会社員の方が意外と把握していない、給与から天引きされる項目について、以前のコンテンツで紹介をしてきました。
今回は、もう少し踏み込んで、「所得税はどのように計算されているのか?」という点を解説していきたいと思います。
所得税の仕組みをしっかり理解しておかないと、無駄に税金引かれたり、結果的に損をしたりする可能性があります。
所得税の計算は実はあまり難しくありませんので、ポイントを押さえて所得税に関する知識をしっかりと身に付けましょう。
目次
所得税は年収に応じて計算される
所得税を計算するときは、自分が1年間得た所得(年収)に所定の利率をかけられて計算されます。
つまり自分の収入が多くなればなるほど、所得税の額は大きくなります。(住民税も増加)
ただし、稼いだお金全てに税金が課せられる訳ではなく、いくらかは税金の計算の対象から省いてくれます。
この省かれる部分を「控除」といいます。
例えば、以下のように人によって、どんな生活をしているのか、得たお金を何に使っているのかは大きく異なります。
- 年収400万円:妻子持ち
- 年収400万円:両親介護
- 年収400万円:独身・実家暮らし
このような違いがあることから、「所得控除」は元々は本人や家族の事情に配慮するために設けられた仕組みとなります。
控除についてはあとでもう少し掘り下げて解説していきます。
さて、具体的な所得税の計算ですが、1年間の収入から「控除」を引いた額を「課税所得」といいます。
課税所得に所定の税率がかけられ、控除額が引かれ、所得税が計算されます。
【所得税 = 課税所得 × 税率 – 控除額】
具体的な税率と控除額は国税庁のHPに載っていますが以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(注) 例えば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになります。
700万円×0.23-63万6千円=97万4千円※ 平成25年から平成49年(2037年)までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなります。
(引用:国税庁「所得税の税率」)
冒頭で述べたように、年収が上がると、所得税を支払う額が単純に大きくなるだけではなく、年収に対して払わなければならない割合も大きくなります。
税率の欄を見ていただくと明白で、1番下は5%で1番上は45%とあり、「税率」自体もあがります。
年収が上がると、最大で年収の半分近くの所得税を払わないといけないのです。
所得税を計算するにはまず課税される所得金額である「課税所得」を求める必要がありますよね。
課税所得は【総所得(年収など)−控除額=課税所得】で求められます。
【課税所得 = 総所得(年収など)− 控除額】
つまり、1年間で得た年収の全てが税金の計算対象になるわけではないのです。
「総所得」とは、あなたが1年間で得た収入の全てです。
サラリーマンの場合は1年間で得た収入、つまり年収がほとんどを占めるでしょう。
この課税所得の額に応じた税率がかけられて、所得税が求められます。
◾️ 具体例:
《条件》
- 年収:500万円
- 所得控除額:150万円
《計算》
- 350万円×20%−42万7500円=27万2500円
- 27万2500円が1年で支払う課税所得
ところで計算式にある「控除額」とは何を意味するのでしょうか。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
税金を計算するときは、課税所得に所定の税率をかけて計算されます。
しかし、上記表を見ると、課税所得の額が330万円を超えると税率が10%から20%に上がっています。
では、課税所得の額が330万円から331万円にあがった途端に所得税率が10%から20%になってしまうのでしょうか?
