国内の経済を円滑にするために、銀行というものが存在しています。
銀行がないと、お金の流通が滞ってしまいますので、銀行の存在は非常に大切なものです。
実は、世界経済においても同様に、銀行が存在しているのです。
今回は、このIBRDについて、解説していきます。
目次
Contents
IBRDとは?
IBRD(正式名称:International Bank for Reconstruction and Development)とは、発展途上国や貧国を中心に貸し付けを行う国連の専門機関です。
最初は、第二次世界大戦後の世界経済を復興する目的で設立されました。
IBRDの貸し付けは、あくまでも「経済的な支援」に重点が置かれているため、利率は非常に低いです。
加えて、長期間に渡って融資が行われるため、好条件で融資を受けることが可能になります。
IBRDの融資は、その性質上、「ほぼ無償」になることも多く、通常の民間銀行とは少々色が異なります。
IBRDの資金は、IBRD債(国債復興開発銀行債券)によって調達されています。
IBRD債は、世界の債券市場にて取引されており、広く資金調達を行うことが可能です。
これに加えて、IBRD加盟国による出資金もあります。
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IBRDの歴史
IBRD設立のきっかけは世界大戦
20世紀前半から中盤にかけて、世界は二度の世界大戦を経験します。
第一次世界大戦は、政治的、民族的な対立が引き起こしたものですが、第二次世界大戦は「世界恐慌」と呼ばれる経済危機が間接的な原因となっています。
世界恐慌とは、アメリカの株式市場の大暴落によって発生した経済危機です。
この世界恐慌によって、アメリカを始めとする欧米諸国は「保護主義」的な経済政策を実施します。
アメリカでは、ニューディール政策と呼ばれる公共事業政策が、イギリス、フランスでは「ブロック経済」と呼ばれる制限貿易がそれぞれ行われたのです。
この結果、世界経済は「自由な取引」とは縁遠い状態になってしまいました。
ドイツやイタリア、日本など資源に乏しい国は、他の国から奪い取るという選択をします。
第二次世界大戦が、各国による保護主義的な経済政策によって引き起こされたことを反省して、戦後の経済では、各国が自由に貿易を行える状態を目指すようになります。
1944年、アメリカのニューハンプシャー州のブレトンウッズにて、戦後の世界体制が話し合われます。
ここで締結された協定を「ブレトンウッズ協定」と言います。
このブレトンウッズ協定によって、IBRDとIMF(国際通貨基金)の設立が取り決められます。
そして、1946年よりIBRD、1947年にIMFがそれぞれ業務を開始します。
ブレトンウッズ体制では、アメリカのドルが「金(GOLD)」との交換を保証されます。
そして、ドルと世界各国の為替レートが固定され、通貨の価格を安定させる体制を整備しました。
当時のアメリカは、交換に応じられるほどの金を保有しており、他国の追随を許さないほどの経済大国になっていたのです。
ブレトンウッズ体制の屋台骨となる
ブレトンウッズ体制のもとで、IBRDはIMFと並んで世界経済の屋台骨の役割を果たします。
戦後の世界経済は、アメリカの一人勝ちであったため、発展途上国を中心に経済格差が拡大していました。
アメリカは、その強大な経済力から、IBRDに対しても積極的に出資を行います。
名実ともに、アメリカが中心となる世界経済が形作られていったのです。
ただ、ヨーロッパ諸国や日本が急速に経済回復していく中、徐々にアメリカの絶対的な地位が揺らいできます。
加えて、冷戦の拡大やベトナム戦争によって、アメリカの軍事費負担は年々高くなり、景気が後退していきます。
このような背景から、アメリカはドルと金の交換に応じるほどの余裕が無くなっていくのです。
そして、1971年、アメリカ大統領のニクソンが突如、ドルと金の交換停止を発表します。
これを「ニクソンショック」と呼びます。
ニクソンショックの結果、各国はドルとの固定相場を破棄して、新たに「変動為替相場制」へと移行していきます。
変動為替相場制は、現代の為替相場のように、市場の需要・供給関係によって為替レートが決定されます。
ただ、ブレトンウッズ体制下のドルのように、「金」との交換が保証された通貨があるわけではありません。
IBRDもブレトンウッズ体制の崩壊により、その役割が変化してきます。
これまでは、ブレトンウッズ体制を支える組織として機能してきましたが、その体制自体が無くなったため、方針転換を迫られたのです。
以後、IBRDは最貧国を中心とする「経済的に深刻な問題を抱えている国」に焦点を絞って、融資を行うようになります。
ユニセフなど他の国連機関と同様、奉仕的な活動を行うようになったのです。
世界銀行グループの一員に!
1960年にIDA(正式名称:International Development Association)が設立されます。
このIDAとIBRDが中心となって、「世界銀行グループ(WorldBank Group)」が設立されます。
世界銀行というものが存在するのではなく、そのグループの中にIBRDなどの機関が入っています。
経済ニュースや新聞などで登場する世界銀行とは、IBRDかIDAを指すことが多いです。
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IBRDの格付けは世界最高峰
各国が発行する国債は、格付け機関によってランク分けがなされています。
IBRDが発行するIBRD債にも格付けがなされており、信用力の高いAAAの評価がなされています。
AAAの評価は、世界的に見ても少数で、IBRDの財務状況の良さを物語っています。
ちなみに、日本国債の格付けはA+の評価となっており、IBRD債よりも信用力が低いです。
IBRD債がAAAの格付けを得られる理由として、以下のことが挙げられます。
- 世界銀行グループは総資本に対する貸出金額の比率を最大1:1に設定している
- 世界の国々から信頼を得ている
- 設立時から安定した収益を確保している
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IBRDとIMFの違いは?
IBRDと共に、戦後のブレトンウッズ体制を支えた機関がIMFです。
このIMFとIBRDは、厳密に言うとそれぞれ役割が異なります。
IBRDは、発展途上国や最貧国に対して直接融資を行います。
IMFは国際収支が非常に悪化した国以外には直接融資を行うことは稀です。
融資を行うというよりも、「世界の為替相場を安定させる為の制度づくり」がIMFの主な仕事となります。
また、IBRDは世界銀行のグループに属しておりますが、IMFは世界銀行グループの一員ではありません。
IBRDとIMFは良い意味で、互いの専門領域のすみわけができているとも言えます。
現代のグローバル社会では、どうしても国の間で経済格差が生じてしまうため、1つの国際機関がすべての経済問題に対処するのは至難です。
IBRDは発展途上国、IMFは中進国、先進国向けの政策を中心に打ち出すことで、より効率的に経済・金融政策を進めていくことが可能になります。
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まとめ
IBRDは、第二次世界大戦後の経済体制を形成した国際金融機関です。
発展途上国、最貧国を中心に融資を行い、世界経済の底上げを図ってきました。
1960年に世界銀行グループの一員となり、現在も融資活動を継続しています。
世界経済の格差は、今も尚深刻な問題として残っているため、IBRDの活動が今後、どのように進展していくか要注目ですね。
以上【IBRDとは?】世界各国に融資する組織の概要をIMFとも比較、わかりやすく解説。…の話題でした。