キャッシュリッチ企業とは?その特徴とキャッシュ比率・具体的な銘柄を含めてわかりやすく解説!

キャッシュリッチ企業とは?その特徴とキャッシュ比率・具体的な銘柄を含めてわかりやすく解説!

 

株式投資において、銘柄選びは損益を左右するとても重要な問題です。

東証1部だけでも2,000以上の銘柄が上場しており、投資する銘柄をなかなか選べないという方も多いでしょう。

 

秀次郎
そうなんじゃ。わしも何を選んだらよいか迷っておるところじゃ。
信太郎
一つの指標として「キャッシュリッチ企業」か否かという基準があるぞ!

 

このコンテンツでは、キャッシュリッチとはどういうことなのか?

どんな特徴がある企業かといったことや、具体的な銘柄を用いてわかりやすく解説します。

目次

キャッシュリッチ企業とは

キャッシュリッチ企業」とは、実質無借金経営を行っており現金・預金などを豊富に保有している企業のことです。

現金(キャッシュ)が豊富(リッチ)にある企業ということですね。

 

実質無借金とは借金が全くない状態は、もちろんのこと保有資金が有利子負債を上回っている状態も指します。

 

信太郎
保有資金が有利子負債を上回っているということは、その気になれば有利子負債をすべて返済できるからの!

 

例えば、50万円の借金があっても100万円の「資金」を保有しているなら差引50万円のプラスです。

実質的には無借金といえます。

 

秀次郎
ところで「資金」とは何を意味するんですか?
信太郎
現金だけでなく、比較的換金しやすい売掛金や保有株などの有価証券があげられるぞ!

 

 

流動性の高い現金・預金・営業債権・有価証券から有利子負債を差し引いたものを「ネットキャッシュ(net cash)」といいます。

ネットキャッシュがプラスであることが、キャッシュリッチ企業の条件です。

 

企業がキャッシュリッチかどうかを測る最も代表的な尺度は、手元流動性(現金・預金+有価証券)から有利子負債を差し引いたネットキャッシュであり、これがプラスであればキャッシュリッチとみなされる。

(引用:野村證券

 

もちろんネットキャッシュのプラスの値が大きいほど、よりキャッシュリッチであるといえます。

 

キャッシュリッチ企業の推移

 

 

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キャッシュリッチ企業の特徴

キャッシュリッチ企業には様々な特徴があり株式投資においてその特徴を把握しておくことは重要です。

ここでは、キャッシュリッチ企業の特徴とキャッシュ比率について紹介します。

 

財務が健全で倒産リスクが低い

キャッシュリッチ企業は、有利子負債を上回る多額のキャッシュを有することから、財務状態が良い企業が多いです。

 

具体的には豊富なキャッシュを保有していることから、自己資本比率が高い企業が多くあります。

 

また多額のキャッシュがあり、そもそも借り入れをそれほど必要としませんので有利子負債自体が少ない企業も多いです。

 

多額の現金などを保有し、借金は少ないとなれば当然倒産リスクは低くなります。

会計上は黒字でも資金繰りが悪化して倒産してしまういわゆる「黒字倒産」になることはまずありません。

 

不況になっても、多額のキャッシュを有していますので不況期を乗り越える体力があります。

また、借金が少ないので不況により多少業績が落ち込んでも借入の返済ができなくなるといった可能性も低いです。

 

つまりキャッシュリッチ企業は安定性が高いといえます。

このような特徴があることからキャッシュリッチ企業の株は株価が下がりにくいとされています。

 

大規模な株主還元が可能-高配当利回り企業となりやすい-

株主還元を行うには現金が必要です。

キャッシュリッチ企業は現金を豊富に保有していますので、株主還元を積極的に行うことができます。

 

信太郎
株主還元とは例えば『自社株買い』や『配当金』のことじゃな!

