マクドナルドはレイ・クロックにより創業された米国の大手ファストフード・チェーン企業。
創業者であるレイ・クロックが経営理念として、QSC&V(Quality品質,Serviceサービス,Cleanliness清潔さ,Value価値)をもって顧客の期待に応えるサービスを提供することを示しています。
現在では世界の店舗数は3,500店を上回っております。
店舗数の分類別順位においてファストフードを含む外食産業で世界第2位。
チェーンストアではコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンに次ぐ世界第2位と世界トップクラスの店舗数を誇ります。
マクドナルドの時価総額は、約163,800,000千ドル程度でありトヨタ自動車の約0.88倍です。
日本企業でマクドナルドの時価総額を上回っているのはトヨタ自動車のみです。
このコンテンツでは、誰もが知っているファストフード・チェーン企業であるマクドナルドの株価の見通しについてお伝えしていきたいと思います。
■投資判断基準:長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し長期的に$300-$400(現在約$210)の水準に上昇することが期待される。
■ 指標関連:
▷PERは26倍前後で安定している。
▷配当性向は60.7%程度で、増配余力が十分にある。
■ 業績見通し:
▷店舗のフランチャイズ化、リニューアル・現代化による収益力の改善を推進中であり、利益率の大幅な改善が期待できる。
■ 株主還元策の動向:
▷現時点での配当利回りは低いが42期連続増配中であり、長期保有でキャピタルゲインとインカムゲインが狙える。
▷ 自社株買いを実施しEPSの上昇施策を積極的に実施している。
目次
Contents
マクドナルドとは?
最初のマクドナルドはアメリカ合衆国・カリフォルニア州でマクドナルド兄弟が1940年に始めたものです。
「スピード・サービス・システム」のキャッチフレーズと、工場式のハンバーガー製造方法、セルフサービスの仕組みにより、一躍有名になりました。
ファストフード売上高の世界シェアでは、マクドナルドが圧倒的な地位を持っています。
2位のヤムブランズはケンタッキーやピザハット、タコベルといった複数のブランドをもっていることを考えると、マクドナルドが単一ブランドでも圧倒的であることがわかります。
今ではマクドナルドを知らない人はほとんどいないでしょう。
ハンバーガーといえばマクドナルドですよね。
ビジネスの現場でもビッグマック指数は通貨間の購買力平均価格の比較手段としてよく用いられています。
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マクドナルドの構造改革による収益体質の改善
マクドナルドは構造改革を行い収益体質を改善しています。
店舗のフランチャイズ化
マクドナルドは、フランチャイズ加盟店に商品や経営ノウハウを提供する対価として、フランチャイズ加盟店から売上の一定水準をロイヤリティ収入として稼得しています。
マクドナルドにとっては、店舗経営のリスクをフランチャイズ加盟店に負担させた上で、一定の収入を定期的に稼得することが可能となります。
日本だとセブンイレブン等のコンビニエンスストアがこのような形態をとっています。
以下の図はフランチャイズ加盟店と直営店の割合を示したものです。
店舗数はフランチャイズ加盟店が93%程度を占めています。
なお、2018年末時点で直営店は2,770店であるのに対し、フランチャイズ加盟店は35,085店あります。
店舗のリニューアル・現代化
店舗のフランチャイズ化に加えて、マクドナルドは店舗への「エクスペリエンス・オブ・ザ・フューチャー」とよばれる自動注文端末機の導入をすすめています。
顧客に大型のタッチパネルで画面をみながら商品を選択して注文させ、
注文フローの自動化を進めることにより人件費を削減することが可能となります。
また、自動注文端末機を導入することで店舗のリニューアル・現代化が推進されています。
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売上高はやや減少傾向だが利益は増加傾向
それでは、マクドナルドの業績について確認していきたいと思います。
(百万ドル) | Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 |
