先物取引について、「【先物取引とは?】現物取引との違いは?その概要とレバレッジなどの特徴・取引を行うメリット・デメリットを徹底解説。」で以前解説しました。
では、「日経平均先物」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
しかし、実際に日経平均先物がどういったものなのかを詳しく知っている方は多くはありません。
「日経平均先物って何?」
「日経平均先物はなぜ3種類あるの?」
「日経平均はなぜ日経平均先物に連動するの?」
そういった方のために今回は日経平均先物について紹介します。
日経平均先物について理解できれば、ニュースなどの内容がより詳しく理解でき、投資に生かすことが可能です。
また、実際に日経平均先物を取引することもできるようになります。
目次
Contents
日経平均先物とは?
日経平均先物とは、「日経平均株価」の「先物取引」のことです。
「日経平均株価」は東証一部上場企業の中から日本を代表する225社の株価を平均した指数。
「先物取引」とは将来のあらかじめ決められた日に「商品をあらかじめ決められた価格で売買する」という取引をいいます。
言葉だけでは理解しづらいので、例をあげます。
現在の日経平均株価が「2万円」だった場合。
株価はまだまだ上がると考え、3か月後に2万1000円で日経平均株価を買うという先物取引をします。
3か月後に日経平均株価が「2万5,000円」になりました。
ここで購入しようとすると当然2万5,000円が必要になります。
しかし既に先物取引により2万1,000円で買っています。
2万5,000円のものを2万1,000円で買うことができ、差引「4,000円」が儲かるというわけです。
また、先物取引は「売り」から売買することも可能です。
相場が値下がりする場合も先物を売ることで利益を出すことができます。
日経平均先物の取引方法:いつが満期日の先物を買うのか選ぶ~限月~
実際に日経平均先物を取引する場合は、まず「満期月」がいつの先物を売買するのかを選びます。
「満期」とは、先物取引における「将来のあらかじめ決められた日」に「あらかじめ決められた価格」で売買すること。
満期日は各限月の「第2金曜日」です。
例えば、来年の3月が満期日の日経平均先物を売買するか。
来年の6月が満期日の日経平均先物を売買するのか?といったように、取引する先物の限月を選ぶのです。
日経平均先物の場合取引できる限月は、四半期ごとになっており、以下のように取引ができます。
- 6、12限月は8年先まで
- 3、9限月は1年半先まで
満期日の指数(価格)のことをSQ(特別清算指数)といい満期日まで保有すれば強制的にSQ値で決済されます。
もちろん、先物価格は日々変動しますので満期日を待たずに決済することも可能です。
取引最終日は満期日の前日、つまり各限月の第2金曜日の前日となります。
例えば、6限月の日経平均先物は6月の第2木曜日まで取引が可能で、
それまでに決済しないと第2金曜日に決まるSQ値で強制的に決済されるということです。
日経平均先物の取引方法②取引数量を決める~証拠金取引~
取引する先物商品が決まったら、次は売買数量を決めます。
日経平均先物の売買単位は1,000です。
従い、先物価格が2万円の場合は最低でも20,000×1,000=20,000,000円分の取引をすることになります。
20,000×1,000=20,000,000円(2千万円)
多額の取引になりますが、日経平均先物に限らず先物取引は、取引する金額分が口座に必要というわけではありません。
取引に必要な金額を証拠金といい、証拠金を担保にして多額の取引を行う証拠金取引が先物取引の特徴の一つです。
日経平均先物取引に必要な証拠金は1単位(1枚)あたり70万円程度(※2019年4月現在)ですので、取引に必要な資金の20~30倍の取引が可能となっておりこれを「レバレッジ」といいます。
「レバレッジ取引」は、少ない資金でも多額の利益を得ることが可能です。
ただし、損失時にも同様に損失がより大きなものになるので注意が必要です。
各証券会社は先物取引に対して証拠金維持率という数値を日々算出しております。
保有している先物に損失が出ている場合、証拠金から損失分の金額はマイナスされて証拠金維持率が計算されます。
各社が定める最低証拠金維持率を下回った場合は、追証(おいしょう)という追加入金が必要となります。
追加入金できない場合は強制的に保有銘柄が決済されます。
また、売買によるお金の動きは決済時に売買価格の差額のみを決済する差金決済取引です。
日経平均先物を20,000円1枚購入し20,100円で売却した場合はどうでしょう?