 

安定した配当を行うには事業年度に関わらずある程度のキャッシュを保有している必要があります。

この点、キャッシュリッチ企業は配当を継続できる体力がある企業です。

 

実際、キャッシュリッチ企業は安定した配当を出している企業が多く、増配を続けている企業も多くあります。

 

信太郎
日本には花王しかないが、米国には50年以上増配している配当王や、貴族企業(25年以上)が多く存在しておるぞ!
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自社株買いも株主還元政策の一つです。

自社株買いを行うことで、「1株当たりの利益(EPS)」が増加しますので株式の価値が高まります。

 

また、企業自身が株を買っているという安心感や市場で実際に買いが入ることは株価の上昇に繋がります。

 

もちろん、自社株買いを行うにも現金が必要です。

キャッシュリッチ企業の方がより大規模な自社株買いを行うことが可能です。

 

このように、キャッシュリッチ企業は配当や自社株買いを大規模に行えることから、株価にもプラスの影響があります。

 

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2019年2月13日

 

時代の流れに即した投資ができる

キャッシュを豊富に保有していると企業が行っている事業自体にも良い影響があります。

経済の流れは時と共に変化していきます。

 

数年前に売れていた製品や通用していたサービスが今では全く売れない・通用しないということは珍しくありません。

 

常に企業が成長していくには時代の流れにあった商品・サービスを提供できるように先行投資を行っていく必要があります。

もちろん投資にはお金が必要です。

 

秀次郎
攻めるにはお金が必要じゃからの!

 

現金を豊富に保有しているキャッシュリッチ企業は投資面でも有利といえるでしょう。

 

キャッシュ比率が高い

キャッシュ比率とは総資産に占めるキャッシュの比率のことです。

キャッシュリッチ企業はキャッシュが多く有利子負債が少ないことからキャッシュ比率も高い企業が多いです。

 

キャッシュリッチ企業の中にはキャッシュ比率が50%を超える企業も多く存在します。

 

総資産の半分以上がキャッシュというのは財務の安全性という面では盤石といえます。

 

土地や建物、設備などがそれほど必要でないIT関連企業などはキャッシュ比率が80%を超えている企業もあります。

銘柄を選ぶ際にキャッシュ比率を確認してみるのも安全定を測る意味では重要です。

 

さて、ここまでキャッシュリッチ企業の概要とその特徴を紹介しました。

つづいては、具体的なキャッシュリッチ企業を紹介します。

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キャッシュリッチ企業①:任天堂

任天堂は代表的なキャッシュリッチ企業です。

ネットキャッシュ(現金などから有利子負債をひいたもの)は約1兆円と潤沢な資金を有しています。

 

自己資本比率も80%を大きく超えており、キャッシュリッチ企業らしく財務面での安定性も抜群です。

 

財務諸表の概要:驚異の有利子負債は0円!!

任天堂は換金性の高い資産から全ての負債を差し引いたネットキャッシュが1兆円となっています。

さらに有利子負債は存在せず負債は買掛金や未払法人税が占めています。

任天堂のバランスシートの概要

参照:任天堂の有価証券報告書

 

絶対的な安定性をもった財務基盤を有しているといえるでしょう。

潤沢なキャッシュを元に配当金は増額基調を維持しています。

 

任天堂の配当金の推移

 

業績は回復基調

 

任天堂の業績推移
決算期りあg売上高営業利益経常利益純利益
2007/03 966,534226,024288,839174,290
2008/03 1,672,423487,220440,807257,342
2009/03 1,838,622555,263448,695279,089
2010/03 1,434,365356,567364,324228,635
2011/03 1,014,345171,076128,10177,621
2012/03 647,652-37,320-60,863-43,204
2013/03 635,422-36,41010,4827,099
2014/03 571,726-46,4256,086-23,222
2015/03 549,78024,77070,53041,843
2016/03 504,45932,88128,79016,505
2017/03 489,09529,36250,364102,574
2018/03 1,055,682177,557199,356139,590
2019/03 1,200,560249,701277,355194,009
2020/03予 1,250,000260,000260,000180,000

 

豊富な資金力を武器に、新しいゲーム機器などの開発に向けて積極的に投資を行っています。

ゲーム機は新発売から時間が経つほど売り上げが低下していきます。

 

任天堂は既存ゲーム機の売上が落ち込んで赤字に転落したとしても、資金力があるため多額の研究開発費をかけることで新たなゲーム機を生み出すことが可能なのです。

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キャッシュリッチ企業②:ソニー

ソニーは1兆円を超すネットキャッシュを持つキャッシュリッチ企業です。

 

