ゼネラル・エレクトリック(略称GE)はアメリカを主な拠点とする多国籍コングロマリット企業です。
コングロマリットとは直接の関係をもたない多岐に渡る業種に参入している企業のことを指します。
またGEは世界最大の総合電機メーカーです。
航空機エンジン、医療機器、産業用ソフトウェア、各種センサ、鉄道機器、火力発電用ガスタービンやモーター、原子炉などの発電および送電機器、
水処理機器、化学プロセス、鉱山機械、油田サービスや天然ガス採掘機、海洋掘削といった石油・ガス関連、LED照明やスマートメーターなどの家庭用電化製品、法人向けのファイナンスやリース、不動産、銀行、信販といった金融
といった幅広い分野でビジネスを行なっています。
1896年からダウ平均株価の構成銘柄のうち唯一残っていましたが、2018年に業績不振による時価総額の減少により構成銘柄から除外されました。
これには2001年拡大路線を引き継いだCEOであるジェフ・イメルト氏により事業の取捨選択の失敗が背景にあるようです。
しかし2017年にCEOに就任したジョン・フラナリー氏は事業の絞り込みを行うことを発表。
今後電力や航空機、ヘルスケア以外の事業に関しては売却などが進められており、GEは転換期を迎えました。
歴史に残る様々な発明を行いました。中でも1番有名なのは、白熱電球の改良です。
これ以外にも電気トースターやコーヒーメーカー、冷蔵庫、ジェットエンジンなど発明しています。
現在は様々な問題を抱えていますがブランド力は健在と言えます。
■ 投資判断水準:決算内容を受けて期待薄。業績改善まで中長期目線 10$近辺で推移。
■ 業績見通し:改善方向ではあるものの大幅な改善期待薄
■ 指標関連:EPSが赤字であるためPERはマイナスに沈んでいる
■ 株主還元:業績の悪化に伴い配当金も激減
Contents
GEの事業について
ではGEの事業について各事業毎に分解してみていきたいと思います。
発電パワー事業
発電パワー事業はGEの長年のメイン事業でありますが、この事業の業績悪化が大きく影響しています。
GEはもともと火力発電に強みを持っていますが、最近は事業に陰りが見えています。
太陽光などの自然エネルギーのコストが下がっているので、世界的に火力発電で収益をあげるのが難しくなってきました。
2020年には火力発電より太陽光発電の方が低いコストになるようなのでGEの電力パワー事業の業績も不安です。
今後は再生可能エネルギー事業のほうへ注力していくことになるため大規模なリストラが行われています。
航空事業
航空事業では軍や政府・航空会社向けに航空エンジンを開発・販売しています。
利益率も高いですし政府が絡んでいるためGEの事業の中で最も有力な部門です。
他事業の調子が悪くてもこの部門だけは堅調に推移しています。
オイル&ガス事業→エネルギー企業向けにガスタービンやバルブ等を開発・販売しています。
資源価格に大きく影響されるため、資源価格が下がる局面ではエネルギー企業も設備投資に踏み切れないことがあります。
ヘルスケア事業→MRIやCTスキャナーなどの医療機器を開発・販売しています。
派手さはありませんが、堅調に稼げる部門であるため安定しています。
その他事業
輸送事業:ディーゼルエンジン・モーターなどを取り扱っています。
照明事業:もともとのGEの祖業です。現在はスマートグリッド技術による電力管理をこなっています。
キャピタル事業:金融事業はかつてのGEの主力事業でした。
GEキャピタルを売却しており過去に販売した保険などの数字が計上されています。
今後も金融事業に注力する方針はありません。
GEの業績は苦境に陥っている
まずは全体の業績をみてみましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
売上高 | 116,639.00 | 115,158.00 | 119,468.00 | 118,243.00 | 121,616.00 | 117,118.81 |
営業利益 | 10,991.00 | 8,141.00 | 10,223.00 | -8,133.00 | -16,245.00 | |
税引前当期利益 | 10,263.00 | 8,186.00 | 7,031.00 | -11,151.00 | -20,134.00 | |
当期利益 | 15,233.00 | -6,126.00 | 7,500.00 | -8,490.00 | -22,354.00 | 3,784.55 |
グラフ化してみます。
決して業績がいいとは言えません。
2015年からは当期利益が大幅に増減しています。
最新の決算が2019/7/31に発表されました。
第2四半期は減損計上などが響いて赤字に転落しました。2019年のフリーキャッシュフローや利益の見通しは上方修正したものの、投資家の懸念の抜抜にはつながりませんでした。
