「ソニー」は世界的に人気のある、日本を代表する電気機械メーカー。
電気機械以外にもゲームや金融、音楽に映画など様々な事業を展開しています。
時価総額は7兆円を超え、東証一部時価総額ランキングでは常に上位にランクインしています。
そんなソニーは投資対象として見た時にどのような評価を下すことが出来るのでしょうか。
ここではソニーを分析していきたいと思います。
■ 投資判断基準:「中立」
▷現状の株価水準が妥当なレベル。
■ 業績見通し:
▷EMIの連結子会社化による再評価益の計上はなくなるが、2017年度水準。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ここ2年はかなり高めの数字。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷過去2年と比べると高くもなく低くもない。
■ 他社との比較:
▷比較対象がほとんどない。
▷他の電気機械メーカー以上に評価されている株価。
Contents
ソニーとは
ソニーは1946年に創業した東京通信工業という社員20人程度の小さな会社が前身となっています。
創業から4年後の1950年に日本初のテープレコーダーを開発しました。
この時から独自の新しい製品を作る社風は生まれていたようです。
1958年に現社名のソニーに変更してからもベータ方式ビデオカセットレコーダー、コンパクトディスク、ウォークマンなどといった製品を開発し、多くのヒット商品を生みだしてきました。
近年はゲームや金融部門の売上や利益が大きくなっています。
ソニーの電気製品の新商品を心待ちにする根強いファンが多い企業です。
2007年3月期から2020年3月期までの業績推移
まずは2007年3月期から2020年3月期までの『売上高』『営業利益』『経常利益』『純利益』のグラフを見ていきたいと思います。

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の影響によって2012年3月期まで売上高は落ち込み続けております。
純利益に関しては売上高以上に悪い時期が長かったですが、2016年3月期からは純利益が安定して残るようになりました。
2017年3月期からは売上高が2008年3月期の水準ほどに戻り、
さらに営業利益、経常利益、純利益は2008年以上の数字を残しました。
2018年3月期、2019年3月期の2期連続で過去最高益を更新し、ソニーは現在勢いに乗っています。
2020年の予想では営業利益、経常利益、純利益の全てが2019年度よりも落ち込む予想ですが、
売上高は上昇すると予想されています。
2019年3月期に過去最高益を更新した要因
近年利益を伸ばし続けるソニーですが、要因はどこにあるのでしょうか。
2019年3月期の決算短信から紐解いていきましょう。

ゲーム&ネットワーク部門が前期と比べて売上が3670億円、営業利益が1336億円増加、音楽部門も営業利益が1047億円増えています。
この2部門が今期の決算に大きなプラスの影響を与えている事が分かります。
音楽部門に関しては連結子会社の再評価益という一過性利益ですがゲーム部門の好調さは今年度も続く予定で本物ですね。
その一方でEP&S部門は2019年3月期は不調におわっています。
こうしてみると、ソニーはセグメントによって好不調の差が大きい企業と言えます。
2020年度3月期の見通し
2020年3月期は2019年3月期と比べると、売上高以外の数字が下がると予想されています。
まず前年度好調だったゲーム&ネットワークサービス部門が300億円ほど利益を落とすと予想されています。
これは前年度並の売り上げは期待出来るものの、次世代ゲーム機の開発費用が増加するために利益が減ってしまうという理由があるようです。
それに加えて音楽部門でも、前年度にあったEMIの連結子会社化による再評価益の計上がなくなるので1000億円ほどの減益が予想されています。
ただし分野全体では増収を見込んでいるので、こちらもあまり悪い印象とは言えないのではないでしょうか。
他部門では増益が予想されているところもありますが、これら2部門の影響により全体として800億円超の減益となる予想となるようです。
ソニーのROEとROA
ソニーの2007年からのROEとROAのグラフも見ていきたいと思います。

ROEはマイナスの期間が長くROAもほぼ0%前後で推移しているため、あまり良い印象を持てないかと思います。
しかし過去最高益を更新した2018年3月期はROEが16.54%でROAは2.57%、翌年の2019年3月期もROEが24.46%でROAは4.37%と高い数字になっています。
2020年3月期は2018年3月期並の数字になると予想されていますが、それでもかなり高い数字のため、効率良く利益を上げている企業と言えそうです。
ソニーのPER、PBRと日経平均との比較
ここからはPERとPBRを用いてソニーが市場からどのように評価されているかを見ていきたいと思います。
ソニーのPERとPBRを見る前に、まず過去10年分のEPSとBPSのグラフを見ていきましょう。

