 80,437 | 80,327 | 22,749 |
2018/12 | 1,094,825 | 108,350 | 109,489 | 61,403 |
2019/12予 | 1,172,000 | 120,000 | 120,000 | 75,500 |

横浜で新しい研究所が稼働するなど、研究開発費や販促費も増加しています。
それをこなして2020年も増収増益を見込んでいます。
米州や欧州で苦戦したものの、国内ではマーケティング戦略を強化していたエリクシールなどが好調だったほか、
アジア市場で高価格帯ブランドが急成長を見せたことにより、14%を超える高い営業利益率を維持しています。
資生堂は2014年に発表した、「VISION2020」という中長期戦略に取り組んでいます。
当初の目標は、2020年の売上1兆円超え、営業利益1,000億円超えというものでしたが、売上高目標は2017年、営業利益目標は2018年に前倒しで達成しています。
そのため、現在は、売上高1兆2900億円、営業利益1,500億円に目標を上方修正しています。
ブランドの更なる選択と集中やEコマースなどデジタル分野の強化など、様々な取り組みを行っています。
株価指標から資生堂の割安度を測る
それでは各株価指標から資生堂の割安度を見て行きましょう。
平均より若干高いROEとROA
ROEとROAは、企業が資本をどれだけ効率よく使い、利益を生み出しているかを測る指標です。
ROEが株主資本に対する収益性表すのに対し、ROAは、企業の総資産全体に対する収益性を表しています。
日本の企業はROEが8%程度、ROAが2%程度の会社が多くなっています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 6.26% | 3.42% |
2008/03 | 8.88% | 5.25% |
2009/03 | 5.74% | 3.19% |
2010/03 | 9.67% | 4.34% |
2011/03 | 4.14% | 1.73% |
2012/03 | 5.00% | 2.01% |
2013/03 | -5.11% | -2.05% |
2014/03 | 7.72% | 3.26% |
2015/03 | 8.70% | 4.09% |
2015/12 変 | 7.90% | 3.83% |
2016/12 | 8.17% | 3.39% |
2017/12 | 5.37% | 2.40% |
2018/12 | 13.69% | 6.08% |
2019/12予 | 15.88% | 7.00% |

資生堂のROEは、上下はあるものの5%から10%程度の水準を維持しており、今期は13%を超える数字となっています。
また、ROAは3%から5%で推移しており、日本の企業の平均よりやや高いくらいの水準が続きます。
非常に高いPERとPBRの水準
PERとPBRは、一般的に株価の水準が割安か割高かを示します。
PERは、今の株価が「一株当たり純利益(EPS)」の何倍かを示しており日本企業は15倍程度の会社が多くなっています。
ただし、PERは業界特性が出やすい数字なので、競合他社と比べてどうかで判断するのがポイントです。
資生堂のPERは42倍台となっており、国内の企業平均と比べても業界内で比較しても非常に高い数字になっています。
高いPERは、投資家の企業に対する期待の表れとも言えます。
一概に悪いことではありませんが、数値としては割高な株価と判断できるでしょう。

一方PBRとは、その会社の純資産に対して今の株価が何倍かを表しています。
PBRが1倍であれば、株価と会社の資産が同じ値段になっている状態です。
つまり、PBRが1倍を割っていると、株価がその会社の資産に比べて安く評価されている(=割安)であり、
1倍を超えていると株価が会社の資産に比べ高く評価されていると言えます。
資生堂のPBRも6倍台後半となっており資産価値に対してかなり高い株価になっています。
配当利回りは低い水準
配当利回りは、現在の株価に対する年間配当金の割合を示しています。
特に中長期投資家の中では重視されている数字で、日本企業の平均は2%弱となっています。
資生堂の配当利回りは0.7%ほどと、配当を重視する投資家にとっては物足りない水準です。

ただし、資生堂の株主は株主優待として、自社製品のカタログギフトをもらうことができます。
資生堂ユーザーにはうれしい特典ですね。
また、配当性向も現状30%ほどなので、増配の余地もあるかもしれません。
PERとEPSの水準から今期末の株価は現在とどう水準の8000円近辺
株価はEPS(一株当たり利益)×PERで表されます。
資生堂の20年12月期の予想EPSは、201.6円となっています。

PERはここ数年40倍前後で推移しているので、40倍で計算すると、8064円となり、ちょうど現在の株価近辺になります。
以上のことから、現在の株価は妥当またはやや割高な水準であると言えそうです。
資生堂の競合他社比較
資生堂は化学品メーカーに該当するので、今回は花王、日本化薬、クラレと比較していきます。
資生堂 | 花王 | 日本化薬 | クラレ | |
株価 | 7,955.0 円 | 8,422.0 円 | 1,286.0 円 | 1,297.0 円 |
予想PER | 42.1 倍 | 25.3 倍 | 17.4 倍 | 11.3 倍 |
PBR | 6.68 倍 | 4.98 倍 | 1.03 倍 | 0.82 倍 |
予想配当利回り | 0.75% | 1.54% | 2.33% | 3.24% |
ROE | 13.69% | 18.69% | 6.87% | 6.04% |
ROA | 6.08% | 10.52% | 5.06% | 3.54% |
自己資本比率 | 44.40% | 56.30% | 73.60% | 58.60% |
ROEやROAは、花王に比べると劣るものの、比較的高い数値になっています。
ただ、やはりPERやPBRの面では割高感が否めない印象ですね。
自己資本比率や配当利回りも低めです。
また、IFRS導入もしていないので、導入すると業績予想などにブレが出てくる可能性もあります。
まとめ
資生堂は、化粧品売上高では国内では圧倒的なシェアを誇り、世界でも第7位と強いブランド力と販売基盤が特徴の企業です。
一時厳しい時期があったものの、経営を刷新し、様々な改革に取り組んでおり結果もしっかりと伴っています。
そのため、株価が割高とはいえ今後の期待感からさらに買われるという可能性もあります。
しかし、米州・欧州が苦戦している中、しっかりと収益を上げているのが国内と、中国を中心としたアジア地域となっています。
国内市場も、インバウンド需要によるものが大きく業績が為替や海外情勢に左右されやすいのも特徴です。
米中貿易摩擦は一時休戦中とはいえ、今後良い方向に向かうとは限りません。
そのため、そもそも割高である資生堂の株を今のタイミングで買うというのは尚早ではないかという印象です。
■ 投資判断基準:『様子見』
以下の点を総合的に勘案し現状様子見が適当と判断。
■ 業績見通し:
▷ 業績は堅調だがアジアの収益に依拠しており米中貿易摩擦の悪化等が懸念される。
■ 指標関連:
▷ ROEは13%程度の急上昇している。
▷ PERとPBRともに業界比でも平均的にも大きく割高。
■ 他社との比較:
▷ 業績は堅調ではあるが全体的に割高で配当利回りも低い。
以上、【4911】業績堅調な資生堂の今後の株価推移を予想する!利益は伸びているが指標は割高!?….でした。
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