ベライゾンは、米国の携帯電話やインターネット、ケーブルネットなどを提供する総合通信企業です。
同社は総合電気通信会社として、有線音声、データ・無線・インターネットサービス・電話帳発行などを行い、連邦政府向けサービスも提供しています。
固定電話、携帯電話の双方を手がけ、主に3Gと4Gの通信サービスを提供しています。
5Gについては2019年に本格化を進めています。
あまり日本では馴染みがないかもしれませんが全米1位の売上を誇る通信企業ですので日本で例えるならばNTTのような企業です。
日本にもベライゾンジャパンという名称で子会社が存在しています。
■投資判断基準:中長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し中長期的に$63.99-$98.71(現在約$56)の水準に上昇することが期待される。
配当利回りも4%台と高く、5G回線市場の将来性を考慮するとインカムゲインを享受しつつ長期保有することが望ましい。
■ 指標関連:
▷PERは14.96倍であり、過去5年間で比較的安定的に推移。
▷配当利回り4.31%程度と高いため、中長期的にインカムゲインとキャピタルゲインが狙える。
■ 業績見通し:
▷通信事業、広告事業で苦戦。2019年度の売り上げは減少見込みであるものの、コスト削減が進んでいる。
▷5G回線市場において先行しており、収益の多角化が期待できる。5G回線事業そのものの将来性も大きい。
■ 株主還元策の動向:
▷連続増配年数は12年。今後も増配は継続されると思われる。
▷配当利回りは4.31%程度と、大型株の中ではかなり高い。
Contents
ベライゾンの頭打ちの本業、5Gへの注力
頭打ちとなりつつある本業
同社の本業である通信事業ですが、消費者がインターネット上の動画視聴サービスへ移行してしまったことでケーブルテレビ契約が減少し、ケーブル事業からの収益は減少傾向にあります。
加えて、携帯電話の普及も爆発的な速度で進んだため、今や国民の大多数が携帯電話を保有しています。
これ以上加入者数を爆発的に増やすことは困難であるものと考えられます。
加えて、インターネット市場での競争は激しく同市場においてはGoogleやFacebookが先行しているため利益率はなかなか上がりづらい環境下にあります。
同社は積極的なコスト削減に取り組んでいますが、効果を発揮するまではもう少し時間を要してしまいそうです。
5G市場への投資と先行
一般的に、企業が逆風に対応するにあたっては、巨大なM&Aの実行によるバランスシートの膨張が行われます。
しかしながら、同社は巨大なM&Aでバランスシートを膨らませる事などはせず、通信インフラの改善とコスト削減に集中して取り組んでいました。
代わりに、通信ネットワークを早急に改善するという戦略に地道に取り組んできていました。
そして2018年のストレート・パス・コミュニケーションズ買収で5G回線開発の競争で一歩抜きん出ている結果となりました。
5G回線の開発には業界全体が取り組んでおり、通信速度上昇と新たな収益源の開拓を目指しています。
というのも、5G回線は、自動運転車・スマートホーム・リモート外科手術等様々な技術に応用されるための鍵となる分野であるためです。
5G回線には、通信業界のみならず、世界中から注目が集まっています。
同社は2018年10月、5G回線を使用した住宅用ブロードバンド・テレビ回線の提供を4都市において試験的に開始しており、2019年末までにこれを30都市以上に拡大する予定です。
5G回線においてベライゾンは他社より先行しているものと考えられます。
最新の決算は市場予想を上回る結果に
それでは、ベライゾンの業績について確認していきたいと思います。
年度 | Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 127,079.00 | 131,620.00 | 125,980.00 | 126,034.00 | 130,863.00 | 131,816.95 |
営業利益 | 18,199.00 | 33,060.00 | 24,925.00 | 24,548.00 | 23,660.00 | 28,349.00 |
税引前当期利益 | 15,270.00 | 28,240.00 | 20,986.00 | 20,594.00 | 19,623.00 | — |
当期利益 | 9,625.00 | 17,879.00 | 13,127.00 | 30,101.00 | 15,528.00 | 19,593.02 |
図に示すと以下の通りとなります。
過去5年の業績は、逆風にさらされながらもほぼ横ばいです。
ベライゾンの自力の強さがうかがえます。
2019年8月1日にベライゾンが発表した2019年第2四半期の決算の発表を見てみましょう。
売上高約321億ドル、EPS 1.23ドルであり、市場予想であった売上高324憶ドルは下回ったものの、EPSについては市場予想のEPS 1.20ドルを上回る内容でした。
同社は他社に先駆け5G回線のプロセスを開始し、当該コストが重荷になるという懸念材料がありました。
しかし今回の決算で当該懸念は緩和された様子です。
堅調に推移するベライゾンのEPSとBPS
ベライゾンの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 2.42 | 4.38 | 3.22 | 3.27 | 3.76 | 4.73 |
BPS | 2.96 | 4.03 | 5.53 | 10.56 | 12.86 | 14.94 |
図示すると以下のようになります。
EPS及びBPSともに過去5年間上昇基調でした。
2015年に大幅に上昇したEPSが2016年に大幅下落しています。
しかし、2019年12月期には2015年12月期の水準を上回る見通しです。
連続増配12年の高配当銘柄の一角
以下は直近5年間の配当金の推移と配当利回りの推移です。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当(ドル) | 2.14 | 2.22 | 2.27 | 2.32 | 2.37 | 2.43 |
配当利回り | 4.58% | 4.80% | 4.25% | 4.38% | 4.21% | 4.31% |
視覚化すると以下の通りです。
なお、配当落ち月は、1月、4月、7月、10月で、配当支払い月は2月、5月、8月、11月の年4回です。
配当利回りは過去5年間4%台で安定的に推移しています。
連続増配年数は12年と比較的長期間の増配が行われています。
今後も安定的に収益を稼得することができれば増配は継続される可能性が高いと思われます。
安定的なPER水準
以下はベライゾンの過去5年間の株価水準ですが、ベライゾンの株価は、42ドルから60ドル前後で推移しています。
5G回線に関連する自動運転に取り組む企業の株価のボラティリティが非常に高いことを考慮すると、値動きは比較的緩やかです。
加えて配当利回りが高いため株価下落時には配当狙いの買い支えが入りやすくなることから株価は底堅く推移していくものと考えられます。
【株価= PER × EPS】として算出されますが、EPSと株価が共に上昇しているのでPERは狭い範囲に収斂しています。
以下は過去5年のPERの推移ですが平均して14.93倍で推移しています。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
PER(倍) | 19.31 | 10.56 | 16.59 | 16.2 | 14.98 | 11.92 |
今後のベライゾンの見通しについて考察します。
ベライゾンの株価は今後上昇するのか?
