アリババ(Alibaba Group Holding Limited)は、1999年にジャック・マー氏により創業されました。
企業間電子取引(B2B)プラットフォームを運営している中国のEC市場で最も大きな存在感を放つ企業の一つです。
中国のテックジャイアントとして急速に成長してきました。
ソフトバンクの孫正義氏が同社に投資していることでも有名です。
ソフトバンクが同社の筆頭株主であったことから名前を聞いたことがある方も多いと思います。
ソフトバンクの持ち株比率は29%でした。
なお、2019年6月にソフトバンクは保有する同社の株式を3%程度売却し、約1兆2,000億円の税引き前利益を連結計上しています。
同社の成長の著しさを顕著に表している事例であると言えるでしょう。
同社の主要なサービスは以下の通りです。
- BtoB ECサイト「アリババドットコム」
- BtoC ECサイト「天猫 Tmall」
- 越境ECサイト「天猫国際 Tmall Global」
- CtoC ECサイト「タオバオマーケットプレイス」
- 決済サービス「アリペイ」
- クラウドコンピューティング「アリババクラウドコンピューティング」
特に知名度が高いのは「アリババドットコム」、「天猫 Tmall」及び「アリペイ」です。
中でも日本人にとってなじみが深いのはアリペイです。
アリペイは中国のキャッシュレス化を支えているサービスの一つです。
単に支払いができるだけでなく、公共料金の支払いや金融商品の購入等、中国では国民の生活に欠かせないプラットフォームとなっています。
日本においても、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンといった大手コンビニエンスストアチェーンにおいて一部店舗では導入済みです。
本記事ではそんな中国のテックジャイアントの筆頭であるアリババの展望について分析していきます。
■投資判断基準:中長期的に「買い」
▷ 企業規模が大きいにも関わらず高成長率を維持しており、多数のサービスをリリースしている。
▷ ハイテク分野への投資も行っており更なる成長が予想できる。
▷ 今後中国以外での売り上げをどのように伸ばしていくかに注目すべき。
■ 指標関連:
▷EPSは堅調に上昇しているもコロナショックで株価は横ばいであるため割安度が高まっている。
▷インカムゲインには期待せず、キャピタルゲインを追求すべき。
■ 業績見通し:
▷2020年度も前期比大幅成長の見通し。
■ 株主還元:
▷ハイテク分野への成長投資のため配当金は拠出していない。
Contents
売上の大半は中国国内。今後の国外売上の伸びに期待
2018年年度のアリババの売上高構成を見てみると売上高の大半は中国小売り事業であることがわかります(単位は億元、1元=約17円)。
同社の売り上げを支えているのは依然として中国国内です。
後国外での売上高をいかにして伸ばしていくかが同社の成長を左右することになると考えられます。
第3Qにおける売上高が大きくなっているのは例年のことです。
理由は中国で11月11日の「独身の日」に行った巨大セールの影響です。
11月11日は中国で「光棍節(こうこんせつ)」とも呼ばれています。
日付に1が並んでいることから「独身を連想させる」ということで「独身の日」として2010年頃から徐々に広まり定着していきました。
2017年には1日だけで約2.8兆円もの売上を記録するなどアリババのメインイベントとなっています。
ちなみに、日本の通販事業で有名な楽天の年間の流通額(2016年)は4兆円ほどです。
アリババはその半分以上の額を「独身の日」の巨大セールで売り上げています。
中国経済の力強さと同社の影響力がよくわかります。
では最も売り上げの大きい中国小売り事業について内訳をみていきましょう。
上記のように中国小売り事業の売上高は顧客管理サービスであることがわかります。
決算に裏打ちされる力強い成長
それでは、アリババの業績と最新の決算情報について確認していきたいと思います。
年度 | Mar-15 | Mar-16 | Mar-17 | Mar-18 | Mar-19 | Mar-20 |
売上高 | 76,204.00 | 101,143.00 | 158,273.00 | 250,266.00 | 376,844.00 | 518,120.97 |
営業利益 | 22,716.00 | 28,200.00 | 45,930.00 | 67,561.00 | 57,084.00 | 131,498.00 |
税引前当期利益 | 32,326.00 | 81,468.00 | 60,029.00 | 100,403.00 | 96,221.00 | 156,854.77 |
当期利益 | 24,261.00 | 71,460.00 | 43,675.00 | 63,985.00 | 87,600.00 | 133,520.58 |
図に示すと以下の通りとなります。
過去5年の業績ですが、毎年右肩上がりの成長を実現しています。
2019年に米中貿易戦争が本格化しましたが同社の2019年度の業績は前年比大きなプラスとなる見込みです。
最新決算は市場予想を上回る好決算!ただ、コロナウィルスの影響が懸念される・・
アリババは2020年2月13日に2019年10月〜12月期の最新決算を行いました。
結果としては以下の通り売上高、純利益ともに予想を超える大きな伸びを記録したことが伝えられました。
【上海=松田直樹】中国ネット通販最大手、アリババ集団が13日に発表した2019年10~12月期決算は営業利益が前年同期比48%増の395億元(約6200億円)だった。19年11月に実施した年間で最大のネット通販セール「独身の日」で過去最高の取扱高を記録したことなどが寄与した。
