1限目-3限目までで、経済の仕組みの基礎と経済成長が起きる理由、そして「インフレ」について解説をしてきました。
このコンテンツでは、「日本銀行」の役割について解説をしていきます。
「日本銀行」という名前は、私たちは日々のニュースでよく聞きます。
しかし、実際にどのような役割を担っているのか、しっかり理解できている人は多くありません。
経済を理解する上で、日本銀行の役割についてはしっかりと理解しておくことが重要です。
目次
日本銀行(=Central Bank)の役割
日本銀行と言えば、かなりくだけた表現をすると、国の一番大きな銀行、国の一番重要な銀行、といったものになるでしょうか。
別名では「中央銀行」といいます。
中央銀行は我々国民は預金することはできませんが、銀行が預金口座を持つ銀行なのです。
日本銀行のホームページをのぞいてみましょう。
ページの左上に着目してみましょう。
日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行です。
これが日本銀行の役割になります。
「日本政府」の役割は「税金」を国民から徴収し、公共事業に支出します。
日本銀行は「金利」をコントロールすることで「物価」のコントロールをします。
具体的には、金利変動を操作し、インフレ・景気をコントロールします。
3限目で学んだことですが、売買などの取引によって起こる「支出」と「収入」が生産量よりも速度を上げて増加することで、モノやサービスの価格は急上昇します。
モノの価格の上昇は「インフレ」を招き、お金の価値を下げます。
生産速度が確保されていない中、モノやサービスの需要が増加すると、インフレがどこまでも進んでしまいます。
そこで、日本銀行はそんな過度なインフレを避けるために、早期に物価が上昇するのを感知し、政策金利を引き上げます。
政策金利を引き上げることで、借り手が過剰な投資や消費をしないよう制御します。
すでに企業などが借り入れ済みのお金にかかる金利も変動金利であれば基本的には高くなるので、過剰投資をグッと抑えられることになります。
日本銀行は経済をコントロールしている、と言われる所以はここにあるのです。
「政策金利」とは、日本銀行(中央銀行)が金融市場の調節手段として用いる短期金利のことを指します。
政策金利とは、中央銀行の金融政策によって決定されるものです。
市場金利を実体経済に合った水準に促すために決める基準金利のことをいいます。
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日本銀行の政策金利による経済コントロール
物価の上昇、つまり、インフレーションが発生すると、中央銀行は金利(政策金利)の設定を高くします。
「政策金利」をさらに詳しく解説します。
大前提として、日本の民間銀行、メガバンクなどは日銀より「低金利」で資金調達が可能となっています。
日本銀行から低金利で資金を調達することにより、「企業」や「個人」に対する貸し出し金利を低く設定しても、銀行に利益が出やすくなります。
この循環の中で、結果的に企業の資金調達も進み、投資が増加し、経済の成長に繋がることになります。
さらに詳しく例を出すと、三菱東京UFJ銀行が日本銀行から「2%」の金利でお金を借りて、「4%」で企業にお金の貸し付けを行なった場合。
本来は5%で企業に貸し付けているものが、4%になるので企業も銀行も嬉しいですよね。
この日本銀行が2%で民間銀行に貸し付けている部分を、物価上昇(=インフレ)が進むと、日銀はさらに高い利率に設定します。
これで過度なインフレを抑え、デフレ時には金利を下げることで調整をします。
さて、日本銀行がインフレ時に金利を上げることで、何が起こるのでしょうか?
お金を借りる(主に)企業が減り、すでに借り入れているお金の金利も上がってしまいます。
企業は追加の借り入れができないのですから、投資に使える資金が減る、これはつまり「支出」が減少します。
誰かの支出は誰かの「所得」ですので、所得も減少します。
つまり、最終的には国民のところまで影響が出てきます。
「モノ、サービス」が売れなくなるのです。
「モノ」が売れなくなった環境下で、「モノ」を売りたい企業は、商品が売れなければ在庫になります。
商品が腐敗してしまい、廃棄することになれば大きな損失を被ってしまいます。
そこで、企業は「モノ」の値下げを順次実行していくことになります。
これは日本が長らく直面している「デフレーション」の動きですよね。
このようにして、日本銀行が政策金利で金融市場をコントロールすることにより、過剰なインフレ、デフレが起きないように経済を安定させているのです。
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〜コラム〜現在の日銀の金融政策
今まで説明してきた政策金利による景気・インフレの調整は『伝統的な金融政策』といわれるものです。
日本や欧州は既に0金利なので、景気とインフレを引き上げたい時に下げる金利がありません。
そこで日本や欧州、少し前までの米国は長期の国債を買い入れて、長期金利を引き下げるという『非伝統的な金融政策』を実施しています。
しかし、現在の日本ではいくら金利が下がっても、人口減少並びに実質所得の減少で資金需要が少なく、一向に経済成長並びにインフレが上がらないという深刻な事態に陥っています。
日銀の金融緩和はもうすぐ限界を迎える様相を呈してきており、その後の可能性についても説明しておりますので参考にしてみてください。
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日本銀行の金融システムの安定化とは?
日本銀行がどのように経済をコントロールしているのか、つまり「物価の安定」を目指しているのか?
という点の解説を終えたところで、日銀の目的である「金融システムの安定化」について触れていきます。
「金融システムの安定化」について、日本銀行のホームページでは以下のように記載されています。
金融システムの安定の概要
「お金」は、人々の経済活動にとって、なくてはならない大事な役割を果たしています。「お金」の受け払いや貸し借りを行うしくみは、全体として「金融システム」と呼ばれており、さまざまな金融市場や多数の金融機関から成り立っています。
「金融システムの安定」とは、金融システムが正常に機能し、企業や国民の皆さんなどの利用者が安心して使用できる状態にあることをいいます。金融システムの安定を図ることは、物価の安定と並ぶ日本銀行の目的です。
日本銀行は金融システムの安定のために、考査やオフサイト・モニタリング、「最後の貸し手」としての資金供給などを行っています。
(引用:日本銀行(金融システム)
上記は概要ですが、以下は具体的に金融システムの安定化を目指した取り組みについてです。
日本銀行は、銀行や証券会社など、日本銀行の取引先に対して、業務運営の実態や各種リスクの管理状況、自己資本の充実度や収益力についての実態把握を行うための調査を行い、経営の健全性の維持・向上を促しています。
調査の手法としては、取引先へ立入って調査を行う「考査」と、立入りを伴わない調査(面談や電話によるヒアリングや提出資料の分析など)である「オフサイト・モニタリング」があります。
(引用:日本銀行(金融システム)
つまりは、日本銀行は金融市場に不安が出ないよう、銀行や証券会社などのリスク管理、経営の健全性の維持と向上に努めていることになります。
日本銀行は、そんな金融システムが、誤作動を起こさないために、定期監査などで健全性の維持に努めているということですね。
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まとめ
この記事では、日本銀行の役割と具体的にどのように経済をコントロールしているのか?
金融システムの安定化はどのように行なっているのか?などを解説してきました。
経済を理解することで、我々の社会はどのようなサイクルで動いているのか、自身はどの位置にいるのか、正確に把握できるようになります。
これにより、今後の人生の身の振り方、投資すべき商品の理解が進み、より有利な位置で、人生を過ごせるようになるというメリットがあります。
積極的に、勉強していきましょう。
以上、【ラスト4限目】経済の仕組みをわかりやすく、簡単に!日本銀行の役割・政策金利とは?…でした。