大規模な戦争が終わった後、多くの国が物価高、いわゆる「インフレーション」に陥ることが多いです。
インフレになる要因はたくさんあります。
しかし、戦後にインフレになるケースが多いということは、何かしら共通している原因があるはずです。
目次
インフレーションとは?
そもそもインフレとはなんでしょう。
「インフレーション」とは、物価が上昇する経済状態を指します。
一般的に、インフレは好景気によって起こるものです。
モノがたくさん売れて、需要が高まり、値段を高くしてもモノがどんどん売れていく際にインフレが起こりやすいからです。
現在の日本政府、ならびに日本銀行も、日本経済を緩やかなインフレ状態にもっていくことを目標としています。
日銀の片岡剛士審議委員は27日、高松市内での講演で「(日銀が目標とする)2%に向けて物価上昇率が高まる蓋然性は現時点では低い」と述べ、金融緩和強化の必要性を主張した。
世界景気の不確実性の高まりから、国内経済の「回復の勢いは弱い」との認識を表明。
デフレ脱却に向けて「財政・金融政策のさらなる連携」も重要だと話した。
しかし、人為的にインフレを起こすことはそう簡単ではありません。
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戦争後にインフレになる要因とは?
近代の場合、戦争が起こると国全体を巻き込んだ総力戦になることが大半です。
国のすべて生産体制が「戦争のため」に稼働することになります。
同盟国が複数ある場合は、互いに武器を購入するなどして、利益を出すことは可能です。
しかし、国が孤立している場合は、モノを作っても自国ですべて消費するのみで、貿易などで利益を出すことができません。
したがって、戦争が長期に渡ると、物資不足で景気が後退していきます。
しまいには、戦争を継続できなくなる程に困窮することもあります。
食料も配給制となり、子供たちまでも労働に駆り出されることになりました。
戦争が終わると、今まで戦争に対して使っていた社会資本が、国内の経済の為に利用されるようになります。
ただ、戦後間もないころは、政府の体制も安定しておらず、中央銀行に対する信頼も無いに等しい状態です。
このため、これまで使用してきた「通貨」というものに対して、国民が懐疑的な目を向けるようになります。
「もしかすると、新しい通貨が発行されて、これまでの通貨が使えなくなるかもしれない」という思惑が広がっていくのです。
この結果、通貨の価値は下がってしまい、物価の高騰が発生するのです。
加えて、戦争に負けた場合は、「賠償金」を戦勝国に支払うケースがあります。
この賠償金は、戦後経済が安定していない敗戦国を経済的に地の果てまで落とし込んでしまう非常に厳しいものです。
第一次世界大戦後のドイツは、戦勝国であるフランス、イギリスから天文学的な額(1320億金マルク=約320億米ドル)もの賠償金を請求されます。
とてもではありませんが、戦後の景気後退の中でこの賠償金をスムーズに支払うことは困難です。
この多額の賠償金が一つのきっかけになって、ドイツ国内ではナチスが台頭し、第二次世界大戦が勃発することになります。
ドイツ財務省は3日、第1次世界大戦(1914~18年)の戦後処理を定めたベルサイユ条約などで敗戦国のドイツに科された賠償金のうち、最後まで残っていた国債利子分の約7千万ユーロ(約80億円)の支払いを完了した。
大戦終結から92年後にようやく払い終えたことになる。同国の主要メディアが報じた。
第1大戦後の大不況を背景に誕生したナチス政権が賠償金の支払いを拒否したことや、53年の「ロンドン協定」でドイツ統一まで支払いが猶予されたことから、完済が遅れていた。
ドイツが第一次世界大戦の賠償金をすべて支払い終えたのは、2010年10月のことです。
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戦争は経済好転の起爆剤になる?
