現在、多くの企業が証券取引所に上場しています。
審査基準はクリアしていても、自由な経営を求めあえて上場しない企業も存在します。
しかし、基本的には、多くの企業が証券取引所に上場することを目標にしています。
実際に、上場して株を公開することのメリットは多く存在します。
例えば資金調達が容易になったり、知名度が上がって商品やサービスが売れやすくなるなどです。
しかし、始まりがあるように、終わりを迎えてしまう企業も少なくありません。
上場した企業が経営不振などを理由に「上場廃止」に追い込まれるケースもあります。
今回はこの上場廃止について、具体的に解説していきます。
目次
Contents
上場廃止とは?
「上場廃止」とは、証券取引所にて公開されている企業の株を取引対象から外すことを指します。
野球で言うところの「戦力外通告」のようなものです。
上場廃止となると公開市場で、資金調達することができなくなります。
しかし、せっかく上場したのに、そんなに簡単に上場廃止になどならないのでは?と思ってしまいます。
例えば、2019年に上場廃止となった企業は以下の通りです。
銘柄名 | 上場廃止日 | コード | 市場区分 | 上場廃止理由 |
---|---|---|---|---|
ポラテクノ | 2019/11/08 | 4239 | JQスタンダード | 株式等売渡請求による取得 |
青木あすなろ建設 | 2019/11/07 | 1865 | 第一部 | 株式等売渡請求による取得 |
花月園観光 | 2019/11/01 | 9674 | 第二部 | 時価総額が所要額未満 |
アフラック・インコーポレーテッド | 2019/10/03 | 8686 | 第一部(外国株) | 申請による上場廃止 |
田淵電機 | 2019/09/27 | 6624 | 第一部 | ダイヤモンドエレクトリックホールディングスの完全子会社化 |
やまねメディカル | 2019/09/27 | 2144 | JQグロース | SIホールディングスの完全子会社化 |
日東エフシー | 2019/09/18 | 4033 | 第一部 | 株式の併合 |
日本ビューホテル | 2019/08/29 | 6097 | 第一部 | ヒューリックの完全子会社化 |
理研グリーン | 2019/08/29 | 9992 | JQスタンダード | クミアイ化学工業の完全子会社化 |
カブドットコム証券 | 2019/08/29 | 8703 | 第一部 | 株式の併合 |
薬王堂 | 2019/08/29 | 3385 | 第一部 | 薬王堂ホールディングスの完全子会社化 |
日本ライトン | 2019/08/23 | 2703 | JQスタンダード | 株式等売渡請求による取得 |
ユーシン | 2019/08/05 | 6985 | 第一部 | 株式の併合 |
図書印刷 | 2019/07/30 | 7913 | 第一部 | 凸版印刷の完全子会社化 |
ジョリーパスタ | 2019/07/30 | 9899 | 第二部 | ゼンショーホールディングスの完全子会社化 |
KIホールディングス | 2019/07/30 | 6747 | 第二部 | 株式等売渡請求による取得 |
アピックヤマダ | 2019/07/30 | 6300 | 第二部 | 株式等売渡請求による取得 |
朝日工業 | 2019/07/23 | 5456 | JQスタンダード | 株式の併合 |
フーマイスターエレクトロニクス | 2019/07/10 | 3165 | JQスタンダード | 株式の併合 |
エヌ・デーソフトウェア | 2019/06/18 | 3794 | 第二部 | 株式の併合 |
スター・マイカ | 2019/05/29 | 3230 | 第一部 | スター・マイカ・ホールディングスの完全子会社化 |
シーズ・ホールディングス | 2019/04/22 | 4924 | 第一部 | 株式の併合 |
JIEC | 2019/04/18 | 4291 | 第二部 | 株式等売渡請求による取得 |
ベリサーブ | 2019/04/18 | 3724 | 第一部 | 株式等売渡請求による取得 |
バイテックホールディングス | 2019/03/27 | 9957 | 第一部 | レスターホールディングスに合併 |
十八銀行 | 2019/03/27 | 8396 | 第一部 | ふくおかフィナンシャルグループの完全子会社化 |
昭和シェル石油 | 2019/03/27 | 5002 | 第一部 | 出光興産の完全子会社化 |
パイオニア | 2019/03/27 | 6773 | 第一部 | 株式の併合 |
クラリオン | 2019/03/25 | 6796 | 第一部 | 株式等売渡請求による取得 |
一六堂 | 2019/03/19 | 3366 | 第一部 | 株式の併合 |
エナリス | 2019/03/13 | 6079 | マザーズ | 株式の併合 |
FCM | 2019/03/07 | 5758 | JQスタンダード | 株式等売渡請求による取得 |
ヒト・コミュニケーションズ | 2019/02/26 | 3654 | 第一部 | ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスの完全子会社化 |
シベール | 2019/02/18 | 2228 | JQスタンダード | 民事再生手続き |