売上高 | 27,441.30 | 25,413.00 | 24,621.90 | 22,820.40 | 21,025.20 | 21,038.62 |
営業利益 | 7,949.20 | 7,145.50 | 7,744.50 | 9,552.70 | 8,822.60 | – |
税引前当期利益 | 7,372.00 | 6,555.70 | 6,866.00 | 8,573.50 | 7,816.10 | – |
当期利益 | 4,757.80 | 4,529.30 | 4,686.50 | 5,192.30 | 5,924.30 | 6,111.99 |
図で表すと以下の通りとなります。
過去5年で見ると売上高はやや右肩下がりである一方、当期利益はやや増加傾向にあることがわかります。
さらに、売上高営業利益率も上昇傾向にあることがわかります。
過去5年分の決算から、マクドナルドの収益性は大幅に改善されていることがよくわかります。
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マクドナルドのEPSとBPS
マクドナルドの1株あたりの純利益(EPS)と純資産(BPS)の推移をみてみましょう。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
EPS | 4.85 | 4.82 | 5.49 | 7.3 | 7.71 | 8.01 |
BPS | 13.35 | 7.82 | -2.69 | -4.12 | -8.16 | -11.07 |
図示すると以下のようになります。
EPSは安定して小幅に上昇し続けています。
2014年、2015年はやや停滞気味でしたが、その後復調しました。マクドナルドのビジネスモデルの強さが伺えます。
BPSがマイナスになっていますが、これは米国の優良企業で時々見られる現象です。
というのも、借金して自社株買いを行っているためです。
つまり、BPSを計画的にマイナスにしているのであって、経営上問題ないと考えられます。
しかしながら、米国の市中金利は上昇し、調整局面にありますので、自社株買いスピードは抑制されると考えられます。
低金利の市場環境を巧みに利用した資本政策であったといえるでしょう。
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42年連続増配実施中の配当貴族の一角
マクドナルドは、連続増配年数42年と米国の名だたる企業の中でもトップクラスの連続増配実績を有している配当貴族銘柄です。
ここまで来れば連続増配年数50年超えの配当王になるのも夢ではありません。
以下は直近5年間の配当金の推移と配当利回りの推移です。
Dec-14 | Dec-15 | Dec-16 | Dec-17 | Dec-18 | Dec-19 | |
配当(ドル) | 3.28 | 3.44 | 3.61 | 3.83 | 4.19 | 4.67 |
配当利回り | 3.50% | 2.91% | 2.96% | 2.23% | 1.95% | 2.18% |
視覚化すると以下の通りです。
株価の上昇により配当利回りは低下してしまったものの、増配ペースも過去42年という長期間継続しています。
今後もキャピタルゲイン及びインカムゲインの両方が期待できる銘柄といえそうです。
このように増配と、自社株買いで企業として株式の価値をあげてくれる銘柄はそんなに多くありません。
マクドナルドの積極的な自社株買いによって、株数は70%程度まで減少しました。
自社株買は配当金と合わせて下値を支えてくれる大きな要因ともなりそうです。
なお、配当落ち月は、2月、6月、8月、11月で、配当支払い月は3月、6月、9月、12月の年4回です。
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マクドナルドの安定的なPER水準
マクドナルドは業績が堅調に推移した一方株価も右肩上がりに上昇していきました。
【株価= PER × EPS】として算出されますが、EPSと株価が共に上昇しているためPERは狭い範囲に収斂しています。
以下は過去5年のPERの推移ですが平均して24.03倍で推移しています。
今後のマクドナルドの見通しについて考察します。
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マクドナルドの成長は持続するのか?
