世界最大の航空機メーカーであるボーイング。
米国でも唯一の航空機メーカーなので米国政府の後ろ盾もしっかりしています。
超大型の民間機をはじめ、中型機やヘリコプター、軍事用の戦闘機まで、幅広く手掛けています。
また、ボーイングは、NASAと共同で宇宙分野にも力を入れるなど、活躍の幅も広げています。
そんなボーイングの今後の株価の見通しについて見て行きましょう。
■ 投資判断基準:長期的には「買い」
737MAXの再運航決定までは更なる悪材料発生の可能性も。もう少し状況を見守るのが賢明か。
■ 業績見通し:
▷ 事故の影響で大幅な減収減益。ただし、これほどの規模の航空会社は世界にボーイングとエアバスのみ。航空会社も簡単にメーカーを変えることができないので、737MAXの一件が落ち着けば復活するでしょう。
■ 株価指標:
▷ 業績悪化にも関わらず、あまり株価に響いていないので指標上は割高。PERは一時60倍台まで上昇。
▷ 現在の予想EPSで、仮にPERが元の20倍ほどに戻ると株価は163ドルほどまで下落。
■ 株主還元策:
▷ 配当は魅力的だが、自社株買いをストップしており今後の配当政策への影響は不透明。
■ 総括:
世界中の航空会社はボーイングかエアバスから航空機を買うしかないので、事故による業績への影響は限定的と予想。
各証券会社の目標株価も350ドルから400ドルほどと出しているところが多くなっています。737MAXの動向を見守りましょう。
Contents
米国が誇る世界の翼『ボーイング』とは?
ボーイングは、言わずと知れた世界最大の航空機メーカーです。
1997年にマクドネル・タグラスを買収し、アメリカで唯一の航空機メーカーとなっています。
ヨーロッパのエアバスと世界市場を二分しています。
航空機のみならず、軍用機やミサイル、宇宙船などの開発や製造も担っています。
民間航空機事業では、ボーイング787、777、767、747が主力となっています。
また、防衛・宇宙・セキュリティ事業では、戦闘機や輸送機、垂直離着陸機やミサイル、無人機、衛生、宇宙探査機などの国の防衛に関わる重要な製品の研究開発・製造を行っています。
期待の新型機種737MAXが相次ぐ墜落事故で運行停止に!
世界的な航空機需要の増加で業績が好調だったボーイング。
しかし昨年10月にライオン航空機、今年3月にエチオピア航空機と、墜落事故が相次ぎました。
どちらも期待の最新機種であるボーイング737MAXでの事故だったため、同機は運航停止となっています。
現在安全対策に向けた調査中ですが、再運航には2020年1月までかかるとの報道もあります。
このボーイング737は、1960年代に導入されたモデルで、航空機業界で最も使用されている機種です。
そのため、ボーイングの利益をけん引してきた重要な機種でした。
中でも今回運航停止になっている737MAXは最新型のモデルです。
約5,000機の発注があり、売上にして約6,000億ドルもの規模になります。
同機の預り金により、昨年の決算では初めて売上が1,000億ドルを上回りました。
今後考えられるリスクとして、MAX型の発注の鈍化や、追加調査、システム修正などによるコスト増、生産中止などが挙げられます。
また、米中の貿易合意の一環として中国側が輸入する製品にMAX型が含まれていましたが、それも除外を検討されています。
それでも株価の下落は限定的
それでも、事故についての一連の動きに対する株価の変動は限定的です。
航空機は、航空会社との長期に渡る契約に基づき発注されており、簡単に航空機メーカーを変更することができません。
また、航空機メーカーはボーイングとエアバスの2社に限られています。
長期的には業績への影響は限定的であると判断されたのだと考えるのが自然でしょう。
ボーイングの業績推移
先述の通り、航空機は航空会社との長期契約に基づいて発注されているため、比較的業績は安定しているのが特徴です。
また、アジアや中東などの新興国を中心に巨大な空港の建設などが相次ぎ、世界的にも航空機需要が旺盛なことから、ボーイングの業績も順調に推移していました。
しかし、737MAXの墜落事故を受け、出荷停止や、運航停止に伴う航空会社への補償費用などでコストが増え、
2019年期は大幅な減収減益を見込んでいます。
以下は2014年12月期以降の業績となります。
(百万ドル) | Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 90,762 | 96,114 | 93,496 | 94,005 | 101,127 | 85,266.88 |
営業利益 | 7,473 | 7,443 | 6,527 | 10,344 | 11,987 | 4,209.00 |
税引前当期利益 | 7,137 | 7,155 | 5,783 | 10,107 | 11,604 | – |
当期利益 | 5,446 | 5,176 | 5,034 | 8,458 | 10,460 | 3,282.23 |
約100年の長い歴史の中でも業績がアナリスト予想を下回ったことがほとんどない超優良企業が大きな岐路に立たされている状況です。
737MAXは事故前までボーイングの商用機の受注の7割を占めていて、売上高の3割、営業利益の5割近くを稼ぐ主力機でした。
