自営業やフリーランスなどの「個人事業主」の方は、初めて確定申告をするときに「事業所得」「経費」という言葉を意識し始めるかと思います。
会社員の時には会社が所得税・住民税を算出してくれるので、社員自身は扶養控除などを申請するだけでした。
しかし、個人事業主として事業を営むようになると、税金の計算も税理士を雇わない限りは自分で実施しなければなりません。
今回は、自営業の方の視点で、所得税を如何に節税していくかを中心に解説していきたいと思います。
目次
そもそも個人事業主とは?
個人事業主とは、株式会社ではなく、自身で事業を営む人のことを指します。
自営業、フリーランスとも呼ばれます。
所得も「事業所得」となると個人事業主となります。(会社員は「給与所得」となります)
例えば、ヤフオクで10枚CDを販売した場合にそれは事業に当たるのか?と疑問に思うかもしれません。
判断としては、事業に「継続性」があるか、「営利性」は高いのかなどの総合判断から事業所得であるかどうかをみることになります(実態はかなり曖昧ですが)。
上記のようにヤフオクでたまたま10枚CDが売れた場合は事業に該当せず、雑所得扱い(経費差し引き不可)となります。
例えば、2018年1月まで加熱を見せていた「仮想通貨」による利益は「雑所得」とされていましたよね。
日本では仮想通貨の売却や利用で生じる所得は「雑所得」として所得税の確定申告の対象になる。給与所得者は給与以外に20万円超の所得がある場合は確定申告しなければならない。日本仮想通貨交換業協会によれば、日本での口座数は述べ350万。今年の確定申告では初めて申告する若者が急増した。
株式投資によるキャピタルゲイン税は所得税・住民税を合わせて一律20.315%となっています。
しかし仮想通貨の場合、4,000万円を超える所得を得た場合、最大で55%の税金が掛かるということです。
税法上は原則、「雑所得」に区分され為替差益と同様に総合課税の対象だ。税率は一律10%の住民税を合わせると15~55%。所得が高いほど税負担が重くなる。
同じ雑所得でも外国為替証拠金(FX)取引は「先物取引に係る雑所得」として他の所得と区分され、所得税・住民税を合わせた税率は一律20%の申告分離課税が適用されるのと対照的だ。
まず、所得を把握するために表計算ソフトで取引明細を作成しよう。特定口座で取引した金融商品は証券会社が「年間取引報告書」で所得計算をしてくれるが、仮想通貨は自分で計算する必要がある。
個人事業主であれば、事業所得を計上し、経費を計上することで、節税が可能となります。
ここからはその点をさらに詳しく解説していきます。
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個人事業主の特権・経費で課税所得を減らす
自営業の方は、売り上げからいくらか経費で引くことにより、支払う税金を安くすることができます。
会社員と自営業では所得税の計算が少し違います。
まず自営業の税金の計算は「売上−経費−控除=課税所得」となります。
■ 売上−経費−控除=課税所得
よく「この食事代経費で落とそう」といった話をよく聞きますが、あれは、経費にすることによって納める税金の額を少なくしようとしているのです。
ちなみに売り上げから経費を引いた残りの所得を「事業所得」といいます。
対して会社員は「総所得(総収入)−控除=課税所得」となります。
■ 総所得(総収入)−控除=課税所得
総所得は1年間で得た給与の合計です。
「自営業は経費引いて節税できるのに、会社員はできないから不公平だ!」と思う人のために、給与収入がある人は、「給与所得控除」という特別な控除があります。
自営業者で気をつけなければならないのは、支払った費用をなんでも経費にできるわけではなく、経費にできるのは、「売り上げに繋がった経費」だけです。
例えば広告宣伝費や、営業費などがこれに当たります。
架空の経費を計上し支払い税金を圧縮してしまうと、脱税に繋がってしまうので絶対にしないようにしましょう。
2019年で青汁の通販事業で拡大しているメディアハーツが話題に上がりましたね。
架空の経費を計上する方法などで、法人税など計約1億8000万円を不正に免れたとして、東京地検特捜部は12日、インターネット通信販売業「メディアハーツ」(東京・渋谷)社長、三崎優太容疑者(29)を法人税法違反と消費税法違反の疑いで逮捕した。同容疑者は主力商品にちなんで「青汁王子」の名称でテレビ番組などに出演していた。
