川崎重工業はオートバイ・航空機・鉄道車両・船舶などの輸送機器などを製造販売している大手総合重機メーカーです。
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から川崎重工業の今後の株価推移を分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:中期的に「投資対象外」、長期では「買い」
以下の点を総合的に勘案し中期的に「投資対象外」、長期では「買い」であると判断します。
■ 業績見通し:
19年3月期の連結経常利益は前の期比12.4%減の378億円、20年3月期は前期比61.1%増の610億円に拡大する見通し。
しかし、達成する根拠が若干弱いとかんがえられること。
よって、2020年に業績が急回復することができれば、買い安心感につながり、市場でも物色対象になりやすいこと。
■ 指標関連:
▷ ROE・ROAともに現状は日本の東証一部の平均値以下であること。逆に言うと、それだけ上振れ余地が高いともいえること。
▷ 予想PERは10.7 倍、予想PBRは0.86 倍でともに割安水準。
■ 他社との比較:
▷ 競合企業が赤字に転落している中で、しっかりと黒字を確保していること。
■ 川崎重工業総合:
▷ ファンダメンタル的に長期で投資したい銘柄であるが、現状業績&テクニカル的に株価の上昇が難しい時期であること。
よって、中期は様子見、長期で買いたい銘柄であると判断。
Contents
総合重機メーカー川崎重工業とは?
ここでは日本大手の総合重機メーカーである、川崎重工業の業務内容をご紹介していきます。
①:輸送用機器
航空宇宙、鉄道車両、船舶海洋などの分野で輸送用機器を製造販売しています。
②:エネルギー
エネルギープラント、コージェネレーションシステムから再生可能エネルギー分野まで幅広い分野で製品を製造販売しています。
③:産業用設備
油圧機器・油圧装置からロボットに至るまで様々な製品を製造販売しています。
④:レジャー
モーターサイクル、オフロード四輪車、パーソナルウォータークラフトなどを製造販売しています。
川崎重工業の過去10年の業績推移(PL)
ここでは川崎重工業の過去10年間の業績推移を見ていきます。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期利益 | EPS | BPS |
2007/03 | 1,438,618 | 69,141 | 49,052 | 29,771 | 178.2円 | 1,772.2円 |
2008/03 | 1,501,097 | 76,910 | 63,972 | 35,141 | 210.4円 | 1,906.6円 |
2009/03 | 1,338,597 | 28,713 | 38,718 | 11,727 | 70.2円 | 1,734.6円 |
2010/03 | 1,173,473 | -1,316 | 14,293 | -10,860 | -65.0円 | 1,651.6円 |
2011/03 | 1,226,949 | 42,628 | 49,136 | 25,965 | 155.4円 | 1,726.8円 |
2012/03 | 1,303,778 | 57,484 | 63,627 | 23,323 | 139.6円 | 1,826.6円 |
2013/03 | 1,288,881 | 42,062 | 39,328 | 30,864 | 184.8円 | 2,024.8円 |
2014/03 | 1,385,482 | 72,351 | 60,605 | 38,601 | 231.1円 | 2,173.3円 |
2015/03 | 1,486,123 | 87,259 | 84,288 | 51,639 | 309.1円 | 2,586.1円 |
2016/03 | 1,541,096 | 95,996 | 93,229 | 46,043 | 275.6円 | 2,582.3円 |
2017/03 | 1,518,830 | 45,960 | 36,671 | 26,204 | 156.9円 | 2,617.5円 |
2018/03 | 1,574,242 | 55,925 | 43,225 | 28,915 | 173.1円 | 2,790.0円 |
2019/03 | 1,594,743 | 64,023 | 37,861 | 27,453 | 164.3円 | 2,851.8円 |
2020/03予 | 1,700,000 | 72,000 | 61,000 | 38,000 | 227.5円 | -円 |
わかりやすくグラフ化したものが以下となります。

売上高は2010年を底にしてV字回復を遂げています。また年々きれいな右肩上がりに推移していることもわかります。
比較して、本業を表す営業利益の2010年に底打ち後V字回復を遂げています。
しかし、2016年を天井として、いったん急落しています。しかし、ここ3年間は順調に回復傾向にあることがわかります。
よって、川崎重工業の業績は問題ないということがわかります。
川崎重工業が4月25日に発表した決算によると、
19年3月期の連結経常利益は前の期比12.4%減の378億円、20年3月期は前期比61.1%増の610億円に拡大する見通しであると公表しています。
川崎重工業のROEとROA
上記は過去10年間の川崎重工業のROEとROAの推移です。
決算期 | ROE | ROA |
2007/03 | 10.06% | 2.19% |
2008/03 | 11.03% | 2.55% |
2009/03 | 4.05% | 0.84% |
2010/03 | -3.94% | -0.80% |
2011/03 | 9.00% | 1.92% |
2012/03 | 7.64% | 1.71% |
2013/03 | 9.12% | 2.10% |
2014/03 | 10.63% | 2.48% |
2015/03 | 11.95% | 3.11% |
2016/03 | 10.67% | 2.84% |
2017/03 | 5.99% | 1.55% |
2018/03 | 6.20% | 1.62% |
2019/03 | 5.76% | 1.49% |
2020/03予 | 7.98% | 2.07% |
グラフとして可視化すると以下となります。

