住友商事は住友グループの中核企業です。
社員数は5,000人を超えておりグループ企業も含めれば従業員は約65,000人を擁する世界中で事業を行っている大企業です。
時価総額も2兆円を超えています。
住友商事は「石橋をたたいてでも渡らない」と言われるほどの堅実経営が有名な企業です。
今回はそんな住友商事の分析を行います。
■投資判断基準:「買い」近年高収益化により成長、配当利回りも魅力
以下の点を踏まえ投資判断は「買い」とします。
■ 株価水準:
▷ 2016年半ばから上昇トレンドを形成し2018年1月に高値をつけている。
▷ その後20%程度下落した後もみ合い。
■ 業績推移:
▷ 2015年3月期に海外での資源開発がうまくいかず多額の減損を計上し赤字に。
▷ その後高成長をなしとげ2018年、2019年と2期連続で最高益を更新。
■ 指標関連:
▷ ROE、ROA共に2016年3月期から急上昇し、現在ROEは11%超、ROAも4%超と収益性は高い。
▷ 現在の水準はPER約6倍、PBR約0.7倍となっており、市場平均と比べると割安度が目立つ。
▷ 商社は業界全般が低PER,低PBRとなっていますので、同業他社比較では割安感はない。
▷ 現在の配当利回りは5%を大きく超えており高配当銘柄となっています。配当性向も30%程度ですので、配当余力は十分。
Contents
財閥系総合商社の一角『住友商事』とは?
住友商事のルーツは1919年に設立された大阪北港株式会社です。
大阪北港株式会社は土地開発など不動産経営を行っていました。
1944年に株式会社住友ビルディングと合併し社名を住友土地工務株式会社に改称、その後1945年に商事部門へ進出、1949年に株式上場は果たしました。
商社として事業を行い始めた当初から与信管理制度を徹底するなど堅実経営を実践しています。
1952年にはニューヨークにアメリカ法人を設立、同年住友商事株式会社へ社名を変更しました。
海外展開を積極的に行い、1970年代には海外拠点数は100を超えています。
営業部門を設置し分権化するなど総合商社としての経営基盤を固めます。
1990年代には経営指標に「リスク・リターン」を導入し、むやみにリスクを取らないという姿勢を会社全体の方針としました。
2000年代にはいると収益性向上による体質強化や優良資産の取得による収益基盤の強化などに取り組み、中期経営計画の策定を行います。
2015年に多額の減損損失を計上し赤字になったことを受け、同年に中期経営計画を策定し財務健全性の確保や成長戦略の推進などを進めました。
その結果、2019年3月期は過去最高益を更新しています。
住友商事の事業
住友商事の事業セグメントは6つに分かれています。
それぞれの事業内容や業績について確認していきます。
金属事業
金属事業は、自動車、船舶、航空機などの輸送機の他、家電やOA製品など様々な用途に使われている鉄鋼製品やアルミ、チタンなど幅広い金属製品を扱う事業です。
グローバル展開を行っている鉄道事業、油井管や新興国向けの亜鉛メッキ鋼板事業などを行っています。
金属事業の売上高は1兆3,962億円、売上総利益は1,452億円です。
売上高は事業セグメントトップとなっています。
前期比増収増益です。
輸送機、建機事業
航空機、船舶、自動車などの輸送機と工事に欠かせない建機を取り扱う事業です。
リース・船舶・航空宇宙分野では航空機リース事業などを行い、自動車分野では川上から川下まで幅広く事業を展開しています。
建設機械分野では各国のインフラ建設や鉱山開発に必要な建設機械のレンタル事業などを展開しています。
輸送機・建機事業の売上高は7,435億円、売上総利益は1,580億円です。
前期比減収減益となっています。
インフラ事業
インフラ事業は電力や水鉄道など生活を支えるインフラの整備、工業設備の取引や工業団地の開発などの産業インフラビジネスなどを行う事業です。
国内では電力卸・小売り事業なども行っており、多様なインフラ事業を展開しています。
インフラ事業の売上高は5,186億円、売上総利益は1,143億円です。
利益率の高い事業となっています。
前期比増収増益です。
メディア、デジタル事業
メディア分野とIT関連分野の事業です。
メディア分野では国内最大のケーブルテレビであるジュピターテレコムなどデジタルメディア関連事業を行っています。
その他、ITサービス事業や携帯電話事業など質の高い商品やサービスを提供しています。
メディア・デジタル事業の売上高は3,608億円、売上総利益は928億円です。
前期比増収増益となっています。
生活、不動産事業
生活に深く関わるライフスタイル・リテイル分野や食料分野、生活資材分野の他、不動産分野の業務を行う事業です。
具体的には、食品スーパーやドラッグストア事業や食料品の流通事業、オフィスビルや商業施設、住宅、物流施設などの不動産事業を行っています。
生活・不動産事業の売上高は9,825億円、売上総利益は2,107億円です。
前期比増収増益です。
資源、化学品事業
資源である鉱物やエネルギーの開発から流通まで幅広く行う事業です。
化学品分野では基礎化学品や電子材などを取り扱っています。
資源・化学品事業の売上高は1兆1,173億円、売上総利益は1,903億円です。
前期比増収増益となっています。
住友商事全体では売上高5兆3,392億円、売上総利益9,231億円となっており、前期比増収減益です。
住友商事の業績推移(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益)
住友商事の2007年以降の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は下記のとおりです。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 S | 10,528,277 | 239,748 | 331,929 | 211,004 |
2008/03 S | 11,484,585 | 254,101 | 367,593 | 238,928 |
2009/03 S | 10,749,996 | 263,392 | 319,635 | 215,078 |
2010/03 S | 7,767,163 | 120,517 | 223,256 | 155,199 |
2011/03 I | 8,349,371 | 183,485 | 280,463 | 200,222 |
2012/03 I | 8,273,043 | 219,857 | 341,387 | 250,669 |
2013/03 I | 7,502,724 | 162,481 | 319,021 | 232,451 |
2014/03 I | 8,146,184 | 171,750 | 304,246 | 223,064 |
2015/03 I | 8,596,699 | -84,374 | -18,561 | -73,170 |
2016/03 I | 7,584,146 | 113,722 | 140,116 | 74,546 |
2017/03 I | 3,996,974 | - | 213,101 | 170,889 |
2018/03 I | 4,827,323 | - | 412,295 | 308,521 |
2019/03 I | 5,339,238 | - | 404,017 | 320,523 |
2020/03予 I | - | - | - | 340,000 |