主力のネット通販事業がけん引し、売上高は1614億元で38%増となった。純利益は523億元と58%伸びた。アリババは国内のネット通販市場で6割超のシェアを握っている。19年12月末の国内ユーザー数は7億1000万人を超えており、1年前から11%増えるなど圧倒的な地位を築く。
参照:日経新聞
ただ、創業者であるジャックマー氏が退いたあとも後任の張勇氏の元、順調に業績を拡大しているのは素晴らしいですね。
アリババのPER並びにEPSとBPS
アリババのPERについて見ていきましょう。
15-Mar | 16-Mar | 17-Mar | 18-Mar | 19-Mar | 20-Mar | |
PER | 56.31 | 19 | 43.03 | 51.19 | 42.82 | 28.84 |
図示すると以下のようになります。
PERについては、2015年12月を底に2016年以降は30倍台後半から50倍前後で推移していました。
しかし、直近の利益の伸びによってPERは下落し、過去水準で割安な水準となってきています。
次にアリババの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | Dec-20 | |
EPS | 10.33 | 29.07 | 17.52 | 25.06 | 33.95 | 50.43 |
BPS | 58.54 | 87.85 | 111.64 | 146.12 | 192.91 | 267.21 |
図示すると以下のようになります。
EPS及びBPSともにアリババの成長に連動する形で右肩上がりとなっています。
なお、同社はハイテク分野への成長投資を行っているため配当金は拠出していません。
アリババの課題と将来性
以下はアリババの直近5年間の株価水準です。
アリババの株価は、直近5年間で約3倍に成長しています。
2018年後半から2019年にかけては乱高下しておりましたが、好調な業績が確認され直近は210ドル前後で推移しています。
同社の株価が一段と上昇するためには中国以外の地域での売上高を伸ばすことが求められると考えられます。
依然として中国経済が力強いとはいえ、米中貿易戦争の影響で中国経済にも陰りが見え始めていると言われています。
消費意欲が減退してしまった場合は同社の業績は低迷する可能性があるためです。
業績が好調な時にこそ成長投資を加速させることで、株主や市場からの評価も高まり、
米中貿易戦争が終結に向かえば同社の株価は高騰する可能性は十分に考えられます。
EPSとPERから今後の株価水準を予想する
アリババの2015年から2020年までのEPSの年平均増加率はCAGRを用いて算出すると37.3%と算出されます。
保守的にEPS成長率10%、20%、6年平均25.92%で上昇した場合のEPSの推移は以下となります。
EPS予想 | 10%成長 | 20%成長 | 37.3%成長 |
20-Mar | 50.43 | 50.43 | 50.43 |
21-Mar | 55.47 | 60.52 | 69.24 |
22-Mar | 61.02 | 72.62 | 95.07 |
23-Mar | 67.12 | 87.14 | 130.53 |
24-Mar | 73.83 | 104.57 | 179.21 |
25-Mar | 81.22 | 125.49 | 246.06 |
PERについては、保守的に2014年12月期から2019年12月期まで最小値である40.2倍を使用して株価を算出します。
以下はCNY建の予想株価です。
株価予想(CNY建) | 10%成長 | 20%成長 | 25.92%成長 |
20-Mar | 2027.286 | 2027.286 | 2027.286 |
21-Mar | 2230.0146 | 2432.7432 | 2783.46368 |
22-Mar | 2453.01606 | 2919.29184 | 3821.69563 |
23-Mar | 2698.31767 | 3503.15021 | 5247.1881 |
24-Mar | 2968.14943 | 4203.78025 | 7204.38926 |
25-Mar | 3264.96438 | 5044.5363 | 9891.62646 |
USDCNY=7なのでドル建で算出すると以下の通りとなります。
株価予想(USD建) | 10%成長 | 20%成長 | 25.92%成長 |
20-Mar | 289.612286 | 289.612286 | 289.612286 |
21-Mar | 318.573514 | 347.534743 | 397.637668 |
22-Mar | 350.430866 | 417.041691 | 545.956519 |
23-Mar | 385.473952 | 500.45003 | 749.5983 |
24-Mar | 424.021348 | 600.540036 | 1029.19847 |
25-Mar | 466.423482 | 720.648043 | 1413.08949 |
現時点の株価が$210近辺です。
アリババの成長率が鈍化しない限り、保守的に見積もっても2025年には$466-$1410を目指せる水準となります。
尚、上記の想定はあくまでアリババのクレジットイベントが発生せず、
同社が現状の成長率を維持するという見通しである場合の想定となります。
まとめ
中国発の巨大テック企業であるアリババは米国株式市場に上場しています。
米中貿易摩擦等の不安の種はありますが、基本的には順調に成長しており中長期的に更に株価の上昇が期待できる銘柄です。