光製作所 | 2019/02/12 | 8191 | JQスタンダード | 株式の併合 |
アクリーティブ | 2019/02/01 | 8423 | 第一部 | 株式の併合 |
夢テクノロジー | 2019/01/28 | 2458 | JQスタンダード | 夢真ホールディングスの完全子会社化 |
ダイベア | 2019/01/25 | 6478 | 第二部 | 株式等売渡請求による取得 |
大京 | 2019/01/22 | 8840 | 第一部 | 株式等売渡請求による取得 |
エヌ・ティ・ティ都市開発 | 2019/01/08 | 8933 | 第一部 | 株式等売渡請求による取得 |
2019年だけでも、約40企業、これだけ上場廃止となっています。
中には、昭和シェル石油やパイオニアといった有名企業までも上場廃止になっています。
経営再建中のパイオニアが27日付で東証1部を上場廃止になった。2000年代中盤に行った巨額のプラズマテレビ事業への投資が経営の重荷となったほか、足元でもカーナビゲーションシステムなどの本業の苦戦が続き、自力での再建を断念せざるを得なかった。今後はアジア系ファンドの傘下で地図の技術を使った自動運転向けセンサーに活路を見いだす。
26日の東京株式市場で、昭和シェル石油株が最後の取引を終えた。終値は前日比変わらずの1682円。期末配当の権利確定日とも重なって機関投資家や個人の売買が交錯し、売買代金は前日比約5倍の218億円に膨らんだ。27日に上場廃止となり、4月1日に出光興産と経営統合する。
昭和シェル石油とパイオニアの話に戻りますが、実はニュースでは、上場廃止の情報はほとんど報道されません。
そのような状況も相まってか、大企業が上場廃止になっていることは、あまり多くの人に知れ渡っていませんね。
雪印食品は産地偽装などにより経営破綻しましたし、武富士は会社更生手続に入り、それぞれ上場廃止になりました。
プロミスやダイエー、ダイハツ工業は完全子会社化になり上場廃止になっています。
ダイハツや横浜銀行などの上場廃止事例も以下のコンテンツにまとめていますので、参考にしてみてください。
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上場廃止基準について
上場廃止の基準は、東証第一部・第二部、マザーズ、ジャスダックによって異なります。
それぞれ確認していきましょう。
東証第一部・第二部
- 株主数:400人未満(猶予期間1年)
- 流通株式数:2,000単位未満(猶予期間1年)
- 流通株式時価総額:5億円未満(猶予期間1年)
- 流通株式比率:10億円未満である場合に、9か月以内に10億円以上と ならないとき
- 上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合に、3か月以内に当該数値以上とならないとき
- 債務超過:債務超過の状態になった場合、1年以内に債務超過の状態が改善されないとき
- 売買高:最近1年間の月平均売買高が10単位未満もしくは3か月間売買不成立
- 有価証券報告書の提出遅延:有価証券報告書または四半期報告書を法定提出期限経過後1ヶ月以内に提出しない場合
- 虚偽記載または不適正意見等:上場を廃止しなければ市場の秩序を維持できないと取引所が認めるとき
- 上場契約違反等:上場会社が上場契約に関する重大な違反を行った場合
- その他:銀行取引の停止、破産手続、再生手続、更生手続、事業活動の停止、不適当な合併、株式の譲渡制限、株式事務代行機関への不委託、完全子会社化、株主の権利の不当な制限、全部取得、反社会勢力への関与など
マザーズ
- 株主数、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、債務超過、有価証券報告書等の提出遅延、虚偽記載または不正意見等、上場契約違反、その他の基準は東証第一部・第二部と同基準
- 時価総額:10億円未満で、9か月以内に10億円以上とならないとき
- 上場株式数に2を乗じて得た数値未満で、3か月以内に当該数値以上とならないとき
- 株価:上場後3年を経過するまでに、新規上場の際の公募価格の1割未満となったとき、9か月以内に当該価格の1割以上に回復しないとき
- 売上高:最近1年間で売上高が1億円に満たないとき
ジャスダック
- 有価証券報告書等の提出遅延、虚偽記載または不正意見等、上場契約違反、その他の基準は東証第一部・第二部と同基準
- 株主数:150人未満(猶予期間1年)
- 流通株式数:500単位未満(猶予期間1年)
- 流通株式時価総額:2.5億円未満(猶予期間1年)
- 業績:最近4連結会計年度における営業利益、および営業活動によるキャッシュフローの額がマイナスの際、1年以内に金額のマイナスが改善されない場合
- 株価:株価が10円未満となった際、3か月以内に10円以上とならない場合
- 債務超過:1年以内に債務超過の状態が改善されない場合
- 利益計上:上場申請連結会計年度の営業利益がマイナスで、かつ上場後9連結会計年度の営業利益の額がマイナスの場合において1年以内に営業利益の額のマイナスが改善されないとき
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上場企業にとって、自社が上場廃止になるメリットとは?
