株式投資を始めたばかりですと、初めて耳にする単語も多くありますよね。
今回は株式投資における重要な単語・基礎知識として、市場における株式の値段の決まり方や「制限値幅」(ストップ安・ストップ高)について詳しく解説していきます。
目次
Contents
まずは株価の決まり方を押さえよう
基本的に株価は「買いたい」という需要と「売りたい」という供給の量によって決まります。
買いたい人が多ければ株価は上がり、逆の場合は株価が下がります。
板寄せ方式
「板寄せ方式」は、「始値」や「終値」などの株価が決定される売買成立方法です。
取引が始まる9時前から株式注文は沢山集まってきます。
この注文の中で需給があった金額、つまり買い注文と売り注文の累計数量が逆転する値段で株価の初値が決まります。
この時、成行で出されている売り又は買い注文については、全て約定する必要があり、また、この金額より条件の悪い注文(より低い売却注文やより高い買付注文)についても同様になります。
ザラ場方式
「ザラ場方式」での株価決定方法も紹介します。
板寄せ方式によって株価が決定した後は、注文が発注されて売買が約定するごとに株価は変動します。
この時重要になってくるのは、いくらの株価で売買を希望するかを表す「気配値」と、それがどれだけの買い注文・売り注文が出ているかを表す「板」です。
気配値の中でも買い注文の中で最も高い注文を、「買い気配値(買いの先頭)」、売り注文の中でも最も低い注文を「売り気配値(売りの先頭)」と呼びます。
■ 買い気配値(買いの先頭)
■ 売り気配値(売りの先頭)
成り行きで注文を出した場合、この「買い気配値」「売り気配値」の先頭の注文から売買が成立します。
また、このふたつの方式に共通して働く原則として「時間優先の原則」「価格優先の原則」があります。
①時間優先の原則
複数の投資家より同じ値段で注文が出された場合、取引所がその注文を受けた時間が早いものが優先して約定されます。
②価格優先の原則
成行で出された注文は指値で出された注文より優先されます。
指値の場合は、買い注文は、より高い注文、売り注文はより安い注文が優先されて約定します。
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ストップ安・ストップ高。制限値幅とは?
上記の方法によって株価は決定されますが、需給のバランスに大幅なズレが生じたときは変動できる株価の範囲に制限が課されます。
その幅は前日の終値によって変わり、例えば株価が1,800円だと下限は1,300円・上限は2,300円の上下500円以上の値段を付けることはできません。
当然、この下限又は上限を超えての指値注文を発注することはできず、成行注文であってもこの価格に達した場合は売買が成立しません。
- 下限…….ストップ安
- 上限…….ストップ高
この上限・下限はその1日に適用される値幅ですので、翌日にはまた幅が変動します。
例えば、直近ではある製薬会社において臨床実験を行っていた薬の効果が認められなかったという報道を受け、
株価は連日ストップ安を付けたのち、ようやく値段を付けました。
ただし米国市場にはこのストップ安という制度がないため、決算内容が悪く1日で20%程下落するようなこともあります。
投資家に冷静な判断をうながす効果
保有している銘柄がストップ安になると、売りたくても売れない状況となります。
冷静な判断ができず、慌てて売り注文を出す投資家は多いのではないでしょうか。
しかし、ストップ安は投資家に冷静な判断をうながす効果を期待したものです。
ストップ安を設けることで、投資家に冷静な判断を施すきっかけをつくることになります。
保有銘柄がストップ安になったらどうする?