川崎重工業のROEとROAは営業利益と同様に推移していることがわかります。
ROEは2010年に底打ち後、5%以上で推移しています。
日本の東証一部の平均値が8%ですので、平均よりも低く推移していますが、安定感がある動きであるといえます。
比較してROAですが、2010年に底打ち後、1.49%以上で推移しています。
日本の東証一部の平均値が2%ですので、平均よりも低く推移していますが、ROEと同様に安定感がある動きであるといえます。
川崎重工業の中期経営計画「中計2019」
ここでは川崎重工業の中期経営計画「中計2019」を分析していきたいと思います。
①:中計2019の基本方針
ⅰ 財務基盤の強化
ⅱ 事業ポートフォリオの全体最適化
ⅲ ビジネスモデルの革新「カワる、サキへ。」
ⅳ 組織・風土改革
②:数値目標(2021年度)
ⅰ 税前ROIC10%以上
ⅱ FCF1,200億円
ⅲ 営業利益率6%以上(1,000億円以上)
川崎重工業のテクニカル分析
ここでは川崎重工業は買いか売りかをテクニカル的な側面から分析していきたいと思います。
川崎重工業の過去10年の株価推移
下記は川崎重工業の10年間の株価推移です。

2012年10月に1,510円で底打ち後、アベノミクス相場に乗り、2015年3月に6,470円とおよそ2年半で株価は4倍以上と爆発力の高い株価推移をしています。
天井を付けてからは、低迷した業績に沿った株価推移になっているといえます。
川崎重工業のテクニカル分析
川崎重工業のテクニカル分析は大変難しくなっています。

上記は一目均衡表ですが、2013年には雲(上値抵抗)が途切れるのを待つことなく、自力で雲抜けを果たし上昇しています。
また2018年に10月に変化日には、雲にチャレンジすることなく、大きな飲泉を付けて下落に転じています。
今後雲が分厚い展開になっているため、テクニカル的には株価は弱含みで推移することになりそうですが、
川崎重工業はあまり一目均衡表との相性が良くない傾向があるため、断言しにくい状況であるといえます。

川崎重工業は実際にトレードするときにはボリンジャーバンドが有効です。
ⅰ.緑の部分
ボリンジャーバンドの下限を二度目に割れないと、株価が上昇しやすい傾向があることがわかります。
ⅱ.オレンジの部分
団子底を付けると株価が上昇しやすい傾向があります。
ⅲ.MACD
高値を更新したときにMACDは売り転換しています。
めったに見ない光景ですが、川崎重工業にテクニカルが効きにくいということがご理解いただけるのではないでしょうか?
川崎重工業はテクニカルと相性が良くないため、テクニカル的な判断が不能です。
川崎重工業の競合他社比較
川崎重工業(7012)を同業である三井E&Sホールディングス(7003)と比較検討していきます。
川崎重工業 | 三井E&SH | |
PER | 10.7 倍 | 25.4 倍 |
PBR | 0.86 倍 | 0.48 倍 |
配当利回り | 2.87% | 0.00% |
ROE | 5.76% | -43.62% |
ROA | 1.49% | -6.97% |
①:PER
日経平均株価の平均PERは13~14倍です。川崎重工業は10.7 倍で割安ということができます。
一方三井E&Sホールディングスは25.4 倍とかなりの割高水準まで買われていることがわかります。
②:PBR
日経平均株価の平均PBRは2倍です。
よって両社1倍以下であるため、割安水準であるといえます。
③:配当利回り
配当は川崎重工業のみ設定されています。
配当利回りは2.87%です。
④:株主優待
両社株主優待は設定されていません。
⑤:決算予測
ⅰ 川崎重工業
19年3月期の連結経常利益は前の期比12.4%減の378億円、20年3月期は前期比61.1%増の610億円に拡大する見通し。
ⅱ 三井E&Sホールディングス
19年3月期の連結最終損益は695億円の赤字(前の期は101億円の赤字)に赤字幅が拡大、20年3月期は30億円の黒字に浮上する見通し。
2019年 | 2020年 | |
川崎重工業 | 前の期比12.4%減の378億円 | 前期比61.1%増の610億円 |
三井E&Sホールディングス | 695億円の赤字(前の期は101億円の赤字) | 30億円の黒字 |
輸送機器セクターは2020年に業績が急回復する見通しになっています。
IRを見ると、三井E&Sホールディングスは水産庁から漁業取締船「白萩丸代船」を受注したとあります。
また川崎重工業は高効率の自社製発電設備を浮体に搭載した浮体式LNG(液化天然ガス)発電プラントを開発し、DNV GLからガスエンジンモデルにおいて、
最新2018年版「Gas Power Plant」規則に基づいた設計基本承認を取得したというIRが出ています。
こちらは様々な地域で需要があるプラントですので、受注次第では業績の急回復が可能であるかもしれません。
よって、業績の急回復の可能性を考えた場合、川崎重工業が一歩リードしているといえます。
⑥:競合他社比較総合
川崎重工業一択です。
配当もそこそこ高く、割安感も高い老舗の輸送機器メーカーであり、かつ株価も爆発力があることが魅力的なためです。
まとめ
今回はファンダメンタルとテクニカル両面から川崎重工業の今後の株価推移を分析してきました。
川崎重工業はテクニカルとの相性が良くないため、判断保留です。
ファンダメンタル的には若干弱い側面もありますが、2020年の「前期比61.1%増」を達成できることができれば、
長い混迷から脱出した感が高くなり、買い安心感につながるといえます。
コメントを残す