「相対取引」とは何を意味するのでしょうか。
通常、株式を取引する際は東京証券取引所などの市場を通じて取引を行います。
「相対取引」は市場取引とは異なり市場を通さない取引方法です。
「市場を通さないとはどういうことなのか?」
「相対取引にはどんなメリットがあるのか?」
今回は相対取引について、メリット・デメリットどんな場合に活用されているのかなどを紹介します。
株式取引に興味のある方はぜひ最後まで読んでいただき参考にしてください。
■ 今回のポイント!
- 相対取引とは市場を通さない買い手と売り手が取引条件を決めて行う取引
- 相対取引は株式市場に与える影響が少なく、価格も市場価格によらず決められる
- 相対取引は手間と時間がかかり、相手方に問題があった場合取引ができないリスクがある
- 相対取引は様々な場面で利用されているが、TOBが義務付けられている取引では相対取引を行うことはできない
目次
Contents
相対取引とは?OVER THE COUNTER(=OTC取引)
相対取引(OTC取引)とは市場を介さない取引方法のことです。
ほとんどの場合、株式の取引(売買)は証券取引所を通じて行われます。
不特定多数の投資家が証券会社を通じて証券取引所に株式の売買注文を行い株式取引を行うというのが一般的な株取引です。
個人投資家の取引のほとんどはこの市場取引となっています。
一方、相対取引は証券取引所を通さずに取引を行います。
簡単に言うと株を買う人と株を売る人が直接取引を行うイメージです。
では、相対取引にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
つづいて相対取引のメリット・デメリットを紹介します。
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相対取引のメリット
相対取引のメリットは以下の2点です。
■ 相対取引のメリット:
- 価格や株数、取引時期などについて当事者だけで決めることができる
- 市場に与える影響が少ない
順に説明していきます。
価格や株数、取引時期などについて当事者だけで決めることができる
相対取引は市場を介しませんので、取引に介在するのは買い手側と売り手側の2社だけです。
相対取引は両者の合意に基づく売買契約と言えます。
両者が納得しているのであれば価格がいくらであろうと何株取引しようとも問題はありません。
売買に必要な事項は全て当事者同士だけで決定することが可能です。
市場取引の場合、売買価格は常に変動している株価によります。
事前に取引金額を正確に把握することは容易ではありません。
相対取引であれば両者の契約により取引金額が決定します。
契約合意ができれば思ったより取引が高額になってしまったというようなことはありません。
また、株価は景気など外部環境の影響を強く受けますので、企業の本来の価値と株価は一致しないことも多いです。
そういった場合も相対取引であれば両者で売買価格を決めることができます。
株価ではなく両者が考えるその企業の本来価値をもとに取引することができます。
このように、相対取引では市場取引と関係なく売買価格などを決めることができます。
故に売買条件については両者の交渉により自由に決定することが可能です。
株式市場に与える影響が少ない
市場取引の場合、一度に大量の注文を出すと株価に影響が出ることがあります。
例えば、売り注文が50万株しか出ていない株に100万株の買い注文を出すと株価は著しく上昇してしまいます。
株式市場に大きな影響を与えてしまいます。
そもそもあまりにも大量の注文の場合、取引自体ができないかも知れません。
一方、相対取引は株式市場を介さずに取引を行いますので、株式市場に直接的に影響を与えることはありません。
どれだけ多くの株式を取引しようが買い手と売り手が契約条件に同意している以上、問題なく取引することが可能です。
株式市場を混乱させることなく取引ができるのが相対取引の2つ目のメリットとなります。
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相対取引のデメリット
相対取引にはデメリットもあります。
それは以下の2点です。
■ 相対取引のデメリット:
- 契約が不履行となる可能性がある
- 取引相手を探し交渉する手間がある
契約が不履行となる可能性がある
相対取引の場合、取引に関わるのは買い手側と売り手側の当事者だけです。
契約を結んでいたとしても実際に最後まできっちりと契約を履行するかどうかという点では市場取引に比べてリスクがあります。
極端な話、詐欺師と取引してしまうという可能性もあるのです。
実際株取引ではありませんでしたが、有名な上場企業が高額な土地取引で詐欺にあった事件は記憶に新しいと思います。
あの取引も相対取引でした。
例え、相手方にだますようなつもりは一切なくても、契約から履行までの間に業績が急変するなどの急変事象が発生する可能性もあります。
取引に影響を及ぼすような事態があった場合は、契約通り取引が実行されない場合もあるのです。
契約どおりに取引ができないリスクがある点は相対取引のデメリットです。
取引相手を探し交渉する手間がある
相対取引では、市場取引のように不特定多数の投資家が市場に参加しているわけではありません。
そのため取引相手は自ら探す必要があります。
こちら側が取引を希望する相手がいたとしても、相手側が取引を希望するかは別問題です。
まず取引相手を探すことに時間を要します。
取引相手が見つかった場合も、そこから価格などの条件を交渉する必要がありますので時間が更に必要です。
交渉段階で条件が折り合わず契約合意とならなかった場合は時間と労力だけかかってしまったということになりかねません。
市場取引は取引システムが整備されています。
数秒で完結する株取引が相対取引では数カ月以上かかるということも珍しくないのです。
また、相手方を調べるといったことや契約書類の作成など市場取引では発生しない手間も全て自分で行う必要があります。
時間と労力が市場取引に比べて段違いにかかるというのが相対取引の2つ目のデメリットです。
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相対取引を行うケース
ここまでは相対取引の概要とメリット・デメリットについて紹介しました。
では実際に相対取引はどのような場合に行われているのでしょうか?