「保有銘柄だけは大丈夫」と安心するのではなく、いつ何があってもいいように対処したいところです。
ストップ安になったときは慌てて売るのではなく、なぜストップ安になったのか原因を調べてみましょう。
役員の不祥事など業績に関係ない悪材料でストップ安になった場合は、その後に戻すことがあります。
業績悪化のニュースでストップ安になっても、値が付いたときに反発しやすいです。
その反発したところで売るといいでしょう。
ただし、反発後は値下がりすることが多いため、早めの行動が大切です。
任天堂のストップ安から見る制限値幅
過去に任天堂の株価が28,220円から23,220円まで下落したことがあります。(-5,000円のストップ安)
基準値段20,000円~30,000円の場合、制限値幅は5,000円です。
この制限値幅どおりに、ストップ安になったわけです。
翌日には終値23,590円へと小幅反発しましたが、その後しばらく下落が続いています。
制限値幅の一覧表
次に制限値幅の一部を表で紹介しておきましょう。
基準値段(以上~未満) | 制限値幅 |
~100円 | 30円 |
100円~200円 | 50円 |
200円~500円 | 80円 |
500円~700円 | 100円 |
700円~1,000円 | 150円 |
1,000円~1,500円 | 300円 |
1,500円~2,000円 | 400円 |
2,000円~3,000円 | 500円 |
3,000円~5,000円 | 700円 |
5,000円~7,000円 | 1,000円 |
7,000円~10,000円 | 1,500円 |
10,000円~15,000円 | 3,000円 |
15,000円~20,000円 | 4,000円 |
20,000円~30,000円 | 5,000円 |
30,000円~50,000円 | 7,000円 |
50,000円~70,000円 | 10,000円 |
70,000円~100,000円 | 15,000円 |
100,000円~150,000円 | 30,000円 |
150,000円~200,000円 | 40,000円 |
200,000円~300,000円 | 50,000円 |
300,000円~500,000円 | 70,000円 |
500,000円~700,000円 | 100,000円 |
この制限値幅は、前日の終値で決まるルールになっています。
前日の終値が1,000円なら、制限値幅は300円になります。
このように、ストップ高・ストップ安になっても制限値幅までという、行き過ぎを抑制する効果が期待できます。
ストップ安の銘柄はここで分かる
どの銘柄でストップ安になったのか、調べたいときに便利なのが「YAHOO! JAPANファイナンス」です。
画面左側にあるマーケット関連ランキングのストップ安をクリックすると、ストップ安になった銘柄が表示されます。
掲示板があるため、ストップ安になった銘柄を保有している人との交流も可能です。
また、値上がり率や値下がり率、年初来高値更新や年初来安値更新などの情報もチェックできるため、取引する際は参考にしてみてください。
PTSで時間外取引
大引け後の決算発表をきっかけとし、ストップ高・ストップ安になるケースが見られます。
東証の時間外であっても、PTSなら取引可能です。
SBI証券のPTSでは、次の時間に取引できます。
- デイタイムセッション:8時20分~16時00分
- ナイトタイムセッション:17時00分~23時59分
保有銘柄の企業で悪い決算が出ても、PTSなら翌営業日まで待たなくても売れる可能性があります。
ストップ安になると、なかなか売れないので困る、というときに便利です。
逆にいい決算が出たときは、PTSで買うチャンスとなるでしょう。
ただし、いい決算が出ても、翌営業日は材料出尽くしで下がるというケースには注意してください。
ストップ高・ストップ安の銘柄の注文方法
ストップ高の銘柄は成行注文、またはストップ高の値段で指値注文を出します。
約定したときは、その後に上がるのか下がるのかを判断してください。
上げが鈍ってきたときは、下がりだす可能性が高いため、早めに利益確定したいところです。
急落し始めたときは、成行注文ですぐに決済するといいでしょう。
ストップ安の銘柄も同様、成行注文、またはストップ安の値段で指値注文を出します。
ただし、ストップ安が連続すると含み損が膨らみかねません。
ストップ安で利益を狙うときも、早めの利益確定がおすすめです。
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ストップ配分とは
また、連日ストップ安・ストップ高で終値がついてしまったときは「ストップ配分」というものが行われる場合があります。
通常、終値は板寄せ方式で決まりますが、需給が大きく偏っている場合は成行の売り・買い注文全て約定させることができず終値の決定ができかねます。
そこで、成行注文を制限値幅における指値注文とみなし、その反対の注文が売買単位以上あるときは「ストップ配分」にて終値を決定させます。
その注文数が多い証券会社から順に1売買単位ずつ取引所から配分され、その後証券会社ごとの規約にのっとり顧客へ配分されます。
最も注文数の少なかった証券会社まで配分が一巡した後はもう一度最も注文数の多かった証券会社に戻って順に配分されます。
さらに押さえていただきたいポイントとしては、上記の「ストップ配分」も行われず、
連日ストップ安・ストップ高が更新されるとこの制限値幅が拡大される点です。
制限値幅によって値動きに制限ができてしまうので、3営業日連続売買高が0株のときは翌営業日以降、
ストップ安であれば制限値幅が下限のみ2倍に、ストップ高であれば上限のみ2倍に変更されます。
ただし、この拡大が行われた後にストップ安・ストップ高以外での値段で売買が成立した場合、翌営業日より制限値幅が本来の幅に戻ります。
売買がなければ、この幅の拡大については翌営業日後も継続されます。
値幅制限の拡大と解除により、前日とかけ離れた値段で取引成立する恐れがあるのです。
ストップ配分時、各証券会社では何を優先している?
