日本国内最大の石油・天然ガス開発企業、「国際石油開発帝石」。国際石油開発帝石は日本国内にとどまらず、グローバル企業として石油・天然ガス開発を行っています。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から国際石油開発帝石の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■投資判断基準:長期的に『買い』
以下の点を総合的に勘案し長期的に3,000円(現状895円)程度が妥当な水準と予想。
■ 業績見通し:
▶︎19年3月期の連結経常利益は前の期比34.1%増の5192億円に拡大する見通しであること
■ ROEとROAが底打ち傾向
▶︎東証一部の出遅れセクター
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▶︎予想PERは現状株価で11.1倍と割安。PBRも0.44倍で割安水準。
■ 株主還元策の動向:
▶︎今期6円の増配を実施
Contents
【企業情報】国際石油開発帝石とは?
国際石油開発帝石は2008年に国際石油開発帝石ホールディングス、国際石油開発、帝国石油が合併し発足した、日本最大の石油・天然ガス開発企業です。
国際石油開発は元々国策会社として設立されたため、石油公団が普通株36.06%と黄金株を保有していました。
石油公団が解散されたときに、株式は経済産業大臣が継承したため、国際石油開発帝石は黄金株を発行しているにもかかわらず、唯一東証への上場が認められている国策的な色合いの強い企業といえます。
過去10年の業績推移(PL)
ここでは国策的色合いの強い企業である、国際石油開発帝石の過去10年間の業績推移を見ていきます。

国際石油開発帝石の売上高はここ10年間840,427百万円~1,334,625百万円のレンジで推移しています。売上高からトレンドを確認することはできません。
また本業の成績を表す営業利益は2012年~2014年をピークに半減以下になっています。
しかしここ2連続期で業績の回復傾向が見て取れるため、業績の下降に歯止めがかかったとみてよいでしょう。
投資対象として、魅力的な業績推移であるといえます。
2019年3月期決算分析
国際石油開発帝石が5月13日に発表した決算によると、19年3月期の連結経常利益は前の期比34.1%増の5192億円に拡大しています。
また決算期変更する19年12月期(9ヵ月の変則決算)は4300億円の見通しになっています。
さらに、今期配当は24円と公表しています。

INPEX決算資料
上記は国際石油開発帝石の配当金の推移です。
5年にわたり据え置きされていた配当金を1株当たり18円から24円に引き上げることから、業績の回復に対する国際石油開発帝石の意気込みを感じることができます。
国際石油開発帝石のROEとROA
下記の表は過去10年間の国際石油開発帝石のROEとROAの推移です。

ROEは15.8%~0.6%と非常に大きな幅で推移していることがわかります。またROAも42.2%~7.7%と大きな幅で動いています。
日本の東証一部の平均ROAが2%台であることと比較すると、国際石油開発のROAは非常に高い水準で推移しているといえます。
ただし、日本の東証一部の平均ROEが8%です。
比較して国際石油開発帝石のROEは現在3%台とかなり低い数値で推移していることがわかります。
心配な国際石油開発帝石のROEですが、ここ2期連続ROEの数値が改善傾向を見せていることから、企業の利益効率に対する取り組みが、効果を上げてきていると考えてよいでしょう。
国際石油開発帝石の長期経営計画「ビジョン2040」
国際石油開発帝石では2018年に企業の長期計画である「ビジョン2040」を公表しています。
ここでは「ビジョン2040」を分析することで、国際石油開発帝石の長期的な企業ビジョンをご紹介していきます。

≪2040年に向けての3つの目標≫
■ 石油・天然ガス上流事業の持続的成長
具体的には、世界の大手石油会社のトップ10へと成長を遂げていくことを目標としています。
■ グローバルガスバリューチェーンの構築
具体的には、アジア・オセアニア地域のガス開発と供給に関するメインプレーヤーになることを目標としています。
■ 再生可能エネルギーの取り組みの強化
具体的には、ポートフォリオの1割を再生可能エネルギー事業とすることを目標としています。
世界最大の石油企業であるエクソンモービルの時価総額は3,117億ドル、日本円に換算するとおよそ34兆円に相当します。
比較して国際石油開発帝石の時価総額は1.3兆円です。「ビジョン2040」の通りに企業が成長していけば、株価も上値余地が30倍ほど存在することになります。
長期的にとても成長が楽しみである企業だといえます。
国際石油開発帝石のテクニカル分析
ここでは国際石油開発帝石は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
国際石油開発帝石の過去10年間の株価推移
下記は国際石油開発帝石の過去10年間の株価推移です。2,072.5円―735円の幅値で推移しています。

