この記事では、総合不動産では国内4位の東急不動産ホールディングスの株価について検証していきます。
東急不動産は、1953年に東京急行電鉄の不動産事業を分離して独立した会社で、住宅、オフィス、リゾート事業のほか、商業施設での売り上げも多いです。
東急ハンズや東急プラザ銀座なども有名ですね。
株主優待も魅力的な東急不動産ホールディングスについて、業績推移や株価指標などから今後の見通しについて見て行きたいと思います。
■ 投資判断基準:『買い』
以下の点を総合的に勘案し中期的に700円に向けて上昇が見込まれる。
■ 業績見通し:
▷ 東急グループの強みと多角的な経営により順調に安定して業績を積み上げていっている。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAは安定しているが平均レベル。
▷ PERとPBRともに業界比で割安レベル。
■ 他社との比較:
▷ 業績は安定しており割安で配当利回りや株主還元策に強みがある。
Contents
東急不動産とは?
東急不動産は、主に首都圏を中心として不動産開発を展開する、国内第4位の総合不動産会社です。
売上規模などは三菱地所や三井不動産と比べると小さいものの、首都圏を中心として強みを生かした事業展開でしっかりとした成長を続ける企業です。
海外展開も進めており、米国や中国、インドネシア、シンガポールなどにも現地法人や支店などを配置しています。
7つの事業構成
事業展開は、都市事業、住宅事業、管理事業、仲介事業、ウェルネス事業、ハンズ事業、次世代・関連事業の7つから構成されています。
〈都市事業〉
オフィスビルや商業施設などの開発・運営や、不動産投資信託の運用、賃貸住宅の管理などを行っています。
東急プラザやキューズモールなど、一度は行ったことがあるような商業施設もたくさん手掛けています。
現在は、渋谷界隈の開発を重点的に進めており、渋谷ソラスタや渋谷フクラスの他、渋谷駅桜丘口地区の再開発なども進行中です。
また、運営しているオフィスビルの約8割が都心4区にあることや、2001年以降に竣工された物件が半数以上であるなど、
優良なポートフォリオを持っているのも特徴です。
〈住宅事業〉
マンションや戸建住宅、シニア住宅などを、主に首都圏と関西圏を中心に展開しています。
ブランド展開としては、マンション・一戸建ブランドの「BRANZ(ブランズ)」をはじめ、
ハイ・リノベーションマンションの「MAJES(マジェス)」や、都市型賃貸レジデンスの「COMFORIA(コンフォリア)」があります。
〈管理事業〉
マンションやオフィスビル、商業施設や公共施設など、様々な建物の管理や運営を行っています。
〈仲介事業〉
東急リバブルで不動産の売買仲介や販売委託などの不動産流通業を国内外で展開しています。
〈ウェルネス事業〉
レジャー施設やリゾート、スポーツクラブ、シニア向け住宅など、余暇・健康・シニアの分野を展開しています。
〈ハンズ事業〉
他を圧倒する豊富な品揃えで、だれもが一度は行ったことがある東急ハンズも、東急不動産の事業のひとつです。
〈次世代・関連事業〉
米国やアジア圏を中心とした海外事業展開や、注文住宅、リフォーム、緑化造園事業などが、次世代・関連事業に当たります。
東京都心に強いイメージの東急不動産ですが、海外事業でも手堅く成長を続けています。
特に1975年に進出したインドネシアでは、BCIアジア社が選ぶ2017インドネシアトップディベロッパーに選出されるなど、高く評価されています。
東急グループの一員として幅広い事業展開が出来る
東急不動産は、競合他社と比べると、マンションやビルなどの提供戸数などで劣る面もあります。
しかし、東急グループならではの強みもあります。
東急電鉄や東急百貨店と協力することで、幅広い事業展開をすることができます。
そのため、オフィスビルなどと比べて収益率の高い商業施設に強みを持ち、安定した収益を上げています。
また、東急不動産の収益構造は、住宅や不動産流通など、通常の不動産会社でメインになっているもの以外に、
東急ハンズやリゾートなどといったところでしっかりと稼げる構造になっているのも特徴です。
充実した株主優待も魅力的
株式投資をするのであれば、株主優待も楽しみのひとつです。
東急不動産の株を持っていると保有株数や保有年数に応じて、以下の優待を獲得することができます。
- リゾートホテルなどの宿泊優待券
- ゴルフ場・スポーツクラブで使える優待券、
- 東急ハンズの買い物優待カード
- カタログギフト
東急不動産の業績推移
大きな伸びはないものの毎年しっかりとした業績推移で、連続最高益を更新中で増配も予定されています。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2014/03 | 714,067 | 61,433 | 50,583 | 23,712 |
2015/03 | 773,149 | 63,300 | 51,675 | 25,230 |
2016/03 | 815,479 | 68,750 | 56,379 | 28,718 |
2017/03 | 808,503 | 73,227 | 63,631 | 31,518 |
2018/03 | 866,126 | 77,519 | 68,691 | 35,185 |
2019/03 | 901,884 | 80,205 | 70,744 | 37,459 |
2020/03予 | 920,000 | 82,000 | 71,000 | 39,000 |

既存のビルがほとんどフル稼働していることや、分譲住宅の引き渡しの増加、管理受託の復調などが要因となっています。
また、渋谷や代官山で複合施設などの大型案件も進行中です。
東急不動産の各種指標を確認する(ROE・ROA・PER・PBR・配当利回り)
東急不動産の株価水準を各種指標から確認していきたいと思います。
平均的なROEとROAの水準
ROEとROAは企業が資本を使ってどれだけ効率よく利益を生み出しているかを表しています。
数字が高いほど効率的に利益を上げています、
決算期 | ROE | ROA |
2014/03 | 6.51% | 1.32% |
2015/03 | 6.38% | 1.28% |
2016/03 | 6.86% | 1.45% |
2017/03 | 7.13% | 1.52% |
2018/03 | 7.52% | 1.62% |
2019/03 | 6.67% | 1.56% |
2020/03予 | 6.95% | 1.62% |

