エヌビディア(NVIDIA Corporation)は高速で画像処理や演算処理を行うグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)という半導体を提供する企業です。
同社のGPUは、ゲームやビジュアライズ、データセンター、自動運転等、幅広い分野で活用されています。
現在、GPUはゲーム業界にはなくてはならない技術となっています。
インテルのCPUでは、最新のゲームはスムーズ動作しないためエヌビディアのGPUが活用されています。
任天堂のゲーム機である「Nintendo Switch」にもGPUが搭載されています。
同社のGPUは高速で演算処理ができるため、自動運転やAI、ディープラーニングにも活用されています。
自動運転では、ベンツやBMW、テスラ、トヨタ、ホンダ、アウディ、ダイムラー等と提携しています。
コンピューターの演算処理をおこなうプロセッサにはCPUとGPUの2種類があります。
しかし、CPUもGPUもPCを正常に機能させるために必要な計算処理をおこなうという点では同様です。
CPUはコンピューター全体の計算処理ができるのに対して、GPUは3Dグラフィックスなどの計算処理しかできません。
しかしGPUはCPUの数十倍から数百倍の計算速度の能力を有しています。
現状、最新のゲームはインテルのCPUの性能で対処することができないためエヌビディアかAMDのGPUが使用されています。
エヌビディアはGPUにおいて圧倒的な技術力を武器にしていますので、ゲーム分野において圧倒的なプレゼンスを有しています。
本記事ではそんな米国IT巨人の一角であるエヌビディアの展望について分析していきます。
■ 投資判断基準:中長期的に「買い」
▷ 企業規模が大きいにも関わらず高成長率を維持しており、主力のゲーム事業依存からの脱却を積極的に推進しています。
▷ 仮想通貨事業や自動運転事業といった注目度の高い分野にも進出し、一定のプレゼンスを有している。
■ 指標関連:
▷ 仮想通貨市場が復調するか自動運転事業で技術的なアップデートがあれば株価は高騰する可能性がある。
▷ インカムゲインには期待せず、キャピタルゲインを追求すべき。
■ 業績見通し:
▷米中貿易戦争の影響で、成長率は鈍化する見込み。
■ 株主還元:
▷配当金を拠出しており増配傾向であるものの、配当利回りは低く魅力的な水準とはいいがたい。
Contents
売上の大半はゲーム事業。今後は仮想通貨や自動運転の伸びに期待
2018年1月期のエヌビディアの売上高を見てみると、売上高の大半はゲーム関連事業であることがわかります。
仮想通貨や自動運転事業で頻繁に話題に上るエヌビディアですが、同分野はまだまだ発展途上のようです。
なお、製品別の売上高においてもGPUが大半を占めています。
上記のように現状の売上高構成比率はゲーム関連事業にやや依存しています。
しかし今後自動運転や仮想通貨が盛り上がれば、同社の事業別売上高構成比率もより多様化することが見込まれます。
売上の大部分が中国および台湾!米中貿易戦争で悪影響も・・・
以下は同社の地域別売上高の比率ですが、中国及び台湾向けの売上高が全体の約50%程度を占めています。
米中貿易戦争の影響により、同社にも大きな影響が出ています。こちらについては最新決算情報にて詳述します。
決算に裏打ちされる圧倒的な成長率
それでは、エヌビディアの業績と最新の決算情報について確認していきたいと思います。
年度 | Jan-15 | Jan-16 | Jan-17 | Jan-18 | Jan-19 |
売上高 | 4,681.51 | 5,010.00 | 6,910.00 | 9,714.00 | 11,716.00 |
営業利益 | 758.99 | 747 | 1,934.00 | 3,210.00 | 3,804.00 |
税引前当期利益 | 754.84 | 743 | 1,905.00 | 3,196.00 | 3,896.00 |
当期利益 | 630.59 | 614 | 1,666.00 | 3,047.00 | 4,141.00 |
図に示すと以下の通りとなります。
過去5年の業績ですが、毎年右肩上がりの成長を実現していました。
しかし、2019年に米中貿易戦争が本格化した影響で同社の2019年度の業績は前年比マイナスとなる見込みです。
最新決算情報!市場予想を上回るも減収減益
2019年8月15日の引け後、エヌビディアが発表した2019年第2四半期の決算ですが売上高及び利益は市場コンセンサスを上回る結果となりました。
ゲーム向け及び自動車向けの半導体事業が想定以上に好調であったとのことでした。
売上高は31億20百万ドルでした。
市場予想は、売上高25億50百万ドルでした。
EPSは市場予想1.15ドルに対して、1.24ドルでした。
主力のゲーム事業が米中貿易戦争の影響により27%減の13憶10百万ドルであったため同社の売上高が減少する要因となってしまいました。
米中貿易戦争を乗り越えることができれば、同社の業績も再び好調となる可能性は十分にあると考えられます。
なお、決算内容が市場予想を上回る結果となりましたので、株価は引け後に5.6%程度上昇しました。
エヌビディアは株価指標から考えて割安なのか?
