株式投資で銘柄選びをする上で、企業の決算書を見ると思います。
その時に「自己資本比率」という言葉を目にしたことはないでしょうか?
このコンテンツでは、この自己資本比率の意味や高い企業、低い企業の例をご紹介します。
経営指標についての知識をつけておくことで、銘柄選びにおける材料が増えていくのでおすすめです。
目次
Contents
自己資本比率とは?計算方法を紐解く!
まずは「自己資本比率」がなにを意味しているのかについて、説明していきます。
頭の中に「貸借対照表」を浮かべてみてください。
資産側には、流動資産、固定資産、などがあります。
負債側には、流動負債、固定負債、そして、資本の部の純資産などが存在します。
自己資本比率とは、貸借対照表の右側を意味する「総資本」。
このうちどの程度が「自己資本」でまかなわれているのかを示す、経営指標のことです。
自己資本とは借金ではないため返済する必要がない資本のことを意味しています。
計算式としては、【株主出資(資本金・資本剰余金)+利益剰余金】から算出することができます。
「株主出資」は名前のとおり株主から出資を受けた払込資本のことです。
「利益剰余金」は事業活動によって得た利益のうち社内に留保しているお金のことをいいます。
そして現在の日本の制度会計上では、図1の「純資産」が自己資本にあたるのです。
つまり経営に関する指標を見ていくなかで自己資本や純資産という言葉が出てきたら、同じ意味と解釈してもらってOKです。
それではもう一度、図1を用いて自己資本比率の導きからを考えてみましょう。
上記でも少し触れましたが、自己資本比率は「総資本のうち、どの程度が自己資本でまかなわれているのか」を示すものです。
計算式は、【自己資本/総資本×100】の式から導き出すことができます。
図1における総資本は、流動負債・固定負債・純資産を合計した数値を利用し、自己資本は純資産の数値をそのまま利用します。
これで自己資本比率の導き方については理解ができたのではないでしょうか?
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自己資本比率が意味すること
自己資本比率の導き方を上記で学びました。
ここからは、自己資本比率の意味についてもわかりやすく解説していきます。
図1の総資本のうち、自己資本は株主からの出資や利益の留保分なので返済義務はありません。
しかし、流動負債・固定負債については銀行などから融資を受けています。
これはいわゆる借金であり、自己資本と違って返済義務が存在します。
基本的には多くの方が、借金を多く抱えていることにはいいイメージを受けないものです。
自己資本比率が高い(総資本に占める自己資本の割合が大きい)ということは、同時に負債が割合として少ないことを意味しています。
返済義務をあまり抱えておらず、経営が安定している企業ということになります。
負債で事業を展開しているよりも自己資本で事業を展開している方が、倒産の危険性も少なく、株主としては安心です。
まとめると、自己資本比率の高さは企業経営の安定性を示しており、基本的には高いほど望ましいといえます。
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株式投資における自己資本比率の目安
自己資本比率が高い方が企業にとって望ましいことがわかりました。
しかし、「何%以上あれば高いの?」と疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。
この基準は完全に定められているものではありません。
業界などによってもブレが生じやすいので、あくまでも目安としてご紹介します。
一般的には、自己資本比率が70%以上だと、ほとんど無借金の超優良企業です。
50%以上だと優良企業と見なされており、40%以上だと倒産の危険性も少なく安心といわれています。
20%~49%の範囲内だと一般的な水準とされています。
このなかでも40%以下の企業は自己資本比率の上昇を試みる必要性があります。
また、10%~19%の範囲内だと資本力が乏しいと見なされます。
0%~9%の範囲内だと資本欠損の危険性があると見なされます。
すでに赤字という場合には黒字になるようにすぐさま企業を立て直す必要があります。
また、自己資本比率には数値がマイナスになることもあります。
総資本よりも負債の額が上回っているということなので、つまり債務超過です。
この場合には早急に企業再建に取り組む必要があります。
利益が出てない部門や不要な人員を削るなど無駄な部分を取り除く必要が出てきてしまいます。
これらはあくまでも目安です。
しかし、自己資本比率が高い方が安定した経営をしていることは確かです。
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自己資本比率が高い企業の例
では、実際に自己資本比率が高い超優良企業をピックアップしていきます。
ただし自己資本比率だけを見て投資銘柄を決定するのではなく、1つの参考材料としてご覧ください。