マクドナルドは、店舗のフランチャイズ化を進めると同時に、既存店舗の外観や内装のリニューアル・現代化を強く推進しています。
世界中の約35,000もの店舗のリニューアル・現代化の完了にはやや時間を要すると思われます。
一方、店舗のリニューアル・現代化が進むにつれて利益率は改善されていくので、中期的な目線では業績については堅調に推移するものと考えられます。
マクドナルドは、特にその主要市場である米国においては、社会インフラの一部となっています。
そのため、今後も堅実な値動きになることが想定されます。
今後も世界中で人口増加に歯止めがかからず、マクドナルドが経営理念として掲げているQSC&Vに即って、新たな顧客体験を提供し続ける限りマクドナルドは世界一の外食ファストフード・チェーンであり続けるでしょう。
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EPSの増加率から株価水準を予想する
過去5年間のEPSの年平均増加率はCAGRを用いて算出すると10.55%と算出されます。
保守的にEPS成長率が5%、10%、5年平均10.55%で上昇した場合のEPSの推移は以下となります。(2020〜2025年)
EPS予想 | 5%成長 | 10%成長 | 10.55%成長 |
Dec-20 | 8.41 | 8.81 | 8.99 |
Dec-21 | 8.83 | 9.69 | 10.10 |
Dec-22 | 9.27 | 10.66 | 11.34 |
Dec-23 | 9.74 | 11.73 | 12.73 |
Dec-24 | 10.22 | 12.90 | 14.30 |
Dec-25 | 10.73 | 14.19 | 16.06 |
PERは構造改革(店舗の自動化やフランチャイズ化)本格開始年度から現在までの平均値である26.05倍を使用して株価を算出します。(2020〜2025年)
EPS予想 | 5%成長 | 10%成長 | 10.55%成長 |
Dec-20 | 219.09 | 229.52 | 234.30 |
Dec-21 | 230.03 | 252.45 | 263.11 |
Dec-22 | 241.54 | 277.70 | 295.41 |
Dec-23 | 253.61 | 305.47 | 331.62 |
Dec-24 | 266.29 | 336.01 | 372.52 |
Dec-25 | 279.61 | 369.61 | 418.36 |
現時点の株価が$214近辺ですので現在の経営状況が続けば5年後には$300-$400を目指せる水準となります。
保守的に見積もっても$250以上は容易に達成可能な水準といえるでしょう。
尚、上記の想定はあくまでマクドナルドにとってネガティブな市場環境とならず、現在の成長環境が継続した場合の想定となります。
リーマンショックのような景気そのものが悪化した場合は当然下振れします。
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まとめ
以上より、長期投資家にとっては魅力的な投資対象であるものと考えられます。
2019年7月25日の決算発表では市場予想を上回る好決算を発表しています。
- 2019年第2四半期の米既存店売上高前年同期比7%増は、市場予想の4.4%を上回った
- 2019年第2四半期の世界既存店売上高前年同期比5%増は、市場予想の5.3%を上回った
- 2019年第2四半期の総売上高(Revenues)は53億4100万ドル、市場予想の53億3000万ドルを上回った
- 2019年第2四半期のEPSは05ドルで市場予想と同等
上記のように市場アナリスト予想を上回る好決算を発表したマクドナルドですが市場の反応は限定的でした。
あくまで推測ですが、マクドナルドが推進する店舗のリニューアル・現代化の将来与えるインパクトがやや過少に評価されているのではないでしょうか。
■投資判断基準:長期的に「買い」
以下の点を総合的に勘案し長期的に$300-$400(現在約$210)の水準に上昇することが期待される。
■ 指標関連:
▷ PERは26倍前後で安定している。
▷ 配当性向は60.7%程度で、増配余力が十分にある。
■ 業績見通し:
▷ 店舗のフランチャイズ化、リニューアル・現代化による収益力の改善を推進中であり、利益率の大幅な改善が期待できる。
■ 株主還元策の動向:
▷ 現時点での配当利回りは低いが42期連続増配中であり、長期保有でキャピタルゲインとインカムゲインが狙える。
▷ 自社株買いを実施しEPSの上昇施策を積極的に実施している。
以上、【MCD】マクドナルドの今後の株価推移を予想!42年連続増配中の配当貴族の将来性を分析する。…でした。
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