購入時には現金の受け渡しは発生せず、売却時に差額である10万円(100円×1,000)の受け渡しが行われます。
このように差金決済取引では、お金の動きは決済時に差額の金額だけとなるのが特徴です。
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3種類の日経平均先物とは?『大証』『CME』『SGX』
日経平均先物と一言でいっても「大証」「CME」「SGX」といった国内外の3つの取引所で取引されています。
各取引所によって取引時間がことなりますので、わかりやすく紹介していきたいと思います。
大証日経平均先物
まずは日経平均先物を取り扱う日本の取引所です。
市場デリバティブ取引に必要な取引所金融商品市場の開設を目的とし、取引の管理に関する業務、取引参加者の管理に関する業務、その他新商品・新制度の導入・調査研究等を行う。
日本で先物を扱うのは大阪取引所で取扱開始は1988年からとなっています。
大阪取引所は以下の時間に開場しています。
日中:08:45 – 15:15
夜間:16:30 – 05:30
CME日経平均先物
CMEは米国のChicago Mercantile Exchangeのことです。
米国のシカゴにあり商品やあらゆる金融商品の先物やオプションといったデリバティブを扱っています。
CMEで取引される日経平均先物をCME日経平均先物と呼びます。
CMEは以下の時間に開場しています。
日本時間で以下の時間に開場しております。(参照:CME Nikkei Future)
通常 :08:00 – 07:00 (現地時間18:00 – 17:00)
夏時間:07:00 – 06:00 (現地時間17:00 – 16:00)
SGX日経平均先物
SGXはシンガポール取引所に上場されている日経平均先物です。
Singapore Exchangeの略字からSGXを取ってきています。
1986年と大証よりも早く日経平均先物を取り扱っています。
SGXは日中と夜間に開場しています。
日本時間で以下の時間に開場しております。(参照:SGX Nikkei Future)
日中:08:30 – 15:25 (現地時間07:30 – 14:25)
夜間:15:50 – 06:15 (現地時間14:55 – 05:15)
いつでも最新の日本株の状況を把握することが可能に
つまり通常の日本時間午前7時台と、夏時間実施時の6時台以外は常に日経平均先物が取引できるという状態となります。
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なぜ日経平均先物が重要なのか
日経平均先物は特に大口の機関投資家や海外投資家によく取引され、流動性が大変高く売買注文に厚みがあります。
日経平均を売買するとなった時に日経平均先物は大変使い勝手が良いからです。
日経平均を「現物」で買う場合は、以下のような問題があります。
- 構成銘柄225銘柄に買い注文を出す必要があり手間が大きい
- 225銘柄の中には大量注文をした場合株価の変動が大きくなってしまう流動性の低い銘柄も存在する
その点、「日経平均先物」であれば注文は1銘柄で良く流動性も高いため注文価格での売買が可能です。
こういった大口注文に対応できるため日経平均先物は大変重要な先物となっています。
日経平均先物は特に海外の投資家によって多く取引されています。
先物市場の外国人比率は7割〜8割となっており、外国人が日本株の取引をする際に主に用いられます。
特に突発的なニュースなどで日経平均が大きく変動する時などは、まず取引しやすい先物が売買されることが多い傾向にあります。
そして、日経平均先物の動きは日経平均に多大な影響を及ぼします。
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日経平均先物を利用した取引(裁定取引)
日経平均先物を利用した取引で有名なのが現物との「裁定(さいてい)取引」です。
ここでいう裁定取引とは、先物と現物の価格差を利用した取引を指します。
例えば日経平均先物価格が現物価格より低い場合。
割安な日経平均先物を買い、割高な現物を売ることで差額を利益とすることができます。
日経平均先物は満期日にSQ値が算出されますので、その際には必ず現物価格=先物価格となります。
これを利用した裁定取引方法として、例えば日経平均株価が20,000円。
日経平均先物価格が19,800円だった場合。
日経平均先物を10枚(10,000)買い、同数量の現物を売ります。
満期日に両方のポジションを決済することで、株価が上がっていようが下がっていようが利益を得ることが可能です。
具体的に計算してみましょう。
■ SQ値が保有価格より高い21,000円だった場合:
・現物取引損益(売りポジション)
(20,000-21,000)×10,000=-10,000,000円
・先物取引損益(買いポジション)
(21,000-19,800)×10,000=12,000,000円
合計:200万円の利益
■ SQ値が保有価格より低い19,000円だった場合:
・現物取引損益(売りポジション)
(20,000-19,000)×10,000=10,000,000円
・先物取引損益(買いポジション)
(19,000-19,800)×10,000=-8,000,000円
合計:200万円の利益
先物価格と現物価格に価格差がある場合は、SQ値を利用して裁定取引で利益を得ることが可能なのです。
このように機関投資家、海外投資家は日経平均先物を利用して活発に取引しています。
一見簡単に儲かりそうな裁定取引ですが、以下の点から個人で取引を行うことは難しいでしょう。
- 先物価格と現物価格の差が小さいと手数料の方が大きくなってしまう。
- 取引に多額の資金が必要。
- 満期日まで株価がどう動くのかわからず証拠金維持率を保持するのに更に資金が必要である。
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何故、日経平均先物に日経平均が連動していくのか?
先ほどの裁定取引の内容を整理します。
【パターン①:日経平均先物 > 日経平均】
以下の裁定取引が発生
日経平均先物→売り
日経平均株価→買い
【パターン②:日経平均先物 < 日経平均】
以下の裁定取引が発生
日経平均先物→買い
日経平均株価→売り
つまり、例えば日本株に悪い事象が発生し日経平均先物が下落したとします。
すると、裁定取引で低くなった日経平均先物の買いと同時に、日経平均の現物の売りが発生します。
結果的に日経平均株価が下落するのです。
日本株に良い事象が発生し日経平均先物が上昇したとします。
すると、裁定取引で高くなった日経平均先物の売りと同時に、日経平均の現物の買いが発生します。
結果的に日経平均が上昇していくことになるのです。
東京市場が開場する午前9時直前に日経平均先物の価格をみることで、
当日の日経平均株価が上昇して始まるか、下落して始まるかを判断することができるのです。
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まとめ
今回は日経平均先物について紹介しました。
- 日経平均先物は日経平均株価の先物取引。
- 日経平均先物は流動性が高く大口投資家に活発に取引されている。
- 日経平均先物は証拠金取引であり、銘柄ごとに満期日が異なる。
- 市場では日経平均先物を利用した裁定取引が行われている。
以上、【日経平均先物とは?】基本取引・裁定取引など株式投資初心者にもわかりやすく解説。…の話題でした。