戦争が終わった後、敗戦国は深刻な経済ダメージを負うことになります。
しかし、戦時中、しかも態勢が有利な国にとっては、戦争は景気を好調にする起爆剤になり得ます。
まず、大量の武器と食料品が必要になりますので、これらの製品を扱う企業は生産量をどんどん増やしていきます。
生産した製品は、国がほぼすべて買い取ってくれるので、企業は大儲けできるわけです。
生産工場をフル稼働させることになりますので、必要な労働力も増えてきます。
企業は労働者の雇用人数を増やしていき、失業率が低くなってきます。
労働者側も、給料を確実に確保できるので、生活用品などを不自由なく購入できるようになります。
すると、戦争とは直接かかわりのない製品やサービスを提供している企業の売上も上昇してきます。
ここまでくると、企業は更なる利益獲得に向けて「値上げ」に踏み切るのです。
最初は値上げによる消費の落ち込みが見込まれます。
しかし、値上げに伴って、労働者の給料も上がっていく傾向にあるので、消費量が徐々にもとの水準に戻っていきます。
戦争によって特定の製品の需要が高まり、それが経済全体を上向かせる方向へ導いてくれるのです。
第二次世界大戦後の日本は、この特需景気によって経済が復活したと言っても過言ではありません。
1950年に起こった朝鮮戦争により、日本はアメリカから武器、戦闘機の生産を命じられます。
戦闘機を作った分だけ、アメリカが購入してくれるため、日本の産業は徐々に回復していきます。
この特需景気を境に、日本の工業生産は年々上昇。
1960年代には、他国が驚くような「高度経済成長」を迎えるまでに至ったのです。
アメリカは、この「特需景気」の恩恵を最も巧みに利用している国と言えます。
第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに、アメリカは途中から参戦。
他国が経済的に弱り切ったところで自国の工業力をフル稼働させ、武器などを供給して景気好調の状態へ乗せています。
ちなみに、世界恐慌が起こった際、アメリカは「ニューディール政策」と呼ばれる公共事業政策を行って、世界恐慌を脱したと思われがちです。
実際はニューディール政策のみで景気後退から脱出することはできませんでした。
最終的にアメリカが世界恐慌から脱出できたきっかけは、第二次世界大戦勃発による軍需の増加です。
イギリスやフランスからの武器需要が高まり、それらを売ることによって世界恐慌から脱出することができたのです。
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戦争によって新たなビジネスが生まれる?
戦争によって新たなテクノロジーが生れると言われるほど、戦時中は新しい技術が実践投入される傾向が強いです。
インターネットも、第二次世界大戦をきっかけに技術が普及していったものです。
最近の紛争・戦争では、相手機知を偵察するための無人追撃機などが投入されました。
操縦者は、遠隔操作で期待をコントロールすることができ、機関銃を発砲したり、ミサイルを発射することも可能です。
これが、現在、「ドローン」として私たちの生活にまで普及してきました。
戦争によって、新たな市場がつくられたと言って良いでしょう。
ドローンを使って、無人配達を行う等、ドローンを利用した新たなビジネスが生まれてきています。
皮肉ではありますが、戦争というものは人間を極限状態に追い込むため、通常では考えられないようなアイディアが生まれる傾向が強いようです。
人間の歴史は「戦争の歴史」と言っても過言ではない程、数多くの戦争をを行ってきています。
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まとめ
戦争が終わった後は、戦争による経済ダメージ等により、通貨への信頼がなくなります。
そのため、インフレを起こしやすい傾向にあります。
一時的なインフレであればよいのですが、通貨の切り替えなど抜本的な改革を行わないと解消できないケースもあります。
皮肉なことに、戦争によって景気回復を果たす国も多く、中には戦争を利用して、景気好調を維持する国もあります。
新しいテクノロジーも戦争をきっかけに登場するものが多々あり、インターネットもその一例です。
戦争を肯定することは到底容認できません。
しかし、戦争によって人類の生活が変化してきたことは紛れもない事実なのです。
以上、終戦で物価が上がる?戦後にインフレが起こりやすい理由を解説!…でした。