日本郵船は国内で最大規模、世界でも2位の事業規模を誇る海運会社です。
創業は明治18年と老舗の日本企業でもあります。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日本郵船の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、日本郵船は現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常損益は20.5億円の赤字に転落、20年3月期は370億円の黒字に急浮上する見通しであるが、業績の回復に疑問を感じる。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは10.7 倍、予想PBRは0.57倍で割安水準であるが、これは不人気からくる悪い割安感であると判断。
■ 他社との比較:
▷ 業績の持ち直し傾向がみられる商船三井のほうに投資妙味があるといえる。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
Contents
日本がほこる船会社である日本郵船とは?
ここでは日本が世界に誇る船会社である日本郵船の事業内容を紹介していきたいと思います。
①:定期船事業
日本郵船は川崎汽船、商船三井と3社の定期コンテナ船事業を統合し、2018年4月よりサービスを開始しています。
これによって、100ヶ国以上を結ぶ広範囲なネットワークを構築し世界最高水準のサービスを提供しています。
②:航空運送事業
日本郵船のグループ企業である日本貨物航空では北米・欧州・アジアとの国際航空貨物輸送事業を展開しています。
③:物流事業
日本郵船グループ企業である郵船ロジスティクスでは、世界で40を超える国と地域に約600ヶ所の拠点を持ち事業を展開しています。
④:不定期専用船事業
不定期専用船事業は、定期船事業以外の外航海運ビジネスです。
⑤:不動産業
日本郵船グループ企業である郵船不動産では、事務所ビルや住宅の賃貸などの事業を展開しています。
⑦:その他の事業
客船事業や、船舶の運航・安全・環境・省エネをはじめ、物流技術分野全般にわたって最適ソリューションを提供すべく研究開発を「MTI」で行っています。
過去10年の業績推移(PL)
ここでは日本郵船の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 |
2007/03 | 2,164,279 | 104,941 | 107,534 | 65,037 |
2008/03 | 2,584,626 | 202,079 | 198,480 | 114,139 |
2009/03 | 2,429,972 | 144,914 | 140,814 | 56,151 |
2010/03 | 1,697,342 | -18,094 | -30,445 | -17,447 |
2011/03 | 1,929,169 | 122,346 | 114,165 | 78,535 |
2012/03 | 1,807,819 | -24,124 | -33,238 | -72,820 |
2013/03 | 1,897,101 | 17,434 | 17,736 | 18,896 |
2014/03 | 2,237,239 | 44,995 | 58,424 | 33,049 |
2015/03 | 2,401,820 | 66,192 | 84,010 | 47,591 |
2016/03 | 2,272,315 | 48,964 | 60,058 | 18,238 |
2017/03 | 1,923,881 | -18,078 | 1,039 | -265,744 |
2018/03 | 2,183,201 | 27,824 | 28,016 | 20,167 |
2019/03 | 1,829,300 | 11,085 | -2,052 | -44,501 |
2020/03予 | 1,730,000 | 38,000 | 37,000 | 26,000 |
わかりやすく図示すると以下の通りとなります。

日本郵船の売上高は1,697,342百万円~2,584,626百万円のレンジで上下しつつ推移しています。
また本業の成績を示す営業利益ですが、2017年に急激に悪化しマイナスになっています。
また全く業績に回復の気配を感じることができない推移になっています。
よって、日本郵船の業績は不当面感が高く混迷しているということができます。
日本郵船が4月26日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常損益は20.5億円の赤字に転落、
20年3月期は370億円の黒字に急浮上する見通しであると公表しています。
また配当に関しては、今期の年間配当は前期比20円増の40円に大幅増配するとしています。

日本郵船は朝8:30に決算を公表しました。
これを受けて株価は大きく上昇していることが上図からわかります。
よって、日本郵船の決算は市場関係者から好評価されたということができます。
日本郵船のROEとROA
それでは日本郵船のROEとROAの推移についてみていきたいと思います。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 9.29% | 3.05% |
2008/03 | 16.81% | 4.99% |
2009/03 | 10.31% | 2.71% |
2010/03 | -2.63% | -0.79% |
2011/03 | 11.47% | 3.69% |
2012/03 | -12.57% | -3.43% |
2013/03 | 2.90% | 0.78% |
2014/03 | 4.59% | 1.30% |
2015/03 | 5.87% | 1.85% |
2016/03 | 2.36% | 0.81% |
2017/03 | -50.86% | -13.00% |
2018/03 | 3.65% | 0.97% |
2019/03 | -9.13% | -2.22% |
2020/03予 | 5.33% | 1.30% |
わかりやすく図解すると以下になります。
日本郵船のROEとROAは営業利益同様激しく上下し、安定感がないことがわかります。
ROEは-50.86%~16.81%という大きなレンジで動いていることがわかります。
また、ROAも-13.00%~4.99%というレンジで動いています。
見たままですが、日本郵船のROEとROAは安定感がなく、混迷しているということができます。
日本郵船の中期経営計画「Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green」
日本郵船は、2018年度から始める5カ年経営計画「Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green」を策定しています。
ここでは中期経営計画を分析していきたいと思います。
① :不透明な海運業界
「不透明な事業環境と多様に変化する社会に素早く的確に対応し、持続的な成長を遂げるための戦略を示しています。』
とあるように、日本郵船側も海運業界が不透明で読みにくい状態であることを理解していることがわかります。
②:基本戦略
ⅰ ポートフォリオの最適化
・ドライバルク事業の見直し
・コンテナ船事業統合
ⅱ 運賃安定型事業の積み上げ
・自動車船、自動車物流の強化
ⅲ 効率化・新たな価値創出
具体的な事案に欠ける印象があります。特に効率化・新たな価値創出を掲げて何をしたいのか?具体的な案を聞きたいところです。
③:数値目標
2022年目標 | |
経常損益 | 700~1,000億円 |
ROE | 8.0%以上 |
自己資本比率 | 30%以上 |
DER | 1.5倍以下 |
経常損益の700~1,000億円はあまりにもどんぶり勘定ではないでしょうか?
企業の数値に対する価値観が透けて見えるようです。
また2017年度実績値が280億円、ここから3倍以上にするための具体的施策が全く見当たりません。
正直なところ「計画」といってよいものなのかの判断がつきかねる内容です。
全く達成するという意思をくみ取ることができません。
さらなる経営陣の努力が必要であるといえます。
日本郵船のファンダメンタル分析総合
ファンダメンタル的に企業が示している通り海運業界自体が不透明感の高い状況です。
また、対応する企業の中期経営計画も計画倒れの感が高いものであるため、業績に期待することができません。
よってファンダメンタル的には日本郵船は「投資対象外」であると判断することができます。
日本郵船のテクニカル分析
ここでは日本郵船は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
日本郵船の過去10年の株価推移
下図は日本郵船の過去10年間の株価推移です。
日経平均株価の影響を受けつつ、1,320円―3,970円のレンジ相場を形成しています。