この出荷停止に伴い、4~6月の引き渡しは90機と前年同期(194機)の半分以下に落ち込んでいます。
航空会社への損失補償も4~6月期だけで49億ドルにも上っています。
ただしこれは、2019年10月~12月に737MAXが運航再開されると仮定して算出しているので、運航停止期間が長引けばさらにコストがかさむ可能性があります。
現在、米連邦航空局(FAA)による安全審査が行われていますが、時間がかかっております。
年内の運行再開は難しいのではという声もあります。
そのため、ボーイングとしても、業績見通しが出せていない状態です。
業績下落で割高な株価指標
それでは、こうした状況を踏まえ、株価指標はどうなっているのでしょうか。
まず、PERは20倍近辺で安定していたのですが、直近では60倍に跳ね上がっています。
PERは株価収益率のことで、業績に対して株価が割安かどうかを見る指標です。
PERが低いほど業績に対して株価が割安に評価されていると判断します。
PERは株価÷一株当たり利益(EPS)で計算します。
ボーイングの株価が上がっていないのに、PERが大きく上昇しているのは、予想EPSが大きく下がっているからです。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
PER(倍) | 17.38 | 19.2 | 19.67 | 24.74 | 19.26 | 60.53 |
株価はEPS×PERで表されます。
ボーイングの現在の株価は330ドルほどですが、12カ月EPSは8.19ドルです。
元の20倍ほどの株価に修正されるとすると163ドルほどの株価となってしまいます。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 7.48 | 7.53 | 7.92 | 11.92 | 18.05 | 5.74 |
ボーイングは30年間減配がなく、連続増配も8年の優良企業です。
配当利回りも2.5%ほどと、日本企業に比べると魅力的な水準です。
しかし、ボーイングは今回の事故による一連の業績不振から今まで積極的に行っていた自社株買いを停止しています。
配当についてもMAX型の動向についての見通しがある程度示されるまでは更なる増配などはあまり期待できないかもしれませんね。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当(ドル) | 3.1 | 3.82 | 4.36 | 5.68 | 6.84 | 7.97 |
配当利回り | 2.38% | 2.64% | 2.80% | 1.93% | 1.97% | 2.29% |
ボーイングの株価見通しまとめ
ボーイングの株価見通しについて見てきました。
現在、ボーイングは、収益の柱であった737MAXの墜落事故と使用停止処分により重大な局面にあります。
たしかに、今回の事故による業績の影響は大きく、航空会社への補償費用や減産の影響からボーイングは3年ぶりの赤字に転落しています。
しかし、世界の航空機はボーイングとエアバスが市場を二分しています。
受発注は航空会社との長期契約に基づき行われるため、航空会社としても、そう簡単に契約を取り消すことはできません。
ボーイングは元々安定経営の優良企業であり、米国政府の後ろ盾も手厚いです。
長期的に考えると、今回の事故による業績や株価への影響は一時的であり、押し目買いのチャンスであると考えられます。
ただし、現在737MAXについてはFAAの調査が長引いている影響から、運航再開のめどが立っていない状況です。
補償費用など追加コストの増加も懸念されています。
また、運航再開のめどが立たないことを理由に、サウジアラビアのフライアディールが737MAXの購入をキャンセルし、エアバスのA320neoを購入する契約をしたとも報じられています。
運航再開が決定するまではこうした新たな悪材料が発生する可能性もあるため、ボーイング株の買いにはまだ注意が必要と言えそうです。
■ 投資判断基準:長期的には「買い」
737MAXの再運航決定までは更なる悪材料発生の可能性も。もう少し状況を見守るのが賢明か。
■ 業績見通し:
▷ 事故の影響で大幅な減収減益。ただし、これほどの規模の航空会社は世界にボーイングとエアバスのみ。航空会社も簡単にメーカーを変えることができないので、737MAXの一件が落ち着けば復活するでしょう。
■ 株価指標:
▷ 業績悪化にも関わらず、あまり株価に響いていないので指標上は割高。PERは一時60倍台まで上昇。
▷ 現在の予想EPSで、仮にPERが元の20倍ほどに戻ると株価は163ドルほどまで下落。
■ 株主還元策:
▷ 配当は魅力的だが、自社株買いをストップしており今後の配当政策への影響は不透明。
■ 総括:
世界中の航空会社はボーイングかエアバスから航空機を買うしかないので、事故による業績への影響は限定的と予想。
各証券会社の目標株価も350ドルから400ドルほどと出しているところが多くなっています。737MAXの動向を見守りましょう。
以上、【BA】世界最大の航空機メーカーであるボーイング(BOEING)!今後の株価の見通しについて検証します。…でした。
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