2015年に海外でのシェールガスなどの資源開発による巨額の減損損失により赤字を出しています。
その後、非資源分野である生活・不動産事業やメディア・デジタル事業を成長させ最高益を更新しました。
2015年以外はリーマンショックなどにより世界的に経済が後退した2009年前後もしっかりと黒字を確保しており堅実な経営が特徴的です。
住友商事の業績推移(EPS、BPS)
住友商事の2007年以降のEPSとBPSです。
決算期 | EPS | BPS |
2007/03 S | 169 | 1,179.50 |
2008/03 S | 191.4 | 1,195.20 |
2009/03 S | 172.3 | 1,083.40 |
2010/03 S | 124.3 | 1,268.10 |
2011/03 I | 160.4 | 1,257.50 |
2012/03 I | 200.8 | 1,352.40 |
2013/03 I | 186.2 | 1,643.70 |
2014/03 I | 178.7 | 1,925.40 |
2015/03 I | -58.6 | 1,986.90 |
2016/03 I | 59.7 | 1,802.80 |
2017/03 I | 136.9 | 1,894.80 |
2018/03 I | 247.1 | 2,048.30 |
2019/03 I | 256.7 | 2,219.10 |
2020/03予 | 272.3 | - |

EPSは赤字を出した2015年以外はしっかりと伸びていることがわかります。
BPSも最高益更新に伴い高い水準です。
住友商事の業績推移(ROEとROA)
下記は住友商事の2007年以降のROEとROAです。
2015年に大幅に下落しましたが、その後上昇しています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 S | 14.32% | 2.50% |
2008/03 S | 16.01% | 3.16% |
2009/03 S | 15.90% | 3.06% |
2010/03 S | 9.80% | 2.17% |
2011/03 I | 12.75% | 2.77% |
2012/03 I | 14.84% | 3.47% |
2013/03 I | 11.32% | 2.97% |
2014/03 I | 9.28% | 2.57% |
2015/03 I | -2.95% | -0.81% |
2016/03 I | 3.31% | 0.95% |
2017/03 I | 7.22% | 2.20% |
2018/03 I | 12.06% | 3.97% |
2019/03 I | 11.57% | 4.05% |
2020/03予 I | 12.27% | 4.29% |

