現代では、個人が簡単に証券取引を行える時代になりました。
インターネットの発達により、証券取引が簡単に行えるようになり、資産運用の手段として証券を選択する人が増えてきています。
そんな日本において、証券取引を支えているのは「株式市場」と呼ばれる証券市場です。
株式市場について、なんとなく名前を聞いたことがあるという人も多いかと思います。
実際に各株式市場がどのような役割を担っているのか、詳細に知っておくと、株取引を行うときに非常に役立ちます。
今回のコンテンツでは、日本の株式市場の種類について、徹底解説していきます。
目次
Contents
日本の株式市場の種類〜地方にも証券取引所は存在〜
日本の株式市場は、大きく分けて以下の4つに分かれています。
- 東京証券取引所
- 名古屋証券取引所
- 札幌証券取引所
- 福岡証券取引所
「日本の証券取引所=東京証券取引所」と言えるぐらい知名度も高いです。
他の証券取引所は、東京証券取引所と比べると規模が小さく地場の中小企業が上場している取引所となります。
東京証券取引所は、上場している企業規模によって、以下のように分かれています。
- 東証第1部
- 東証第2部
- マザーズ
- ジャスダック
それでは、東京証券取引所の各部門について、「日本取引所」のデータを用いて1つ1つ確認していきましょう。
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東証第1部
東証第1部は、東京証券取引所の中でも企業規模が大きく、収益が安定している株式会社が上場している市場です。
日本で、大企業と呼ばれている有名企業の多くが、東証第1部に上場しています。
東証第1部に株式を上場するには、厳しい条件をクリアしなければなりません。
最初に簡単に主要市場の上場基準の主要ポイントをまとめると以下の通りになります。
取引所 | 企業時価総額 | 資産 | 株主数 | 流通株式数 | 流通株式比率 |
東証一部上場 | 250億円 | 10億円 | 2,500人以上 | 2万単位 | 35% |
東証二部上場 | 20億円 | 10億円 | 800人以上 | 4,000単位 | 30% |
東証マザーズ | 10億円 | 指定なし | 200人以上 | 2,000単位 | 25% |
JASDAQ | 5億円以上 | 2億円以上 | 200人以上 | – | – |
それではここからはさらに詳細に、東証1部への上場の代表的な条件を見ていきましょう。
項目 | 新規上場に係る市場一部銘柄への指定(市場第一部に直接上場する要件) |
(1)株主数(上場時見込み) | 2,200人以上 |
(2)流通株式(上場時見込み) | 流通株式数 2万単位以上 |
流通株式数(比率) 上場株券等の35%以上 | |
(3)時価総額(上場時見込み) | 250億円以上 |
(4)事業継続年数 | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること |
(5)純資産の額(上場時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上 |
(かつ、単体純資産の額が負でないこと) | |
(6)利益の額又は時価総額(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること |
最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること | |
時価総額が500億円以上 | |
(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) | |
(7)虚偽記載又は不適正意見等 | 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし |
最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 | |
最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」 | |
申請会社に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にはあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと | |
(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 | |
(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 | |
(8)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(9)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること |
新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること | |
議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式 | |
複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式 | |
無議決権株式 | |
(10)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(11)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
(12)合併等の実施の見込み | 次のa及びbに該当するものでないこと |
合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行った場合又は2年以内に行う予定のある場合で、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合 | |
新規上場申請者が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を2年以内に行う予定のある場合 |
これらの条件に加えて、虚偽記載がないことやコーポレート・ガバナンスの整備、企業情報の開示が適正に行われているなどの条件があります。
条件を満たした上で、審査に通ることで東証1部へ上場することが可能になります。
東証1部に上場することで、社会的な評価が格段に上がります。
「日本の大企業」という評価を得られますので、それがブランド力の向上につながり売上を増やすきっかけとなります。
また、東証1部へ上場していると、銀行からの融資も受けやすくなり、新規事業を展開しやすくなります。
そのネームバリューによって求人に応募してくる人が集まってきますので、従業員を雇うのに苦労をしません。
これらたくさんのメリットがあることから、多くの株式会社が東証1部への上場を目指すことになります。
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東証第2部
