株式取引や為替取引がインターネットで簡単に行えるようになり、多くの人が市場で取り引きを行うようになってきました。
初心者の方の多くは、株式などの「現物」取引を行うケースが多いです。
しかし、取引の種類は現物取引のみではありません。
「先物取引」と呼ばれる現物取引とは異なる取引形態があります。
今回は、そんな先物取引について、特徴や歴史、メリット、デメリットなどを解説していきます。
目次
Contents
先物取引とは?
先物取引とは、あるモノを「将来の決められた日」において、「決められた価格」で売買する取引のことです。
米や小麦を安定して仕入れたい、もしくは売りたいと思っている人にとって、価格の変動は利益を安定して出す際にリスクとなります。
あらかじめ、一定の価格で取り引きすることを約束しておけば、価格が変動しても利益を出すことが可能になります。
このような理由から、先物取引が登場するようになったのです。
もともとの先物取引の目的は、価格変動のリスク回避ですが、この先物取引に投資家が目を付けます。
将来、一定の価格で購入することを約束しておけば、その時点における実際の価格の高低により利益を出すことができるためです。
例えば、小麦100 kgを3か月後に3万円で購入する先物取引を行うとします。
3か月後、実際に小麦を購入する日になった際、小麦100 kgの価格が4万円になっていた場合、1万円得をしていることになります。
3万円で購入した小麦を4万円で売れば、1万円の利益を出すことが可能になります。
このように、期日における価格差を利用して、利益を得ようとする投資家が現れてくるのです。
現在では、先物取引はもっぱら投資対象となっています。
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商品先物取引の歴史
先物取引は一体いつから行われるようになったのでしょうか。
先物取引の始まりは江戸時代
日本における先物取引の始まりは、江戸時代とされています。
当時、「天下の台所」と呼ばれていた大阪には、全国から集められた米が保管されている蔵屋敷がたくさんありました。
大阪の商人たちにとって、この大量の米を如何にして売っていくかが課題となっていました。
その際に、米の売却を「約束する」取引を開始したのです。
ただ、当時は江戸幕府の管理下にあったこともあり、商人が利益を出し過ぎないよう、取引が制限されることもありました。
戦中の中断を経て、現代の先物取引に!
明治、大正時代になっても米の先物取引は継続して行われましたが、1939年に米の先物取引が廃止されます。
戦争中の食料事情もあり、政権に食糧管理が管轄されてしまったのです。
戦争終結後、1950年に商品取引所法が公布され、先物取引が再開されました。
1960年代後半の高度経済成長もあり、商品取引所の開設が活発に行われます。
しかし、高度経済成長後、経済の一極集中が進んでいったため、地方にある取引所は徐々に少なくなってきました。
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先物取引のメリット
それでは、先物取引のメリット、デメリットを確認していきましょう。
価格変動のリスクを最小限にできる!
仕入れを行う業者や、生産物を大量に売る生産者にとって、価格変動のリスクを無くせる点は非常に大きなメリットです。
先物取引で契約した価格をもとにして、販売、生産計画を立てられますので、安定した収益を出すことが可能になります。
先物取引がないと、常に価格変動のリスクにさらされるため、利益を安定させることが難しくなりますね。
実際に商品をもっていなくても「売り」注文ができる!
先物取引は、あくまでも「将来における売買」を約束するものであるため、契約時点で実際に現物をもっていなくても「売り」注文を出すとができます。
投資家サイドからみると、現物をもっていなくても商品取引ができるのは、この先物取引ぐらいですので、取引幅を広げることが可能になります。
扱われているモノも、身近にある商品(米や小麦、畜産物など)が多いので、価格の変動も株や為替より予想しやすいと言えます。
レバレッジをかけて取引ができる!
先物取引では、レバレッジをかけて取引することが可能です。
レバレッジ取引は、別名「証拠金取引」とも呼ばれていて、一定額を取引口座に納めることで、その納めた金額以上の取引を行うことができる制度です。
例えば、証拠金が10万円でレバレッジを10倍に設定した場合、実際に注文できる額は100万円となります。
レバレッジをかけて取引することで、少額で多大な利益の獲得を狙えます。
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先物取引のデメリット
価格の変動が激しくなるケースがある
先物取引で扱われる商品は、気候変動や天災、病気の流行によって価格を大きく変動させるものがあります。
例えば、ブロイラーなどの畜産物の場合、疫病の流行で畜産物が被害を受けると価格が急騰することがあります。
飲食店など生肉を安定して購入したい業者は多いので、需要過多になるわけです。
こういったケースは、あらかじめ予測することが著しく困難です。
先物を投資対象として扱っている投資家にとっては、この価格変動は諸刃の剣となります。
価格変動が激しくなれば、損失が拡大するリスクが増えますので、先物取引でも現物取引と同様、分散投資をしておくことが肝要ですね。
レバレッジ取引で大損失を被る可能性あり
先ほど、メリットの項目で「レバレッジをかければ多大な利益獲得を狙える」と書きました。
レバレッジをかけた場合、反対に損失を拡大させてしまうリスクもあります。
例えば、10万円の証拠金でレバレッジ10%設定で取引を行うとします。
100万円分の取引を行い、結果、60万円の回収となった場合、40万円が損失として発生します。
この損失は、証拠金として納めた10万円を30万円オーバーしています。
この差額分は、「追加で」口座に振り込まなくてはなりません。
10万円の軍資金で始めたのにも関わらず、その金額の3倍もの損失が発生してしまったのです。
このように、レバレッジをかけると、価格変動によっては損失が拡大してしまうことがあるので、注意してください。
レバレッジは、自身が担保できる範囲内でかけるようにしましょう。
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投資初心者は先物に手を出さないほうが良い?
投資を始めたばかりの方は、いきなり先物取引に手を出さないほうが無難です。
理由としては、先物取引は長期間にわたる価格変動を予測して行うものです。
ある程度、価格変動の見通しを立てられないと利益を出しづらいためです。
株式投資であれば、売買のタイミングを自分で決められます。
そのため、大きな価格変動起こった際でもすぐに買ったり売ったりできますが、先物取引だとそれができません。
最初は、現物取引で価格変動の予測に慣れ、その後に先物取引へ手を広げていくのがベターですね。
よく、「先物取引で簡単に儲かる!」といった宣伝、勧誘をしている人がいますが、彼らの大半は「レバレッジをかけた取引」を勧めてきます。
そこから話を広げて、「レバレッジ取引の指南書」といった情報商材を高額で売ってきます。
先物取引の世界でも、現物取引と同様に「ハイリスク・ハイリターン」の世界です。
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まとめ
先物取引は価格変動のリスクを抑えて、安定して商品を売買することが特徴です。
投資家目線では、現在と将来の価格差を利用して利益を狙うことができる取引となっています。
比較的、長期に渡る価格変動を予測しなくてはならないため、投資初心者の人にはあまりお勧めできません。
ただ、現物取引の経験を積んで徐々に先物取引も行っていけば、投資手法の幅を広げることができます。
投資の手法が増えるということは、それだけでリスクを分散できることになります。
ある程度、価格変動の見通しを立てられるようになったら先物取引も行ってみましょう。
以上、【先物取引とは?】現物取引との違いは?その概要とレバレッジなどの特徴・取引を行うメリット・デメリットを徹底解説。…の話題でした。