またボーイングの機運航停止に絡み10億ドルを超える費用が発生する可能性があるとの見通しも示しました。
GEのEPSとBPSについて
1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)をみてみましょう
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 0.93 | 0.14 | 0.86 | -0.47 | -2.4 | 0.37 |
BPS | 12.74 | 10.48 | 8.67 | 6.45 | 3.56 | 3.99 |
やはりEPSでみてもあまりいい数字とは言えません。
BPSはこの5年で減少しています。
EPSをみると、GEの業績悪化がよくわかります。
今おこなってる事業再編、会社を縮小しながら技術の会社に戻るという戦略が今後どのような方向にいくのかが鍵になってくると思います。
配当金の金額も減少
次に配当をみてみましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当 | 0.88 | 0.92 | 0.92 | 0.96 | 0.48 | 0.04 |
配当利回り | 3.63% | 3.00% | 3.04% | 2.80% | 2.50% | 0.39% |
配当はあるものの、ほとんどないに等しい数値です。
配当はリーマンショック後に大きく減配、2017年までは回復傾向にありました。
しかし翌年から減配し、2019年には業績悪化のため大きく減配しました。
GEの株価水準の推移
過去10年の株価を見てみましょう。
2017年以降、株価は大幅に下落しています。
大規模なリストラ、業績悪化が目に見えてわかります。
リーマンショック時には株価は7$まで下落しました。
なぜならGEキャピタルという金融部門を傘下に抱えていたため、それまで会社の利益の半分以上を稼いでいました。
しかし、リーマンショック時には他の金融機関と同様に株価が急激に下がりました。
2015年に金融部門は売却し、その後株価は戻りつつありましたが業績不振により2019年には再び下落し現在の株価水準になりました。
今後の5つの改革
典型的なコングマリット→メリハリの利いた複合型インダストリアル・カンパニーへ
これはデジタル化とインダストリアル産業への特化の試みであり、エンジンなどの点検を含む全事業でのデジタル化を推進するものです。
M&Aによる多角化→テクノロジー主導による成長へ
ソフトウェア部門への大胆な投資を行い、その投資は不景気でも続いています。
世界で10の研究拠点を確保しています。
グローバル化
新興国の高成長を取り込むためグローバル化を進め、地域マネージャーや現地マネージャー
に大きな権限を与えました。米国外の従業員も大幅に増加しています。
インダストリアル企業→デジタルインダストリアル企業へ
製造業の競争優位がハードウェアからソフトウェアへ移行するとみて、接続機能をもつスマート製品の製造に踏み込みました。
ソフトウェアセンターを設立して企業等も買収しています。
トップダウン型組織→分権型企業へ
この改革を進めるために、組織階層を減らし俊敏性を高めました。年次業績レビューをやめ継続的な能力工場を重視しました。
この改革の成果が今後のGEを左右するのではないかと思います。
まとめ
GEは復活しつつあるのか今後の動きが気になるところです。
最新の決算からみると全面的に見直しが続き忍耐が必要になるのではないかと思います。
売上高、調整後EPS、主力産業部門の調整後フリーキャッシュフローは全て前年同期比では減少でしたが通期予想を全て引き上げました。
しかし市場は大幅なリストラの最中で低迷が続いている電力部門など嫌気しているため株価はいまいちな動きになっています。
実際は完全回復までは程遠い状態ではないかと思われますが、2019年の上半期の実績は期待以上です。
そのため経営陣は通期予想を引き上げ、オーガニック売上高は5%前後の増加を見込んでいます。
産業部門のキャッシュフローの引き上げ調整後EPSも引き上げており、これはリストラコストと電力部門の安定化に起因します。
今後GEは”IoT”に力をいれていくかと思われます。実はIoTには早くから取り組んでおり、ハードとソフトの融合をテーマとして掲げています。
GEは電機メーカーですからIoTで成功して、ブランド力をみせつけてほしいです。
巨額投資が実りを生むまではなかなか厳しいかもしれませんが、GEの意地、ブランド力でのしあがってきてほしいと思います。
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