IBMは世界170国以上で事業を展開する、米国の大手IT企業です。
コンピューター製品やITコンサルのほか、クラウドやIoT、ITインフラなどを提供しています。
現在注目されているAI銘柄としても有名なIBMについて、
業績推移や現在の株価指標などから今後の見通しを予想していきたいと思います。
■ 投資判断:中立
▷ 減収が続き、苦しいように見えるが、事業構造を大幅に変革中。
▷ 底打ちの兆しも見えるが、340億ドルを投じて買収したレッドハットがどう影響するかが読みにくい。
▷ 元バフェット銘柄の主軸のひとつだったが、バフェットは2017年頃から売却をはじめ2018年には完全撤退したとの報道も。
■ 業績推移:
▷ ゆるやかに減収が続くが、利益は反転。このままクラウド・AI事業などの高利益率事業を拡大する構造改革が順調に進むかがカギ。
■ 株価指標:
▷ PERは10倍近辺で推移しており、過去の水準と比べるとやや割安感あり。
▷ 配当利回りも高く、株主還元にも積極的。株価の動きは重くても、配当目当てで長く持てる人にはおすすめの銘柄。
Contents
IBMとは?
IBMは、コンピューター関連サービスやコンサルティングサービスの提供、ソフトウェア・ハードウェアの開発から製造・販売まで、IT分野における様々な事業を展開しています。
米国では「Big Blue」の愛称で親しまれ、青色が同社のイメージカラーになっています。
従業員が38万人以上の世界最大級の企業です。
主な事業
- コグニティブ・コンピューティング
IBM Watsonと呼ばれる人工知能を使った事業です。
自然言語処理と機械学習によって、大量のデータ(SNSやメール、動画など)を様々な分野に役立てています。
代表的なものとしては、スローンケタリング記念がんセンターとの提携があります。
臨床データや研究論文などのデータと患者のデータを照合し、一人ひとりに最適な治療法を見つけるサポートを行っています。
他にも、企業のコールセンターに導入し、顧客へのオペレーティングに利用するなど、用途が広がっています。
クラウド・コンピューティング
IBMブルーミックスなどのクラウドサービスを展開しています。
ITサービス
システム構築や、ITアウトソーシング、バックオフィス業務などのアウトソーシングサービスを提供しています。
ソフトウェア
企業向けのミドルウェアとして、WebSphere、IBM Information Management Software、Lotus、Tivoli、Rationalの5つのブランドを展開しています。
ハードウェア
サーバー製品やストレージ製品などを幅広く開発・販売しています。
その他
上記の他にも、コンサルティングサービスや、ファイナンシング、教育やトレーニングの分野でも事業を展開しています。
研究・開発にも積極的!ノーベル賞受賞者も多数!
IBMは、研究機関としても有名で、2018年時点での米国特許数が26年連続で1位となっています。
IBMの発明品として有名なものとしては、ATM、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストライプカード、リレーショナルデータベース、SQLプログラミング言語、バーコード、DRAMなどがあります。
IBMが抱えるワトソン研究所やチューリッヒ研究所からはノーベル賞やチューリング賞、アメリカ国家技術賞、国家科学賞などの受賞者を多数輩出しています。
常に高収益・高付加価値な事業に着目し、機動的に事業構造を組み換え!
