2016年4月3日に、中米のパナマにある法律事務所が作成した租税回避に関する文書が流出、公開されました。
この文書を「パナマ文書」と呼びます。
世界の指導者や著名人らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用していた実態を暴露した「パナマ文書」で、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が日本時間10日、ペーパーカンパニー約21万社の情報などを公開した。
4月に資産隠しや課税逃れの疑惑につながる一部の資料を公開した結果、アイスランドのグンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど世界に衝撃を与えた文書。今回の資料公開で、さらに波紋が広がりそうだ。
(引用:日経新聞「パナマ文書」世界揺るがす)
パナマ文書には、タックスヘイブンであるケイマン諸島に口座をもつ企業、個人が掲載されており、世界各国に租税逃れの実態を晒しました。
実はこの中に、日本人と日本企業の名前も載っていたのです。
今回は、パナマ文書で公開された内容の情報をまとめていきます。
目次
パナマ文書で公開された日本人、日本企業
パナマ文書には、計21万もの個人、法人リストが掲載されています。
そのうち、記載されている日本人、日本企業は合わせて400件ほどです。
少なくともこの400件もの個人、法人はとてつもないほどの資産を有しているということです。
報道された個人、企業は公には租税回避を目的にして、法人を設立したわけではないと各々表明しています。
ただ、租税回避以外の目的で法人を設立したとすると、何かしら投資することで得られるメリットがあるはずです。
タックスヘイブンと呼ばれる地域は、産業が発達しておらず、資源も少ないがために、税制を緩くすることで世界から企業を誘致しています。
そのタックスヘイブンの地に、投資目的で法人を設立したと言っても、そこまで説得力がありません。
ただ、租税回避のために法人を設立したと言えば、日本の税務局からの取り立てが始まるので、それを防ぐために「言いたくない」というのが本音でしょう。
パナマ文書に記載されている法人名は、日本の本社名からは連想できない名前がつけられています。
企業側からしても、タックスヘイブンを利用していることは知られたくないということです。
実際、タックスヘイブンはマネーロンダリングなど、資金洗浄に利用されることも多く、一歩踏み外せば、司法から処罰を受けることになります。
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パナマ文書が与えた衝撃
パナマ文書の公開によって、世界のお金は一部の資産家、企業に集中していることが明確になりました。
資産家、企業は保有している資産を少しでも多く残したいという一心で、タックスヘイブンを利用している可能性が高いです。
節税自体は、合法的な手段なのであまり批判されません。
ただ、パナマ文書に記載されている資産家や企業は、ただでさえ多くのお金を持っているのに、それを税金として納めることを逃れようとしている印象を与えてしまっています。
節税と脱税は、どちらも「納税を抑える」という目的は同じですが、前者は合法で、後者は違法です。
ただ、タックスヘイブンに関する取り決めや法律が日本国内で整備されていない点もあり、タックスヘイブン利用を制限することができていないのが現状です。
現在、日本は海外の国とタックスヘイブンに関する情報交換の協定を結んでいます。
国税庁は31日、世界各国の口座情報を自動的に交換し、資産を「ガラス張り」にできる新制度を使い、64カ国・地域の金融機関にある日本人の口座情報55万705件(速報値)を入手したと明らかにした。タックスヘイブン(租税回避地)の情報も含まれており、富裕層や企業の税逃れ対策に効果が期待されている。
活用されたのは、経済協力開発機構(OECD)が策定した「CRS」(共通報告基準)と呼ばれる制度。非居住者が自国に持つ金融機関の口座の残高や、利子や配当の受取額などの情報を各国(102カ国・地域)の税務当局と自動的に交換することで、海外資産を透明化できるメリットがある。
実際に、タックスヘイブンの国とも税金情報の共有を行っています。
ただ、どこまで実情を把握できているのかは疑問が残るところではあります。
実際、パナマ文書が流出するまでは、ケイマン諸島の法人情報は明らかにされていませんでした。
タックスヘイブン側の言い分としては、「法人情報は機密情報である為、公開できない」としているところが大半です。
ビジネスとして行っている以上、顧客の情報を守ることは当然ではありますが、「納税」という部分がかかってくると、すべての情報を機密にするのは無理があります。
インターネット、スマートフォンの発達によって、個人でも簡単に起業できる時代になりました。
そのため、個人が企業並みの資産を保有するという事例も増えてきています。
そうなると、タックスヘイブンの利用は今後ますます加速していくでしょう。
タックスヘイブンの利用を制限する、もしくは管理できる状態にしないと、国内の税金はどんどん海外へ逃げていくことになります。
タックスヘイブンによって、徴収しきれていない税金を集められれば、消費税増税などしなくても、財源を安定化できると言われるほどです。
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パナマ文書公開後の日本
パナマ文書が公開された直後は、日本のメディアもこぞって、文書に掲載されていた日本人、日本企業を取り上げていました。
ただ、文書公開から2年以上経過した現在、パナマ文書で明らかになったタックスヘイブンの利用を表立って非難する人は少なくなりました。
日本人の心の奥底では、「税金が高すぎる」という意識があるのかもしれません。
実際、日本の個人税(所得税など)の累進課税制度は、高所得者ほど負担が急激に上がっていく制度となっています。
資本主義を謳う日本ではありますが、税制を加味すると、資産の均等化が図られている面が強いです。
この税制を嫌って、海外へ移住する資産家、投資家も増えてきました。
今後、優秀な若年世代はどんどん海外へ出ていくことになる可能性があります。
実際、パソコンがあれば仕事ができてしまう時代になったので、日本国内で仕事をするメリットがそこまで見られなくなってきています。
海外へ移住されるとなると、さすがに国も課税の手を広めることはできません。
そうなれば、稼ぐ力がある人が日本から減っていき、結果として税収が少なくなってしまうことも想定できます。
少子高齢化が進む日本では、税収については死活問題です。
税収確保のために、いよいよ外国人労働者の受け入れを本格的に開始する傾向にあります。
実際、旅行業や飲食業を始めとして、外国の方が働く姿を以前よりも頻繁に見るようになりました。
日本は、制度的に転換期を迎えていると言えます。
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まとめ
パナマ文書の公開によって、日本人、日本企業もタックスヘイブンを利用していることが明らかになりました。
本来、徴収するはずの税金が海外へ出てしまうことで、国内の税収は確実に減少してしまいます。
国としては、タックスヘイブンの利用を制限する法律をつくるべきですが、未だに実現できていません。
どのような事情があるのかは断定できませんが、法案を可決できない事情があるのでしょう。
今後、日本の優秀な若者たちは、税率の高さを嫌って、日本国内ではなく海外で働く選択をする可能性があります。
そうなると、日本もいよいよヨーロッパと同様に、移民を受け入れなくては税制を維持できなくなってきます。
日本の転換点を見逃さないよう、注視していかねばなりません。
以上、世界中を震撼させたパナマ文書とは!公開された日本人・日系企業も掲載されていた?…の話題でした。
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