2019年8月9日に東証マザーズに上場するピーバンドットコム(3559)は1Q決算とともに、「株式の立会外分売に関するお知らせ」を公表しました。
立会外分売は企業や創業者が保有する株式を証券市場が開設されている時間外に前日終値に比べて数%割安な価格で購入することができる制度です。
勝率が8割とIPOの次に高く人気の出てきている取引手法です。
立会外分売については以下で詳しく説明していますので参考にしてみてください。
今回はピーバンドットコムが行う立会外分売は買いなのか?
またこの立会外分売でピーバンドットコムが東証一部への鞍替えを行うことが可能なのかも含めて分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:様子見
▷ 東証一部への鞍替えは難しい。敢えて投資する銘柄でもない。
■ 立会外分売の目的:
▷ 東証一部の鞍替えを目的として実施。現時点で未達要件が多く現実的ではない。
■ 業績推移:
▷ 業績は順調に拡大中だが2020年3月期の腰折れが若干の懸念。
■ テクニカル的分析:
▷ PER的には割安だが株価は低迷中で底が読めない。
Contents
ピーバンドットコムとは?
ここではピーバンドットコムとはどのような企業であるのかを多方面から分析していきたいと思います。
ピーバンドットコムの基本スペック
企業名 | 株式会社ピーバンドットコム |
資本金 | 156,005千円 |
設立 | 2002年4月 |
住所 | 東京都千代田区五番町14 五番町光ビル4F |
代表取締役 | 田坂 正樹 |
事業内容 | プリント基板のネット通信販売サイト P板.com(ピーバンドットコム)の運営 |
ピーバンドットコムの事業内容
ピーバンドットコムは「プリント基板」をインターネットで販売することが主力業務です。
ここではピーバンドットコムの業務内容をご紹介していきたいと思います。
- プリント基板の設計
- プリント基板の製造
- 電子部品の調達
- 電子部品の実装
- ハーネス加工
- メタルマスク製造
- 筐体・パーツ製造
- P板WEBチェッカー
- パネルdeボード
- BGA・CSPリワーキング
- 電子部品・半導体テーピング
- 基板現物から復元
- 基板カレンダー
- 基板コンシェル
- 各種セミナー・イベント
近年では、「プリント基板」をインターネットで販売するだけではなく、
「P板.com技術セミナー」や「CAD講習会」といった講習会等も開催しています。
ピーバンドットコムの立会外分売の詳細
それでは本題のピーバンドットコムの立会外分売の詳細についてみていきたいと思います。
分売予定株式数 | 110,000 株 |
発行済株式数 | 2,244,203株 |
分売予定期間 | 2019 年8月23 日(金)~2019 年8月28 日(水) |
分売値段 | 実施日の前日の終値もしくは最終気配値を基準として決定する予定 |
買付申込数量の限度 | 買付顧客1人につき100株 |
実施取引所 | 東京証券取引所 |
実施の目的 | 東京証券取引所本則市場への市場変更について具体的に準備を進めております。 今回の立会外分売は、その形式要件の充足をはかるとともに、当社株式の分布状況の改善及び流動性向上を図ることを目的として行うものであります。 |
ピーバンドットコムは今回の立会外分売に関して、「東京証券取引所本則市場への市場変更について具体的に準備を進めております」と公言しています*。
よって今後ピーバンドットコムが東証一部or東証二部へ鞍替えを行う可能性は非常高いということができます。
*何らかの理由で市場変更の基準を満たさないと判断された場合には、市場変更が認められない可能性があります。
マザーズから東証一部に鞍替えすることは可能なのか?