つづいて、相対取引が行われる代表的なケースを紹介します。
未公開株取引
市場で取引ができる株は証券取引所に上場している株式だけです。
ですので、上場されていない未公開株を購入する際は基本的に相対取引を行う必要があります。
ベンチャー投資を始めとした未公開株への投資は企業が順調に成長し株式公開までいきつけば多額の利益を得ることが可能です。
資産家や投資会社の中にはベンチャー投資を積極的に行っている人も多くいます。
未公開株取引において相対取引は活発に行われています。
大株主の取引
大株主が株を手放す場合は売りに出される株式数が多くなります。
市場取引では株価を大幅に下落させる可能性が高いため市場外で取引を行うことがあります。
大株主側からすれば自分の売りで株価が下落すれば、売却により得られる資金が減ってしまいます。
その為、相対取引によるメリットがあります。
更に、買い手側からすれば大量の株式を一度に手に入れることができるというメリットがあります。
相対取引を行うことで双方にメリットがあるのです。
株式を大量に購入する場合
株式を大量に購入する場合、株式市場で買い注文を行うと自分の注文で株価が上昇してしまい、予定数量を取得できない。
あるいは取得金額が高額になってしまうという可能性が高いため相対取引を行うことがあります。
こういう場合買い手側は市場価格より高い価格で取引を行うことが一般的です。
買い手側からすれば、市場価格より割高であっても市場で注文した場合。
株価が急上昇してしまうことを考えれば割安に購入することができます。
売り手側からすれば市場価格より高い価格で売却できるというメリットがあります。
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相対取引の注意点
相対取引は当事者同士で株式の取引を行います。
しかし、上場企業などの場合は利害関係者が多いためどのような取引を行っても良いというわけではありません。
大株主が変わるということは経営にも影響を与えます。
そのため、相対取引で買付を行なった場合でも買付後の保有比率が5%を超える場合は公開買付を行う義務が生じます。
上記のルールを『5%ルール』と呼びます。
また、市場取引であっても買付後の保有比率が1/3を超える場合にも公開買付を行う義務が生じます。
上記のルールを『1/3ルール』と呼びます。
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まとめ
今回は相対取引について紹介しました。
最後に重要点をまとめますと以下の4点があげられます。
■ 今回の総括:
- 相対取引とは市場を通さない買い手と売り手が取引条件を決めて行う取引
- 相対取引は株式市場に与える影響が少なく、価格も市場価格によらず決められる
- 相対取引は手間と時間がかかり、相手方に問題があった場合取引ができないリスクがある
- 相対取引は様々な場面で利用されているが、TOBが義務付けられている取引では相対取引を行うことはできない
個人投資家にとってはあまりなじみのない相対取引です。
なじみがないからこそどのような取引なのか知っておかないと、思わぬところで影響があるかも知れません。
今回は「相対取引」について学びました。
株式投資でリターンを獲得するには、まず前提となる基礎知識が必要です。
基礎知識に加えて、市場分析、銘柄選定、そして「正しい、最新の情報」が必須です。
当然、どうしても勉強が必要です。
しかし、独学で株式投資に挑んで、投資に失敗して株式市場を退場してしまう人は後を絶ちません。
これはひとえに学習方法が間違っていたか、市場、銘柄選定などの知識不足、また情報獲得のソースを誤ってしまったなどが挙げられます。
現代では、株式投資を効率よく学べる手段がたくさん存在します。(とても恵まれている環境)
以下のコンテンツでは、株を勉強するにあたっての効率的な進め方について特集しています。
ぜひ参考にしてみてください。
以上、相対取引(OTC取引)とは?市場取引との違いやメリットとデメリットを徹底解説!…でした。
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