330万円を超えた1万円だけが税率20%で計算され、後の330万円は税率10%で計算されます。
しかしそのような計算を自分でするのは大変なので、速算表にある「控除額」を引くことにより、簡単に所得税が計算できるのです。
この場合、330万円から”はみ出た分”だけ税率が20%となり、残りは税率10%のまま計算されます。
上の式を見ていただくと”-42万7500円”となっている部分があると思います。
これは10%の部分と20%の部分を分けての計算をしやすいように引かれているものなのです。
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控除とは?「基礎控除」「所得控除」と「税額控除」の3つを理解しよう
上記で、所得税を計算するにはまず課税される所得金額である「課税所得」を求める必要があります。
課税所得は【総所得(年収など)−控除額=課税所得】で求められると述べました。
【課税所得 = 総所得(年収など)− 控除額】
ここでいう「控除」とはそもそも何か疑問に思われている方は多いです。
言葉は聞いたことがあるけれども、しっかり理解したいという方のために、今回は控除の計算の仕方について説明していきたいと思います。
控除は所得税や住民税などの税金を計算するときに、計算の対象外となる部分のことをいいます。
そもそも所得税や住民税の額は、1年間の年収で決まります。
上記で解説した計算式内に「控除額」とあったように、稼いだお金が全て税金の対象になるわけではありません。
同じ年収でも、人によって養わないといけない家族がいたり、家族や将来のために保険に入っていたりと、事情やお金の使い道は違ってきます。
そこで、一定の条件を満たした人の税金の負担を軽くしてあげよう、ということで、控除というものがあります。
誰もが対象の「基礎控除」や健康保険、国民年金(厚生年金)を支払った分だけ引いてくれる「社会保険料控除」など。
全員が受けることができる控除もあります。
また、「配偶者控除」や「生命保険料控除」「雑損控除」など特定の条件を満たした人が受けることができる控除など、たくさんの種類があります。
とても砕けた表現で解説すると控除とは、「あぁそんな事情があるのね…じゃあちょっと税金まけてあげるよ!」ということです。
例えば、それぞれの控除に関しては以下のような概念があります。
基礎控除 | 「生きているだけ色んな経費かかるよね、その分税金免除するよ!」 |
配偶者控除 | 「働いてない主婦がいるんだ!じゃあその人の分まけてあげるよ」 |
社会保険料控除 | 「ちゃんと健康保険とか年金とか払ってくれてありがとう!その分税金払わなくていいよ!」 |
その他にも、生命保険料控除、扶養控除などもあります。
- 生命保険料控除:生命保険に加入している人が受けることができる控除
- 扶養控除:16歳以上の扶養家族がいる場合に適用される
上記は一部ですが、控除といってもとても多く、例えば、これだけの種類があります。
(引用:国税庁)
このように控除の種類はとても多いので、全てを理解するのは中々難しいです。
しかし、自分が使える控除がないか今1度調べてみてはいかがでしょうか。
思わぬ控除が使えたりして税金の負担が減るかもしれないです。
それぞれの控除を理解する前に、まず把握しなければならない大枠の概念として、「基礎控除」「所得控除」と「税額控除」の3種類があります。
まずはこちらを把握していきましょう。
基礎控除
まず計算のいらない控除から「基礎控除」といって、収入を得ている人なら誰でも受けることができる控除制度があり、金額は一律38万円です。
基礎控除は、納税義務者の最低生活費からは徴税できないとする考え方に立ってのものという概念から設定されています。
確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の一つに基礎控除があります。基礎控除は、ほかの所得控除のように一定の要件に該当する場合に控除するというものではなく、一律に適用されます。基礎控除の金額は38万円です。
(引用:国税庁「基礎控除」)
給与所得控除
「給与所得控除」は導入部分で説明したような税金の計算の対象外となる部分のことを言います。
税金を計算するときは、1年間の収入全てが対象になるわけではありません。
総収入から対象外となる控除を差し引いて「課税所得」を計算する必要があります。
納税者の個々の事情により税金を負担する能力の差を調整し,最低生活水準を維持することを狙いとしています。
上記ですでに紹介をしましたが、再掲しておきます。
(引用:国税庁)
そして計算された課税所得に所定の税率をかけられて、所得税や住民税が求められます。
この対象外となる控除を所得控除と言います。
収入ごとに以下の計算式によって算出し、「収入-(給与所得控除)-所得控除」で課税所得を計算します。
- 180万円以下 収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
- 180万円~360万円 収入金額×30%+18万円
- 360万円~660万円 収入金額×20%+54万円
- 660万円~1000万円 収入金額×10%+120万円
- 1000万円~2200万円 220万円(上限)
課税所得を計算したら、あとは所得税の計算式に当てはめて税額を求めます。
計算式は「課税所得×所得税率-税額控除」となっており、所得ごとの税率・控除額は以下の通りです。(すでに上でも解説しましたね)
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
各種控除後の課税所得が300万円の場合、「300万円×10%-9.75万円=20.25万円」が所得税額となります。
税額控除
「税額控除」は、計算して求められた税金そのものが減額されます。課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除します。
代表的なものに住宅ローン控除・配当控除、外国税控除などがあります。
計算された所得税全てが、まるまる免除されるので、節税の効果は「所得控除」とは比べものになりません。
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まとめ
この記事では、所得税の計算方法と控除について詳しく解説してきました。
会社員の方は、所得税の仕組みを理解した上で、うまく節税をして、資産を増やしていけるようにしていきましょう。
会社員の税金は複雑に思えますが、意外と難しくなく、一度理解すれば節税にも前向きに取り組むことができますので、積極的に取り組んでいきましょう。
以上、【所得税とは?】一体いくらからかかるのか?会社員の税金の計算方法をわかりやすく、簡単に解説します…の話題でした!
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