では果たしてピーバンドットコムは東証一部に鞍替えすることが可能なのかという点を分析していきたいと思います。
マザーズから東証一部に鞍替えするための主な形式的条件
まずはマザーズから東証一部に鞍替えするための条件をご紹介します。
鞍替えのためには以下表のA又はBのどちらかを満たす必要があります。
ピーバンドットコムはマザーズから東証一部に鞍替えするための条件がAに該当するため、形式的要件に合致しているのかをAの条件で検証していきます。
株主数は2,200人を超えているか
2019年度の有価証券報告書によると、株主数が1,536名と鞍替え基準を満たしていないことがわかります。
しかし、今回の立会外分売によって1,100名の株主が増加する見込みであることから、クリア可能な数値であると考えます。
流通株式数の基準は満たしているか
≪流通株式数の基準≫
a.流通株式数:2万単位以上
流通株式数が2万単位以上ということは、浮動株が200万株以上あることということになります。
現状ピーバンドットコムの発行済み株式数が2,244,203株であることから、立会外分売で110,000株増加したとしても条件クリアは到底難しい値であるといえます。
b.流通株式時価総額:20億円以上
現在株価は1,200円前後で推移しています。
よって、63万株×1,200円=7億5000万円となり、流通株式時価総額20億円以上の条件をクリアするのも難しい状況であるといえます。
c.流通株式数(比率):上場株券等の35%以上
現在の浮動株は520,655ですが、これに立会外分売110,000株をプラスすると630,655株になります。
よって最終的な浮動株比率は28%です。
条件は35%以上となっていることから、大株主の株券売却の必要性があるといえます。
売買高の基準は満たしているか
申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位(20,000株)以上が売買高の基準です。
ピーバンドットコムの出来高は少ない月でも93,700株あるため、売買高の基準はクリアできることがわかります。
時価総額並びにBS・PL基準
ⅰ.時価総額
時価総額の基準値は40億円以上ですが、現状26億円のため条件をクリアできていません。
ⅱ.連結純資産の額
連結純資産の額が10億円以上という基準値は現状ぎりぎり10億円のため、条件をクリアしています。
ⅲ.最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること
決算によると今期の利益は2億7000万円を想定しているため、このまま順調に推移すれば可能な数値であるといえます。
東証一部への鞍替え可能性のまとめ
≪マザーズから東証一部に鞍替えするための条件まとめ≫
株主数 | 2,200人以上 | ○ |
流通株式 (市場変更時見込み) | 次のa,b,c全てに適合すること a流通株式数:2万単位以上 b流通株式時価総額:20億円以上 c流通株式数(比率):上場株券等の35%以上 | a ✖ b ✖ c ✖ |
売買高 | 申請日の属する月の前の月以前3ヶ月間及びその前の3ヶ月間の月平均売買高が200単位以上 | ○ |
時価総額 (市場変更時見込み) | 40億円以上 | ✖ |
事業継続年数 | 市場変更申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること | ○ |
純資産の額 (市場変更時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上 (かつ、単体純資産の額が負でないこと) | ○
|
利益の額又は時価総額 | 次のa又はbに適合すること a最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること b時価総額が500億円以上 (最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) | ほぼ○ |
今回はピーバンドットコムが東証一部に鞍替えすることができるのかを多方面から分析してきました。
結論としては、現状物理的にクリアすることができない項目が多いため、ピーバンドットコムが東証一部に鞍替えする可能性はほぼないということができます。
しかし、鞍替え基準が緩やかである東証二部への鞍替えであれば可能な水準であるといえます。
基本的に東証マザーズよりも不人気の東証二部に鞍替えしても株価の上昇は見込めません。
では立会外分売以外のファンダメンタル的な要素やテクニカル面からみて魅力的なのかという点についても見ていきましょう。
ピーバンドットコムの業績は比較的堅調
それではピーバンドットコムの業績推移について確認していきたいと思います。
ⅰ.直近の決算内容
8月9日に発表した決算によると、20年3月期第1四半期の経常利益は前年同期比19.1%減の5500万円、また通期計画の2億7200万円に対する進捗率は20.2%となっています。
ⅱ.徐々に成長している売上高
ピーバンドットコムの売上高は徐々にではありますが右肩上がりに成長しています。
ⅲ.経常利益も堅調
ピーバンドットコムの経常利益も順調に推移していることがわかります。
ピーバンドットコムの1Qは19%の減益でしたが、通期計画の2億7200万円に対する進捗率は20.2%であり、前年同期の22.7%とほぼ同水準であることから特段問題はないといえます。
また、売上高及び経常利益は順調に増加していることから、業績は好調に推移しているといえます。
PERは割安だが株価の下落の目処がたっていない
業績は堅調ですが株価が下落して低迷しているため、PERは12倍と割安な水準に低迷しています。
投資する水準としては魅力的ですが底打ちを確認してからの方がよいでしょう。
まとめ
ピーバンドットコムが立会外分売で目的とする東証一部への鞍替えは現状難しい状況です。
業績は堅調ではありますが、株価が低迷していることを考えると敢えて現時点で購入するほどの銘柄ではないといえるでしょう。
コメントを残す