住宅や車を購入するためのローンは金利によって返済額が異なり、利上げによって支払う利息は増えます。
毎月の返済額が増えるのですから、消費者にとって利上げは嫌なものです。
しかし、利上げすることで消費を冷まし、物価が上昇しすぎるのを防ぐメリットもあります。
インフレ(物価が上昇)しすぎると生活が厳しくなる欠点があるため、利上げしてバブルを防いでいるのです。
今回は消費者にとってどのような恩恵があるのか、金利の利上げによって発生する影響や効果を簡単に解説します。
目次
Contents
利上げするのは中央銀行(日銀)。その方法とは?
消費者がお金を借りる場合、決められた金利によって支払う利息が変動します。
金利を調整するのは国の中央銀行であり、日本では日本銀行が適切な金利になるよう誘導しているのです。
金融業界には銀行がお金を貸し借りする短期金融市場があり、日銀は市場のお金を調整して金利を操作します。
短期金融市場の金利はお金が余っていれば下がり、お金が不足していれば上がるのが特徴。
今よりも金利を下げるなら日銀はお金を供給しますし、金利を上げるならお金を市場から回収します。
お金を回収したり供給したりする手段は国債や手形といった金融商品です。
日銀が銀行から国債を買い集めれば市場のお金は増えますし、逆に日銀が国債を銀行に売ってお金を儲ければ市場のお金は減ります。
2019年3月時点ではマイナス金利政策によって、お金が供給されているのが現状です。
マイナス金利とは、民間の金融機関が中央銀行(日本では日銀)に預けている預金金利をマイナスにすることです。金利のマイナス化により、預金者が金利を支払うことになります。
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利上げによる影響とは
金利が上がることによって発生する身近な影響は、銀行預金によって得られる利息が増えることです。
利上げによって銀行はお金を借りる人から多額の利息を獲得でき、結果として預金者にも利益が分配されます。
逆にお金を借りる場合は金利が高くなっているため、支払う利息が大きくなることがデメリット。
金利が高いとローンの返済が厳しくて住宅や車を購入することが難しくなります。
金利の上昇は消費者だけでなく、社会にさまざまな影響をもたらします。
中央銀行が利上げすることによって発生する影響は主に次の3つです。
- 物価を抑制する
- 景気を抑制する
- バブルの発生を防止する
それぞれにおける具体的な影響を詳しく解説します。
物価を抑制する
利上げをすればローンや借金による負担が増えて、結果的に消費が落ち込むものです。
商品やサービスを購入する人が少なくなれば、企業は値下げして販売促進する必要があります。
需要が減ることで商品の値段は下がる傾向になり、物価が上昇しすぎることを防げるのです。
インフレして持っているお金の価値が下がり、消費者の生活が厳しくなることを避けられます。
コンビニで販売されている商品が明日から5倍になれば、ほとんどの人が生活難に陥るものです。
経済に悪影響を及ぼす急激なインフレを防ぐために、利上げして物価を抑えます。
景気を抑制する
物価が下がる傾向になれば企業の売上も少なくなります。
利益が少なくなれば労働者への給料は少なくなりますし、採算が取れるか分からない事業への投資をしなくなるものです。
金利が高いからお金を借りるにもハードルがあり、住宅やマンションへの投資も少なくなります。
投資する機会が減ることでお金が回りにくくなり、最終的に景気が悪くなっていくのです。
賃金が抑えられたり投資を控えられたりして商品やサービスの消費量が減れば、景気が良くなる可能性は減ります。
急激なインフレを引き起こす過度な好景気を抑えるのにも利上げは最適ですね。
バブルの発生を防止する
利上げをしない場合では消費量が増えて、物価が上昇するインフレになる傾向があります。
商品やサービスの値段が高くなると「価格が上がる前に買う必要がある」と考える人が増えるものです。
1週間後に物価が上昇してしまえばお金の価値が下がってしまい、商品の価値がその分上昇するのですから当然ですよね。
結果として消費が増加し、需要が増えることで物価はさらに上昇します。
消費者と同じく企業も物価が上がる前に資金を活用して投資しようと考えるものです。
結果として価値に見合っていない不動産を購入したり、採算の合わない事業に投資したりするケースもあります。
最終的には不良債権や物価の高騰が問題となり、政府が利上げすることでバブルは崩壊するのです。
値段が不当に上がらないよう、中央銀行は利上げしてバブルを防いでいます。
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利上げによる効果とは
中央銀行が利上げすることで市場や金利、為替においてさまざまな効果が発生します。
どのような効果が表れるのか具体的に見ていきましょう。
株式市場への効果
利上げは物価が下がることや景気が悪くなることもあり、企業に対して悪影響をもたらします。
本来得られたはずの利益が利上げによってなくなり、業績が落ちてしまうものです。
企業の売上が落ちれば株主への配当や優待が減ってしまい、株への魅力が少なくなります。
結果として株を売る投資家が増えてしまい、株式市場では株価の下落が目立つようになるのです。
利上げしたからといってすぐに株価が下がることはありませんが、長期的には景気が悪くなるから株価も伸び悩みます。
利上げされれば株価が下がることを知っておきましょう。
金利への効果
中央銀行が利上げすることでお金の需要が高まり、銀行の金利も上昇します。
金利が高くなることで住宅や車を購入するときに、ローンを借りにくくなるのが利上げによるマイナス効果です。
例えば住宅を購入するために1,000万円の35年ローンを借りた場合、金利が1%と2%では大きく負担が違います。
1%であれば総返済額が約1,185万円となり、毎月の返済額は約2万8千円です。
利上げによって金利が2%に上昇すると、総返済額は約1,391万円となり月の返済額が約3万3千円に増えます。
1%の違いで200万円も負担額が変わるのですから、利上げによってローンを借りにくくなるものです。
為替への効果
利上げによって通貨の金利が上昇すれば、投資家から買われるようになって通貨の価値も上昇します。
金利が高い通貨の債券を保有することで投資家が得られる利益は増えるためです。
例えば1ドル100円で1,000万円を10万ドルに変換するとします。
変換した10万ドルで金利3%である10年の米国債を購入して、10年間保有し続けるとします。
単利で毎年3,000ドルが入るため、10年後に得られる利益は3万ドルです。
元本と利益を合計して13万ドルであれば、1ドル100円で日本円に交換して1,300万円を獲得できます。
もし円高になっていても、投資家は米国債に投資して利益を得ることが可能です。
1ドル80円の場合は13万ドルが1,040万円になり、40万円の利益が残ります。
利上げで金利が上昇して債券の利回りも良くなり、投資家から通貨を買われて通貨の価値は上がるのです。
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不景気の場合は利上げするのか?
利上げはあくまでも好景気のときに行う政策であり、不景気では逆に利下げします。
中央銀行が市場にお金を供給することで消費を促し、物価の上昇や景気の回復に繋げるのです。
不景気が続く日本では2016年にマイナス金利が導入されて、銀行はお金を預けていると利益が減る状況になりました。
結果としてお金を貸し出す機会が増え、消費や投資を助長しています。
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まとめ
中央銀行が利上げすることでお金の需要が高まり、物価や景気が抑えられる影響があります。
利上げによって過度なインフレを防ぎ、消費者の生活が厳しくなるのを防いでいるのです。
金利が上がることによって債券の利回りが上昇し、通貨の価値が上がるのも利上げの効果。
政策で利上げされる場合は市場の動向をチェックしてみると良いですね。
以上、【金利の利上げとは?】市場や為替への影響と効果(物価・景気抑制・バブル防止など)をわかりやすく解説。…の話題でした。