ソニーの財務はネットキャッシュが1兆円超と盤石

ソニーは1兆円以上の現金だけでなく有価証券を12兆円分保有しています。

結果としてネットキャッシュを1兆円以上保有していることになります。

ソニーの財務内容

参照:SONYの財務諸表

 

株主還元は配当だけでなく自社株買も実施

現在の配当利回りは2%近い水準と特段高くありません。

しかし、ソニーは毎年配当金は増配基調となっています。

ソニーの配当金の推移

さらに配当金の拠出だけでなく大規模な『自社株買い』も実施しております。

 

豊富な資金力を株主還元にも積極的に使用しており、今年に入って2度の自社株買いを行っています。

自社株買いの規模も大きく、1回目が1,000億円、2回目が2,000億円と合計3,000億円の大規模な自社株買いです。

 

ソニーの自社株買の内容

参照:ソニーのプレスリリース

 

積極的な自社株買いは株価にとってプラス要因となっています。

 

 

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キャッシュリッチ企業③:キーエンス

キーエンスは工場などの生産工程を自動化するシステム用のセンサー(FAセンサー)を開発している企業です。

 

顧客が企業であるいわゆるBtoB企業のため一般的な知名度はそれほどありません。

しかし投資家の間では優良企業として知られています。

 

驚異の無借金企業キーエンス

キーエンスは換金性の高い資産で1兆6000億円も保有しています。

一方の負債は有利子負債が存在しないばかりでなく、負債全体でも僅か870億円しか存在しません。

 

信太郎
つまり資産のほとんどが純資産ということじゃな!こんな企業なかなか存在しないぞ!

 

キーエンスの財務諸表

参照:キーエンス

 

収益力も高く業績も堅調

キーエンスは度々決算期を変更しているので図でみると安定していないように見えます。

しかし、年間ベースでみると着実に収益力を拡大させています。

 

キーエンスの業績推移
決算期売上高営業利益経常利益純利益
2007/03 182,71192,97797,54158,646
2008/03 200,666102,354104,98463,208
2009/03 165,32873,37172,43941,996
2010/03 136,17755,65859,52737,695
2011/03 184,80286,61189,98755,345
2012/03 199,33491,14594,24458,162
2012/06 変52,01622,80525,51915,535
2013/03 変165,81376,41682,87752,043
2014/03 265,010130,689136,74285,904
2015/03 334,034175,719186,347121,063
2015/06 変88,05045,84148,61531,521
2016/03 変291,232155,468156,905105,645
2016/06 変96,35249,16047,94332,475
2017/03 変316,347169,750173,436120,680
2018/03 526,847292,890298,860210,595
2019/03 587,095317,868319,860226,147

 

安全で尚且つ成長企業なので非常に魅力的な企業ですね!

 

 

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まとめ

今回はキャッシュリッチ企業について紹介しました。

最後に重要点をまとめますと以下の4点があげられます。

 

  • キャッシュリッチ企業とは有利子負債を上回る豊富な資金を有する企業
  • キャッシュリッチ企業は実質無借金である
  • 資金力があるということは財務の安定性に繋がる
  • 豊富な資金を利用して積極的な株主還元を行うことができる

 

企業がどの程度のキャッシュを保有しているかは銘柄選びの一つの判断基準となります。

 

今回はキャッシュリッチ企業とは何か、また具体例などを出して解説してきましたが、銘柄選びでは様々な指標を掛け合わせることが重要です。

どのような時勢の時に、どの指標を見るべきなのか、どのように情報収拾を行うべきなのか。

 

これらの情報を現役投資家がわかりやすく解説してくれる株式投資をメインとしたスクールやセミナーなどで学ぶことも検討に入れてみましょう。

株式投資で成功するには、成功者から教わるのが一番効率的です。

 

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以上、キャッシュリッチ企業とは?その特徴とキャッシュ比率・具体的な銘柄を含めてわかりやすく解説!…でした。

 

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マネリテ!編集部は東京大学経済学部卒の証券アナリストを中心とした金融知識が豊富なメンバーが株式投資初心者に向けて有益な情報を提供しています。株式投資を行う意義から基本用語、おすすめのネット証券・投資先情報をお伝えするメディアです。日本人の金融リテラシーの向上と明るい未来を目指しています。