デルタフライ(4598)
「デルタフライ」は徳島県に本社がある、医薬品製造メーカーです。
自己資本比率は98.20%(2019年3月期)です。
エネクスIF(9286)
「エネクスIF」は、伊藤忠エネクスをメインのスポンサーとするインフラファンドです。
自己資本比率は97.80%(2018年11月期)です。
ツツミ(7937)
「ツツミ」は、埼玉県に本社がある、宝飾品・貴金属企業です。
自己資本比率は97.40%(2019年3月期)です。
FHTHD(3777)
「FHTHD」は、ターボリナックスやコネクト株式会社などを傘下に持つ、持株会社です。
自己資本比率は96.80%(2018年12月期)です。
サイバーダイン(7779)
「サイバーダイン」は、茨城県にあるサイバニクス技術に関連する研究開発・製造・販売などをおこなっている企業です。
自己資本比率は96.70%(2019年3月期)です。
…自己資本比率が高い上位5位をご紹介しました。
ここから分かるのは誰もが知っているような有名企業はランクインしていないということです。
たとえば日本を代表する以下の企業。
- トヨタ自動車(7203)
- 日本電信電話(9432)
- ソフトバンクグループ(9434)
直近の自己資本比率はそれぞれ、38.2%・41.5%・21.1%です。
倒産の危険性が少ないといわれている40%基準を下回っている企業もあります。
しかし、だからといってこの3社を優良企業ではないとは言えません。
というのも自己資本比率が高いことは、経営の資金繰りにおいてリスクが小さく安全性が高いです。
しかし、「借金をして事業をさらに拡大しよう」という積極的な成長力を抑えているともとらえることができますよね。
とくに、ソフトバンクグループは成長が目まぐるしい企業です。
自己資本比率は21.1%と低めですが、その分増大な利益を生み出していますし知名度も高いので倒産の危険性は少ないでしょう。
つまり、自己資本比率だけで企業の良し悪しを判断することはできないのです。
ソフトバンクグループは23日、米シェアオフィス大手ウィーワーク運営のウィーカンパニーを支援すると発表した。ウィー株の追加取得や融資などで最大95億ドル(約1兆円)を投じる。投資事業の目玉だったはずの案件が、全面支援の対象となった。自主性にゆだねる投資戦略の弱点が露呈した。巨額マネーの力で有望企業を囲い込む戦略は岐路にさしかかった。
(引用:日経新聞「ソフトバンクG、強気の投資に岐路 WeWorkに1兆円」)
ソフトバンクグループ(SBG)は、米シェアオフィス大手「ウィーワーク」の救済に取り組む中、信頼の危機に直面する。インドの新興ホテル運営会社OYO(オヨ)ホテルズアンドホームズの損失拡大も避けられない。SBGは傘下の「ビジョン・ファンド」を通してオヨに10億ドル(約1090億円)近い投資をしている。オヨの純損失は、3月までの1年間に前年比6倍の3億3200万ドルに膨らんだ。
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自己資本比率が低い企業の例
続いては、自己資本比率が低い企業をピックアップしていきます。
フルッタ(2586)
「フルッタ」は、東京都に本社がある、アサイードリンクの販売などをおこなう企業です。
自己資本比率は-77.70%(2019年3月期)です。
小僧寿し(9973)
「小僧寿し」は、東京都に本社がある、持ち帰り寿し店を展開する企業です。
自己資本比率は-75.20%(2018年12月期)です。
中村超硬(6166)
「中村超硬」は、大阪府に本社がある、太陽電池に用いられるダイヤモンドワイヤの開発・製造・販売などをおこなう企業です。
自己資本比率は-17.20%(2019年3月期)です。
千代健(6366)
「千代健」は、神奈川県に本社がある、建設会社兼エンジニアリング会社です。
自己資本比率は-17.10%(2019年3月期)です。
倉元(5216)
「倉元」は、宮城県に本社がある、薄型テレビ用ガラス基板・EL用およびセンサなどの微細の開発などをおこなう企業です。
自己資本比率は-9.90%(2018年12月)です。
これらの企業については、どのような理由から債務超過に陥ったのか、一時的な自己資本比率の低下だったのかを吟味する必要があります。
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まとめ
自己資本比率の意味や高い企業、低い企業の例をご紹介しました。
自己資本比率は企業経営の安定性や資金力を表した、非常に重要な指標であることはがお分かりいただけたかと思います。
自己資本比率は高ければ高いほどよく、40%を超えていれば倒産の危険性が低いといわれています。
一方で、40%を下回っていても知名度が高く安心して投資できるような企業もたくさんあります。
自己資本比率は1つの投資判断材料として役立ててみることをおすすめします。
以上、企業の財務状況の安定性を測る「自己資本比率」とは?比率が高い企業・低い企業についても紹介!…でした。