IBMは常に高収益で高付加価値な事業に着目して、どんどん事業構造を変化させながら成長してきた企業です。
コモディティ化した事業は手放し、成長力のある事業を次々に買収していきます。
例えば、プリンター事業やHDD事業、PC事業、半導体製造事業などは分社化や他社に売却して手放しています。
一方で成長性の高い分野については積極的に買収しています。
直近では、SalceforceのBluewolfや、動画共有サービスのUstream、ディープラーニングのAlcemyAPIなどを買収しています。
最近では2018年10月にレッドハットを買収しています。
レッドハットはクラウド向けソフトウェアの会社で、340億ドルを投じての買収となりました。
これにより、レッドハットの顧客1,500社以上を一気に手に入れた形となります。
投資額も高額ですが、今までのハードウェアやコンサルティング中心だった事業をより利益率の高い事業中心に変えていく狙いがあるとされています。
今後はこのレッドハット事業がどう効いてくるかが同社の業績のカギを握ってきそうです。
底打ち感のある業績
売上高は緩やかに減少していっています。当期純利益に関しては2017年期に底打ちし、増益に転じたというところです。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
売上高 | 92,793.00 | 81,741.00 | 79,919.00 | 79,139.00 | 79,591.00 | 77,016.72 |
営業利益 | 19,986.00 | 15,944.00 | 12,330.00 | 11,400.00 | 11,342.00 | |
税引前当期利益 | 19,986.00 | 15,945.00 | 12,330.00 | 11,400.00 | 11,342.00 | |
当期利益 | 12,023.00 | 13,190.00 | 11,872.00 | 5,753.00 | 8,728.00 | 10,982.62 |
減収が続いている背景として、IBMの事業構造の大改革があります。
クラウドやAIなど、今後成長が見込める事業分野に大きく舵を切ろうとしているのです。
その結果、従来稼いでいた分野で減収が続きクラウドやAIの分野でカバーしきれず全体としても減収傾向となってしまっています。
しかし、クラウド・AIの分野単体で見ると毎年10%程度の増収をしており着実に構造改革の成果を表し始めています。
PERと予想EPSから分析すると$170近辺までの上昇余地あり
IBMのPERはおおむね10~14倍程度で推移しており、過去6年の平均で言うと12倍ほどになります。
現在は10倍ちょうどくらいのところですので、過去の水準と比べるとやや割安といったところでしょうか。
株価はPER×EPSで表されます。
現在の株価は140ドルほど、EPSは14.02ドルです。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 15.68 | 13.65 | 12.44 | 12.04 | 11.8 | 14.02 |
BPS | 11.98 | 14.77 | 19.29 | 19.08 | 18.82 | 26.88 |
仮にPER12倍程度まで株価が戻るとすると、168.24ドルとなりますので、株価指標上はまだ少し上昇余地はありそうです。
配当利回りは5%近くと高い水準
IBMは20年以上連続で増配しています。配当金は基本的に利益余剰金から支払うため、しっかりと稼ぎ続ける企業でないと連続して増配をし続けることはできません。
また、配当利回りですが、現在4.6%を超える水準となっています。
配当利回りは、投資金額に対する年間配当金の割合で算出します。
日本企業では、2%弱という企業が多くなっており、4.6%という数字は非常に魅力的といえます。
日本企業の配当金支払は半年に一度、もしくは年に一度というところが多いですが米国の株式は年4回というのが主流です。
そのため、配当の権利をもらえるチャンスが多いというのもいいですね。
IBMの配当は3月、6月、9月、12月が支払月になっています。(権利月は2月、5月、8月、11月)
また、もうひとつの株主還元として、自社株買いにも積極的であるということも知られています。
まとめ
IBMの業績などについて見てきました。
20年以上連続増配を続ける優良企業ですが、ここ数年は減収が続いていました。
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットに見放されるなど株価も軟調でした。
また、事業構造の大きな改革も進めているなかで、レッドハットの大型買収案件もあり、今後の業績見通しが見えにくく投資しにくいというのが現状かもしれません。
しかし、高い研究力や他を圧倒する特許保有数、積極的な株主還元、業績の底打ち感などは非常に魅力的です。
押し目があればぜひ拾っていきたい銘柄のひとつと言えるでしょう。
■ 投資判断:中立
▷ 減収が続き、苦しいように見えるが、事業構造を大幅に変革中。
▷ 底打ちの兆しも見えるが、340億ドルを投じて買収したレッドハットがどう影響するかが読みにくい。
▷ 元バフェット銘柄の主軸のひとつだったが、バフェットは2017年頃から売却をはじめ2018年には完全撤退したとの報道も。
■ 業績推移:
▷ ゆるやかに減収が続くが、利益は反転。このままクラウド・AI事業などの高利益率事業を拡大する構造改革が順調に進むかがカギ。
■ 株価指標:
▷ PERは10倍近辺で推移しており、過去の水準と比べるとやや割安感あり。
▷ 配当利回りも高く、株主還元にも積極的。株価の動きは重くても、配当目当てで長く持てる人にはおすすめの銘柄。
以上、【IBM】高配当利回りのIBMの株価推移を予想!米国AI銘柄の一角は業績の落ち込みから復活できるのか!?…でした。
コメントを残す