経費を計上することにより、支払い税金を減らすことができるのでメリットが大きく目につきますが、実はデメリットも存在します。
例えば、あまりにも経費で所得を落としすぎると、社会的信用が落ちてしまうという点です。
住宅ローンを組んだり、クレジットカードを作るときは、その人の「年収」(=課税所得)で判断されることになります。
サラリーマンの場合は「年収」がこれにあたります。
しかし、自営業やフリーランスの場合は、売り上げから経費を引いた「事業所得」で判断されます。
過剰に経費計上をすることは実はあまりおすすめできることではないのです。
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青色申告を活用する
事業所得を経費で圧縮し、節税をする点を解説してきましたが、その他にも節税できる方法があります。
それは「青色申告」を活用することです。
開業から2ヶ月以内に提出することで以下のメリットが享受できます。
■ 青色申告特別控除のメリット:
- 赤字繰越可能(会計でいう繰越欠損金)
- 家族給与を経費に計上可能
- 最大65万円の控除で節税可能
- 売掛金に対する引当金を経費計上可能
- 30万円未満の備品を一括経費計上可能
ちなみに最大65万円の控除とは、売上100万円に対して65万円を経費として控除、35万円を事業所得として課税対象にすることを意味します。
しかし、青色申告を受けるには条件がありますが、そこまで難しいことではないのでしっかりとメリットは享受するようにしておきましょう。
■ 青色申告特別控除の要件:
- 青色申告承認申請書の提出
- 事業所得・不動産所得が対象(双方合わせてMAX65万円)
- 発生主義による帳簿記帳
- 確定申告書の提出(期限厳守)
- BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)を作る
青色申告承認書を提出せずに確定申告をする場合、白色申告となりますがこちらは特段メリットはありません。
従い、個人事業主は必ず青色申告をするようにしましょう。
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青色申告特別控除を適用した場合の節税効果と計算根拠
最後にこの控除がどれくらいのものなのかを試算してみましょう。
事業所得が500万円の場合、青色申告特別控除を適用した場合195,000円(1,072,500円-877,500円)の節税になります。
■ 青色特別控除なし:
- ①事業所得:5,000,000円
- ②所得税:572,500円(①×20%-427,500円)
- ③住民税:500,000円(①×10%)
- ④課税金額合計:1,072,500円(②+③)
■ 青色特別控除適用:
- ①事業所得:4,350,000円(5,000,000円-650,000円)
- ②所得税:442,500円(①×20%-427,500円)
- ③住民税:435,000円(①×10%)
- ④課税金額合計:877,500円(②+③)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
(引用:国税庁「No.2260 所得税の税率」)
単年で195,000円と聞くと大した金額には聞こえません。
しかし、これが5年となると975,000円、10年となると1,950,000円と無視できない金額になってきますよね。
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まとめ
節税は仕組みを知っているか知らないかだけでその効果は大きく変わってきます。
特に個人事業主の方は、サラリーマン時代にはできなかった節税が可能となるメリットがありますが、その分学ぶ必要も出てきます。
慣れない税金の仕組みを学ぶのは少し億劫になってしまいますよね。
しかし、一度節税の方法などを理解すると、長期に渡り効率よく、資産を築くことができる「知恵」となります。
覚えておいて損はなく、得しかありません。
しっかり知識をつけていきましょう。
以上、個人事業主(自営業・フリーランス)は青色申告特別控除と経費計上で税金はいくら節約できるのかを解説します…の話題でした!
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