ベライゾンの株価が上昇するかどうかは、5G回線開発の成功にかかっています。
5G回線は、通信速度の上昇に加え、動運転車・スマートホーム・リモート外科手術等様々な技術に応用されることが期待される分野でもあるため、5G回線市場で先行することができた場合に享受できるメリットは計り知れません。
加えて、5G回線市場の主要なマーケットプレイヤーとなることにより本業である通信事業依存からの脱却も可能となります。
米中貿易戦争の原因の一つも、5G回線を巡る覇権争いであるという見方があるほどに5G回線市場は注目が大きいです。
それだけに一度同市場において成果を見せることができれば投資家の期待は一気に高まり株価の上昇につながることとなり得ます。
本業である通信事業についてもコスト削減を進めており、徐々に効果を発揮してくるであろうと想定されます。
やはり5G回線市場での成功が株価の大幅上昇のカギとなります。
EPSの増加率から株価水準を予想する
過去5年間のEPSの年平均増加率はCAGRを用いて算出すると18.24%と算出されます。
保守的にEPS成長率が5%、10%、15%、5年平均18.24%で上昇した場合のEPSの推移は以下となります。
EPS予想 | 5%成長 | 10%成長 | 15%成長 | 18.24%成長 |
20-Dec | 2.54 | 2.66 | 2.78 | 2.86 |
21-Dec | 2.67 | 2.93 | 3.20 | 3.38 |
22-Dec | 2.80 | 3.22 | 3.68 | 4.00 |
23-Dec | 2.94 | 3.54 | 4.23 | 4.73 |
24-Dec | 3.09 | 3.90 | 4.87 | 5.59 |
25-Dec | 3.24 | 4.29 | 5.60 | 6.61 |
PERについては、過去5年間の平均値である14.93倍を使用して株価を算出します。
株価予想 | 5%成長 | 10%成長 | 15%成長 | 18.24%成長 |
20-Dec | 37.93 | 39.73 | 41.54 | 42.71 |
21-Dec | 39.83 | 43.71 | 47.77 | 50.50 |
22-Dec | 41.82 | 48.08 | 54.94 | 59.71 |
23-Dec | 43.91 | 52.89 | 63.18 | 70.61 |
24-Dec | 46.10 | 58.18 | 72.66 | 83.48 |
25-Dec | 48.41 | 63.99 | 83.55 | 98.71 |
現時点の株価が$56近辺ですので、米国の人口が減少局面に入り携帯電話やケーブルテレビの契約者数が減少しました。
5G回線の開発に失敗しない限り5年後には$63.99-$98.71を目指せる水準となります。
尚、上記の想定はあくまでベライゾンのクレジットイベントが発生せず、同社が現状の成長率を維持するという見通しである場合の想定となります。
5G回線の開発に成功すればこれ以上の上昇も十分に見込める銘柄であると思います。
まとめ
5G回線市場に先行しており、米国国内でのシェアも大きく配当利回りも高いことから中長期的に「買い」を推奨します。
事業の将来性に加え、高配当株でもあるため、一定の株価下落圧力への抵抗力を備えていることも大きな魅力です。
■投資判断基準:中長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し中長期的に$63.99-$98.71(現在約$56)の水準に上昇することが期待される。
配当利回りも4%台と高く、5G回線市場の将来性を考慮するとインカムゲインを享受しつつ長期保有することが望ましい。
■ 指標関連:
▷PERは14.96倍であり、過去5年間で比較的安定的に推移。
▷配当利回り4.31%程度と高いため、中長期的にインカムゲインとキャピタルゲインが狙える。
■ 業績見通し:
▷通信事業、広告事業で苦戦。2019年度の売り上げは減少見込みであるものの、コスト削減が進んでいる。
▷5G回線市場において先行しており、収益の多角化が期待できる。5G回線事業そのものの将来性も大きい。
■ 株主還元策の動向:
▷連続増配年数は12年。今後も増配は継続されると思われる。
▷配当利回りは4.31%程度と、大型株の中ではかなり高い。
以上、【VZ】ベライゾンコミュニケーションズ(VERIZON)の今後の株価推移を予想!米国通信最大手の将来性を分析。…でした。
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