東京電力ホールディングスは首都圏1都7県に電力を供給している東京電力を傘下に持つ持ち株会社です。
2016年に家庭用電力の小売り全面自由化に対応するために持ち株会社に移行しています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から東京電力ホールディングスの今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:投資対象外
▷ 以下の点を総合的に勘案し、東京電力ホールディングスは「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常利益は前の期比8.5%増の2765億円、20年3月期の業績見通しについては非開示であるため、業績の先行きがわかりにくいこと。
■ 競合他社比較:
▷ 東京電力ホールディングスは巨額の負債を抱えているため、長期にわたって無配当が予測されます。
▷ 配当がある関西電力や中部電力のほうが配当投資向きの銘柄であるといえます。
■ 投資リスクの高い銘柄:
▷ 今後も起こりうる災害リスクのほかに、これからかかってくる廃炉費用の負担など、東京電力ホールディングスは投資リスクの高い銘柄であるといえます。
Contents
【企業情報】東京電力ホールディングスとは?
ここでは主に関東圏で電力を供給している東京電力ホールディングスの業務内容を見ていきたいと思います。
①:東京電力ホールディングス
福島復興本社と廃炉を含む原子力事業、水力・新エネルギー発電事業、グループ本社機能、研究開発機能、各社共通の一般管理を行っています。
②:東京電力フュエル&パワー
火力発電事業が主力。国際競争力あるエネルギーの安定供給を行っている。
③:東京電力パワーグリッド
電力の送配電ネットワークを提供。
④:東京電力エナジーパートナー
多彩なエネルギー商品やサービスを提供。
将来的には、中長期的なインフラ利用コストを最小化する商品・サービスを提供していくことを目標としている。
東京電力の過去10年の業績推移(PL)
ここでは東京電力ホールディングスの上場来の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 5,283,033 | 550,911 | 441,294 | 298,154 |
2008/03 | 5,479,380 | 136,404 | 33,132 | -150,108 |
2009/03 | 5,887,576 | 66,935 | -34,648 | -84,518 |
2010/03 | 5,016,257 | 284,443 | 204,340 | 133,775 |
2011/03 | 5,368,536 | 399,624 | 317,696 | -1,247,348 |
2012/03 | 5,349,445 | -272,513 | -400,405 | -781,641 |
2013/03 | 5,976,239 | -221,988 | -326,955 | -685,292 |
2014/03 | 6,631,422 | 191,379 | 101,418 | 438,647 |
2015/03 | 6,802,464 | 316,534 | 208,015 | 451,552 |
2016/03 | 6,069,928 | 372,231 | 325,938 | 140,783 |
2017/03 | 5,357,734 | 258,680 | 227,624 | 132,810 |
2018/03 | 5,850,939 | 288,470 | 254,860 | 318,077 |
2019/03 | 6,338,490 | 312,257 | 276,542 | 232,414 |

2011年3月11日に起きた東日本大震災によって、東京電力ホールディングスが保有する2原発・8火力・18水力の発電所が被災しました。
なかでも、福島第一原子力発電所は炉心溶融により、国際原子力事象評価尺度「レベル7」に相当する、放射性物質漏れを伴う重大な事故を発生させました。
この地震によって、2011年の業績は大きく落ち込むことになっています。
現在は営業利益も黒字化し、震災前の水準にV字回復を遂げています。
東京電力ホールディングスが4月25日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常利益は前の期比8.5%増の2765億円、20年3月期の業績見通しについては非開示であるとしています。
また配当に関しては、無配と公表しています。
東京電力ホールディングスのROEとROA
東京電力ホールディングスのROEとROAの営業利益同様、2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響を大きく受けています。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 9.71% | 2.21% |
2008/03 | -5.66% | -1.10% |
2009/03 | -3.56% | -0.62% |
2010/03 | 5.42% | 1.01% |
2011/03 | -80.32% | -8.43% |
2012/03 | -98.65% | -5.03% |
2013/03 | -61.37% | -4.57% |
2014/03 | 28.30% | 2.96% |
2015/03 | 21.78% | 3.18% |
2016/03 | 6.41% | 1.03% |
2017/03 | 5.67% | 1.08% |
2018/03 | 12.00% | 2.53% |
2019/03 | 8.04% | 1.82% |