ストップ配分時に、各証券会社では何を優先しているのでしょうか。
SBI証券や、マネックス証券、ライブスター証券では、注文時間を優先しています。
一方、松井証券やGMOクリック証券などでは、数量が優先です。
小口個人投資家は注文時間を優先する証券会社、大口投資家は数量を優先する証券会社のほうが割り当てされる可能性が高まります。
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IPO上場時の制限値幅は?
公開価格を基準に制限値幅を設定してしまうと、初値が付くまでの日数が非常に長くかかってしまう場合がありますので、IPOについては初日は制限値幅が適用されません。
そのため需給によっては上場日に公開価格を大きく上回った初値を付けることもしばしばあります。
制限値幅はありませんが、発注可能な値幅については上限が公開価格×4、下限が公開価格÷4と決まっています。
上場日に初値を付けなかったときは前日の最終気配値を基準価格として制限値幅が適用されます。
また、この場合は初値を付けるまで成行での買い注文は発注できませんのでご注意ください。
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〜コラム〜2018年にIPOしたHEROZの初値売り時(利益)は+445万円?
2018年に「将棋ウォーズ」で話題になり、AI技術を強みにB to Bサービスを提供しているHEROZがIPOしました。
初値上昇率は988.9%、初値が公募価格の10.9倍(公募価格4,500円、初値49,000円)、初値売り時+445万円という大型の上場株式公開となりました。
創業者は二人、それぞれNEC出身の今後も期待されるAI領域で、どれくらい大きな企業になっていくのか、楽しみなところですね。
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気配の更新値幅とは
制限値幅とは1日に変動できる株価ということはご説明しましたが、実は株価には直近の値段から上下できる「気配の更新値幅」というものもあります。
現値が1500円の株価が1400円に、次のタイミングには1600円に、と大幅に動いてしまうと成り行き注文であれば想定の金額とは大きく異なった金額で約定してしまう恐れがあります。
500円未満であれば上下8円、700円未満であれば上下10円、1000円未満であれば上下15円…と設定されています。
需給に偏りがあり、この制限値幅を超えた金額で売買が成立するようなときは「特別気配」と呼ばれ、すぐには約定しません。
この「特別気配」は「3分ごと」に更新され、その間に反対注文の呼び込みが行われます。
例えば株価1000円に対して買い注文が殺到し、特別買い気配が入った場合は3分後に株価1030円。
その更に3分後には1060円と価格が動き売買が成立する金額に近づいていくのです。
これが制限値幅までいっても売買が成立しないときは「ストップ高」となります。(上記説明済みですね)
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まとめ
今回は株式の基礎知識として「制限値幅」を中心に、ストップ安・高や気配の更新値幅などについて解説しました。
株の売買を行う際に一番大切な値段の決まり方になりますので、ぜひ覚えておいてくださいね。
以上、【ストップ安・高とは?】IPO初値で億万長者に?株価の決まり方から制限値幅まで詳しく解説。…の話題でした。