東証第2部は、東証第1部へ上場するまではいきませんが、ある程度の企業規模を誇る株式会社が所属する市場となります。
東証第2部への上場条件は以下の通りです。
項目 | 有価証券上場規程(市場第二部形式要件) |
(1)株主数(上場時見込み) | 800人以上 |
(2)流通株式(上場時見込み) | 流通株式数 4,000単位以上 |
流通株式時価総額 10億円以上 | |
流通株式数(比率)上場株券等の30%以上 | |
(3)時価総額(上場時見込み) | 20億円以上 |
(4)事業継続年数 | 新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること |
(5)純資産の額(上場時見込み) | 連結純資産の額が10億円以上 |
(かつ、単体純資産の額が負でないこと) | |
(6)利益の額又は時価総額(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること |
最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること | |
時価総額が500億円以上 | |
(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く) | |
(7)虚偽記載又は不適正意見等 | 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし |
最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 | |
最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」 | |
申請会社に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にはあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと | |
(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 | |
(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 | |
(8)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(9)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること |
新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること | |
議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式 | |
複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式 | |
無議決権株式 | |
(10)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(11)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
(12)合併等の実施の見込み | 次のa及びbに該当するものでないこと |
合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行った場合又は2年以内に行う予定のある場合で、新規上場申請者が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合 | |
新規上場申請者が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を2年以内に行う予定のある場合 |
東証1部の条件と比較すると、やや緩やかであると言えます。
ただ、時価総額や純資産の条件は、中小企業の規模では中々ハードルが高い条件ではあります。
東証1部への上場を目指す企業の多くが、まずは第2部へ上場を行い、業績を高めていきます。
野球チームで例えると、東証1部が「1軍」で、東証2部が「2軍」というイメージですね。
東証2部には、東証1部の企業よりも成長意欲が高い企業が多いので、投資先として注目されることが頻繁にあります。
ただ、業績の安定性でいうと、東証1部よりも低いので、その点、投資の際は考慮しないといけません。
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〜コラム〜すでに消えてしまった?「大阪証券取引所」の存在
かつて、証券取引所グループの中には「大阪証券取引所」といわれる市場が存在していました。
一般的には大都市圏に証券取引所は存在していましたが、現在では大阪証券取引所だけ姿がなくなってしまいました。
なぜ大阪証券取引所はなくなってしまったのでしょうか?
ここでは、大阪証券取引所のこれまでの歴史や、「大阪証券取引所」と「大阪取引所」の関係について説明しています。
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東証マザーズ
株市市場のニュースを見ていると、「東証マザーズ」という言葉を頻繁に目にします。
マザーズは、設立して間もないベンチャー企業など、新興企業が上場する市場です。
将来、東証1部、2部への昇格を目指す企業の登竜門の役割を果たしています。
新興企業が集まる市場のため、株価の変動はかなり激しいです。
ベンチャー企業の場合、事業の結果次第では倒産してしまう企業もあるため、東証1部、2部の企業への投資よりも投機的な投資になりやすいのです。
ただ、マザーズの中から将来の大企業を見つけるという醍醐味もあります。
マザーズ上場の条件は、以下の通りです。
項目 | 有価証券上場規程(マザーズ形式要件) |
(1)株主数(上場時見込み) | 200人以上(上場時までに500単位以上の公募を行うこと) |
(2)流通株式(上場時見込み) | 流通株式数 2,000単位以上 |
流通株式時価総額 5億円以上 | |
流通株式数(比率) 上場株券等の25%以上 | |
(3)時価総額(上場時見込み) | 10億円以上 |
(4)事業継続年数 | 新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること |
(5)純資産の額(上場時見込み) | – |
(6)利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額) | – |
(7)虚偽記載又は不適正意見等 | 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 |
「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書等(最近1年間) において、「無限定適正」 | |
上記監査報告書又は 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし | |
新規上場申請に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと | |
(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 | |
(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 | |
(8)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
(9)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること 新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること |
議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式 | |
複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式 | |
無議決権株式 | |
(10)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること |
(11)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること |
マザーズ上場の際は、純資産の額、利益の額と時価総額は、条件に記載されていません。
上場のハードルが東証1部、2部よりも低いので、まずは上場したいと考えている企業には打ってつけの市場です。
株式の時価総額や流通株式の条件をクリアできれば、企業規模が小さくても十分上場することができます。
マザーズについて、コンテンツ内ではさらに詳しく解説していますので参考にしてみてください。
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JASDAQ(ジャスダック)
マザーズと並んで、もう一つの新興企業向けの市場として開かれたのが、「JASDAQ」です。
マザーズが、将来的に東証1部への上場を目指す企業が多いのに対して、JASDAQの場合、東証1部への上場を目指す企業はそこまで多くありません。
というのも、JASDAQに上場している企業の株式は、もともと証券会社の店頭で販売されていました。
取引所で扱われずに販売されていた為、比較的小規模な取引となっていたのです。
現在は、証券取引市場で扱われていますが、上記のような背景もあり、ジャスダックにはベンチャー企業のみならず、創業年数が長い老舗企業も名を連ねています。
JASDAQは、「スタンダード」と「グロース」の2つの市場に分けられています。
スタンダードは、東証1部、2部、マザーズと同様に、企業業績や株式の数などによって上場が決定される市場です。
これに対して、グロースでは、業績が不十分でも将来的な成長が見込めると判断された場合は、上場することが可能となっています。
何も実績がなく、とりあえず上場するといった企業でも、事業内容がしっかりしていれば、JASDAQのグロースに上場できるのです。
ジャスダックの上場条件は以下の通りです。
項目 | スタンダード | グロース |
(1)株券等の分布状況(上場時見込み) | 公募又は売出し株式数が1,000単位又は上場株式数の10%いずれか多い株式数以上 | 同左 |
株主数 200人以上 | ||
(2)流通株式時価総額(上場時見込み) | 5億円以上 | 同左 |
(3)純資産の額(上場時見込み) | 2億円以上 | 正 |
(4)利益の額又は時価総額(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減) | 次のa又はbに適合すること | – |
a.最近1年間の利益の額が1億円以上であること | ||
b.時価総額が50億円以上 | ||
(5)虚偽記載又は不適正意見等 | 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」 | 同左 |
「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書等(最近1年間) において、「無限定適正」 | ||
上記監査報告書又は 四半期レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし | ||
新規上場申請に係る株券等が国内の他の金融商品取引所に上場されている場合にあっては、次の(a)及び(b)に該当するものでないこと | ||
(a)最近1年間の内部統制報告書に「評価結果を表明できない」旨の記載 | ||
(b)最近1年間の内部統制監査報告書に「意見の表明をしない」旨の記載 | ||
(6)上場会社監査事務所による監査 | 上場会社監査事務所の監査を受けていること | 同左 |
(7)株式事務代行機関の設置 | 東京証券取引所(以下「東証」という)の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は当該株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること | 同左 |
(8)単元株式数及び株券の種類 | 単元株式数が、100株となる見込みのあること | 同左 |
新規上場申請に係る株券等が、次のaからcのいずれかであること | ||
議決権付株式を1種類のみ発行している会社における当該議決権付株式 | ||
複数の種類の議決権付株式を発行している会社において、経済的利益を受ける権利の価額等が他のいずれかの種類の議決権付株式よりも高い種類の議決権付株式 | ||
無議決権株式 | ||
(9)株式の譲渡制限 | 新規上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること | 同左 |
(10)指定振替機関における取扱い | 指定振替機関 の振替業における 取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること | 同左 |
グロース市場の場合、企業業績が不安定な企業が多いので、投資初心者はあまり手を出すべき市場ではありません。
株価が上がったときのリターンは非常に高いですが、倒産して株式の価値がゼロになる可能性もありますので注意してください。
ジャスダックについて、さらに詳しくは以下のコンテンツ内でも解説していますので参考にしてみてください。
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まとめ
株式市場と一口で言っても、様々な種類に分かれています。
それぞれ、上場の条件が異なり、企業の収益力や安定性を図る指標ともなっています。
マザーズやジャスダックには、多くのベンチャー企業が上場しているため、今後、急成長を遂げる企業が出てくる可能性が高いです。
投資初心者の方は、まずは安定した成長力をもっている企業が多い東証1部、2部の企業株式から購入して、経験を積んでいった方が良いでしょう。
以上、日本の株式市場の種類と東京証券取引所管轄の市場を紹介!(東証1,2部・マザーズ・JASDAQ)…の話題でした。