ROEは事故発生前には5.42%でしたが、発生後は-80.32%と大きく落ち込む結果になっています。
また、ROAもROE同様、事故発生前には1.01%でしたが、発生後は-8.43%と大きく落ち込む結果になっています。
しかし、2015年にはROEが12.00%、ROAも2.53%とそれぞれ東証一部の平均値を超えてきており、回復の兆しが見えてきているといえます。
『福島への責任』が業績と配当復活に長期的に重しに
東京電力ホールディングスでは「福島の復興なくして東京電力の改革、再生はありえない」とのスローガンのもと、福島の復興に関して真摯に取り組んでいます。
ここでは、東京電力の復活に欠かせない福島の復興に関して考察していきたいと思います。
賠償問題
2011年3月11日に発生した原発事故から8年余りが経過していますが、いまだに原発事故による賠償を行っています。
支払金額は年々減少していますが、賠償の支払いが終了しない限り、東京電力ホールディングスも次のステージに進むことができないので重しであることは間違いないです。
廃炉への取り組み
廃炉終了まで2040年~2050年と、今からも長い期間かかることがわかります。

2021年になって、第2期の燃料の取り出しが開始されるため、
いまだに廃炉への具体的な取り組みが進んでいる状況とはいえないことがわかります。
福島の復興は長期化し配当復活は不透明
廃炉までの工程から、福島の復興への取り組みは長期化せざるを得ないことがわかります。
よって、東京電力ホールディングスの再生も長期化することが予測されます。
東京電力ホールディングスのファンダメンタル分析総合
東京電力ホールディングスは以下のように投資リスクが高いため、ファンダメンタル的に「投資対象外」です。
≪東京電力ホールディングスの投資リスク≫
- 福島復興への取り組みが長期化すること
- 原子力損害賠償・廃炉等支援機構から多額の融資を受けている
- 再度大きな災害が発生した場合、新たな発電所事故を起こす可能性がある
- 廃炉費用が、福島第一原発だけではなく、複数発生する可能性がある
- 電力自由化が進むことで、契約者数が減少する可能性がある
- 少子高齢化が進む日本で、将来的に契約者数が大きく減少することがわかっている
東京電力ホールディングスのテクニカル分析
ここでは東京電力ホールディングスは買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
東京電力ホールディングスの過去10年間の株価推移
東京電力ホールディングスの株価は2011年の原発事故から大きく下落していることがわかります。

2011年3月の株価のレンジは461円―2,163円と大きな幅で動いていることがわかります。
東京電力ホールディングスのテクニカル分析

2018年の10月に変化日に雲(上値抵抗)抜けしています。
また今後続く雲もかなり薄くなっているため、テクニカル的には「様子見」判断ということができます。

中長期の株価を見るための週足で確認すると、東京電力は少々変則的な三尊天井を付けながら、株価の天井が低くなっていることがわかります。
具体的には、オレンジ色の2015年の高値939円、緑の2018年の767円です。
2018年の12月に天井を形成したばかりですので、目先は底打ちサイン点灯待ちということになります。
テクニカルから見た東京電力ホールディングス
見てきたように東京電力ホールディングスはテクニカルが変則的で投資しにくい銘柄であるといえます。
よって、テクニカル的には「投資対象外」との判断になります。
東京電力の競合他社比較
東京電力ホールディングス(9501)を同業である関西電力(9503)、中部電力(9502)と比較検討していきます。
東京電力H | 関西電力 | 中部電力 | |
PER | - 倍 | 8.3 倍 | 7.2 倍 |
PBR | 0.50 倍 | 0.77 倍 | 0.67 倍 |
配当利回り | 0.00% | 3.84% | 3.18% |
ROE | 8.04% | 7.60% | 4.47% |
ROA | 1.82% | 1.59% | 1.33% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。
よって電気ガスセクターは割安であるといえます。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって電気ガスセクターは割安であるといえます。
③:配当利回り
関西電力と中部電力は配当が3%台と高配当であるといえます。
④:株主優待
全社株主優待が設定されていません。
⑤:決算予測
ⅰ.東京電力ホールディングス
19年3月期の連結経常利益は前の期比8.5%増の2765億円、20年3月期の業績見通しについては非開示。
ⅱ.関西電力
19年3月期の連結経常利益は前の期比6.2%減の2036億円、20年3月期も前期比1.8%減の2000億円に減る見通し。
ⅲ.中部電力
19年3月期の連結経常利益は前の期比12.1%減の1129億円、20年3月期は前期比63.8%増の1850億円に拡大する見通し。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から東京電力ホールディングスの今後の株価推移を分析してきました。
東京電力ホールディングスはファンダメンタル的・テクニカル的両面から「投資対象外」です。
4兆円を超える巨額の負債を抱える企業を買う理由は見当たらないといえます。
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