現在のROEは11.5%程度、ROAは4%程度です。
2015年の赤字後、利益率の高い事業を成長させることで収益力をしっかりと向上させています。
住友商事のPERとPBRの推移
住友商事のPER及びPBRの過去3年間の推移は下記のとおりです。
【住友商事のPER】

【住友商事のPBR】

PER、PBRともに平均値より低い水準となっています。
特にPERは過去3年間の最低水準であり、業績が過去最高益を更新していることを踏まえれば、過去推移との比較では割安感が目立ちます。
ただし、商社は業界全般低PER、低PBRとなっている傾向があるので注意が必要です。
総合商社は様々な事業を展開しており、事業内容がわかりにくいという点から投資家からは企業価値を割り引かれるという傾向があります。
これを「コングロマリット・ディスカウント」と言いますが特に商社という形態があまり存在しない海外投資家からは商社株は避けられやすいです。
高配当の住友商事
住友商事の過去3年間の配当利回りの推移です。
ここ1年間で上昇しており、現在の配当利回りは5%を大きく超える水準となっています。

配当性向は30%程度とまだ余裕があり、キャッシュも6,000億円以上保有していますので大幅な業績悪化が無い限り、安定した配当が見込めます。
配当利回り5%超は市場平均の倍以上の利回りですので、配当に魅力がある銘柄です。
住友商事の競合他社比較(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅)
競合他社である他の五大商社との比較が以下となります。
住友商事 | 三井物産 | 三菱商事 | 伊藤忠商事 | 丸紅 | |
時価総額 | 20,150 億円 | 30,177 億円 | 46,033 億円 | 30,168 億円 | 12,138 億円 |
予想PER | 5.9 倍 | 6.7 倍 | 7.7 倍 | 5.8 倍 | 5.1 倍 |
PBR | 0.73 倍 | 0.71 倍 | 0.81 倍 | 0.99 倍 | 0.70 倍 |
予想配当利回り | 5.59% | 4.62% | 4.32% | 4.47% | 5.01% |
実績配当利回り | 4.66% | 4.62% | 4.32% | 4.36% | 4.87% |
ROE | 11.57% | 9.72% | 10.37% | 17.04% | 11.67% |
ROA | 4.05% | 3.47% | 3.57% | 4.96% | 3.39% |
自己資本比率 | 35.00% | 35.70% | 34.50% | 29.10% | 29.00% |
五大商社全体として割安なのですが住友商事の配当利回りは群を抜いております。
業績も順調なことから配当銘柄としての長期保有に最も適しているといえるでしょう。
まとめ-住友商事の投資判断-
住友商事の株価は2019年6月24日現在1,613円です。
PER,PBRともに市場平均よりかなり低い水準ですが、同業他社比較ではそこまで割安というわけではありません。
業績については、2期連続で過去最高益を更新しており、不動産事業、メディア事業などに積極的に投資を行っています。
商社は資源価格の影響を受けますので、非資源分野の事業を成長させることで業績安定させることが可能です。
配当利回りが5%を大きく超えており、配当銘柄としても魅力があります。
2015年最終赤字となった後の非資源分野への方針転換や各事業推進がうまく機能し業績は好調です。
もともと堅実経営を会社方針にもしていますので、景気後退局面にも期待が持てます。
これらの状況を踏まえ投資判断は、「買い」とします。
■投資判断基準:「買い」近年高収益化により成長、配当利回りも魅力
以下の点を踏まえ投資判断は「買い」とします。
■ 株価水準:
▷ 2016年半ばから上昇トレンドを形成し2018年1月に高値をつけている。
▷ その後20%程度下落した後もみ合い。
■ 業績推移:
▷ 2015年3月期に海外での資源開発がうまくいかず多額の減損を計上し赤字に。
▷ その後高成長をなしとげ2018年、2019年と2期連続で最高益を更新。
■ 指標関連:
▷ ROE、ROA共に2016年3月期から急上昇し、現在ROEは11%超、ROAも4%超と収益性は高い。
▷ 現在の水準はPER約6倍、PBR約0.7倍となっており、市場平均と比べると割安度が目立つ。
▷ 商社は業界全般が低PER,低PBRとなっていますので、同業他社比較では割安感はない。
▷ 現在の配当利回りは5%を大きく超えており高配当銘柄となっています。配当性向も30%程度ですので、配当余力は十分。
以上、【8053】高配当利回りで割安な「住友商事」の株価を予想!長期保有に適した優良株を分析する。…でした。
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