ビヨンドミート(Beyond Meat)はヴィーガンの方や、宗教上の理由で肉を食べることができないものの、肉の味を楽しみたい人々、健康志向の人々向けに完全植物性の肉やソーセージを製造している食品加工会社です。
同社の出資者の中にはマイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏や俳優のレオナルド・ディカプリオ氏もおり大きな話題となりました。
同社は2019年5月に米国NASDAQ市場に上場した企業です。
同社の製品は、大豆等の植物由来の原材料を使用しています。
しかし、見た目のみならずその味についても通常の肉と変わらないということで米国で大ヒットしています。
表紙の画像は同社の「ビヨンド・バーガー」という製品ですが見た目は肉そのものです。
本製品を通常の肉と同様の方法で調理の上、食するとのことですので代替肉としての機能を果たしています。
肉の味を楽しむことができることに加えて原材料はほとんど植物由来なので健康志向のセレブ層から大きな人気を博しています。
現在産業のキーワードの一つとして「代替」が挙げられると思います。
金融システムの代替としてのブロックチェーン、太陽光等の代替エネルギー、ヒトの単純機能を代替するロボットやAI等は特に昨今注目の大きな分野です。
ビヨンドミートは、「代替」というキーワードを食品という切り口から実現している企業であると考えられます。
動物保護が叫ばれつつある現代において、代替肉の存在は肉愛好家にとってはハッピーなニュースです。
本記事ではそんな米国フードテックの雄であるビヨンドミートの展望について分析していきます。
■投資判断基準:「中立」
▷ 成長株として中長期的な目線で投資をするのであれば魅力的な銘柄
▷ ただし株価のボラティリティが高いため、株価変動リスクに注意するべき。
▷ 株式の追加売り出しによる影響や食の安全に係るリスクについても考慮すべき。
■ 指標関連:
▷現状赤字であるものの業績は右肩上がりであるため、株価売り出し後の影響が少なければ株価が復調する可能性がある。
■ 業績見通し:
▷今後も高成長率は維持される見通し。
■ 株主還元:
▷成長投資のため配当金は拠出していない。
Contents
食糧問題は今後の重要なテーマ
発展途上国を中心とした世界的な人口増加に伴い現状のペースで人口増加が続けば2055年には人口は100億人を突破すると言われています。
人口増加に伴い農地が減少し、食糧問題は今後重要性が増していく分野であると考えられます。
特に発展途上国においては一般的に経済発展とともに食肉需要は増加していくためです。
牛肉1kgを生産するのに、牛のエサとなる穀物が10kg必要であると言われています。
今後食肉の供給が需要に追い付かなくなってしまう可能性は十分に考えられます。
したがって、人口増加に伴い代替肉市場が益々拡大していくものと考えられ代替肉市場の拡大は同社にとっての追い風となります。
決算に裏打ちされる圧倒的な成長率
それでは、ビヨンドミートの業績と最新の決算情報について確認していきたいと思います。
年度 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 16.18 | 32.58 | 87.93 | 260.28 |
営業利益 | -24.77 | -28.56 | -27.99 | -12 |
経常利益 | -25.15 | -30.38 | -29.88 | -12.66 |
当期利益 | -25.15 | -30.38 | -29.89 | -20.02 |
図に示すと以下の通りとなります。
2016年12月から売上高は右肩上がりで成長しています。
毎年売上高は2倍上ずつ増加しています。
一方、多額の開発費用を投じているため、当期利益はマイナスとなっています。
営業利益に関しては2019年12月期もマイナスとなる見込みですが年々マイナス幅は減少しております。
2020年12月期には黒字化を達成できるかもしれません。
最新決算情報!売上高拡大も・・・
2019年7月29日にビヨンドミートが発表した2019年第2四半期の決算ですが市場予想を大幅に上回る結果となりました。
売上高が前年同期比3.9倍の6725万ドルと、市場予想の5250万ドルを大幅に上回りました。
消費者の健康志向や環境保護への意識の高まりが追い風となり同社の業績をけん引したようです。
しかしながら最終損益は944万ドルの赤字でした。
赤字幅は前年同期(739万ドル)から拡大しました。
販売拡大や売上高総利益率の改善で営業損益は黒字となったものの、IPOに関わる一時費用を計上したことが重しとなりました。
なお、決算発表と同時に株式の追加売り出しを発表したことが嫌気され同社の株価は急落しました。
売り出し発表により需給が緩むとの見方が強まり一時同社の株価は14%程度下落しました。
ビヨンドミートのEPSとBPS
次にビヨンドミートの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Sep-16 | Sep-17 | Sep-18 | Sep-19 | |
EPS | -0.43 | -0.32 | -0.51 | -0.35 |
BPS | 0.47 | 0.9 | 1.33 | 5.28 |
図示すると以下のようになります。
業績が右肩上がりであるため、同社のBPSは右肩上がりで上昇しています。
EPSについても、成長投資が一巡すれば、業績とともに右肩上がりで上昇していくものと考えられます。
ビヨンドミートの将来は?話題先行の側面も
以下はビヨンドミートの直近5年間の株価水準です。
しかし、ビヨンドミートの株価は上場から日が浅いということもあり値動きは不安定です。
2019年5月に公募価格25ドルで売り出しが発表され、初日の終値は163%高の65.75ドルでした。
その後も同社の話題性が市場からの注目を集め株価は右肩上がりに上昇し、一時公募価格の10倍近い230ドル前後まで値上がりしました。
しかし、株式の追加売り出しが発表されたことにより株価は急落し現在は155ドル程度で推移しています。
また、同社が市場から大きな注目を集めたのは自社商品が大手食品会社に採用されているためであるという見方も一部にはあります。
例えば同社の製品はホールフーズなどの高級スーパーチェーンで、通常のミンチ肉と同じ棚に陳列されています。
これは、代替肉が本物の肉と同等の扱いを受けていることを示唆していると考えられます。
またハンバーガーチェーン大手のバーガーキングがビヨンドミートの製品を使用したバーガーの提供を始めています。
更にダンキンドーナツも朝食用のソーセージにビヨンドミートの製品を使用した商品を提供しているとのことです。
実際のカロリーも通常の肉とあまり変わらないうえ、値段は通常の肉の約2倍します。
健康志向や動物愛護意識の高まりによる一過性のものであるという見方もできてしまいます。
しかしながら、長期的に見れば食肉の供給が需要に追い付かなくなってしまう可能性はありますし、代替食品そのものが今後注目を集めることは十分に考えられます。
人口増加に伴い自然破壊が進めば、現在の生産体制では食料の供給ができなくなり、食糧の高騰を招いてしまうためです。
成長株として、中長期での投資であれば、買いを検討しても良いのではないかと考えます。
代替肉が通常の肉よりも健康に良いという科学的根拠が第三者の公的機関から発表されると株価は上昇する可能性があります。
まとめ
代替肉を販売しているビヨンドミートは健康面と将来の食糧問題にアプローチした注目の急成長企業です。
しかし売上は倍々ゲームで拡大していますが、利益がいまだに純損失水準であること。
更に株式価値の希釈となる新規株の売り出しによって株価は苦境に立たされています。
しかし、ビルゲイツが株主であることからもわかる通り、将来の問題を解決する企業として大手外食産業にお採用され始めており、今後が期待できる銘柄であるといえるでしょう。
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