長い期間EPSもマイナスの時期が続いていましたが、ここ数年でプラスになっており2018年3月期は387.5、2019年3月期は723.4という数字なっています。
BPSもここ数年で上昇しており、2019年3月期は2995.3と3000に迫る数字です。
そしてこれとソニーの株価チャートを見比べてみると、かなりPERやPBRに変動があることが分かります。
特に直近2年のPERは最大で22倍超から最小値では7倍ほどまで変化していますし、
PBRに関してはこの1年のうちに2.7倍から1.5倍まで減少しています。
同じく直近2年の日経平均のPERやPBRはどうなっているかというと、PERの変動は16倍から11倍ほど、PBRの変動が1.4倍から1.1倍ほどで収まっているので、
ソニーの株価はPERやPBRを用いて日経平均と比較すると、かなり高い水準にあると言えるでしょう。
しかし企業や業種によって適正PERやPBRは異なるので、日経平均よりも高いからといって株価が割高と判断することは出来ません。
競合他社比較
ソニーのPERやPBRは日経平均よりも高い水準にありましたが、同じ電気機器メーカーのPERやPBRはどうなっているのでしょうか。
同業種に分類されているパナソニック、NEC、日立製作所と比較してみましょう。
ソニー | パナソニック | NEC | 日立製作所 | |
株価 | 5,366.0 円 | 896.6 円 | 3,970.0 円 | 3,599.0 円 |
売買単位 | 100 株 | 100 株 | 100 株 | 100 株 |
時価総額 | 68,216 億円 | 21,994 億円 | 10,341 億円 | 34,791 億円 |
市場 | 東証1部 | 東証1部 | 東証1部 | 東証1部 |
決算期 | 2020/03 (12か月) | 2020/03 (12か月) | 2020/03 (12か月) | 2020/03 (12か月) |
会計基準 | SEC | IFRS | IFRS | IFRS |
株主優待 | あり | なし | なし | なし |
予想PER | 13.4 倍 | 10.5 倍 | 15.9 倍 | 8.0 倍 |
PBR | 1.79 倍 | 1.09 倍 | 1.20 倍 | 1.07 倍 |
予想配当利回り | - % | - % | 1.51% | - % |
実績配当利回り | 0.65% | 3.35% | 1.01% | 2.50% |
ROE | 24.46% | 14.85% | 4.68% | 6.82% |
ROA | 4.37% | 4.72% | 1.36% | 2.31% |
自己資本比率 | 17.90% | 31.80% | 29.10% | 33.90% |
予想PER、PBRともにソニーは高い水準になっている事が分かると思います。
特にPBRは他社が1.1倍弱から1.2倍ほどですが、ソニーは1.78倍とかなりの差があります。
他の数字を見てみても、実績配当利回りは他社に比べてかなり低め、自己資本比率も他社が30%ほどあるのに対してソニーは17.90%です。
こうしてみるとソニーの株価はかなり評価されているのか、
それとも割高な水準にあるのかのどちらかではないかと予想されるかもしれません。
しかし注意しなければならないのは、ソニーが他の電気機器メーカーとは異なったもので利益を上げているという点です。
ソニーはゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画の3つのセグメントで売上高の約47%、営業利益の約67%を占めています。
これに金融部門も加えると売上高の約62%、営業利益の約84%にまで上昇します
それに対してパナソニック、NEC、日立製作所は業種の通り電子機器製品を中心に利益を上げています。
したがって同業他社との比較はある程度の参考にはなるかもしれませんが、
ソニーのように様々なもので売り上げをあげている企業はこの中にはないので、
これらとは全く違う業種なのだと割り切って考えてしまっても良いかもしれません。
まとめ
ソニーはセグメントごとの好不調は激しいですが、近年は安定した売り上げと利益を残せているため、投資対象として考えることが出来る銘柄と言えそうです。
しかし同業他社などとの比較がしにくい企業なのに加え、現在のPERは過去の水準と比べて高くもなく低くもないので、かなり売り買いが難しい位置なのではないかと思います。
そのため今後投入される新製品の評価や、現在の主力商品の売り上げの変化などによって投資判断を変化させる必要があるのではないでしょうか。
■ 投資判断基準:「中立」
▷現状の株価水準が妥当なレベル。
■ 業績見通し:
▷EMIの連結子会社化による再評価益の計上はなくなるが、2017年度水準。
■ ROEとROAの高さ(効率的に利益を上げられているか):
▷ここ2年はかなり高めの数字。
■ PERとPBRの低さ(割安かどうか):
▷過去2年と比べると高くもなく低くもない。
■ 他社との比較:
▷比較対象がほとんどない。
▷他の電気機械メーカー以上に評価されている株価。
以上、【6758】一過性要因もあり業績堅調なソニー(SONY)の株価水準を予想!魅力は高いが割安とは言えない?…でした。
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