「経営再建」の際はメリットに動くことがあります。
株式会社の世界では、「経営」と「所有」は分離されています。
経営陣と出資者を分けることで、円滑に資金を集めることを可能にしているのです。
しかし、経営再建など迅速な意思決定が求められる局面では、この経営と所有の分離がマイナスに働いてしまいます。
株主の意見によっては、経営再建の舵取りが上手くできないこともあるのです。
そこで、上場廃止をして経営陣に株を集めることで、外部の意見に左右されることなく改革を進めることが可能になります。
もちろん、自分たちで株を保有することで、株による資金集めができなくなります。
しかし、それに代えてでも再建を進めたいときは、上場廃止はむしろメリットとして働くのです。
これに加えて、上場廃止によって上場継続にかかるコストを削減することができます。
上場企業は、四半期ごとに決算の開示が要求されており、各種書類の作成に人件費がかかります。
また、企業広報の費用や監査法人への支払いなど、様々なコストが生じてきます。
上場廃止となり未上場企業となることで、これらのコストを減らす、もしくは無くすことが可能になります。
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上場企業が上場廃止に陥るデメリット
上場廃止になると、まず社会的な信用が低下してしまいます。
今までは、上場企業ということで取引をしてくれた企業も、上場廃止に伴って取引をしてくれなくなる恐れがあるのです。
また、株を公開して投資家に売ることができなくなり、資金調達の手段が限定されてきます。
資金が調達できないと、新しい事業に投資することが中々できず、企業の成長が滞ってしまう可能性もあります。
これらのデメリットを受けても、上場廃止をした際のメリットの方が大きければ、上場廃止する価値があると言えます。
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早く売らなければ暴落して大損!?上場廃止株の売却方法
上場廃止になると株式市場での取引は一切できなくなりますが、すぐに取引できなくなるわけではありません。
また、上場廃止になったとしても、議決権や利益配当請求権、残余財産分配請求権などの株主の権利は残ります。
ただ、上場廃止になると株価が暴落することが多いので、売ってしまうのが賢明です。
ここでは、上場廃止が決定してからの流れと売却の方法についてご説明します。
上場廃止する企業の株は、東京証券取引所にて段階ごとに管理されています。
まず、上場廃止の基準に抵触しそうになった企業は「監理銘柄」と呼ばれるカテゴリーに分類されます。
監理銘柄に属すると、企業の財務状態や不祥事の真偽などが細かく調査されます。
この段階では、まだ上場廃止が決まった訳ではないので、売却する上では特に不都合は生じません。
上場廃止が決定した企業は「整理銘柄」と呼ばれるカテゴリーに分類されます。
整理銘柄に入った企業の株は、1ヶ月間は取引可能です。
ただし、上場廃止日になると株の取引は一切行えなくなるので注意してください。
整理銘柄に入った企業の株は、1ヶ月間は取引可能です。
ただし、上場廃止日になると株の取引は一切行えなくなるので注意してください。
また上場廃止する企業が他の企業に買収される場合、買収企業が「株式公開買付(TOB)」を行うことになります。
この際、買収企業は株主から株を買い取る動きを取るため、この段階で保有株を売ってしまうのが賢明です。
中には、上場廃止が決まった株を購入するデイトレーダーもいますが、どのように利益を得るのでしょうか?
上場廃止が決まると株価は大きく値を下げるので安く購入できるようになりますから、
一円でも株価が上がったタイミングで売り切ってしまうのです。
これは、上場廃止が決定すると、株価が大きく変動することを狙った取引の手法です。
ただし、このような取引はかなり難しくマネーゲームの様相を呈してきます。
プロのデイトレーダー向けの手法なので、一般の人は手を出すべきではないでしょう。
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まとめ
上場廃止と聞くと、マイナスなイメージが浮かびがちですが、あえて上場廃止を行う企業も多く存在します。
上場廃止によって、意思決定を迅速に行うことができたり、買収される恐れが無くなったりと、様々なメリットがあるのです。
もちろん、上場廃止によるデメリットもあるので、その点も考慮する必要はあります。
上場廃止となる企業の株は、そのまま保有していると資産価値が無くなるので、早い段階で売却することをお勧めします。
TOBなど他の企業に買収される場合は、株主から株を買い取る動きも出てきます。
そのため、タイミングを逃さないよう注意してください。
以上、一つの時代の終焉…「上場廃止」とは?廃止となる基準とその銘柄の売却方法・上場企業にとってのメリット・デメリットをわかりやすく解説!…でした。