エヌビディアのPERについて見ていきましょう。
Sep-14 | Sep-15 | Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
PER(倍) | 16.82 | 25.9 | 35.45 | 50.53 | 26.18 | 38.63 |
図示すると以下のようになります。
PERについては、ビットコインの暴落により仮想通貨マイニングの需要が激減し、
仮想通貨事業の業績が低迷してしまったことにより2018年に急速に低下していきました。
次にエヌビディアの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Sep-14 | Sep-15 | Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
EPS | 1.14 | 1.13 | 3.08 | 4.86 | 6.21 | 4.2 |
BPS | 8.11 | 8.31 | 9.85 | 12.33 | 15.42 | 17.93 |
図示すると以下のようになります。
EPS及びBPSともにエヌビディアの成長に連動する形で右肩上がりとなっています。
2019年度は業績悪化が見込まれているため、EPSは低下することが予想されています。
1株当たりの配当金と配当利回りは以下の通りです。
配当は増配傾向にありますが、インカムゲイン目的での購入にはまだまだな水準です。
Sep-14 | Sep-15 | Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
配当(ドル) | 0.34 | 0.4 | 0.48 | 0.57 | 0.61 | 0.68 |
配当利回り | 1.77% | 1.37% | 0.44% | 0.23% | 0.38% | 0.42% |
エヌビディアの課題と将来は?
以下はエヌビディアの直近5年間の株価水準です。
エヌビディアの株価は、直近5年間で10倍以上に成長していますが、2018年後半から2019年にかけては乱高下しています。
直近のパフォーマンスは芳しくありません。
同社の株価が復調するためには、仮想通貨市場が再び盛り上がりを見せるか、
自動運転技術に大きな進捗がある又は米中貿易戦争の終結のいずれか一つは最低条件と言えそうです。
仮想通貨市場に関しては、海外において機関投資家が徐々に市場へ参入してきており、
今後復調する可能性は十分にあると考えられます。
加えて、自動運転技術についても世界各国の企業が注力している分野であり何かしらの技術のアップデートは起こりうるかもしれません。
その際に同社のGPUの高速演算処理技術が脚光を浴びる可能性はあります。
事業の多角化を進める同社にとって、株価復調のチャンスは存在するものと考えられます。
EPSの増加率から株価水準を予想する
エヌビディアの2014年から2019年までのEPSの年平均増加率はCAGRを用いて算出すると29.80%と算出されます。
保守的にEPS成長率10%、20%、6年平均29.80%で上昇した場合のEPSの推移は以下となります。
EPS予想 | 10%成長 | 20%成長 | 29.80%成長 |
20-Sep | 4.62 | 5.04 | 5.45 |
21-Sep | 5.08 | 6.05 | 7.08 |
22-Sep | 5.59 | 7.26 | 9.18 |
23-Sep | 6.15 | 8.71 | 11.92 |
24-Sep | 6.76 | 10.45 | 15.47 |
25-Sep | 7.44 | 12.54 | 20.09 |
PERについては、保守的に減収減益を見込んで2019年9月の数値である38.63倍を使用して株価を算出します。
株価予想 | 10%成長 | 20%成長 | 29.80%成長 |
20-Sep | 178.47 | 194.70 | 210.60 |
21-Sep | 196.32 | 233.63 | 273.35 |
22-Sep | 215.95 | 280.36 | 354.81 |
23-Sep | 237.54 | 336.43 | 460.55 |
24-Sep | 261.30 | 403.72 | 597.79 |
25-Sep | 287.43 | 484.46 | 775.93 |
現時点の株価が$179近辺ですので、エヌビディアの成長率が鈍化しない限り、保守的に見積もっても2025年には$484-$775を目指せる水準となります。
尚、上記の想定はあくまでエヌビディアのクレジットイベントが発生せず、
同社が現状の成長率を維持するという見通しである場合の想定となります。
まとめ
今後自動運転事業や仮想通貨事業が成長することで十分EPS上昇を伴って株価が上昇していくことが見込まれます。
配当金を期待することは得策ではありませんが、成長企業として長期的に株価の上昇が期待できる銘柄といえるでしょう。
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