ROEは株主資本に対する収益性、ROAは企業の総資産全体に対する収益性を示しています。
日本の企業ではROEが8%ほど、ROAが2%ほどのところが多くなっています。
東急不動産は、ROEが6%台後半~7%台、ROAが1%台で推移しています。
日本企業の平均に比べ少し低いくらいという数字になっています。
同業他社と比較しても、やや低めの数字が続いています。
同業他社比で若干割安なPERとPBR
PERとPBRは株価が割安な水準かどうかを見る指標です。
PERは今の株価が「一株当たり純利益(EPS)」の何倍かを示します。
日本企業は15倍程度の会社が多くなっていますが、業種によって平均的な水準が違うので、競合他社との比較が重要になります。
東急不動産の場合、現在のPERは11倍前後となっています。

他社を見てみると、三菱地所は20倍強で突出して高くなっています。
その他は9倍から15倍程度なので、東急不動産は他社に比べやや割安な水準にあると言えます。
一方PBRは、その会社の純資産に対して今の株価が何倍かを表しています。
PBRが1倍であれば、株価と会社の資産が同じ値段になっている状態です。
つまり、PBRが1倍を割っていると、株価がその会社の資産に比べて安く評価されている(=割安)であり、1倍を超えていると株価が会社の資産に比べ高く評価されていると言えます。
東急不動産のPBRは0.8倍を割り込む水準にあります。

PBRが1倍割れでも、赤字が続くなど、今後純資産が減少していくような会社は要注意です。
しかし東急不動産の場合は利益、純資産ともに増加傾向にあるため、株価は割安と判断できるでしょう。
過去平均PERを用いると2020年3月末時点で650円程度を予想
株価はEPS×PERで表されます。20年3月期のEPS予想は54.2円、21年3月期は56.5円となっています。
仮に過去3年の平均PERである12倍で計算すると、20年3月期で650.4円、21年3月期で678円となります。
現在の株価が600円ほどで推移しているので、業績予想に対しても割安であると言えるでしょう。

平均より少し高い配当利回り
株式投資をする際、特に中長期投資をする場合は、配当利回りも重要な判断基準になります。
配当利回りは1株あたりの年間配当金を現在の株価で割って求めるもので、日本の企業は2%弱のところが多くなっています。
配当利回りが高い銘柄は、配当収入が得られるというメリットがありますが。
他にもしっかりと稼げている会社かどうかを見分けることもできます。
現在の東急不動産の配当利回りは2.5%前後となっており連続増配も達成しています。
他社と比較しても高めの利回りで、これに加えて株主優待が付くことを考えると非常に魅力的ですね。

また、利益の中からどれだけ配当金の支払いに充てているかを示す配当性向も29.5%となっています。
配当性向が高すぎると、増配の余地がない、そもそも現在の水準を保つのが難しいという場合もあります。
東急不動産の3割弱の水準であればすぐに減配をするといったリスクも少ないでしょう。
東急不動産の競合他社比較
ここでは三菱地所、東京建物、住友不動産、三井不動産と比較してきます。
売上の規模や時価総額では三菱地所や三井不動産と比較して見劣りするものの、
他社にはない強みを持ち、手堅く増収増益を続けている安定性は魅力でしょう。
また、配当利回りの高さや充実した株主優待のほか100株が6万円強で買える手軽さもいいですね。
東急不動産 | 三菱地所 | 東京建物 | 住友不動産 | 三井不動産 | |
株価 | 619.0 円 | 2,056.0 円 | 1,169.0 円 | 4,151.0 円 | 2,745.5 円 |
時価総額 | 4,456 億円 | 28,603 億円 | 2,536 億円 | 19,762 億円 | 27,220 億円 |
株主優待 | あり | なし | なし | なし | なし |
予想PER | 11.4 倍 | 20.8 倍 | 9.0 倍 | 14.1 倍 | 15.9 倍 |
PBR | 0.79 倍 | 1.61 倍 | 0.70 倍 | 1.63 倍 | 1.15 倍 |
予想配当利回り | 2.58% | 1.51% | 3.25% | 0.77% | 1.60% |
ROE | 6.67% | 7.60% | 7.84% | 10.83% | 7.20% |
ROA | 1.56% | 2.33% | 1.88% | 2.55% | 2.48% |
自己資本比率 | 23.30% | 30.70% | 24.00% | 23.60% | 34.40% |
まとめ
現在の株価は、業績見通しや他社との比較から割安感があります。
中長期で配当や株主優待を目的として保有するにはいい銘柄であると言えます。
ただし、2020年の東京オリンピック後は景気減速が懸念されています。
東急不動産も増収増益を見込んでいるものの、その幅はかなり小さくなっています。
欧米諸国の金融政策や政治情勢などから相場全体が不安定な中、株価自体の大きな上昇は見込めないかもしれません。
■ 投資判断基準:『買い』
以下の点を総合的に勘案し中期的に700円に向けて上昇が見込まれる。
■ 業績見通し:
▷ 東急グループの強みと多角的な経営により順調に安定して業績を積み上げていっている。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAは安定しているが平均レベル。
▷ PERとPBRともに業界比で割安レベル。
■ 他社との比較:
▷ 業績は安定しており割安で配当利回りや株主還元策に強みがある。
以上、【3289】東急不動産ホールディングスの株価を業績や株価指標から予想!充実した株主優待が魅力的!…でした。
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