日本郵船のテクニカル分析

ⅰ.大枠は赤い枠の1,320円―3,970円のレンジ相場
ⅱ.直近底割れ
緑の丸囲み1,660円(直近安値)を、割っています。
よって現在値ごろ感と相場状況から横で推移している株価ですが、
指数環境が悪化した場合「あっさりと」底抜けしていく可能性が高いといえます。
ⅲ.レンジ下限1,320円
レンジ下限である1,320円が注目される展開ですが、そこで止まるとは限りません。
底割れしてもなんらおかしくない下落チャートだからです。
テクニカルから見た日本郵船
テクニカル的に、買ってはいけないチャートです。
よって、日本郵船はテクニカル的に「投資対象外」であるといえます。
日本郵船の競合他社比較
日本郵船(9101)を同業である商船三井(9104)、川崎汽船(9107)と比較検討していきます。
日本郵船 | 商船三井 | 川崎汽船 | |
PER | 10.7 倍 | 7.3 倍 | 10.3 倍 |
PBR | 0.57 倍 | 0.55 倍 | 1.10 倍 |
配当利回り | 2.42% | 2.67% | - % |
ROE | -9.13% | 5.12% | -107.35% |
ROA | -2.22% | 1.26% | -11.69% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。
よって海運セクターは割安であるといえます。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって海運セクターは割安であるといえます。
③:配当利回り
日本郵船が2.42%、商船三井が2.67%です。
④:株主優待
ⅰ.日本郵船
飛鳥クルーズ料金10%割引優待券
100株以上 | 3枚 |
500株以上 | 6枚 |
1,000株以上 | 10枚 |
ⅱ.商船三井
客船「にっぽん丸」クルーズ優待券(1割引)
100株以上 | 2枚 |
500株以上 | 4枚 |
1,000株以上 | 6枚 |
⑤:決算予測
ⅰ.日本郵船
19年3月期の連結経常損益は20.5億円の赤字に転落、20年3月期は370億円の黒字に急浮上する見通し。
ⅱ.商船三井
19年3月期の連結経常利益は前の期比22.6%増の385億円、20年3月期も前期比29.6%増の500億円に伸びる見通し。
ⅲ.川崎汽船
19年3月期の連結最終損益は1111億円の赤字、20年3月期は110億円の黒字にV字回復する見通し。
各社2020年の見通しは明るくなっていますが、業績に関しては3期連続増益中の三井商船の業績が安定感があるといえます。
⑥:競合他社比較総合
不透明感漂う不人気セクター海運。その中でも割安感や業績の安定感が高い商船三井が一歩リードしているといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から日本郵船の今後の株価推移を分析してきました。
日本郵船はファンダメンタル的にもテクニカル的にも買う理由が見当たりません。
よって、「投資対象外」と判断することができます。
■ 投資判断基準:投資対象外
以下の点を総合的に勘案し、日本郵船は現状「投資対象外」と分析。
■ 業績見通し:
▷ 19年3月期の連結経常損益は20.5億円の赤字に転落、20年3月期は370億円の黒字に急浮上する見通しであるが、業績の回復に疑問を感じる。
■ 指標関連:
▷ 予想PERは10.7 倍、予想PBRは0.57倍で割安水準であるが、これは不人気からくる悪い割安感であると判断。
■ 他社との比較:
▷ 業績の持ち直し傾向がみられる商船三井のほうに投資妙味があるといえる。
■ テクニカル的な判断:
▷ 長期的に雲(上値抵抗)があり、テクニカル的に株価の上昇が難しいこと。
以上、【9101】世界有数の海運会社「日本郵船」(NYK)の今後の株価見通し!…でした。
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