一見して分かるように、国際石油開発帝石の株価は日経平均株価に連動しません。
では国際石油開発帝石はどのような指標に影響されているのでしょうか?
国際石油開発帝石の株価は原油連動型

上記は原油の1過去10年間の価格推移です。
先ほどのデータと比較していただければわかる通り国際石油開発帝石の株価は原油価格に強い影響を受けていることがわかります。
原油相場の展望
国際石油開発帝石の株価は原油価格に強い影響を受けていることがわかりました。
よって国際石油開発帝石の株価推移を予測するためにも、原油相場の展望を考えていきたいと思います。

赤枠で囲んだ部分ですが、底打ちサインである逆三尊が発生しています。
よって、この先2016年の底値を割れなければ、原油価格は底打ちしていると判断することができます。
テクニカルから見た国際石油開発帝石
国際石油開発帝石(1605)の月足チャートから長期にわたって分厚かった雲(ピンク色の部分)が消えかかっていることがわかります。

基本的に雲は大きな上値抵抗です。
その抵抗がなくなれば、テクニカル的に株価は上昇しやすくなります。
よって、月足判断のため長期目線では国際石油開発帝石は「買い」であると判断することができます。
競合他社(JXTGホールディングスと出光興産)との比較
国際石油開発帝石(1605)を同業であるJXTGホールディングス(5020)、出光興産(5019)と比較検討していきます。
国際石油開発帝石 | JXTGH | 出光興産 | |
PER | 11.1 | 5.5 | 3.9 |
PBR | 0.44 倍 | 0.65 倍 | 0.74 倍 |
配当利回り | 3.50% | 4.13% | 5.10% |
ROE | 3.20% | 11.86% | 9.67% |
ROA | 2.00% | 3.80% | 2.82% |
PERとPBR
まずPERですが、日経平均株価のPERが13~14倍です。
これと比較した場合、石油セクターは国際石油開発帝石が11.1倍、JXTGホールディングスが5.5倍、出光興産が3.9倍とかなり割安であることがわかります。
次にPBRですが、日経の大型株の平均値が2倍です。
これと比較した場合、国際石油開発帝石が0.44倍、JXTGホールディングスが0.65倍、出光興産が0.74倍となっていることから、石油セクターは売られすぎの状態であるといえます。
配当利回り
国際石油開発帝石が3.5%、JXTGホールディングスが4.13%、出光興産が5.1%と石油セクターはかなり高利回りであることがわかります。
決算予測
国際石油開発帝石は今期決算期を変更するため、比較することができませんが、配当を18円から24円に引き上げることを公表しています。
JXTGホールディングスは19年3月期の連結税引き前利益は前の期比8.8%増の5086億円、20年3月期も前期比1.3%増の5150億円と予測し、3期連続で過去最高益を更新する見通を公表しています。
さらに配当も1円増配するとしています。
出光興産は19年3月期の連結経常利益は前の期比25.3%減の1691億円、20年3月期は前期比35.1%増の2285億円と予測しています。
また今期の年間配当は前期比60円増の160円に大幅増配するとしています。
競合他社比較総合
割安感、配当率ともに国際石油開発帝石は競合他社と比較すると、現状最もファンダメンタルが良くない企業であると判断せざるを得ません。
しかしセクター的に石油業界は出遅れ感が高く「買い」であるといえます。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から国際石油開発帝石の今後の株価推移を分析してきました。国際石油開発帝石はファンダメンタル的には「底打ち」、テクニカル的にも上値抵抗がなく「買い」と判断することができます。
国際石油開発帝石は国策的な要素の高い銘柄ですので、長期投資を視野にした資産株としての購入をお勧めします。
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